劇場版「文学少女」 感想レビュー(ネタバレほぼ無し)

劇場版「文学少女」を観に行ってきたので、早速、報告&感想を書かせていただこうと思います。




・ガラガラ、良くない!w


劇場に足を運んだのは、公開初日の5月1日。アニメブロガーのオフ会が夕方からあったのですが、ヨークさんがオフ会前に観に行くと言うので、同伴させていただきました。


とはいえGWまっただ中の公開初日。渋谷にある劇場で、毎月1日は1000円デーという混雑必至のセッティングだったわけで、実際行ってみて、あまりのスカスカっぷりに愕然としました。宣伝が上手く行ってないのか、ブロガー仲間の注目度もたいして高くないし、企画としてこれは大丈夫なのか?とw


まぁ、今期はなんかやたらと実験的な企画(ノイタミナとか、迷い猫とか、劇場アニメの量産とか)が目立つ中で、良質のストーリー性と原作人気のある「文学少女」がこうしていきなり劇場版でのアニメ化という企画として製作されたのも、ここにきて作り手側が”新たなアニメのあり方”を模索している最中なのだろうなぁと、考えざるを得なかった。たとえ劇場がスカスカ、ガラガラでも、黒を出すだけの算段があるのかもしれないとか。まぁ、ビジネスの話は自分には不得手なのでよく分かりませんが。


しかし、かなり丁寧に、しかもボリュームたっぷりに制作されていたこの劇場アニメ、レンタル待ちでも悪くはないと思うが、せっかくなのでぜひ劇場へ足を運んで観て欲しいと思った。出来のうんぬんは置いておくとしたって、やはりスクリーンでアニメを観るという贅沢はなかなかできるものではない。




・丁寧に映像化された良作


さて映画の中身についての話だが、ストーリーのことはよほど慎重に書かないとネタバレになるとヨークさんに脅されたので、あまり滅多なことは書きませんw 


しかしひとつだけ言えるのは、非常に丁寧に制作されたアニメーションだと、感じたこと。


今作の作風自体が、決して派手なアクションや演出で魅せる類のものではないだけに、かなり手堅い作品作りをしている印象が強かった。けれど、だからこそ決して手を抜かず、また単なる原作宣伝アニメにとどまることなく、たっぷり2時間近くある尺を過不足なく活用して、極めて完成度の高い作品に仕上げてあったと言っていい。




またこの劇場版は、エピソードとしては原作を頭から映像化したものではなく、シリーズの中途部分をピックアップして作られたものだった。なので、自分のような原作未読者(コミックス版第1巻だけは読んだけど)にとっては、いきなりアニメの2期を見せられているような話になるわけで、そういう意味では戸惑う部分も多かった。きっと今見せられているエピソードの前に、相当量のストーリーの蓄積があるのだろうというのが、容易に推測できる展開。もちろんそれは、このエピソードがそのドラマ性から言って、もっとも劇場での見映えがするという理由で取り上げられたものなのだろう。


そんな展開ではあったけれど、しかしここでも、映画制作における丁寧さが良い方向に発揮されていて、原作未読者を置いてけぼりにしてしまわぬよう、よく練られた構成になっていたのは高く評価したい。恐らく原作ではもっと以前から張られていたであろう伏線を映画の前半できちんと提示しておきながら、中盤から後半にかけては(決して冗長にならない適度な分量で)設定の説明を挿入し、未読者でもちゃんとついて行きながら、しっかりとドラマを楽しめるように構成されていた。ここは今作の”手堅さ”を、大いに評価したい。


なんといっても、原作の持っているであろう魅力や空気感を、巧く表現して提示できていたのは見事だったと思う。とても楽しめたし、これだけの良質な作品を劇場で観賞できたことを感謝したい。




・映像について


これも作風に関係のある話なので一概にどうとは言えないのであるが、正直なところ、作画についてはTVアニメクオリティだと思った。いや、TVアニメといってもいろいろあるが、プロダクションI.G らしく非常に高クオリティのアニメーションなのだけど、TVシリーズで十分やれるレベルだ、という話。言い方を変えれば、さすがI.G、と言うこともできるが、劇場作品としては少しもったいない手堅さと、言うこともできる。日常ドラマなのであまり大それた手法が使えなかったのが、理由としては大きいだろう。


とはいえ、演出は非常に巧かった。ここはさすがに劇場作品らしい映像的な見どころを、コンテ・演出でしっかり提供してくれていたと思う。むしろ日常描写の多い作品でココを頑張らなかったらどうするんだ、という話になるだろう。ハルヒ劇場版も、作画そのものはTVシリーズを少しグレードアップした感じで、あくまで演出面で魅せていた作品だったしね。「文学少女」でも、非常に凝った見せ方をするカットが随所に散見され、またそれがドラマを巧みに盛りたてていた。


