刀語 第8話「微刀・釵」
前回も良かったけど、今回はまた違った意味で素晴らしかった。1時間があっという間。
・1時間があっという間
今回のエピソードは、前回のずっしりとシリアスな作劇からは一転、本来のミッションクリア型のプロットに正当なやり方で臨んで見せた。七花ととがめのイチャラブな描写をふんだんに盛り込みつつ、カッコよく爽快なアクションシーンをクライマックスに据えて、あまり心情描写に入れ込みすぎることなく比較的ライトな作劇。しかしその中で七花ととがめの関係性の変化を主題として提示しながら、日和号の持つ切なさと、暗躍する否定姫の動きもフォロー。ダレることなく、さりとてお腹いっぱいに詰め込むわけでもない、1時間という尺をじつに綺麗にさばいてみせた巧さがあった。
今作は第1話のころから、どうにもドラマの濃淡がありすぎるきらいがあった。長いセリフが続くのは良いとしてもそれをアニメーションでカバーできていない場面が散見されて、いまいちテンポが悪いと言うか、飽きがくる展開が何度かあった印象がある。しかしその一方で前回などは延々と重たい雰囲気を1時間も続けていたりと、視聴者の気分の高低をもうひとつコントロールしきれないように感じていた(もちろん、まったく許容範囲内である)。
ところが今回はそのあたり非常に巧く立ち回ってくれたと思う。エピソードのもつ雰囲気そのものが、比較的ほのぼのとしていたというのもあるのだが、どうやって日和号を捕まえるかという分かりやすい構図の中で、それでも細かい部分でドラマを二転三転させて飽きさせない。軽快なテンポで各場面をつないでいって、要所要所で見どころを挟み、また何と言ってもセリフの多さを映像上の工夫で飾りたてていたのが良かった。アクションだけでなく会話劇においてこそ、今回はアニメーションの良さが発揮されていたと思う。とても面白くて、1時間があっという間に過ぎてしまった。
・人間であることの自覚
今回のエピソードは、とくに七花ととがめの関係性に関して言えば、錯綜とした前回の物語をもう一度分かりやすく消化しようというものだったと思う。
ただの刀であれ、ということが、感情を持たずに粛々と主の命令に従うことであるとするなら、その刀としての自覚は七花の中でどんどん薄れていった。それを指して七実は前回、七花の切れ味がなまった、というようなことを言った。しかし七花という剣は人間としての自覚を持つことで、純粋に剣であろうとしていた頃よりも一歩高い地点に到達できた。
まぁ、こうして大雑把に流れだけを把握しようとすると、なんとも少年漫画的な汗臭いドラマであるw けれどこれを非常に混濁とした心理状況の中で描き出したのが、第7話での七実との対決だった。ここでは、希望と絶望、愛と憎悪、正義と悪、生と死、といった種々の対立項が持ち出され、そのすべてがごちゃまぜとなった表裏一体の魂のあり方として七実というキャラが描かれた。その七実と、剣士として、また肉親として正面から立ち会うことで、七花はそれ以前から漠然と掴みかけていた自分自身の生き様を確立させたのだと言える。
今回はそれから時間を置いて頭を冷やした段階で、改めて理性的に、そのレベルアップを確信する物語であった。日和号と向き合い刃を交える最中に語られた七花の自覚は、ここに来てようやく、彼が自分のあるべき姿を宣言し、アニメとして言えばキャラを確立させたと見ることができる。これを受けて第9話以降は、七花の成長物語ではなく、完成されたキャラクターとなった七花(およびその相方であるとがめ)を描く物語になるのだろう。生きる目的と信念を見出した男が実際にどう立ち振舞うのか、彼と対峙することになる敵の存在も含めて、注目だ。
・音楽関係のこと
今回からOPが変更に。個人的にアリプロはあまり好きではないのだけど、今作にはなかなかよく似合っていると思った。また映像がじつにカッコよかったなぁ。ポップな印象の強い今作の印象とはまただいぶ異なる、濃密な絵と動きが、後半戦の盛り上がりを掻き立てる。
それから今回は本編でのBGMがよく耳に残って効果的だったと思う。岩崎琢の手掛ける曲は本当にかっこいい。とくにアクションシーンで流れたBGMが痺れた。長い長いアクションシーンが、今回はセリフの展開からおよそ3つのパートに分かれてあったが、音楽を変更することでその切り替えを分かりやすく印象付ける音響演出。とくに七花が自分の生き様を宣言するシーンで、CMでも使われているテーマ曲(?)が用いられたのは異様に興奮した。物語の良さと映像の出来の見事さを、音のチカラで何倍にも盛り上げてくれた。とても良かったと思う。
・東風吹かば……
それにしても、今回のエピソードは幕引きの見事さに尽きる。菅原道真の名句によって、魂を持たないはずの人形や刀の悲哀を詠いあげてみせたが、哀しさを感じるのは人形や刀ではなく、それを使う人間の側。そんなとがめの呟きが、切なくも美しい余韻を響かせる。
しかし、工房跡を発掘してるときに拾い上げたあの箱、すごく大事なものなんじゃないのかw 金色に見えたので延べ棒かとも思ったけれど、形からすると小刀の原型のようにも見える。何だったのだろう? そのうちまた言及されることになるかもしれないので、期待しておこう。
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それでは、今回は以上です。

