荒川アンダー ザ ブリッジ 第12話「12 BRIDGE」

パパも意外と可愛い面があるじゃないかw




・リクと星が蹴落とされるシーン


子どもっぽい喧嘩を見せてさんざん劇のテンポを加速させておいて、もう堪忍ならぬというタイミングで蹴落とされたリクと星。この瞬間の演出が、もう素晴らしすぎて涙でそうだった。


だって、ふつうあそこは、リクたちが落下する場面なのだから、当然カメラも下に落ちるわけでしょう。視聴者も当然それを期待していたはずだが、しかし実際にはステラの心底嬉しそうな、期待に満ちた表情をドアップに映し出してから、ぐあーっとカメラが上昇! 蹴落とされた瞬間の、物理現象ではなくステラたちの意識のポイントを追いかけて、画面の臨場感を何倍・何十倍にも高めて見せた。こちらの予測を完全に出し抜いた、あまりに鮮やか過ぎる手並み。なんでもないシーンなのに、なんてものを見せてくれるのか!


これだからホント、シャフト作品は油断ならない。実際に携わる人材が入れ替わったとしても、ただ新房監督作品というだけで、常に実験的で新しいものを求め、常識を打破し、視聴者の度肝を抜いてやろうと画策する姿勢が追求される。作り手にとっても受け手にとっても、非常に良い意味での切磋琢磨が生まれる所以であるし、だからこそ時折、目の前に立ちはだかる壁をぶち抜いてしまうようなシーンを見せることも増えてくる。むろんどうしたって商売である以上、常識的な作品作りの枠に留まらざるを得ないけれども、しかしその中でチャンスさえあればどんどん面白いことをやってやろうという意識が醸成されているのだろう。


改めて、シャフト作品のもつ可能性の大きさを痛感させられた気がした。好きだなぁ、シャフト。大沼さんや尾石さんの出番が減っても、今作のシリーズディレクターである宮本氏や、あるいは絶望シリーズでお馴染みの龍輪氏とか、個性的な人材がしっかり”シャフトらしさ”を維持している。とくに龍輪さんなんかは、従来のシャフト演出にはいまいちしっくりこないなぁと思っていたけれど、「ダンパ」もそうだが今作のED映像なんかを見ても、その力量は一定の評価に値するのは明白で、今後ますますの活躍を期待したくなってくる。シャフトがまだまだ伸びることができるのか、要注目だ。




・リクとニノの恋物語は順調?


今回はリクとニノの二人してアバンの”語り”を担当したわけだが、なんかすごくニヤニヤさせられる内容だった気がするwww


結局最後までわりとヘタレだったリク。今回の事件の結末には力不足なまま終わってしまったが、しかし父に電話をかけるというたったそれだけの、しかしとんでもない勇気を要するその行動に手を付けて見せたリクに、運命の女神がご褒美をくれたようだ。


ただのギャグアニメではないことは重々承知しているつもりだったが、社会派のテーマ性に加えてラブロマンスまでこんなに上手く描かれたら、もうたまったものではないと言うか。真っすぐな気持ちを真っすぐに伝えるということが、どれだけ勇気と覚悟が必要なことであって、しかしどれだけ人の人生を大きく変え得るチカラを秘めているかということを、真摯に(そしてロマンチックに)描きあげてくれた。決意ある行動は、奇跡を生むのだなぁ。




・今回のお話とテーマ


そんなわけで今回は、橋の上と下の攻防(およびそこから描き出される現代社会への風刺)はほとんど置いてけぼりになって、リクとニノの恋物語が中心テーマであった。父と子の対決を期待してたので、この展開にはちょっと不服w


だがもちろん、示唆に富んだ内容であったのはいつも通りで、とくに今回はリクパパの言動から、人生における大切なことを視聴者に考えさせようと言うテーマがあった。「パパも人の親である」としきりに言われていたことに、どういった意味が込められていたか。あっさりめではあったが、資本主義社会の権化として生きるリクの父が、ロケットの中を見て自省し、息子の生き方にいくばくかの期待をよせて見せたところに、これまで扱われてきた今作の問題提起にたいする回答が、含まれていたのだろう。


