伝説の勇者の伝説 第13話「北の勇者王」

国がある限り戦争は無くならない。まったくその通りだと思う。




・国家と戦争


戦争は、国家という存在そのものに不可分の要素として備わっている。実際に戦争をするか否かは別として、外交上の手段として戦争を想定していない国家は、絶対にあり得ない。このことは、例えば古代において、国家がどのように成立したか、人間の集団組織をどの時点から国家と看做すかということを考えればよく理解できる。


火や道具や言語を使用するようになった人類が、複数の家族を内包する排他的な集団組織として生活し始めるのは、国家が誕生し文明が形成されたとされる時期よりも、遥かに古い。一般に最も古い文明が存在したとされるオリエント地域においては、シュメール人によって最初期の都市国家が形成されるより数千年も前に、かなりの大規模の集落(むしろ都市と呼んでよい)が存在していた。あるいは日本においても、国家と呼べるものが登場するのは弥生時代からであるが、縄文時代にはすでに三内丸山遺跡に代表されるような大規模な集落が存在しており、そこでは獲得経済(狩猟・採集・漁労)に頼るとされていた従来の縄文文化観を覆すような、栽培植物も多数存在していて、当時すでに生産経済(農耕・牧畜等)が始まっていたと考えられる。


人間の集団をどこから国家と定義するか。この問題を考える時、上記の例は国家の性質に、富の集積と拡散といった経済的要素や、組織に属する人や家族の量、あるいは人々を統治し指導する政府の存在といったものが、必ずしも決定打とはなり得ないことを示している。では国家とは何かと考えた時に、人間の組織が内包する経済的・空間的独立性(すなわち国民に対する衣食住の保障)を前提としながらも、その組織にかなり徹底された排他性が備わった時にはじめて、その組織は国家と呼ばれ得るのではないか。すなわち、自国民を他の人間たちと区別する意識が確立され、ある程度明瞭な国境が定められ、そして組織の利益のために他者を武力で排除する(=戦争を行う)という行為が外交戦略の中に組み込まれることが、国家の成立に不可欠の要素だと考えられる。


とくにここで問題としたいのが戦争行為だ。戦争は、人間本来の習性などでは断じてなく、ある時期に誰かが考案した行為である。組織の利益のために他者の生活領域を侵犯したり、あるいは襲い来る敵から土地と人を防衛するということを明確な目的として設定し、一部の指導者の下に多数の武装した人間たちが集まって、自分たちとは異なる集団の人々を殺害すること。このような行為は、何百万年ともされる人類の長い歴史の中で、ほんの数千年前に発明された、かなり新しい概念だ。狩猟用に作られた武器が喧嘩等の理由で殺人に使われることはあったかもしれないが、明確に殺人目的で武器が作られ(狩猟用のものとはまるで形状が異なるものである)、またそれを防ぐための防具も開発されて、集団組織による軍事活動が行われるようになるのは、まさに国家という概念が誕生するのと時を近しくして発案された行為であろう。


日本を例にとれば、縄文時代に戦争は無く、弥生時代への移行期になってはじめて戦争が開始された。縄文から弥生時代への移行期は、それまで日本列島に暮らしていた縄文文化と、新たに大陸から持ち込まれた文化が衝突し融合した時代であったのだが、そのときに大陸人が持ち込んだものの中に、稲作や弥生式土器のほかに、戦争という概念も含まれていたのである。縄文人は、集落同士のいざこざを解決するのに武力を用いるやり方を恐らく知らなかった。しかし大陸文化との衝突が始まる様になると、軽くて小さかった狩猟用の矢尻の他に、重くて巨大な殺人用の矢尻が登場し、それもより強力な材質の石をはるばる遠方から輸入するようにさえなった。明らかに、敵と戦うための戦争のやり方が普及し、列島中に広まって行ったのである。そしてそれからわずかの時を置いて、国家的機能を十分に有した集落が誕生するようになった。してみれば、戦争も、国家も、人間が後天的に発案し獲得した概念であると言えるだろう。


