アマガミSS 七咲逢編 第一章「サイアク」

ツンデレキャラだと思ってたら、全然そんなことは無かった。平凡な設定に堕さないアマガミは尊敬に値するなぁ。




・後輩は小悪魔系


いやー、勘違いしてました。いままでちょくちょく見せていた言動や、今回のサブタイトル「サイアク」から判断して、てっきり七咲はツンデレキャラだと思っていた。そもそもこれはタイトリングが悪いわ。何がどうサイアクなのかと。大っきらい→意外といい奴? みたいな心情変化を期待していたら、最初から主人公のことを翻弄しにかかってきて、好意とまではいかなくても、可笑しな奴で絡み甲斐がある、くらいには思ってくれているらしい。いい感じのムードが早くも漂ってきて、まずはヒロインの魅力をしっかりとアピールする良いスタートだったと思う。


昨今のラブコメにはまず間違いなく登場するツンデレヒロイン。それも、ツン→デレの心情変化を描くのではなく、最初からデレてるのにただ恥ずかしがってつんつんしているだけの、”いわゆる”という枕詞付きのツンデレヒロインというのが、巷には溢れかえっている。七咲がそんな安直なキャラでないことは重々承知していたつもりだが、それにしたって6人のうち一人くらいはツンデレ出すだろうと普通は考えるだろうに、そんな平凡すぎるヒロイン像など眼中にないと言わんばかりの姿勢には感服する。魅力的な女の子を描くのに妥協しないのが、今作のもっとも重要な魅力だ。




ところで、ニンフェットという言葉をご存知だろうか。いまではすっかり和製英語としてその原義を歪めたまま定着してしまった「ロリコン」あるいは「ロリータ」といった単語の、もともとの出典であるところの文学作品、ナボコフ『ロリータ』において語られている、ある種の特別な少女たちに対する呼称だ。


いま我々が「ロリ」と言うとき、それはともすれば愛くるしく健康的・もしくは内気な少女たちで、それも場合によればこの世に生を受けてから数年しか経っていないような幼児から、すっかり大人の体を獲得しつつある高校生までをも含み得る、広範で滅茶苦茶な意味を有する言葉として乱用されている。しかしナボコフの描き出したロリータ(=ドロレス・ヘイズの略称、そしてこのキャラクターに象徴される、ニンフェットと呼称される特別な少女たち)の特徴は、もっと限定的で絶望的なものである。年齢は9歳~14歳と規定され、「美貌などというものは全然その基準にはならない」し、「かすかに猫を思わせる頬骨の輪郭、うぶ毛のはえた四肢のたおやかさ、絶望と羞恥と感傷のためにこれ以上並べ立てることのできないその他もろもろの徴候」を持ち、「自分でもその魔力に気付かずにまぎれこんだ命取りの悪魔」「この世ならぬ優美さ、とらえどころなく不実で、心を千々に乱れさせる陰険な魅力といった特性」を持っているような、あまたの少女たちの中にもほんの一握りしか発生しないような稀有の存在として、ニンフェット、すなわち現在ロリータと呼ばれるキャラクター属性が設定されているのだ(むろんそれは、単に小説の中の設定だけの話ではないのだが)。


さて、なぜイキナリこんなことを書き始めたかというと、それは、七咲逢があと2歳若ければ、きっと彼女は、ニンフェットとして認定されておかしくない少女であったのではないかということ、そしてニンフェットに通じる魔性的な魅力を、いま彼女は十分に備えていると、思ったからだ。


むろん彼女はもう16歳だから、原義的な意味でのニンフェットではあり得ない。また、ニンフェットの持つ魅力はしばしば娼婦のそれに例えられ、世間的には下品とさえ考えられる妖艶さが無垢な少女の中に宿るからこそニンフェットはたくさんの芸術家を苦しめてきたわけで、逆にいえば大人の女性なら意図するとせざるとに関わらず比較的多くの人物が獲得し得る魅力ではあるのだが、しかしそれとて高校1年生という年代を考慮すれば十分注目に値する魔性っぷりを七咲が獲得しているというのは、彼女の大きな特徴として指摘されてしかるべきだろう。画面の中で見せた彼女の言動や表情からは、どことなくニンフェット的な香りの漂ってくるものであったし、それは私の嗜好を強く刺激するものであった。


