地球少女アルジュナ DVD-BOX購入記念レビュー 第4話「転生輪廻」

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「海が見たい」

このなにげない一言が、ごく普通の女子高生、有吉樹奈を大いなる使命へとむかわせる。

事故で瀕死の重傷を負った彼女は垣間見る。現代文明の行き着く姿、穢れた地球の未来を。

そんな彼女の前に現れる謎の美少年クリス。

「もしも地球の未来を開くならば、いま一度、命をさずけよう」

謎の存在・ラージャと戦う運命を担わされる樹奈。運命の先に光はあるのか?


原作・シリーズ構成・監督:河森正治/シリーズ構成:大野木寛/キャラクターデザイン:岸田隆宏/デザインサポート:佐山善則/デジタルコーディネート:竹内康晃/3Dモーション監修:板野一郎/美術監督:太田大・野村正信/色彩設計:笠森美代子/美術設定:平澤晃弘/音楽:菅野よう子/音響監督:三間雅文/副監督:佐藤英一/アニメーション制作:サテライト




今回は第4話「転生輪廻」のレビューです!

前回・第3話「森の涙」のレビューはこちら


今回は、クリスとSEEDの陰謀で森の中に放り出された樹奈が、時夫と無事に再会したところから。メッセージ性を提示する作品である「アルジュナ」においては、この話数はアクションこそ少ないものの、ストーリー的には前半のクライマックスのひとつであり、「アルジュナ」らしさを存分に堪能できる回ですね。自分もこの第4話がもっとも好きなエピソードのひとつです。


第4話のメインスタッフは以下の通り。

脚本・絵コンテ/河森正治 演出/松本憲生・黒河影次 作画監督/松本憲生


それでは、参ります。


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・Aパート あらすじと見どころ


DVDでは、第3話と第4話の間に、エピローグとプロローグが挿入されます。DVDではTV放送と違って、ディスク(いま私が見ているBOXセットではなく、たぶん以前販売されたDVDシリーズのディスク)一枚を通してひとつの作品として完成されるように構成されていて、いわば音楽でいうところのコンセプトアルバムのようなイメージで作られています。なので第4話と第5話の間に「間奏」と称するピクチャードラマが挿入されていたり、TV放映時の次回予告が映像特典のようなカタチで別にまとめられていたりしているのですね。


そこで、第4話に入る前のプロローグでは、いままでの話数を振り返りながら、クリスの名言(迷言?)集として、「なぜ殺す」とか、「地球を守れなどと言っていない」という言葉が前面に押し出されています。どないやっちゅーねん、と樹奈が怒りだしたくなるのも無理はない発言ですが、しかしこのクリスのセリフを下敷きにして、第4話のドラマは構成されています。


そんな第4話ですが、時夫と再会した樹奈が、クリスに悪態をついたり彼氏に八つ当たりしながら、道に迷って変なところへ出てきてしまうところからスタートします。


クリスやSEEDにいいように扱われている樹奈を見て、なんでお前がやらなきゃいけないんだ、他の誰かにまかせればいいじゃないかと説得しようとする時夫。しかし樹奈は、平和な日常に戻りたいと思いながらも、臨死体験の中で見た光景、すなわち地球が瀕している危機の大きさを自分は知っているという事実が、執拗に樹奈を苦しめ、覚醒を促します。


そんな中、吊り橋の上で出会った不思議なじいさん。この人が、今回のエピソードのゲストキャラになります。
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最初は変なセクハラジジイだと罵っていた二人ですが、食事と屋根の誘惑には勝てず、このじいさんについて行くことに。
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さてこのおじいさん、一人暮らしの農家らしいのですが、随分とヘンテコな暮らしをしています。


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樹奈と時夫は、飯が欲しければ働けと言われて畑へ連れてこられるのですが、しかしこの畑が随分と変な畑でした。↑の画像を見て頂ければ、草がボーボーに生い茂った雑草だらけの空間が広がっているのが分かると思いますが、なんとコレが畑ですwww