前半で、主人公が心の傷を想起する場面ではちょっとくどさがあった感が否めないが、言ってしまえばマイナス方向に感じたのはそこだけ。冒頭の電車が橋の上を通過するシーンは、視聴者の心をぐっと劇中に引き込みながら、それでいてこのエピソードの成り行きを暗示させる見事さ。クライマックスで遠子先輩が主人公たちに語りかけるシーンは、エフェクトの美しさ・明るさも相まって、人と人の繋がりの大切さをセリフと映像の相乗効果で真っすぐに観客の心に届けてくれた。ED直前、駅で走り去る電車を追いかけるシーンは、電車のスピード感だけでなく登場人物の焦燥感、切迫した感情までも伝わってくる描写で、ベタなシチュだけれど胸に迫るものがあった。キャラの演技もなかなか良くて、それほど大胆に動く場面は少なかったけれど、終始、演じることを忘れることなく、つねにドラマの一環としてきちんとキャラの表情・仕草を見せてくれていたのが、ストーリーに程良い重厚感とリアリズムを付与できていたと思う。




・「文学」を巧みに取り入れた珠玉の青春ドラマ


最後にストーリーについて。


じつは映画を観る前は、この作品がどうやって”文学”をエッセンスとして取り込んでいるか、疑問というか、少し疑ってかかっていた。ヘタをすれば、文学なんて名ばかりの陳腐な恋愛ドラマになりはしまいかと、そんな無駄な危惧を抱いていたのだw


しかし、そんなことは完全に杞憂に終わった。否、それどころではない。主人公を中心とした青春ドラマ・人間ドラマを描くのに、驚くほど真摯に”文学”という題材を取り入れていて、大変好感が持てた。映画としてこの部分を分かりやすくドラマティックに表現してくれたのは脚本家をはじめアニメスタッフの力量だろうが、そのベースたる小説を書いた原作者も、その見事な手腕を評価せずにはおけない。素晴らしかったと思う。




文学作品を語るのは、そう難しいことではない。最悪、著者と作品名をあげつらうだけで、あるキャラを立派に文学少女に仕立て上げることが可能なわけだ。また、小説は楽しむというよりはむしろ何かを得るために読む私にとっては、ことさら文学のエンターテイメント性を強調する遠子先輩の文学語りは、あまり同意しきれない部分がある。


とはいえそれは些細な問題である。作品としての根幹は、どう文学を持ちだすかではなく、どうやって登場人物の内面や生き様を描くか、どうやって人間を語るか、という部分にある。それはどんな作品においても共通の課題だ。今作も、「文学少女」と謳っている以上、文学好きの少女の目を通して人間を語らねばならない。




今作はまさにその点で、じつに見事に”文学”という題材を活用していると思った。エピソードを象徴する文学作品を設定し、作者なりの(あるいは劇中の人物たちなりの)視点からその作品を読み解いておいて、その作品解釈を今度は登場人物たちのドラマに還元する。ここにおいて視聴者は、ただ劇中の人物たちの言動からその想いを推察するだけでなく、文学作品を触媒として、さらに一歩深い視点から主人公たちの想いを汲み取ることになる。


劇中で描かれるドラマは倒錯とミステリーに包まれたなかなかに複雑なものなのだが、文学作品を例にとり読み解いて行く過程が、そのまま登場人物の内面を描き出す過程に密接にリンクしており、いくつもの伏線や段階をクリアして辿りついた先の回答が、大きなカタルシスと感動を呼び起こすことに成功していた。


恐らく文学作品の助けがなければ、これほど共感できなかったドラマだと思う。逆にいえば、文学作品を扱う必然性が生じるよう、よく練られた構成だったと言うことができると思う。扱っていたドラマそのものは陰鬱かつデリケートな要素を多分に孕んでいたが、ラノベやアニメで扱うには少々荷が重そうな構図を、文学を媒体にすることでじつに巧く消化し切っていたと、評価したい。




それと、原作との兼ね合いが分からないのだが、映画のラストシーンはじつに技巧的で面白いというか、うまいと思った。このエピソードだけでなく、「文学少女」という作品そのものの構造に隠されていた仕掛けに、思わずニヤリとさせられる。それと同時に、すこし大袈裟だが、劇中でも語られている「本当の幸い」のなんたるかを、直接的な言葉ではなく間接的にほのめかすやり方で、視聴者に感じ考えさせるシーンだと思った。


これもひとつの”人生賛歌”として、心にとどめておくべき良質のエンターテイメント作品であったと思う。まだご覧になっていない方は、損はしないと思うので、ぜひ時間を見つけて観てみることを、オススメしたい。



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それでは、以上です。


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この記事へのコメント

SORA
2011年02月04日 18:51
CLANNADみないんですか?

お勧めですw
おパゲーヌス
2011年02月04日 21:54
>SORAさん
コメントありがとうございます、でもなんでCLANNAD?w

京アニ版は、2期の途中まで見ました。最後まで見れなかったのは、当時(まだブログやって無かったころ)の自分の狭量さゆえです。申し訳ありません。

もしレビューの要望でしたら、お応えしかねます、すみません。ただでさえ現行アニメの各話感想で手いっぱいなもので。

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