ソラノヲト 第3話「隊ノ一日・梨旺走ル」

今回も何のことはない日常話。一日という時間の中で、より深まっていく隊員たちの絆を描く回。




・文化のパッチワーク


あちこちですでに何度も指摘されている、今作の世界観の特殊性。我々の生きる現実世界の既成の文化をあちこちから引っ張ってきた、パッチワークのような世界観が、改めて提示される。


というより、過去に何らかの世界的な異変が起こり、混乱と離散集合を経験した後の世界なのだろう。過去の文明の上に生活圏を築いているというのは前回描かれたが、今回はそこに共存する人々が、さまざまな文化的背景を背負いながら、何の疑問も持たずに融合している世界なのだという点が強調されていた。


ここまでざっと見ただけでも、日本と欧米各地とに由来する文化や名称が様々表れてきていて、本当にごちゃまぜな世界観だということが、くどいほど言及され続けてきている。それでもまだ、他のアジア地域やアフリカ等が見当たらないだけ、統一感が損なわれずにいるが、こうした良い意味でも悪い意味でも”よく目につく”世界観設定に、いったいどんな意図が隠されているのか、気になるところだ。ただの興味本位で文化のパッチワークを楽しんでいるのか、それともストーリーに関わる重大な設定なのか。現時点では何とも言い難い。



・言語考



そしてまず間違いなく、言葉も混交しているはずで、「味噌」という単語と「soy」という単語が同時に語られる場面などは非常に分かりやすい。過去の世界の言葉づかいを引きずりながらも、異なる言語が完全にごちゃまぜになり、新たな言語として定着している。そんな設定らしい。


これに似たような例として、南アフリカで使われている「アフリカーンス」という言語がある。もともと南アフリカがオランダの植民地であった際に移住した人々の言語を母体としながら、ヨーロッパ系・アジア系・現地系それぞれの言語と融合して成立した、かなり新しい言語だ。私は南アフリカに旅行に行ったことがあるが、そこでは、道路標識などに英語、アフリカ系の言語、そしてこのアフリカーンスと、3種類(場所によって前後する)の文字が書かれていたりして、驚かされた。アフリカーンスは上記の起源となる言語や、とくに現在では英語の影響を強く受けるが、しかしいわゆる方言ではなく別個の言語として定着していて、当然、アフリカーンス使用者と例えばオランダ人が対面したとしても、通訳なしでは意志の疎通ができないらしい。


「ソラノヲト」の世界は、このうち、元来の形態をほぼ維持していた英語等の言語が忘れられ、新生言語だけが生き残ったものと考えられる。「味噌」と「soy」というそれぞれの単語は、設定上、脚本家が日本人向けに翻訳したもの(例えば「コードギアス」のブリタニア語のような)ではなく、実際に日本語起源の言葉と英語起源の言葉が共存しているのだろう。カナタが味噌を郷土料理だと言っていたので、住む地方によって文化が「より日本的」「よりアメリカ的」であったりする可能性は高いが、しかしそれぞれの間における断絶は驚くほど弱く、アジアとヨーロッパの差異は関東関西の差くらいでしかなくなっているようだ。




・今回のストーリーについて


いまはまだ世界観の提示とキャラを確立させる作業に追われていて、シリーズを貫くストーリー構成というものが見えてこない。1話完結型の展開が、いつまで続くか。これはこれで十分に面白いので、一向に構わないけれど。


フィリシアをはじめとする三人を体よく厄介払いした上で、カナタとリオにちょっとした災難を経験させて、良き先輩・後輩の関係になりそうな二人にじっくりとスポットを当てた今回。今まで無理をしていたカナタが、ようやく1121小隊にその体の重みを預けるきっかけとなる話だったが、しかし今回の主役はむしろリオなのだろう。病気とラッパ、二つの側面からリオの過去回想を断片的に挿入し、カナタとの深い縁を感じさせるエピソードだった。


ときどき挿入されていた時計の絵。当然劇中の時間の進行を示すものであるが、同時に今回のお話が「隊ノ一日」を描くものであるということの象徴だろう。時計のネジを巻くという行為が、そのまま、アニメというひとつのおもちゃを稼働させるゼンマイのようなものを連想して、後から考えるととても面白い描写だったなぁと思った。


御本尊を八百万の神にすり替えてしまっている教会組織や、金管楽器が軍隊でしか使われていない、などの興味深い設定が垣間見えたが、それよりもリオが教会にしてきた非礼や、「Amazing Grace」にまつわるエピソードがすごく見たい。そのうち描いてくれるのだろうか?彼女が音楽をやることになったきっかけ(カナタとは逆だと言っていた)、そして彼女が教会を嫌う理由のどちらにも、回想シーンに出てきた母親らしき女性に関する思い出が深く関わっていそうだ。




・火がともった戦車


音楽を聞くためという、戦車本来の目的からするとひどくズレた使い方ではあるにせよ、それでも戦車を起動させたというのは、今後の展開を予感させる大きなポイントだ。


すなわち、今作が、戦争など起こらないまま少女たちの日常を描く、という展開をとる可能性が、これでぐっと少なくなったと思う。とくにあれだけ洗練された、SFチックな内装が描かれたということは、どこかで戦車を本格稼働させるつもりがあるのだろう。


個人的には、もっとレトロな内装を想像していた。あまりにも未来的すぎるというか、ガンダムのコックピットみたいな印象があって、ちょっと期待してたのとは違った。まぁこればかりは仕方ない。




