いちばんうしろの大魔王! シリーズ感想

各話感想はやってなかったですが、最終回まで視聴したので、シリーズ通しての感想を書いておこうと思います。




・視聴後の率直な感想


第1話で、秀逸なコンテ・演出と超絶カッコいいOP映像(第1話ではED映像)に惚れ込んでから、毎週楽しみに見ていました。金曜日は他に感想書かねばならないものが多かったのと、前半は単なるキャラ萌え作品だろうと思ってたことで、各話感想はやっていなかったのだけど、中盤以降は「なんで自分はこれの感想書いてないんだ」と強く後悔しながら、全力で視聴していましたw


ドラマが終盤に差しかかってくると、原作未読者置いてけぼりに突っ走る恐ろしい編集過程を経た脚本に翻弄されてさっぱりストーリーは理解できなかったけど、でもニーチェ主義的なテーマ設定と、男子の脳髄をダイレクトに刺激するコテコテの作劇に存分に魅了された。映像から伝わってくる熱気は素晴らしいものがあって、駆け足で描いて行ったストーリーもなかなか魅力的なものがあったから、これはぜひ原作を読んで内容を補完しながら、改めて映像を見直したいと思った。


そして最終話。どこまでもカッコいい阿九斗とピーターハウゼンの言動、ド派手な爆発エフェクト、そして自同律なる女性とけーなの、ちょっとした粋なはからい。一連の展開を経て戻ってきた、シリーズ序盤のキラキラとした楽しげな雰囲気。どこまでも今作らしいはちゃめちゃさで、駆け抜けて見せた。


極めて実験的な要素を多分に孕んだ作品であり、「Angel Beats!」や「迷い猫オーバーラン!」と並ぶ、今期の冒険作のひとつと位置付けて良いだろう。それだけに作り手の意欲がよく感じられる作品だったし、また原作をぜひ読んでみたいと思わせるアニメ化企画であったと思う。


決して上手なアニメ化だったとは思えない。1クール作品ということで、中途半端なところで幕引きを迎えてしまうのも好きではないが、今作のような無理くりな終焉も、相当に苦しかったと思う。しかしそれを補って余りあるだけの熱意と勢いを、感じ取ることが出来た。頭がこんがらがってもノリで楽しませてくれる作品に仕上げていたというのが決定的に大きな効果を発揮していて、とにかくスカっとするような面白さを提供してくれた。





・脚本とストーリー展開のペース配分について


果たしてこのアニメ版「いちばんうしろの大魔王!」が、ドラマとしてどれだけ出来が良かったかと言えば、この点についてはどうしたって、低い評価を下さざるを得ない。


原作をどの程度まで尊重しどれだけの改変を行ったのかは分からないが、明らかに1クールの尺で収める分量ではなかったし、序盤と終盤のペース配分も完全に失敗していた。アニメのストーリーやセリフというのは、どうして原作通りにしたのか、はたまたどうして改変を行ったのかを、視聴者に納得させなければならないわけで、その点どこまで納得できるストーリー展開だったかと言えば、こと後半の展開に関しては、「飛ばしすぎ」と評すべきだったろう。


とくに後半の脚本を手掛けた赤星氏は、「禁書」アニメでの脚本の出来栄えを自分はさっぱり評価できなくて、あれは聞くところによれば相当原作に忠実に作ってあったということだが、その忠実さにこだわる必要があったかという疑問は今でも思う。もし今作後半のものすごい展開が、たとえシリーズ構成段階で話し合われて決めたものではあるにせよ、その描き方に視聴者を戸惑わせる部分があったのは、脚本家の力量の問題だったのだろうかと、邪推している。ここはしかし、「あれだけの分量をよくまとめて見せた!」と褒めるべき脚本だったのかもしれないけれど。




気になるのは、今後の原作持ちアニメ企画において、ペース配分を尊重して中途半端なところで物語を投げ出すのと、与えられた枠内で強引にでも結末を見せてしまうのと、どちらが主流になるのか、という点。たいていの作品は2期の可能性も踏まえて前者を選択することが多いが、近年では「タユタマ」なんかが、後者を選択していたと記憶している。


むろん、原作の良さを引き出すのには1クールじゃ絶対的に尺が足りないという場合がほとんどだと思うので、この問題は今後もずっとアニメに付きまとうものだと思う。自分はあくまでアニメファンであって、原作に手を出す機会がほとんど無いのだけれど、そうすると中途半端なところで幕引きとなってしまうドラマ展開にはいつも、もどかしい思いをしている。しかしでは、強引な結末が良いのかと言うと、それもいざやられると、苦しいなぁと思ってしまう。どないせぇっちゅうねん。


これはでも、どうしたって避けられない妥協点なのだから、1クールで企画を通すのが悪いと言うのは簡単だが、だからこそ今作がとったストーリー展開の強引さは、実験的な冒険心あふれる手法だったと評したい。面白いかどうかは別として、単純に冒険するというその心意気だけでも、私は大好きだ。このチャレンジ精神を、アニメは失って欲しくない。




・作画演出と音響演出


今作の映像の出来栄えは注目に値する。もうOP映像からグリグリと動いて非常にカッコいい見せ方のできている今作だが、本編も、とにかく見せ方にこだわった映像表現を提供できていた回が多くて、とくに監督みずからコンテを切った回はたいへん見応えがあった。中盤、実験的な演出に走った回もあったが、前述の通りああいう精神は非常に好きで、とにかく絵を動かして楽しませようという意図が随所から伝わってきた、大変な意欲作だったと思う。