「なんで草を刈らないの?」
「なんでいろんな野菜が雑然と植わってるの?」
「なんで虫をとらないの?」


と、当然の疑問が湧いてきますね。しかしただの無精ではなく、ちゃんと理由があってやってるのだから面白い。


極めて大雑把に説明すると、つまりこのじいさんは、野菜を野生の状態で育てるのが一番良い、という理屈で栽培しているのですね。詳しくは実際にアニメを見て頂きたいと思いますが、人間が手を加えず、地下と地上のあらゆる生命が相互に依存しあい命の交換をしていく中で、過不足無いバランスの取れた環境の中で育てるのが、野菜も米も一番良いのだと。

そしてこの、命のやりとりの中で育まれる自然のバランス、これが、今回のタイトルである「転生輪廻」に直結してきます。いわゆる仏教用語としての輪廻ではなく、食物連鎖の正しいサイクルのお話なんですよね、今回のエピソードは。そのことを、今回は樹奈は考えさせられ、教えられることになるのです。



しかしそれにしてもこのじいさんは、クリスの発言によく通じる意味深な言葉をたくさん遺していきます。ひとつセリフを吐くごとに、樹奈や我々視聴者をうーんと唸らせる発言ばかり。「目の前の現実が見えているのかね」「なぜ殺す」と、さかんに相手を考えさせる発言で魅せてくれています。


今回のエピソードは、いまだ半覚醒状態でしかない樹奈が、ひとりの先生を得て様々なことを考えながら、地球と共鳴するということの意味を、言葉ではなく体で感じとって行くエピソードと、言えるでしょう。




・食べる、ということ


その中でとくに今回クローズアップされるのが、食べる、という行為について。


前回樹奈は森の中で、他のあらゆる生き物たちはちゃんと自分の食べるものを分かっているのにどうして自分だけが食べ物を自分で見つけられないのか、それを訝しがっていました。今回はそれを受けて、食べるとはどういうことか、食物連鎖の輪の中で生きるということの意義を、考えさせられます。


今回樹奈は畑の中や食卓で、透明な人型の影(あるいはお化け?)が見えると言って怯えるのですが、実はそれはこれから樹奈たちの体に取り込まれ、消化されて樹奈たち自身になる、その命の源だったと気付きます。そして食べ物のひとつひとつに、未来の自分自身が宿っていることに気付くのです。


「的を射るのではなく、己と的をひとつにせよ」



食べ物が未来の自分を形作るのだから、毒物をつかって食べ物を育てたり、体に悪い食べ物を食べることは常識的に考えられない。しかしそのことを、現代人は忘れていると、この作品は訴えかけて来ます。現代では、ほんの少し多くの収穫を、ほんの少し大きな作物を、そして綺麗な品質の製品を得るために、肥料や農薬を撒いて不自然な環境で作物を育てます。しかしそうして出来たのは、薬漬けで、かつ競争もなくブクブクに肥え太らされた弱い野菜や穀物や家畜でしかない。そんな食べ物を食べる人間には、ではいったいどんな影響があるのでしょうか・・・。




食べるということは、命を頂くということ。食べられるというのは、命を与えるということ。食物の連鎖はどこか一点が崩れてもだめで、すべての繋がりがきちんと機能してこそ、与えた命がめぐりめぐって再び新たな命に転生し、地球のバランスが保たれる。この事実を体感的に理解した時、人がこの地球の上で何をなすべきで何をなさざるべきか、自然と理解できるのでしょう。「アルジュナ」は、実際に自然と人々を触れ合わせることはできなくても、画面を通して少しでもこの”大切なこと”を伝えようとしてくれています。言葉によって、また映像によって、我々が頭で理解するだけでなく体で感じ取ることもできるように、真摯にメッセージを投げかけてくれているのですね。

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・Bパート あらすじと見どころ


さてBパートでは、↑ですでに書いてしまったテーマが中心に据えて語られるのですが、樹奈がひとつ新たなことに気が付けたときの喜びと、自然の営みの美しさとをシンクロさせた映像演出がそれはもう見事で、大変感動的なシーンが展開されます。

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謎の老人の助けもあって、時の化身である以前にまず一人の人間として、大切なことを知った樹奈。またそんな彼女を見つめる時夫にも、老人は、苦労するだろうが決してしがみついて離れるな、全力で助けになってやれと、助言を与えます。



そんな時、
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樹奈たちの上空を、巨大なラージャが!!!


