荒川アンダー ザ ブリッジ 第13話(最終回)「13 BRIDGE」&シリーズ感想

今作らしい、とてもいい最終回でした。小林ゆうは、一体なんだったのかw




・ギャグ回で”らしく”締めた最終回


前回のエピソードがかなり綺麗にまとまっていたので(謎な人物の伏線は未回収だが^^)、今回はふたたび日常的なエピソードが展開。とくにAパートは、これまで顔見せ程度だった一部住人にスポットを当てた秀逸なギャグエピソードだった。


またBパートは、こちらもコメディメインの展開ではあったが、しかし改めてリクが河川敷の生活の暖かさに触れることで、子どもの頃の記憶とともに、自分が大切にしていた(したがっていた)感情を思い起こすエピソード。カタチとしては気持ち悪い着ぐるみにツッコミを入れて終わりはしたものの、しんみりと感動できる良いお話になっていて、今作の持つ魅力を存分に発揮してくれていた。


夕景の描写が非常に美しかった。「ef」シリーズ以来、シャフト作品は空の絵がいいよなぁ。もちろんそれは大沼心の「バカテス」にも受け継がれていて、新房×シャフトの系列に連なる演出家は空の絵を大事にする傾向があるのではないかと、想像をたくましくしてみた。同じ話を同じコンテで見せるにしても、この夕景の美しさがあるとないとでは、まったく印象が異なっていただろう。


そして、謎すぎる秘宝エピソードをちら見せした後のCパートでは、今シリーズすべてを総括するリクとニノの語りが挿入。これがあったおかげで、全てがカチっとハマったシリーズになったのではないか。


すべては”他人に勝つため”に、人間性を失うよう宿命づけられた男・リク。彼が非常識な住人達との交流を通して、常識とは何か、人間にとって本当に大切なことは何かを、思索し探究する物語として描かれてきた今作だが、同時に、もともと常識も人間的な感性も持っていなかった異星人のお姫様が、地球人との触れ合いを通して”人間”になっていく物語でもあった。心の中に大きな欠落を抱えた二人が、お互いにお互いを補完するピースとなっていく、双方向の成長物語だったわけだ。


Cパートがこうして作品を総括してくれたおかげで、これ以上ないくらい完璧な”最終回”になった。脚本家の手腕なのだろうか、じつに見事だと思ったし、13話の中で綺麗にドラマを完結して見せてくれたことに大きな拍手を送りたい。




・シリーズ感想 映像について


さて、それではシリーズ全体の感想に移りたい。


まずは映像についてだが、第1話の記事で指摘したことでもあるが、今作はシャフト作品であるという長所をそれほど活かしきれてはいないと思った。脚本が良いのと、それ以上に音響(声優の演技やBGMの用法)が素晴らしくて、それで7割くらい、作品の魅力を築き上げてしまっている印象だ。画面の構築やカット割り、ディテールの描き方や陰影の付け方は、たしかにシャフトらしさが顕在なのだが、それがアニメーションとしてどこまでの効果を発揮しているかというと、疑問。ギャグアニメに相性のいい演出法として、こなれた映像作りが出来ているとは思うものの、そこにどこまでも視聴者を裏切りながら突っ走っていこうとする姿勢は、あまり見当たらない。


シャフトは、たしかに技法的には独自のスタイルを確立し、それを売りにしている制作会社である。しかし私がシャフトに惚れたのはそんな表層的な部分ではない。演出スタイルなんてものは、いくら奇抜でも慣れてしまえば何の価値も無くなるわけで、無論それがストーリーを引き立てる使われ方をするならそれは素晴らしいが、表層的な物珍しさなどすぐに何の役にも立たなくなる。


シャフトという会社(および新房監督のシャフトでの作品づくり)は、まず何よりも、視聴者の度肝を抜くことを目指していると思う。奇抜な演出スタイルはひとつにはそうした姿勢から生み出されていったものであろう。創作作品というものは常に進化し続ける姿勢が問われるので、シャフトのこの姿勢は、日本のアニメに非常に良い刺激となると期待したのだ。それが実際どのくらい期待に応えられたかは未知数だが、常に新しい物、面白いもの、視聴者の予測を裏切るものを提供し続けようと言う姿勢こそが、シャフトの魅力の第一のものであると思う。


