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zoom RSS 異国迷路のクロワーゼ 第12話(最終回)「屋根の上の猫」

<<   作成日時 : 2011/09/21 21:02   >>

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鈴の音はちょっとしたホラーだったなぁ。てっきり、月の世界に帰ってしまうんではないかと思った。



早くも最終回を迎えてしまった『異国迷路のクロワーゼ』。この第12話では、もし湯音がいなくなってしまったら・・・という不安感を描き、湯音の存在がクロードやギャルリにとってどれほど大切なものになっているかを示す。今作のような、日常風景における人間関係でドラマを構築している作品では、もはや定番すぎる最終回エピソードと言っていいだろう。むろん、原作がまだまだ続いていることだし、強引に幕を引く必要もないタイプの作品でもないのだから、当然の構成だ。それでも、父親に対する複雑な想いをなかなか吹っ切ることのできないクロードが、少しづつ前を向いて歩んでいくことができそうな様子を見せたことで、湯音のくれた小さな変化がこうして浮彫りになったのは感動的だった。


いちおう今回のエピソードは、たった一人で異国の地に降り立った湯音が、様々な不安を抱えながらもパリの街に受け入れられるよう健気に努力していた姿が、ようやく実りを得た物語として提示されていた。けれど今までの話数においても、それほど湯音がギャルリに溶け込めていなかったようには見えていないし、むしろアリスや浮浪児の少年をはじめ多くの人に笑顔の輪を広げていく様子が強調されていたから、今回語られた湯音の不安感というか疎外感?のようなものが、どれほど重視されていたかは疑問だ。少なくとも自分には、普段あまり考えていることをストレートに表明することのない湯音が、今回もまた、そんなことを考えていたのかと驚かせるような言動を見せたことで、今まで包み隠されていた湯音の本心がまた少しだけ明らかになってきたエピソードとして映った。もちろん彼女が、誰かの役に立ちたい(それも目に見える形で)と常に願っていることはよく分かるし、その理由に姉の汐音の一件が重要な影を落としこんでいることも前回明らかになった。それでなくても、みんなが自分の仕事をちゃんと遂行しているなかにあって、自分だけ取り立ててやることがないという状況がちょっとした不安を掻き立てる心理は、日本人ならよく理解できることだろう。

(それに関してはそもそも、湯音をどういう理由で住まわせているのかを明確にしてこなかったクロード&オスカーが悪い。奉公人なのか、留学生なのか、ペット扱いなのか、せめてもうちょっとはっきりとしておいても良かったと思う。いまさらだけど。現時点では彼らの関係は”家族”を志向して展開されているようだが、湯音の実家とクローデル家とでは、また家族の概念も大きく異なっているのだろう。今作中で描かれた日本とフランスの文化の違いで、もっとも大きかったのは、湯音の扱い方・扱われ方に見られる家族観の差異であったのかもしれない。このあたりは、映画「ラスト・サムライ」で米国人が、日本の女性はよく働く、と驚いていたのを思い出すw)


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一方で、湯音のことを知ろうとしないのは湯音がいなくなったときに辛くなるのが怖いからじゃないのか、と問い詰められていたクロードが、改めて”湯音がいなくなる”という危機感に直面したその焦燥感については、後半部で語られるジャンの死に関する話とリンクしたことで、俄然、切迫感のある描写に仕上がっていた。こうしたところを見ると、やっぱり今作の主人公はクロードなんだなぁと実感する。


前回のエピソードでは顕著だったが、当初はまるで宇宙人か何かのように異質な(非現実的な魅力を持った)存在だった湯音は、話数を重ねるごとに次第に地球人に、我々に馴染みのある少女の姿に変化していった。未知の文化的背景を背負ったキャラクターが、既知の世界観の中に溶け込んでいった。それが、全12話(+1話。自分は見れてないですが)を通して描かれた湯音の姿だった。けれどそれでもやっぱり、湯音はどこか遠くにある知らない世界の住人であって、決して自分たちのもとに置いておくことができないのだということを見せつけられたかのような印象を受けたのが、この第12話において猫の鈴の音を追いかけていく湯音の様子だった。作中の他の人物には感知されない不思議な音を聞きつけて、何か取りつかれたかのように上空を見上げるその姿は、まるで別れの時の近いことを悟ったかぐや姫が月を眺めているようにさえ映る。湯音がギャルリのことを、クロードやパリの人々みんなを心から愛しく思っているのはよーく分かっているのだが、それでもなお、湯音の所属する日本という国の遠さを、どうしても実感してしまう。湯音の姿に亡き父の面影をふと重ねてしまうのは、湯音の祖国がまるで天国のような手の届かない場所に存在しているように思われるからだろう。すんでのところで手を伸ばしていれば、あんなに早く父と別れることにはならなかったかもしれない。その想いを込めて、クロードは湯音に手を伸ばすのだった。