それでも今回はまだドラマが始まったばかりで何とも言えないのではあるが、今後の展開を見て、改めて彼女の魅力の考察はやってみる価値があるかもしれない。




・「アマガミ」のヒロインに見る革新性


それにしても、七咲といい森島はるかといい(そして恐らくは絢辻さんもそうなのだろうが)、ダメな主人公を上から目線で振りまわすヒロインをこれだけプッシュするとは、卑屈な童貞根性と盲目な処女信仰に雁字搦めになっている現代の日本男児に発信する作品として、かなりの冒険だよなぁと思う。とくにヒロインの処女性とは、単に男を知らないというだけではなく、男との接し方さえ未熟で臆病になっているような女性を好む傾向を、促す要素だと思う。そうした嗜好が支配的な中にあって、主人公を振りまわし、高みから余裕ぶった眼差しを投げかけてくる七咲や森島先輩が高い人気を博しているというのは、面白い。


この独自のヒロイン像の構築は、今作において行われている大きな冒険であり、オリジナリティへの志向であろう。また実際にそれを巧く料理してみせる自信があってのことで、原作の作り手が高い創作意欲のもとに作品を生み出しているということの、ひとつの証左だと思う。そして作り手は見事、その勝負に勝ったわけだ。


プレイヤーに媚びるような安直なキャラ設定を排しながら、それでいて猛烈なキャラ押し作品を作るということ。この二つの要素は、戦略として一見矛盾しているようだが、両輪が高い次元で噛み合わされた時、極めて合目的的な手法として確立されることになる。アニメにせよゲームにせよ、冒険は、それが正しく行われるなら、賭けでは無く勝利への確かな戦略だ。「アマガミ」はそれを見事に証明してみせた作品であったと言えるのではないかと思うし、そのアニメ化たる「アマガミSS」も、無難で安全性を求めるのではなく、原作がもともと持っていたと同じような冒険心を発揮しながらアニメーションを制作しているように思う。だからこんなに面白いんだ、この作品は。


第二章以降、七咲逢がどのような顔を見せてくれることになるのか、きっと我々の予想を良い意味で裏切ってくれるだろうと、期待している。はるか編、薫編、紗江編と、いいカタチで折り返した段階である。後半戦も大いに楽しみにしたい。




・今回の橘純一


今作において、主人公の純一は各エピソードごとにまるで違った顔を見せている。そしてそのそれぞれが、その時のメインであるヒロインのキャラクター性を最大限に発揮するよう仕向けられているというのは、すでに何度か指摘してきた通りだ。


そんなカメレオン的変化を見せる純一の今回の役割は、どうやら後輩にイジられて振りまわされる、頼りなく情けないダメ男、くらいの立ち位置か。七咲の小悪魔系の魅力を存分に引き出すためには、男役はまずしょっちゅう失態を演じておろおろする人物でなければならない。そしてまた、七咲のしっかり者で家事好きなキャラ設定を活かすには、頼りなく家事にも仕事(勉学)にも関心の薄い男でなければならない。痴漢だとかとんまだとか罵られながら、「先輩には私が付いてないとダメなんですから」と言って世話焼き女房な顔を見せる姿が描かれてこそ、七咲はその輝きを放つのであろう。それでいて、「こんな男のどこがいいの?」なんて疑問にも対応できるような、ちょっとだけ(あくまでほんのちょっとだけ)素敵なエピソードとかがあれば満点だろう。


もちろん、自分はまだ今回の話数だけでしか七咲逢のことを知らないから、そんな自分の予想を大きく飛び越えてゆく魅力的な作劇を見せて欲しい。ここは、スタッフの腕の見せ所だ。




