荒川アンダー ザ ブリッジ 第7話「7 BRIDGE」

どうしよう、今回の幕引きは、本気でゾクっとした




・今回のお話


鯨が空のさらなる上を知ったら、そこを目指さずにはいられない・・・。今回のアバンの”語り”は、珍しくニノが担当したが、本編とどんな関わりがあるかは分からないものの、「せわしなく心臓が動いている」などといってうつむいて見せた彼女の表情に、なにかシリアスなものを感じてどきっとさせられる。


そんな幕開けを見せた「荒川アンダー ザ ブリッジ」第7話は、Aパートではリクの開いた学校の様子を、Bパートでは萌え成分たっぷりなP子を描く。


”起立と礼”を教えるのに、いきなり「それが常識だから」と説明し始めるリクの浅はかさには失笑を禁じえないが、常識論をなんとか叩きこもうとする彼の空回りっぷりが面白いw また方針転換した後のリクの、頭の回転の速さと適応力は見事で、生徒の予想外の言動に振り回される感は付きまとうものの、想像以上に良く先生をこなしている。


生徒の学習意欲に合わせて、かつ青空教室というロケーションを活用して自然科学から手を付けた彼の教育方針は大いに納得がいく。ステラが登場して何もかもぶち壊しになりかけたが、すぐにステラの心情を読み取ってさりげなくクラスに溶け込ませようとする「短冊作戦」には、こいつ何て頭良いんだと、感心させられた。初日はまぁこんな感じだったが、根気よく続ければ、きっと教育史に名を刻む教師になれるかもしれないwww (ヘレン・ケラーの家庭教師やエジソンの母等、教育機関から落ちこぼれた生徒をどう育てるかという努力で美談を残した人々を、私は心から尊敬する。)




・今回のテーマは常識


転じてBパートは、リクがP子の畑を手伝いに行ったエピソードだったが、まず間違いなくP子は、この作品最大の萌えキャラでしょうな。小見川千明の演技が大変かぁいい。しかしそんな萌えは個人的に勝手に楽しんでおけば良いのであって、問題はP子の恋から導き出された、リクの大いなる疑問だ。「常識ってなんだ?」という呟きと共にフラッシュバックされたいくつかの映像は、これまでは一応ギャグのオブラートで包んでいた今作の持つテーマ性を、恐らく初めて、露骨に提示してきたシーンだった。ちょうど私が現在レビューに取り組んでいる「地球少女アルジュナ」をどこか連想させる演出で、本気で背筋がゾクっとさせられた。


Aパートで常識論を揶揄するエピソードを見せておき、Bパートではそれとまったく関係ないような話に視聴者の視線をそらしておいてから、最後の最後でかつてない鋭さと共に根幹テーマを突き付けるこのやり方に、心の底からシビれた。まさか! という方向から鋭角に主戦力を転進させて相手(視聴者)の心臓部を貫こうとする今回の作劇のダイナミックさは、アレクサンドロス大王がガウガメラでとった戦術を、そのままドラマという戦場で再現して見せたかのようだった!




さて、常識とは何だろう。前回の記事では労働という側面から、常識と非常識の織りなす示唆に富んだユーモアの意図を探ってみたばかりだが、今回はさらに大きな視点から、この常識というものを考えさせるエピソードだったと思う。それはむろん、P子が村長の生き方に託して語った「本当の生き方」に関するセリフを直接的な契機として考えるべき問題だが、さらに言えば、第1話からずっと、我々の前に突き付けられ続けてきたテーマでもある。


次回以降、このテーマをどうやって掘り下げてくれるかは分からないものの、しかし今作が、例えば古代ギリシアの哲学者・ディオゲネス(と、その逸話)に通じる思想を掲げているように、見える。私は哲学専攻ではないのであまり断言的に語ると無知を晒すことになりそうだが、ありていに言えばそれは、都市(現代で言えば文明)の生活に縛られた人間たちに対する痛烈な批判であり、いわゆる常識人と自称する人々が、どれほど人間本来の生きざまを歪めているかという事実を、訴えるものである。


