伝説の勇者の伝説 第3話「複写眼(アルファ・スティグマ)」

熱いものが込み上げてくるなぁ。戦争はなぜ罪悪か。そのことを真摯に問いかける作品は、意外と珍しい。




・とりあえず第3話感想


まず今回もなかなかに特急な展開だった気がすごくする第3話。めちゃめちゃ面白いだけに、もう少し余裕のある作劇だったら・・・なんてことは、どうしても考えてしまうなぁ。


まず作品の表層的な見どころに関して言えば、今回は作り手の努力は見られはしたものの、全体的に空回りだった印象は否めない。クラスメイトがバタバタとやられていく様子は、まるで人形のように千切れ飛ぶ肉体の描写によってかなりえげつなく描かれてはあったが、ライナがアルファ・スティグマを開眼させるトリガーとしては、もう一歩突っ込んだ描写でのインパクトが欲しかった。シチュエーションと話の展開はこれで良いとして、しかし主人公が絶望の淵にまで追い込まれる過程が、尺の短さとも相まってちょっと淡泊に過ぎた。たとえば虐殺シーンをもっとねっとりと描いてくれたら、また違ったと思う。みんな瞬殺だったからなぁ。魔法騎士の残虐性を、組織的な”狩り”の様子によって表現したりとか、して欲しかった。


あるいは開眼後もそうで、脳内(?)の葛藤を描き出すイメージ映像は真に迫る迫力があったが、そこから先、実際に周囲のことごとくを破壊していく様は、もっともっと怪物的な迫力が出せたはずだ。しかし画面の様子からは、敵を壊滅させたことに加えれば、せいぜい周囲10mほどを焼き払ったくらいにしか見えなかった。セリフと比べると、映像のスケールがもうひとつ小じんまりとしてしまった感じで、ひどくもったいない。


むろんこれは、ライナが牢屋に入るところまでを消化してしまわなければならないという、ストーリー構成上の要請によるものなので、一概に悪いと言いきることはできない。第1話で余分な回り道をしなければ・・・なんてことも、結局は最終話まで見てみないことには、言いきることはできない。今回の消化不良感は、今後の展開で挽回してくれることを期待しよう。


ライナとキファのキスシーン(およびその前後の一連の流れ)は、じつにじつに良かった。でもそれ以上に、ライナがシオンからの脱獄のススメを蹴ったシーンが、今回一番、ぐっと来たシーン。魅せるトコロではしっかり魅せる、今作のカッコよさが滲み出ていた。一見のん気なように見えて、じつは大変重くシリアスなテーマをぶつけてくるライナ・リュートというキャラクターは、近年のアニメにおける男性主人公の中では、突出して好きだ。




・戦争はなぜ起こるのか


まだ3話目だが、すでに今作の抱えるテーマの重要な部分は、色濃く提示されているようだ。ファンタジー世界における政治劇という枠組みの中で進行するストーリーを、主人公のライナが比較的冷静に、客観的に見つめており、その中で彼が問いかける疑問が、そのまま現実世界への問題提起であり我々視聴者への強いメッセージとして発信されている。


戦争を起こすのは人間ではないと、ライナは言う。これは人間に対する痛烈な皮肉だろう。彼のあげつらった「バケモノ」というのは、これはすべて、人間が自ら獲得した特性であり、道具であるからだ。


戦争が人間社会に本質的に備わっている要素だと考えるのは、これは大きな誤りである。戦争は、人類の歴史のなかでもごくごく最近になって誕生した観念だ。どんなに遡ってもせいぜいほんの一万年ほど前に誕生したものであり、それ以前の何十万・何百万年にわたる人類の生活には、戦争など存在しなかった。分かりやすいところでは、日本における戦争の起源は、縄文時代後期から弥生時代の初頭である。すなわち今から二千年とちょっと前になって、はじめて日本で戦争が行われるようになったのだ。


つまり、戦争とは人類にとって後天的に獲得した観念なのだ。それは、戦争は誰かが意図して始めたことであるから、やはり人間自身の意思によって、これを根絶することが可能である、ということ。戦争は根絶できる。ライナのいう「バケモノ」さえ退治できれば、人間は戦争の無い社会に生きられるのだ。


戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。(ユネスコ憲章前文より)



では、人の心の中に築くべき砦とは、いったいどのようなものか。それを人類は考えなければならず、また体現していかなければならない。ここで私自身の考えを披歴するのはアニメの感想から大きく逸脱した行為であるので差し控えるが(もうとっくに逸脱してるってツッコミは正しい)、ただこのテーマをよく考えながら、ライナの感じていること、シオンのやろうとしていることを、考えて欲しいと思う。


たぶん今作は、とくにライナの言動によって、人類がふたたび平和を手にするためにどのような理念を獲得しなければならないか、その思索の一端を指し示してくれると期待している。作品で語られたメッセージ性がどれほどの正当性や説得性を持っているかはまた別の問題だが、少なくとも視聴者にとって無視してはならないレベルの、重要な思索のきっかけと成り得るメッセージが発信されている。表面上のドラマを楽しみながら、同時に、戦争はなぜ起こるのか、どうして戦争は罪悪なのか、そうした思索にぜひとも取り組んで欲しいし、私もそうした姿勢で視聴していくつもりである。


願わくは今作が、私や他の多くの視聴者にとって、深い深い葛藤を促す作品となって欲しい。




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それでは、今回は以上です。



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