公式サイトのあらすじ紹介によると、次回もまだまだ、平和でまったりとした展開がつづきそうだ。ノエル回か。楽しみにしたい。


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この記事へのコメント

2010年01月20日 02:14
はじめまして、FC2でアニメの感想など書いてるtakie7と申します。
おパゲーヌス様のアニメの多様性というものに配慮しての様々な方面からのアプローチ、感動しました!ソ・ラ・ノ・ヲ・トと言うアニメには、どこまでアニメノチカラを示してくれるのか期待しています。
そこで、リンクを張らせて頂きたいのですがもし不都合があればおっしゃってください。
おパゲーヌス
2010年01月20日 02:29
>takie7さん
はじめまして、コメントどうもありがとうございます。

お恥ずかしながらtakie7さんのブログは初めて拝見いたしましたが(「ソラヲト」第3話分と、「批評は必要か?」を読みました)、非常に情熱的かつ、独自の深い視座に立った記事に感銘を覚えました。リンクの件、喜んで承諾させていただきます。また、こちらからも貼らせていただきますね。

一見したところ、takie7さんは現状のアニメにあまり満足してらっしゃらないようで、そのあたり私と意見を異にするのですが、個々の作品についても、またアニメという表現そのものについても、今後お付き合いいただく中で有益な意見交換等を行っていけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いしますね。
技研
2010年01月20日 10:58
横から、お邪魔します。

せっかく絶賛されてるのに素直じゃないなぁ、おパゲさんは。

私だったら両手上げて大喜びして、ぜひ「新アニメとブログを考える掲示板」がありますからそちらでもいろんな方と意見交換できますよ!っておすすめするけど。

むやみな批評は必要ないけど、takie7さんの言いたいことも理解できるな。

もっと心揺さ振られるようなインパクトの強いアニメが今期あれば良かったのに。という気持ちはあるけどそれなりに楽しいのも事実。

なんてね、失礼しましたw
おパゲーヌス
2010年01月20日 15:43
>技研さん

えぇ、私はいわゆるクーデレなのです^^ 興味や好意はそうホイホイと表情に出しませぬ。

てか今期アニメ、それなりどころじゃなく面白いですよ。クェイサー的に言うところの”震わせる”アニメが揃ってますよ。自分は昨季より楽しんでます。まだまだ、アニメは伸びしろの多い媒体だと、痛感しているトコロです。
2010年01月21日 21:38
おパゲーヌスさん、こんばんは!
クーデレですかwwなるほどwww
おパゲーヌスさんの記事で特徴的なのは、言うところの『独自の視座』を獲得しようと努めていらっしゃることです。
ヴァンパイアバンド記事の第四の壁という視点も、大変興味深く読ませていただきました。
しかし、何より注目したいのは、記事から伝わってくる、アニメに対する愛です。
肯定形で書くのって、実は難しい。ことに、説得力ある肯定論を展開するには、相当な技量が要求されます。
批評でいちばんラクなのは、根拠なき批判ですからね。(単なる罵倒中傷ともいう)
詩と批評とが切り離せないように、良いアニメが生まれるためには、良い批評が必要です。
同じ志のブロガーさんたちもいらっしゃるようですし、ここは一番、アニメ批評の梁山泊を目指してみてはどうでしょう?
おパゲーヌス
2010年01月21日 23:39
>SIGERUさん
これはまた熱いコメントをどうもありがとうございます^^

>肯定形で書くのって、実は難しい
これはまったく同意です。というか、単純に観賞するだけではなく何か作品を考察しようとしたときに、どうしても欠点や不満点が先に目についてしまいますからね。どうやって作品の良いところを汲み取るか、これは「所詮すべては戯言なんだよ」のヨークさんから「もっと褒めろ」的なことを言われているので、意識してやっている部分です^^

>アニメ批評の梁山泊
すごい使命ですねw まぁ自分だけでなく、掲示板メンバーとともに語らったり切磋琢磨できるのが、色んな面ですごく良い刺激になっています。SIGERUさんもぜひ参加されてみてはいかがですか?w

作品考察においてはもちろんですが、作品に向かう姿勢、また記事を書く姿勢についても、常に考えて行きたいと思っています。今後ともなにとぞご教授ください。よろしくお願いします。
2010年03月01日 08:59
はじめまして。

言語に関する文章は参考になりました。たしかにギアスの場合は英語圏でしたね。それに比べてソラノヲトは日本語が宗教としてイデア文字として残ってるのも興味深いです。なんか、この世界が一番、日本人が憧れてるというか、まぁ、それは私個人ですけれども、ある意味、80年代の宮崎作品の世界に通じる憧れではないでしょうか?

昔の日本は神仏習合というか、それがこの時代では神道とキリスト教が合わさった宗教が築かれたのでしょうね。でも、巫女とシスターの合体が一番強い印象を受けました。とくにユミナちゃんに。
おパゲーヌス
2010年03月01日 11:43
>LaMoeさん
はじめまして、コメントどうもありがとうございます。

この世界観が日本人の憧れかどうかは、自分にはちょっと分かりません。けど、やはり自分も大好きな雰囲気を持っていて、それは当然ながら、ナウシカやラピュタといった宮崎作品のファンとしての意見だと、自覚しています。

今作に登場する教会は、ふたつの宗教が癒着した神仏習合とは違って、キリスト教的な信仰のカタチを、その神様だけ交換したような印象を受けますね。後のエピソードで語られる部分では、土着信仰に対する規制の仕方とか、死後の世界についての言及とか、中世のキリスト教を連想させます。イデア文字も、ラテン語のような位置づけかと。もちろんそこにどんな意図があるのかは不明ですが・・・。

巫女とシスターの合体は良いですねw ユミナは大のお気に入りキャラで、今後の活躍にも期待しています。

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