その意味で今作の映像表現は、すでに確立されたシャフト流の演出法をある程度そのままのかたちで転用したもののように見えた。今作なりの方程式を生みだすのではなく、すでにある方程式に「荒川UB」という値を代入したようなアニメーション。それは失敗は無いだろうけれど、シャフトの持つ冒険心の魅力はあまり感じられなかった。「まりほり」や「絶望」シリーズ2期3期も、そんな印象だ。


もちろん、これで成功だったとは思う。何より非常に面白かったし、作り手の判断は間違っていなかった。しかしこのスタッフが今後の作品作りに置いてどのような決断をするのかという点まで考えると、少し不安というか、寂しく思う。たとえ他の誰もやろうとしないオリジナリティがあったとしても、それがそのままで停滞しているなら、制作者の姿勢としては異を唱えたい。シャフトは、常に進化し続けてこそのシャフトである。次回作に期待したい。




・ドラマとテーマ性について


今作のドラマは素晴らしく良かった。最初はただのギャグアニメかと思ったのだけど(そしてギャグアニメとしても非常に良く出来ていたのだけど)、そのコメディに包みこまれるカタチで種々の奥深いテーマを見せてきたのが、もうたまらなく好きだった。


とくに今作の抱えるテーマとは、ひとつには現代文明に対する痛烈な皮肉であり、その中で生きる人間達への問題提起である。荒川河川敷のあまりに理不尽で非常識的な世界を描写することで、逆に、現代資本主義文明の抱えている理不尽や非常識を暴きだして見せた。そして、その狭間で翻弄されるリクの葛藤を通して、人間にとって本当に大切なものは何なのかと考えさせる。現代において非常に重要なテーマであり、それを最高のエンターテイメントである作風の中に巧みに織り交ぜてあった。我々視聴者は良くこのあたりのことを考えなければならない。


河川敷には、お金も法律も仕事も国境もない。もちろんルールや職業(我々の社会におけるそれと大きく異なる性質の仕事である点に注意)はあるけれど、しかし極めて本然的に、アナーキズムを実現してしまっている。どこまでものん気に振舞っているが、じつは相当な覚悟を持ってこの生活を送っている人も多い。むしろこののん気な振る舞いだけが、彼らに課せられた唯一の法律であると言っていいだろう。


まずこんな舞台設定を作り上げた原作者は相当すごいと思う。そして、それをここまで見事に映像化して見せたアニメスタッフの手腕も見事だったのではないか。多くのエピソードの冒頭に挿入される”語り”は、今作が単なるギャグアニメの枠に留まっていないことを鮮烈に訴えかけるものであったし、またそれに見合った作劇を展開することができていた。コメディでもあり、風刺でもあり、恋愛ドラマでもあり家族の物語でもある。こうした要素を極めて緊密かつ自然に融合させて見せた、非常に傑作的な作品に仕上がっていたと評価したい。




・最後にサプライズが。


そうしたわけで、今作はもうこの全13話で見事にまとめ上げられた、大変素晴らしい作品だったと思う。作品としての出来映えで言えば今期トップレベルだった。毎週毎週すごく楽しみだったし、終わってみれば大満足の作品だった。


そんなことを考えていたところで、なんと「2期制作決定」のCMが。噂では聞いていたけれど、まさか本当に来るとはね。もちろん大いに期待したい。


しかし、一抹の不安はあるw 第1期は実にすばらしい出来映えで、またストーリーとしても綺麗に完結していた「夏のあらし!」が、やはりこうしてすぐに第2期制作に移行し、しかしそこで提示されたドラマの大半が失笑モノの出来栄えであったことに、大変がっかりしたのは記憶に新しい(そして、そのときすごく株を下げたのが、今作の脚本を書いた赤尾でこ)。


今作も、ドラマとしてはこの13話でとてもきれいにまとまっていたから、第2期はもっとキャラ重視のギャグ路線に走るのではないかという心配が、あったりなかったりw 1期で描き切れなかったドラマをがっつり見せてくれるなら大歓迎だが、もしキャラ重視に路線変更するなら、今までも散々キャラクターの魅力を描いてこれていただけに、いったい何のための続編企画か分からなくなってしまいかねない。


今度はどうなるか。期待半分不安半分で待ちたいと思うw



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それでは、以上となります。どうもありがとうございました。


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