国家がある限り、戦争は決して無くならない。その主張にはこのような歴史的背景がある。国家と戦争は不可分のものなのであり、人間が国家というしがらみに縛りつけられている限り、我々に出来るのは戦争を回避する努力までで、戦争そのものを根絶することは決してあり得ない。もし戦争そのものを地上から抹殺しようとするなら、国家という概念そのもの(および国家の中で生きる自分、という通念)を打ち破らなければならない。そのためにこそ私個人は政治思想として無政府主義を掲げたいのであるが、しかし全人類を一つの国家の中に組み込んでしまうというのも、次善の策であろう。かつてローマ帝国が人種も文化もその枠を大きくを超えた大規模な国家として成立したとき、その内部の状態を歴史家が「パクス(平和)」と呼称したのも、所以あってのことである。




「伝説の勇者の伝説」という作品が、国家という組織に根源的に内包されている矛盾や理不尽さをはっきりと見据えて炙り出してくれるのかどうか、それはまだ分からない。けれど、平和を築くために戦争や殺人を行い、一時的にせよ不幸の種を振りまこうとするシオン・アスタールやレファル・エディアの言動に、国家や戦争を発明した人類が自らに課したどうしようもなく愚かしい宿命を、見出すことになるのは間違いないだろう。そのとき、ライナは、フェリスは、キファは何を思い行動するか。そこによく注目しておきたい。




・活発になる対外関係


今回はガスタークとローランドにおいて、いよいよ大陸制覇を目指して対外的な活動が活発になってゆく様が描かれた。ガスタークの王が非常に好感のもてる英雄で、いまからもうシオンとの対決が楽しみになってくるところだが、ローランドが直面しているのはエスタブールの統治と、ルーナ帝国との外交問題だ。


相変わらず組織よりも個々の特殊能力者ばかりが目立ってしまっている観のある作劇だが、とくにルーナ帝国領内での動き(ミランについても、ライナたちについても)は、キャラメインの展開になってしまうのは仕方あるまい。クラウ元帥とノア・エンには早いところエスタブール軍を取りまとめてもらって、国家規模でのローランドの北上作戦が展開されるのを待ちたい。


このペースで、アニメシリーズでどこまでストーリーを転がしてくれるのかが分からないのがちょっともどかしいかな。公式サイトの地図を見ても、ローランドとガスタークがぶつかるためにはまだまだいくつもの国境を越えて行かないといけない。仮にネルファとルーナを、軍事作戦では無く外交努力(というかミランの脅し)によって屈服させたとして、それですぐさま中央大陸へ進出できるようにも思えず、ガスタークと出会う前に2クールを消化してしまいそうだ。このあたり、視聴者に納得のいくカタチでシリーズ構成が行われていることを願うしかない。


また一方で、シオン側のストーリーが慌ただしくなってきた反面、ライナたちの物語がそれにどう関わるのかがまだ見えない。ライナたちが勇者の遺物を発見して、それがローランド帝国の躍進に何か影響を与えるとか、そんな光景はまだ描かれていないわけで。今行われているアルファ・スティグマ関連のエピソードを消化することが、ドラマを大きく動かすファクターになっていれば良いのだけど、これは次回に期待だ。少なくともあのピンク兄妹を始末することができれば、ローランドの北方経略はだいぶ楽になりそうだけれど・・・?




今回からOPとEDが新調。大好きなCeuiがOPに抜擢! この人は、やはり自分の大好きな新居昭乃と同じで、どちらかというとED曲要員みたいなイメージが強かったから、こうしてカッコいい曲がOPに採用されるというのは嬉しい。それに、ツイッター上で川崎監督がアピールしていた通り、映像的にもじつに見応えのある濃密なアニメーションで、素晴らしい。


EDの英字テロップはやめたのねw 反応が悪かったからだろうか。あれを様式美としてやっていたのなら、2クール目もその姿勢を貫いて良かったと思うけれど。まぁ何にせよ、テロップが気になる視聴者にはかなりありがたい仕様変更だ。あと1クール、全力で楽しませてもらおう。




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それでは、今回は以上です。


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