ダンス イン ザ ヴァンパイア バンド 第3話「ティーン・ウルフ」

いよいよシャフト新時代の幕開けか。打ち鳴らせ、その暁鐘を。



・異様に写実的な印象のアニメーション


今回改めて思ったこと。それは、今作の映像表現における、独特の写実主義的な指向性だ。


キャラクターデザインにも関係する話ではあるが、それ以上にアニメーションの問題として、今作における人物描写は妙に生々しくて、カットによっては気味が悪いくらいだ。動かし方が細かいというのもあるのだが、かなり意図的にアニメ的なデフォルメを抑えて、リアル指向の描写をしている。


とくに目につくのが口パクの細かさ。セリフに合わせて、他の作品に比べて随分と気を使って口を動かしている。モブの一人ひとりまで忙しく口を動かしている上に、妙にその口の動きがリアル指向で目につく。口パクをうまくデフォルメして表現している他のアニメにくらべて、むしろ不自然な感じさえする。


あるいは表情の変化の乏しさもそうだ。アニメ等では、人間の表情をより分かりやすく大袈裟に表現しようとする。普通そんなに変わらないだろうと思うほど豊かすぎる表情を作らないと、キャラの感情がダイレクトに伝わらないためだ。しかし今作の場合は、もちろんある程度はそれを踏襲しているが、しかしアニメで通常行われているほど分かりやすい表情表現は少なく、すべてのキャラが、感情が乏しそうに見える。


口と、顔と、そして体全体を使って感情を大袈裟に表現するというのは、芝居の基本だ。演技の経験のない人間に演劇をやらせると、驚くほど感情に乏しく寒々しい劇になる。同じことはアニメにも当然言えるわけで、その観点からすると、今作のキャラの芝居は少々物足りない。口の動きをリアルに表現しようとする一方で、表情の変化に乏しい芝居。いわば”口だけで演技をしている”ということで、アニメを演劇と思って見るとあまり効果的とは思えない表現手法だと思う。だが逆に、あまりアニメ的な大袈裟な芝居をやらないことで、絵ではなく実写のドラマに近い、写実的な印象のアニメーションに見える。




・写実的幻想主義とでも言うべきか


しかし写実的とは言っても、そこにはどこか、リアリティの喪失、非現実への誘(いざな)いが、強く感じられる。ちょうど第1話の劇中番組のように、現実に良く似せて作られたニセモノの不気味さ。本来まったく作り物であるはずなのに、妙に本物らしく思えるからこそ、逆に強い違和感や気味の悪さを覚える作品。まるで予期せずに蝋人形館にでも入り込んだような錯覚が、そこにはある。


簡単な事実として、アニメは虚構であり、画面を見ている我々の存在が現実である。これは変えようのない真理だ。だが、その虚構と現実の境界が、意図的に歪められ曖昧にされているのが、今作の作品世界であると言えるのではないか。


写実的であるがゆえの、現実からの乖離。いわば写実的幻想主義とでも呼べそうな、そんな作風に思える。




・脚本の優れた構成力


わりとエンターテイメントだった今回のエピソード。いちおうは、主人公とヒロインが同居して一緒の学校へ行くという、いかにもありがちな設定でコミカルに楽しませてくれる。そこでドタバタ騒動が巻き起こるというのも定番だが、その騒動の中心に肝心のヒロインがいない、というのが今回のミソ。


学校ではアキラが生徒会の一味に追い詰められていき、一方の会議室ではミナ姫が国家の中枢を追いこんでいくという、二重螺旋のストーリー構成が素晴らしかった。要所要所で姫殿下のセリフとアキラの逃避行をシンクロさせつつ盛り上げていき、緊張感のもっとも高まった時点を狙い澄ましての、メイレンによる飴玉レールガン。見事という他はない。絶妙に練り込まれた脚本構成に感心させられた。


ところで、そうした表層的な魅力が大きかった分、その裏に潜む影もさらに色濃く感じられたのが今回のエピソードだった。今作のストーリーが、”吸血鬼と狼男のラブロマンス”を基本構造としているらしいというのは、前回提示された通りだ。だが、ことはそう単純に行きそうにないという予感を、十二分に意識させられる。


主人公そっちのけで進行していた姫殿下の闘い。一人の男と結ばれたいという純真な想いが霞んで見えてしまうほど、彼女は大きなものを背負って動いている。ミナ・ツェペッシュとその一味が極めて用意周到に陰謀を推し進めていたということも明らかになってきたし、それを邪魔しようという勢力の大きさと数の多さもすでに垣間見えている部分だ。ここでは、正義とか悪とかいう言葉では簡単に割り切ることのできない、高度に政治的で打算的な闘いが繰り広げられているらしく、そのためにミナ姫の考えやアキラの行く末を、素直な気持ちで見守っていることができない。何か壮大な、そして恐ろしい計画が進んでいそうで、正直、先の展開を見るのが怖い。


一方でアキラのクラスメイトたち、具体的には三枝由紀や久世僚平が、どういうカタチでこのストーリーに絡んでくるのかという点も気になる。ただの一般人では無さそうな印象も受けるが・・・? このあたりは今後の展開を待つしかない。




映像演出だけでなくストーリー性に関しても、非常に奥深いものを見せてくれそうなこの作品。今後はますます、目が離せない。



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この記事へのコメント

takie7
2010年01月25日 03:09
写実的幻想主義ですか、滅茶苦茶面白いですね。第3話の口パクを見た時に違和感を感じた僕としては興味深く読ませていただきました。
描写深度のズレが現実的なものとアニメ的なものを虚構に収束させていく。
見ていたときの違和感がopagenusさんのエントリーで凄く整理がつきました。
ダンスインザヴァンパイアバンドには僕も期待しています。鬼ごっこしているところのクロスカッティングなんかも見ていて非常に楽しかったです。
おパゲーヌス
2010年01月25日 03:43
>takie7さん
さっそくの反応、どうもありがとうございます。納得いただけたようで、頑張って書いた甲斐がありました^^

今回の鬼ごっこシーンの脚本構成上の仕掛けは、個人的にすごく好きな手法ですね。セリフそのもので魅せるよりも、構成に工夫を凝らした脚本のほうが燃えます。今回の場合はセリフと構成の両面を上手く機能させていて、見事でしたね。

あぁあと、私のIDは「おパゲーヌス」で結構ですよ。twitterのほうは日本語ID不可ということで、仕方なくあのIDになっちゃってるだけなので。

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