湯音を無事に連れ帰ることができたクロードは、これで少しは気が晴れただろうか? いや、まだまだ彼の背負う荷は重い。自分の目の前で大切な人を失ったということ、そしてそれは自分の努力次第では防げたかもしれなかったという後悔は、どんなにクロードが忘れようとしても、決して彼の心から離れることはないだろう。またその経験は行言ってみればクロードの原点なのだから、忘れてしまってはいけないものだ。ただ、その不運な経験に由来する鬱屈とした感情を、前向きに解き放つことは可能だ。いまは内側に、過去のほうへと向いている心のエネルギーのベクトルを、外側に、未来の方へむけてやること。そう導いてやることが、オスカーが親心から腐心してきたことであり、また湯音が本当の意味で”ちからになれること”なのかもしれない。


もし、まるで別の星からやってきたような存在だった湯音が、いつしかクロードにとって本当に近しい存在となり、それを通じて日本という国を身近に感じられることができるようになったなら、同じくらい遠くにある天国だって、今よりもずっと近くに感じられるようになるかもしれない。そうしたら、かつては不可能だったクロードの憧れ、すなわち本当の親子のような関係をジャンとの間に築くことも可能になるだろう。トラウマに触れられまいと神経質になることもなく、また父を乗り越え打倒しようともがき苦しむこともなく、親子二代で手を取り合って仕事に打ち込むことができるだろう。まだまだ続いてゆくこの物語では、そんな日が一日でも早くやってくることを願って、湯音とオスカーがあの手この手でクロードに魔法をかけ続けるに違いない。すべてはまだ始まったばかりなのだ。


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さて残念ながらアニメシリーズとしてはここで終わりとなってしまったわけだが、総評としては、思っていたより遥かに見どころのたくさんあって、実に噛みごたえのある作品だったと思う。ゆったりした時間の流れや幸福そうな街並み、登場人物のほぼすべてが善人として描かれているなど、ほのぼのとした印象に支配されたアニメではあったのだが、アニメーションや脚本や音楽といった諸要素の質の高さはもちろん、展開されているドラマや人物描写の奥深さや、19世紀末という時代背景を巧みに生かした様々な仕掛けなどによって、他の派手な作品にも決して引けを取らない濃密な時間を味わうことができた。また付け加えるなら、感想を書くのも楽しい作品でもあったと個人的には思う。自分自身の胸の内にある色んな引出しを刺激させる作品として、毎週食い入るように見入っていた。


また何と言っても、湯音というキャラクターの愛らしさ。CMなどを見ていると原作からして相当に魅力的なキャラだったのだろうけれど、それがアニメとして描かれ、動いて、しゃべっている様子は、今期の他のどんなアニメにも無かった要素として、『クロワーゼ』という作品を特徴づけている。もちろん、他の作品にもそれぞれ魅力的なキャラクターはたくさん登場する。けれど、湯音ほど独特な雰囲気をまとったキャラが他にいたかと考えると、彼女がどれだけ特殊なキャラクターだったかというのを実感する。これだけ美少女を量産するシステムが確立しているアニメにおいて、それでもときどきこうやって、唯一無二の、奇跡のようなキャラクターが生み出されるというのが、アニメというものの面白さだろう。今期で言えば、それを教えてくれるのが湯音の存在だった。


この奇跡はしかし、そう珍しいものではない。毎クールに一人というほど頻繁ではないにせよ、一年に一人くらいは、こんな素敵な出会いがあったりするものだというのが、自分の印象だったりする。もちろん1クール(もしくはひとつの作品)に何人も、そんなキャラが登場してしまうときだってあるだろう。逆に言えば、キャラクターの要素に計り知れないほど大きく依存している現在のアニメ作品においては、決して忘却の波に飲み込まれない唯一無二のキャラクターを創出することが、意欲的な作品を目指すうえでは不可避の使命であるとさえ言えよう。いち視聴者として、今後もこうした奇跡を目の当たりにすることができるよう願いながら、新しく生み出されてゆくアニメと接してゆきたい。


なお、湯音の魅力の少なからぬ部分が、服飾デザインの魅力だったと、個人的には思っている。序盤の話数においても感想記事で述べたことだが、我々日本人にとってさえ、現代ではなかなか触れる機会の少なくなってしまった和服を、派手なものから地味なものまでこれほど多彩に魅力的に特徴的に描き上げたことが、今作の大きな見どころになっていると同時に、日本人少女がパリの街にどれだけ奇異な印象をもたらしたかということを雄弁に物語っていた。19世紀末のフランス人たちが日本をどのような目で見ていたかということを、小難しい講釈は一切抜きに、感覚的に視聴者に共有させることができたのは、随所に見られた今作の”巧さ”の中でも特に評価すべき箇所だったと思う。





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それでは、これにて以上です。どうもありがとうございました。


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