・サブキャラとかEDについて


どうしたって注目したくなる、サブ扱いのヒロインたち。今回もまた1年生ヒロインということで、美也の出番が多かったのは嬉しい限り。紗江編とはまたちょっと色の違う妹を演じているが、七咲も交えて3人(もしくは紗江も入れて4人!?)で絡むシーンが早く見たい。


また水泳部つながりで登場の響先輩。この人ももっともっと見たいw 真面目な人だから、あまり主人公と絡むことも少ないし、ましてやニヤニヤさせるシチュエーションなんて望むべくもないかもしれないが、競泳水着をOPだけでなく本編でも見せてくれる機会が1度か2度はあるんじゃないかと思っている。ビキニとかスク水より、競泳水着やジャージのほうが断然萌える。とくに今回は長袖長ズボンの全身ジャージとか、素晴らしすぎた・・・。


美味しいシーンという意味では薫の登場したところは見事だったなぁ。純一が後で七咲に何度か「可愛い」と言われることになるのだけど、視線が可愛い、という七咲の発言だけでは視聴者に訴えかけるものが弱い中で、薫との絡みでしっかり主人公の可愛さを描けていたのは大きいし、そのあと反撃に出ようとして薫と妹を慌てさせる描写も、あざとくなりすぎないツボを抑えた描写で素晴らしい。こういうバランス感覚は、今作はけっこう絶妙だ。


さてED曲、これもなんだか歌いづらそうなメロディラインで、声優さんは大変だなぁと思ったのだけど、いや、非常に良い曲だ。いままでもそうだったが、キャラソンとして十分魅力的でありつつ、しかしあまり萌え萌えしたいかにもアニソンって感じを避けて、曲単体として十分に勝負になる楽曲を用意できているというのは、ポイントが高い。アニメーションの魅力は紗江編が素晴らしかったけれどw しかしOPにせよEDにせよ、曲が良いというだけで大きな視聴意欲促進に繋がるのだから、音楽の持つチカラというのは重要だ。七咲編も、本編はもちろん、ED曲も楽しみの一つとして、次回以降の物語を味わって行きたい。





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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

頭髪の薄い20代後半
2010年09月24日 13:12
 ツンツンしてるのは最初だけでしたね。キャラが薄くなってしまいそうなのでああいうキャラでも良かった気が。ただあの小悪魔的な部分は癖になりそうです。
おパゲーヌス
2010年09月24日 13:53
>頭髪の薄い20代後半さん
コメントありがとうございます。

公園で、「通報しないよね?」という純一の弱気すぎる問いかけに、意地悪そうに微笑んで見せた時点で、このヒロインの根本的な魅力というか属性を、はっきりと提示させられた気がしました。仰る通り、どれだけ視聴者を癖にさせるかというのが、七咲編の肝になってきそうです。
F・C・P
2010年09月24日 15:52
どうも~、F・C・Pです。

前回までの紗江編では橘さんは頼れる先輩として描かれていたので、出会っていきなり痴漢扱いされてオドオドしているシーンはすごく笑えましたね。

>後輩にイジられて振りまわされる

森島先輩でもイジられたり振りまわされたりしていましたが、年上の先輩がそういうことをするのと、年下の後輩がするのではかなり印象が変わりますね。
七咲は森島先輩のような天然ではないだろうから、計算された感じのイジりになりそうです。
おパゲーヌス
2010年09月24日 18:06
>F・C・Pさん
コメントどうもありがとうございます。

そうですね、年下からイジられるというのが、やはり七咲の最大の魅力でしょう。今回猫が出て来ましたが、まさに猫のような謎めいた魅力が、このヒロインにはあるような気がしますね。

>前回までの紗江編では橘さんは頼れる先輩として描かれていたので、出会っていきなり痴漢扱いされてオドオドしているシーンはすごく笑えましたね。

たしかにw 前回までとのギャップは大きかったですねぇ。純一は最初はつまらない主人公キャラだと思ってましたが、いまではすっかり、彼の存在が今作の重要なファクターになっています。すごくいいキャラになりましたねw

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