また同じことは音響についても言えて、今作はプレスコが採用されているということで、とにかく声優の演技に大きな比重を置いたキャラの掛け合いが実現できていたのが、何より今作の面白さに直結していた。とくにそれは、キャラ重視の作劇だった前半において、大きな力を発揮していたように見える。


音響に関しては、BGMの使い方も良かったと思う。とくにもっとも盛り上がるところでOP曲をアレンジしたものを流すのは、極めて分かりやすい王道な演出だが、曲そのものがじつにカッコいいので、これが絶大な効果があった。ストーリー展開と同じく音楽も、脳髄にダイレクトに響く魅力的な楽曲を用意し、それを分かりやすい最良のタイミングで用いることが、作品の魅力を引き立てるのに大いに貢献していたと思う。わりとコテコテだったんだけど、それが良かった。




・キャラクター設定とその描写


前半のキャラ押し展開と後半の物語消化のつり合いが、もうひとつついていなかったのは、しょうがないとはいえ少しもったいなかった。ころねの「なーんちて」に惚れた自分としては、終盤のころねの出番が無かったのがすごく残念だった。


しかしこれは逆に言えば、原作を読んでみたいと思わせられたと言う点で、作り手の罠にハマってしまった感じがすごくする。これだけの魅力的なキャラクターを、ぜひもっとじっくり味わってみたい。そのために原作を手に取る必要があるのなら、これはぜひ読んでみたいと素直に思えた。


この手の作品ってもっとテンプレ的な美少女ばかりが登場する偏見があったのだけど、今作の場合は、単なる既視感ばりばりのキャラクターではなく、非常に個性的な人物が揃っていた感じがすごくあって、とても評価している。なかでもやはり、主人公の魅力が確立できていたのが素晴らしいなぁ。


一点だけ、アニメで見ている限り、曽我けーなの魅力がもうひとつ分からなかったのは、これは個人的な趣味や理解力の問題なのか、それとも描き方や設定の問題なのか。やたらと裸になるという下品なキャラ性だけではなく、もっと根本的なところで、好きになれないキャラクターだった。服部絢子が大変魅力的だっただけに、二大ヒロインが確立しきれていなかった感が否めなかったのは、残念だったかな。




・信仰と物語と人の一生


今作は、あくまで神が誰かの手によって作られたシステムであり、しかもそれが人間の世界や生命を脅かす意図があるという設定だった。これは、今作の主人公が魔王であるという設定上のオリジナリティを活かすために、ドラクエ等のRPG的世界観をたたき台にして作り上げられた世界観だったのであろう。そういう意味では、RPGに慣れ親しんだ人にとっては興味深い、面白い設定だったとは思う。


しかしそれなら、話の展開をもっとRPG風にしても良かったと思った。すでに物語の中盤から神に対する不信感が作中から垣間見えていたが、もしこの「既存の勇者主義的世界観に対するアンチテーゼ」を重視するなら、神の存在意義に疑問を投げかける前に、徹底して神を賛美する必要があったはずだ。しかし少なくともアニメにおいてはそうした描写はあまり強く打ち出されてはおらず、無宗教主義が当たり前のように蔓延している日本においては、ただ単純に神の存在意義を否定して見せるというだけでは、あまり作劇上のダイナミズムを感じない。これはアニメにおける描写不足(=尺不足)のせいであろうか?


とはいえ、人類の不幸がほぼ決定してしまっている世界において、そのシステムを破壊して「決定された安寧」よりも「決定されていない混沌」を選ぶというのは、たとえば漫画版「風の谷のナウシカ」にも通じるテーマ設定で、非常に面白い。惜しむらくは、前述の問題でシステムを覆すドラマにあまり感情移入しきれなかったという点と、同時にそこにおける主人公の葛藤がほとんど伝わってこなかったという点だ。ピーちゃんがセリフで説明してくれてはいたけどw




安易に信仰や宗教一般を否定したがるのは、日本人の悪い癖だ。私はだから、最初から否定ありきの信仰心の描き方は大嫌いなのだが、しかし決められたレールの上を生きるのではなく、自分自身の意思で生きる道を選べという今作のメッセージ性は、エンターテイメントとしての快感とともに描き出されてあった分、強く受け手に発信できていた。もし同じことが原作ではもっと丁寧な作劇とペース配分で描かれているのなら、これは相当に良質なドラマになるのではないかと思う。じつに面白いテーマ性だった。




----


そんなわけで、いろんな点で粗は目立ったが、そんなものが気にならなくなるくらい楽しませてくれた「いちばんうしろの大魔王!」。この作品に出会えたのは大きな幸福だったと、そう確信できる作品であった。今期もっとも楽しんで見れた作品のひとつだったと、断言したい。




それでは、これにて以上です。


にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加中です。拍手の代わりですので、読んで良かったとちょっとでも思ったら、クリックしてもらえると嬉しいです^^


この記事へのコメント

ホウメイ
2010年06月20日 02:14
>神を賛美する描写
原作だとむしろ神をただの機械システムと扱う描写のが初期からありましたね
逆にそういった人達ですら何と無く神様に従って行動してしまう程広く深く馴染んでしまっているって事なんでしょうが
おパゲーヌス
2010年06月20日 11:09
>ホウメイさん
コメントどうもありがとうございます。

なるほど、原作でもそんな感じですか。じゃああまり、神殺し云々は思想的なテーマとして考えるべきでは無く、単に作劇上の問題なのかもしれませんね。まぁこんどぜひ、原作を読んで改めて考えてみたいと思います。

この記事へのトラックバック