別の村へ向かったラージャに必死に追いすがった樹奈は、すぐさまガンディーバを取り出して、ラージャに狙いを定めます。
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しかし、すんでのところで時夫が止めに入る!
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「樹奈、アカン! あれはバケモノやない!」

「えっ・・・?」


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なんとラージャに見えたそれは、農薬を散布するヘリコプターでした。


作物と共に生き、作物を育てていた小さな虫や雑草や微生物たちは、この恐ろしい毒薬を前に跡形もなく全滅してしまいます。そして、いままでなら当然のことと思っていたこの行為ですが、今や樹奈たちの眼には、ひどく残酷で理不尽で非合理的な所業に映っていました。無数の命の断末魔を耳にした樹奈は強いショックを受けることになります。

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「・・・なんで? なんで殺すん? 虫や草は、ホンマは一緒にお米や野菜を育ててんのに」


「忘れたんだ。目先の効率とうわべの綺麗さに目がくらんで、虫も草も大地も、未来の自分であることを忘れたんだ。・・・時計の時間に追い回されるうちに、本当の今を忘れちまったんだ。・・・虫も、草も、大地も、そして人間もひとつになれる。本当の今を・・・





・EDと原画スタッフ


こうして、現代文明と人間の生き方・あり方に大きな疑問を突き付けたところで、今回のエピソードは幕引きとなります。現代人らしい観点から老人の生活を嘲笑っていた樹奈と時夫が、最後には完全に見方を変えて、本当に大切なことに気付かされていく作劇は実に見事と言うほかはありませんし、コンテ・演出の素晴らしさと相まって、本当に深く深く考えさせられるエピソードに仕上がっていました。


今回も、EDはまた別の曲に変更。
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今作のサウンドトラックの中でもテーマ曲的な位置づけが与えられているナンバーのメロディを、アレンジして唄モノに仕上げた曲になっています。これ、当時サントラCDを2枚とも買ったんですが、未収録なんだよぉぉ。本編からEDへの入り方といい、曲の素晴らしさといい、珠玉のEDに仕上がっています。


それから、ED曲タイトルの下に書いてある”取材協力”。ある意味で原理主義的な有機無農薬農法を紹介する今回のエピソードを作る上で、それなりにきちんと取材しアドバイスを受けていたのだということがうかがえます。


ただ、農業のことなんかさっぱり分からない自分には、今回取り上げられた農業観(←人間が土を耕す行為さえ悪と見做している)が、どれほど真っ当な合理性を持った意見なのかは分かりませんが、しかしそれでもやはり、アニメなりの嘘設定や誤解・曲解、はたまた誇張表現といったものが、当然あってしかるべきエピソードではあると思います。


しかし何度も言いますが、作品で語られていることを鵜呑みにするのでも揚げ足を取るのでもなく、提示されたメッセージを自分なりにどう消化するかが、最も重要なこと。真摯に向き合えば、「アルジュナ」という作品をとっかかりにした思索の門は我々の前に広く広く開け放たれているということを、決して忘れてはなりません。




また今回の作画スタッフはこちら。
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・「間奏(インターアクト)」と次回予告


さてDVDでは、第4話のあとに「間奏」と称して、第4話の補足をするミニドラマが挿入されます。

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こんな感じで絵(イメージボード?)と、本編で使われたアニメーションと、あとは実写のイメージビデオを織り交ぜながら、”耕さない畑”を題材に、現代の歪な農業のあり方、人間と虫や草や大地との正しい付き合い方についての談話が、繰り広げられます。第4話の一部として観賞しておきましょう。




それから次回予告。DVDではオマケ的な扱いで巻末にすべてまとめられてしまっており、だからこそ私も今までの記事では取りあげてこなかったのですが、、、


今回から、次回予告が壊れ始めますwww


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樹奈「時夫? アンタ背骨曲がってない?」

時夫「背骨は曲がってないけど、根性曲がってるカモ」

樹奈「体が歪むと、心も歪むんやて」


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「えぇぇ!?(ガーン)」


いままでは普通の次回予告だったのに・・・なぜwww




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それでは、今回は以上です。


第5話「小さきものの声」のレビューはこちら。



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EMOTION the Best 地球少女アルジュナ Director's Edition DVD-BOX
バンダイビジュアル
2010-04-23

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