こうした考え方は現代ではなお一層、注目に値する大きな意味を持っている。すなわち現代文明は、さも当然のこととして、まったく非常識な行為がまかり通っているからだ。我々常識人が暮らしているこの文明社会は、衣食住さえ足りぬ何億という子どもたちの存在を知りながらも、戦争と娯楽に膨大な資源を注ぎ込む。このままではあと何十年と経たずに地球が滅ぶと分かっていながらも、資源を食いつぶし有害物質をまき散らす。たった一度勃発すれば瞬時に地上を死で埋め尽くせる核戦争の脅威の上にパワーバランスの均衡を保ち、多くの人々が世界平和の実現を絵空事だと割り切っている。なんと、なんと歪(いびつ)な常識世界なのだろう!


もし、仮に、この世界の全ての人々が、荒川の橋の下の住人のように、のん気で勝手気ままな、しかし平和で正直な生活を始めたとしたら、どうだろう。この地上からありとある国家や、法や、思想信条の一切が雲散霧消する。まるでジョン・レノンの唄のようだ。生活はちょっと不便になり健康を損ねるものも多かろうが、50年前後の自由な人生を謳歌することが約束されよう。そしてそうした中で生きる人生こそが、真に常識的な生き方でないと、誰が言えるのであろうか?




・・・もちろん、ただのギャグアニメから私は飛躍しすぎであるw けれどそれだけ大袈裟に考えて良いだけの下地を、この作品は持っている。また、現代文明とその中での我々の生き方を根底から見直すことは、現代に生きる人間の急務でもあると、これは真面目に思う。というか、はっきり言って手遅れじゃないかとさえ思うのだ。だからせめて今からでも、せめて自分自身の生き方だけでも、”本物”を見つける努力をしたいし、して欲しい。そう私は言いたい。


今作を通してそのきっかけのひとつでも与えたいという想いが、作者にもあるのではないかと、推測している。その正否はどうあれ、よくよく注目し思索すべき作品であることを、何度でも訴えておきたい。




・次回予告


カッパよ・・・・・・。


子どもを追いかけるな!! 迷惑がってんだろ!!w


いままでで一番笑った次回予告かもしれませんw


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それでは、今回は以上です。



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この記事へのコメント

kaji
2011年01月14日 21:03
突然コメント失礼します。30代後半のそれほどアニメは見ない男です。
たまたま見ることになった『化物語』が非常に面白かったので、同じ監督なのでもしかするとと思って『荒川アンダーザブリッジ』を見てみました。これが『化物語』以上に素晴らしく、ネットで共感できる感想やレビューを探していたのですが、どうも感動のポイントが私とは微妙に違っており、この作品のすごさが十分世の中に伝わってないのではないかと残念に思ってました。たまたまこちらのHPに流れ着いて記事を拝見し、『荒川』のどこに自分が感動したのか、自分自身言葉で把握できていなかったことを再認識するような感じで夢中で読ませていただきました。
あー、共感できる記事を読むのは本編を楽しんだ以上に楽しいですね。
そうこの作品は単なる電波系ギャグじゃない、ギャグにまぎれて深く考えさせられる要素がある。7BRIDGEのP子の最後のセリフは確かに私もゾクッとさせられました。
冒頭のアバンというのですか、あのイントロはバックミュージックも良く、詩的でいいですね。あのイントロを経て、ポップなオープニングがはじまり本編につながる。エンディングは曲もどこかせつなくていいですが、ニノのこちらを向いた後、また目線を戻して遠くを見やるあの表情が素晴らしい。この作品は『電波』と一言で片付けるにはあまりに奥が深い、素晴らしい作品だと思います。
おパゲーヌス
2011年01月15日 04:19
>kajiさん
どうもありがとうございます。『荒川UB』は、とくに1期はこのシーズンでもっともチカラを込めて書いていた感想なので、こうして評価して頂き、熱のこもったコメントまで頂けるというのは、嬉しい限りです。

