ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第6話「彼方ノ休日・髪結イ」

あー、もう半分とか。早すぎるよねぇ。




・垣間見える、日常の危うさ


第1話からずっと、1121小隊の”日常”を描き続けてきた今作。その流れは今回も変わらないが、しかしそんな日常が、カナタや視聴者が思っても見なかったほど、非日常とすぐ隣り合わせであり、危うさを多分に孕んだものであったという事実が、判明するエピソードだった。


それでもそういった危険な部分はコメディのオブラートに包んであるのが、今作らしいとは言える。中央のマフィアを脅かすために、軍と商人と地元マフィアが手を組んで打った芝居には、ハラハラしながらも笑いが込み上げてくる。給料が支払われるのが常識的におかしいとか、バレたら国家反逆罪だとか、そんな不穏な単語が飛び交うAパートだったが、先輩の遺した伝統を守るためとはいえノリノリな演技を見せるフィリシア嬢以下4名の少女の姿には、あまり悲劇性は感じられない。


いまだ謎の多い先輩たちの行動だが、直接描かれていなくとも、今の1121小隊を見れば何となくその人柄や考えは読めてくる。現在の時告げ砦には、先輩たちが決して楽ではない環境にそのまま甘んじることなく、犯罪行為に手を染めてまで勝ちとろうとした”日常”が、受け継がれているのかもしれない。




・今回のカナタ


諸般の事情から一人だけ別行動になった今回のカナタ。ナオミさんのひらめきを誘導したり、ミシオを間一髪で助けたりと、主人公補正のばっちり効いた縦横無尽の働きを見せてくれる。彼女の場合はいい意味でも悪い意味でも天然なのが、面白いし魅力的だ。人一倍、表情が豊かにコロコロと変わるのも、見ていて飽きない。


ところで、今回のエピソードの肝であった、Bパートにおけるユミナとミシオの話に関しては、カナタの出る幕は最初から無かったようで、少し意外だった。物理的にはミシオを助けてはいたが、例の箱にしても見つかったのは偶然であって、またユミナやミシオに何か直接的なアドバイスなりをしたわけでもない。そもそもミシオとユミナはとっくに家族であったので、箱が見つかった時点で、もうカナタには何の役目も無いのは道理である。


恐らくこのエピソードは、ミシオという存在を通して、カナタが人間を一歩深く理解する話だったのではないか。「どうやってミシオの心が救われたか」という部分は、ドラマとしてのクライマックスではあるが、しかし本当に肝心なのはその後、司祭のおじいさんがカナタに語りかけるシーンだ。孤児であるミシオが、亡くなった家族に対してどんな想いを抱き、またユミナを新しい家族としてどういう想いで接してきたか。それを、カナタが”見る”ことが重要だったのだろう。


思えば、前回までで主に砦の仲間たちとカナタの交流を描き、またその中で世界観を丁寧に丁寧に描写してきた。それは、ただ視聴者に作品舞台を説明するというだけでなく、カナタがこの世界で何を想うか、またそこで暮らす人々をどう想うかを、描写してきたということでもあるのだろう。この部分は今後、作品テーマの根幹に関わってきそうだ。




・特殊な脚本構成


今回は、Aパートの続きとしてBパートを見せるのではなく、両パートの展開を並列つなぎにしてBパートをAパートにオーバーラップさせるという、珍しい構成を見せてくれた。


まったく同じ時間を、視点を変えて2度なぞるというのは、例えば「true tears」などでも使われていたりしている。これは視聴者を一瞬戸惑わせ、作品のもつ流れやテンポを停滞させてしまうのだが、そうすることで注意を促しより真剣にドラマに集中させるという効果もある。さすがにこれほど長い尺を重ねるとは思わなかったけれど。


2つ以上のストーリーラインが存在していて、それらが並行的かつ重層的に進行していくドラマを描くやり方としては、それぞれのストーリーを時間を追って小出しに見せていくのが通常だろう。視聴者は劇が一定の時間で進んでいるものと錯覚しているので、その意識に逆らわないようにするのは当然である。しかしこれも巧くやらないと、ぶつ切り感が強く出てしまったり、非常に分かりにくいドラマになってしまう。


自分の好きな脚本家の一人である浦畑達彦氏は、時々こうした構成のドラマで職人芸的な手腕を発揮してくれる。まったく異なる起点をもったバラバラのストーリーが、20分強の後には重層的に重なりあい補い合って一幅の絵画を形成していく様は、見事と言うほかはない。「ストロベリー・パニック!」第8話とか、最近では「咲-saki-」の第24話などでそうした芸当を見せてくれているので、良かったらぜひ脚本構成に注目して見直してみて欲しい。




今作の脚本を担当している吉野弘幸氏もまた、つい先日「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」で、そうした複合ストーリーの構成を用いて見事なドラマを作り上げていて、そのセンスの良さに舌を巻いた。そんな氏のことだから、今回のエピソードも時間軸通りに進めて、巧みな構成を披露することもできたであろうと思う。


ところが今回、また違った手法を用いてきたというのは、もちろんAパートとBパートで明確に”描きたいこと”を区別したかったというのが理由だろうとは思うが、それに加えて、技巧的な意味での面白さを追求したかったとか、そんな遊び心もあったのかもしれない。


Aパートで描いた時間をもういちどBパートで辿るというのは、前述の通り、ともすれば視聴者を戸惑わせテンポを悪くする可能性もある。実際そう感じられる部分が散見されていて、Aパートで見せるべき描写が無意味に後回しになっていたりして、伏線というにはちょっとおかしな構成になっていた場面もあった。


けれどそれを差し引いても、「あのシーンの裏ではこんなことになっていたのか」と気付きながらストーリーを追っていけるというのは、たまにやるのなら大いに面白くて結構だ。Bパートのストーリー自体が言ってしまえば地味で、しかしAパートのコミカルな空気感を後ろに持ってくるのもなんだか合わないということで、こうした遊び心を見せるというのは姿勢として高く評価したい。もちろんここは脚本だけでなく、映像演出においても同様の創意工夫が求められるが、それに十分応えて見せてくれた映像の存在も大きい。




これといって派手な事件が起こるわけでもないが、しかし天真爛漫な少女たちの様子と緻密に作り上げられた世界観、そして何よりスタッフの熱意と創意工夫がよく伝わってくる点に、今作の大きな魅力があると思う。次週以降も楽しみにしたい。



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