むしろ、あまりがっつりと父子の価値感の対立を描かずに、この程度のほのめかしで済ませたということは、あとは視聴者自身が考えるべき問題であるとして我々に投げかけられたメッセージであると、見て良いだろう。河川敷の生活を守るというリクの目標(およびそれに伴う主人公とヒロインのロマンス)が表層的なテーマであり、それをしっかりと描いて見せた段階で、現行エピソードは決着してもいいところだ。だからそれと同時に裏テーマと言うべき現代社会への問題提起も、次回への持ち越しとか投げっぱなしとかではなく、今回の描写で区切りをつけた(やりたいことを描き切った)と捉えるべきだろう。そうした認識から、改めてリク父の語った言葉に、耳を傾けて欲しい。




ところで今回の事件を決着せしめた謎の人物。まぁたぶん河童なんだろうけど、この展開はさすがにご都合主義すぎて笑ったw 


村長は勝ち組なのか。だとしたら結局、金のあるやつがすべてにおいて勝つのだと、そうやってひねた解釈をされかねないと思うw もちろん今回の主題はリク自身の成長を描くエピソードだから、問題解決をこういうやり方にしたのは別に悪いことではない。まだまだリクも親(実の父や高井、そして河童も?)に守られて生きる若者なのだなぁと再認識したし、そんな彼が卵の殻を破ろうと努力する姿が、見る者に清々しい勇気を与えてくれる。かてて加えて、もしものすごい金や権力の持ち主が、フザけた緑の着ぐるみを着て河川敷で暮らしているだなんて、これこそ結果主義に暴走する現代文明に対する、痛烈な皮肉だろう。



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恐らくドラマ的なクライマックスは今回で終わりで、次回は予告通り(?)ぶっ飛んだ回になるのかもしれない。それとも、もう少しリクとニノのニヤニヤシーンを楽しませてくれるだろうか。さすがに予想がつきづらいが、予想を上回ってくれるであろうことはまず間違いないと、期待しておきたい。



それでは、今回は以上です。



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この記事へのコメント

狐邑
2010年06月25日 00:31
とりあえず、ニノさんの髪の扇風機に顔を叩かれたい。犬のしっぽに叩かれるのが好きなん・・・・・・あ、ただの変態ですね^^
北斗の拳以来、ステラのキャラがぶっ壊れたのは気のせいでしょうか。。。 可愛さの微塵もないwww
なんか問題解決しちゃったけど、最終話はどうなるんでしょう? んー、楽しみだなぁ( ・ิω・ิ)
おパゲーヌス
2010年06月25日 03:07
>狐邑さん
あの扇風機は画期的でしたねww

ステラはでも、可愛いところではちゃんと可愛いですよ。↑で書いてる流れ星のシーンでも、絵も声優演技も最高に萌えました。

最終話は楽しみですね。ドラマは今回ので全部解決なのか、もうひと悶着あるのか・・・?
kaji
2011年01月17日 03:22
荒川の終盤3話を見終わりました。
ああ、恋の物語はいいですね。しばらく余韻にひたれそうです。。。
ちょっと感想を書きたくなったので、こちらにコメントさせていただきます。

ヒロインのニノは口数こそ少ないですが、名セリフが出る確率が高いので発言するシーンは気が抜けませんでした。そしてこのニノの声、もうこの声優さん以外ありえないという印象を受けました。化物語の戦場ヶ原の声も見事でしたが荒川のニノの声はそれ以上かもしれません。

この声優さんをニノにキャスティングした時点で、勝負が決まったと言ってもいいぐらい完璧な具象化と感じました。

さて12話の見所は妄想詩人さんも言及されているように
ラブロマンスでしたが、リクは一体いつからニノに恋しだしたのでしょうか。

最初はごっこで始めた恋人関係がいつの間にか二人とも本当になってましたね。

ふりかえって印象的なシーンはドラム缶風呂でニノがリクの頭を洗ってあげたシーンでしょうか。
私がしたいからするんだというニノに、口をとざしうつむくリク。冷え切って固まった心がときほぐされていくようなこのシーンが、二人の関係を象徴していたように
思います。