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・1時間があっという間
今回のエピソードは、前回のずっしりとシリアスな作劇からは一転、本来のミッションクリア型のプロットに正当なやり方で臨んで見せた。七花ととがめのイチャラブな描写をふんだんに盛り込みつつ、カッコよく爽快なアクションシーンをクライマックスに据えて、あまり心情描写に入れ込みすぎることなく比較的ライトな作劇。しかしその中で七花ととがめの関係性の変化を主題として提示しながら、日和号の持つ切なさと、暗躍する否定姫の動きもフォロー。ダレることなく、さりとてお腹いっぱいに詰め込むわけでもない、1時間という尺をじつに綺麗にさばいてみせた巧さがあった。
今作は第1話のころから、どうにもドラマの濃淡がありすぎるきらいがあった。長いセリフが続くのは良いとしてもそれをアニメーションでカバーできていない場面が散見されて、いまいちテンポが悪いと言うか、飽きがくる展開が何度かあった印象がある。しかしその一方で前回などは延々と重たい雰囲気を1時間も続けていたりと、視聴者の気分の高低をもうひとつコントロールしきれないように感じていた(もちろん、まったく許容範囲内である)。
ところが今回はそのあたり非常に巧く立ち回ってくれたと思う。エピソードのもつ雰囲気そのものが、比較的ほのぼのとしていたというのもあるのだが、どうやって日和号を捕まえるかという分かりやすい構図の中で、それでも細かい部分でドラマを二転三転させて飽きさせない。軽快なテンポで各場面をつないでいって、要所要所で見どころを挟み、また何と言ってもセリフの多さを映像上の工夫で飾りたてていたのが良かった。アクションだけでなく会話劇においてこそ、今回はアニメーションの良さが発揮されていたと思う。とても面白くて、1時間があっという間に過ぎてしまった。
・人間であることの自覚
今回のエピソードは、とくに七花ととがめの関係性に関して言えば、錯綜とした前回の物語をもう一度分かりやすく消化しようというものだったと思う。
ただの刀であれ、ということが、感情を持たずに粛々と主の命令に従うことであるとするなら、その刀としての自覚は七花の中でどんどん薄れていった。それを指して七実は前回、七花の切れ味がなまった、というようなことを言った。しかし七花という剣は人間としての自覚を持つことで、純粋に剣であろうとしていた頃よりも一歩高い地点に到達できた。
まぁ、こうして大雑把に流れだけを把握しようとすると、なんとも少年漫画的な汗臭いドラマであるw けれどこれを非常に混濁とした心理状況の中で描き出したのが、第7話での七実との対決だった。ここでは、希望と絶望、愛と憎悪、正義と悪、生と死、といった種々の対立項が持ち出され、そのすべてがごちゃまぜとなった表裏一体の魂のあり方として七実というキャラが描かれた。その七実と、剣士として、また肉親として正面から立ち会うことで、七花はそれ以前から漠然と掴みかけていた自分自身の生き様を確立させたのだと言える。
今回はそれから時間を置いて頭を冷やした段階で、改めて理性的に、そのレベルアップを確信する物語であった。日和号と向き合い刃を交える最中に語られた七花の自覚は、ここに来てようやく、彼が自分のあるべき姿を宣言し、アニメとして言えばキャラを確立させたと見ることができる。これを受けて第9話以降は、七花の成長物語ではなく、完成されたキャラクターとなった七花(およびその相方であるとがめ)を描く物語になるのだろう。生きる目的と信念を見出した男が実際にどう立ち振舞うのか、彼と対峙することになる敵の存在も含めて、注目だ。
・音楽関係のこと
今回からOPが変更に。個人的にアリプロはあまり好きではないのだけど、今作にはなかなかよく似合っていると思った。また映像がじつにカッコよかったなぁ。ポップな印象の強い今作の印象とはまただいぶ異なる、濃密な絵と動きが、後半戦の盛り上がりを掻き立てる。
それから今回は本編でのBGMがよく耳に残って効果的だったと思う。岩崎琢の手掛ける曲は本当にかっこいい。とくにアクションシーンで流れたBGMが痺れた。長い長いアクションシーンが、今回はセリフの展開からおよそ3つのパートに分かれてあったが、音楽を変更することでその切り替えを分かりやすく印象付ける音響演出。とくに七花が自分の生き様を宣言するシーンで、CMでも使われているテーマ曲(?)が用いられたのは異様に興奮した。物語の良さと映像の出来の見事さを、音のチカラで何倍にも盛り上げてくれた。とても良かったと思う。
・東風吹かば……
それにしても、今回のエピソードは幕引きの見事さに尽きる。菅原道真の名句によって、魂を持たないはずの人形や刀の悲哀を詠いあげてみせたが、哀しさを感じるのは人形や刀ではなく、それを使う人間の側。そんなとがめの呟きが、切なくも美しい余韻を響かせる。
しかし、工房跡を発掘してるときに拾い上げたあの箱、すごく大事なものなんじゃないのかw 金色に見えたので延べ棒かとも思ったけれど、形からすると小刀の原型のようにも見える。何だったのだろう? そのうちまた言及されることになるかもしれないので、期待しておこう。
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それでは、今回は以上です。

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