本当に、ただのギャグアニメで片づけられるのはもったいない作品ですよね。ギャグアニメであることを否定するつもりは毛頭ないですし、ギャグが最大の売りであるのは事実なのですが、しかしそこで思考停止してしまってはせっかくの作品の魅力が半減してしまうと思います。

恐らく今作のメッセージ性は原作漫画の持ち味なのかなと思いますが(自分は読んでないので分かりませんけれども)、しかしアニメスタッフがうまく原作の魅力をアニメに昇華してくれていますね。映像は『化物語』に軍配を上げざるを得ないですが、作品の内容やテーマ性は、断然、『荒川』のほうが好きです。

自分の記事が、この作品の魅力の再確認に繋がったというのは、とても光栄なことです。夢中で書いていましたが、共感できる人が一人でもいてくれるというのは、大変嬉しいですね。どうもありがとうございました。
kaji
2011年01月16日 02:17
コメントにコメントありがとうございます。

今はまだ10BRIDGEまでしか見ていないので
残りの3話を見るのが楽しみです。
見た後でまた妄想詩人さんのレビューを拝見したいと
思います。
一粒で二度おいしい、じゃないですけど、私にとって小説のあとがきを読むような面白さがありますね。
あとがきは本編見終えた後、ゆっくり味あわせてもらおうと思います。

ちなみに『化物語』の方は全15話視聴済みでしたので、妄想詩人さんのレビューを全て読ませていただきました。
いやー、面白かった。。。そうそう、そうなんだよなあと思うところ満載でした。
分析した内容を的確に言葉で表現してるところが素晴らしいですね。

私はアニメ至上主義者じゃないので『化物語』はアニメを見た後、原作を読んだ口なのですが、原作を読んで改めて、アニメが原作を見事に昇華していると感じました。

原作という設計図からどんな立体的な建造物を作り上げるか、原作ありきの作品は、そこに作り手の力量が試されるかと思います。
まるで設計図にない建物をつくりあげてしまって原作ファンの怒りを買う映像作品が多いですが、『化物語』の原作を読んで、作り手は原作をとても尊重していたんだなと感じました。
原作という制約は遵守した上で、アニメーションならではの表現を盛り込む。いやもっというと制約を逸脱するぎりぎりのラインまでアグレッシブに迫って作り上げたのかもしれません。

結果は原作者も嫉妬するレベルの出来じゃないかと思います。
『荒川』の方は原作未読ですが、こちらも原作を逸脱することなく原作以上の作品に仕上げているように感じます。
作り手の魂を感じますね。こんな作品に関われたらスタッフも声優さんも幸せでしょうねえ。。。
おパゲーヌス
2011年01月16日 03:28
>kajiさん
拙い記事でお恥ずかしい限りですが、楽しんで頂けて大変光栄です。作品を共に楽しむことが出来るのは100%、作品のチカラですが、そこにさらにブロガーなりの視点による楽しみ方を付与することができるなら、これほど嬉しいことはありません。

原作とアニメの関係についてですが、自分は原作を壊してでも、アニメは意欲的に作られるべきだと思っています。その意味で『化物語』は、ビジュアル面については本当によくやってくれていますね。あとは物語のほうで、シャフトという会社はどうしても自分達で物語を作ろうとしてくれないので、そこが映像屋でありエンターテイナーであるところのシャフトの限界だと思っています。なので、完全オリジナルで挑んでいる今期の『まどか★マギカ』には相当期待しています。

『荒川』については、たぶんなのですが、原作の良さを引き出すためにアニメはけっこう手堅く作ってる印象はありますね。あくまで「シャフトにしては」ですが。自分がこの作品に感動したのも、映像演出よりは脚本・ストーリー面に関してで、その点は原作の持ち味をうまく料理してくれているとは思いますが、シャフトファンとしては実はちょっと物足りなかったりw それくらい、シャフトには期待しています。魂を感じさせる作品を、もっと追求して行って欲しいですね。

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