そういう意味では、相手を心底必要としていたのは恋の契約を持ちかけたニノではなく、承諾したリクの方だったのかもしれません。
この点が、比較しても意味はありませんが、化物語と違う点かなと思いました。

化物語の阿良ヶ木君は別に戦場ヶ原がいなくても大丈夫そうで、ある意味健全な心の持ち主のように思います。

まあともかく終盤まで糸の切れないいい作品でした。
またあらためて第1話から見てみたいと思います。
おパゲーヌス
2011年01月17日 19:31
>kajiさん
坂本真綾の起用は最高でしたね。誰でもできそうなキャラに見えて、彼女にしか出来ない演技を聞かせてくれたと思います。またリク役の神谷浩史も、シャフト作品としては鉄板の起用ではありましたが、しかしこの人でなければ駄目と言えるだけの演技だったと思います。

リクこそが恋を必要としていたというのは、まさにその通りだと思います。でもそれは普通の恋人では駄目で、非常識なニノさんだけでなく、荒川河川敷で暮らすというその状況自体が、リクにとって大きなプラスになっていた様子が描かれていましたね。ドラム缶風呂のエピソードは自分も最も好きなシーンのひとつです。でもkajiさんも仰ったように、リクは「いつの間にか」ニノさんに恋しているのですよね。ひとつのきっかけではなく、日々の何気ない交流の中に、たくさんのきっかけが散りばめられていたのでしょう。

一方でニノさんについては、本当にリクのことを好きなのか、とくに1期ではあまりはっきりとは描かれないのですよね。リクの顔覚えてないしw だからこそこの物語の主人公はリクなんだと言うこともできるでしょうけれど、たくさんの良い影響を受け取ったリクが、こんどはニノさんたちに何を返して行けるのかというのが、この後の物語の主題であるのかもしれません。

ということで、2期である『荒川アンダー ザ ブリッジ×2』も、ぜひご覧になってみてください^^ 
kaji
2011年01月18日 02:15
妄想詩人さん、こんばんは。
荒川アンダーザブリッジのパート2もちろん観ますよ~。
でもまだパート1を消化しきってないので、もうしばらく1を味わってから2に行こうかなと思います。
急いで食べたらもったいないですからね。^^)
こんな良作なかなかないと思いますし。。。
観終えたら2のレビュー拝見させていただこうと思います。
ニノについては確かに、リクのことが好きなのか、リクでなければダメなのか、まだ曖昧な感じですね。自分の止まってしまった感情を起動するトリガーとして誰かを必要としているようにも見えました。

余談ですが化物語の次に荒川と、立て続けに当たりを引いた感じです。これはやはり監督がうまいんでしょうね。はずれが出るまでこの監督のカードをひいてみようかなと思います。
おパゲーヌス
2011年01月19日 02:30
>kajiさん
いまから正直に告白しておきますが、2期のレビューはけっこうしんどかったですw 1期は突っ込んで思索しやすかったですが、2期は自分でいっそう努力しないといけない話数が多かったですね。わりとノリノリで書けている1期と、何書いたら良いか悩んでる2期の違いは、なので読む前に注意しておいて頂ければ幸いです^^

それと、新房監督×シャフト作品に興味を示していただけたようで、シャフトファンとしては嬉しい限りです。ここはぜひとも、シャフト最高傑作であるところの「ef - a tale of memories.」や、現在絶賛放映中の「魔法少女まどか☆マギカ」を見て頂きたいところですね。

というのもシャフトは、映像演出の面で独自の方法論を打ちたててはいるものの、物語に関しては、原作に大きく頼っている側面があると思います。ですので、「荒川」や「化物語」のように原作が良質の場合は、シャフトの演出力の高さが良く発揮されて素晴らしい化学反応を起こしますが、全作品にこのレベルのストーリー性を求められるとさすがに苦しいので、もしkajiさんが「荒川」のストーリー面に何よりも心を動かされたのなら、しっかりストーリーのある作品から見て行くのが良さそうかなと思いますね。

とはいえ、「やはり監督がうまい」という評価はたぶん正しいと思うので、ぜひともこのまま新房ファン、シャフトファンになって頂きたいと、心より願っております^^

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