刀語 第10話「誠刀・銓」

仙人のキャラがすごく良かった。こういう道化的なキャラクターは大事。




・改めて戦う意味を問う


今回は、10本目の完成形変体刀である誠刀・銓を求めて、奥州は百刑場に彼我木輪廻という名の仙人を訪れる物語。かの地はとがめの故郷でありなおかつ忘れようにも忘れられぬトラウマの地であり、とがめも七花も、自身の抱える弱い心を試されながら、戦う目的を改めて問うことになる。


真庭鳳凰と否定姫という二大ラスボスとの決戦を前に、しっかりとキャラクターの内面を掘り下げておき、地固めと伏線張りを行っておこうと言うエピソードであるから、戦闘そのものにはそれほどの緊迫感を持たせず、それよりもずっとセリフのやり取りによる問答や自問に重点を置いた作劇だった。否定姫の血筋の秘密、虚刀流の出自の秘密が思わぬ形で語られて驚かされたが、それ以上にとがめの父が語っていた歴史の誤り云々という話が、今後どのように種明かしをされるのかが非常に気になって来るところ。


一方で、とがめの過去との対峙よりもずっと重要な意味を持っていたような気がする、七花の戦う目的について。ここは、戦いという行為そのものに必然的に備わっている虚しさや無益さを彼我木輪廻が語っていたのに、それを踏まえた上で「なぜ戦うのか」と突き付けられる問いに対して、とがめのため、という思考放棄とも言える結論に到達したのは、個人的にはあまり面白くはなかった。人の命を奪うことと、とがめのために戦うこと、その両者を天秤にかけてとがめを選ぶというのであれば、七花がとがめの人生の中にどんな意義を見出しているのか、それを明確に語って欲しかったところではある。恋だの愛だのを越えたところに存在する七花のプラトニックな感情の迸りを描いたのは良いとしても、仙人の問いかけにきちんと答えられていたようには見えなかったし、とがめの野望とやらが果たして人間一人の命より価値のあるモノなのか、そこに対する結論も出ていない。・・・というか、仙人の語っているように、そんな目的にじつは価値など無いハズなのだが、あえて不正解を選択したところに、二人の覚悟を描きだしたというのが今回の主題だったのだろう。




・問答の意味と彼我木輪廻について


もちろん、彼我木輪廻と七花の問答は、作品のもつメッセージとしてさほど重要ではないだろう。言って見ればこの問答は、とがめが誠刀・銓の所在に辿りつくためのヒントとして、謎かけ遊びをしているようなものだ。彼我木輪廻は別にとがめの生き方を否定したいわけではないし、自分の考えを押しつけたいわけでもない。ただあくまで鏡として、とがめと七花の二人が自分自身を見つめ、来るべき戦いを前に迷いを断ち切ることが出来るよう、手を差し伸べたに過ぎない。


彼我木輪廻の言説は、哲学者ディオゲネスとアレクサンドロス大王のウィットに富んだ逸話の焼き直しだ。ディオゲネスはこれから遠征に赴こうとする大王に対して、もし全世界を征服し終わったら次は何をするのかと尋ねる。大王は、その時私は心穏やかに休息するであろうとそれに答える。そこでディオゲネスは、それならなぜ今すぐに休息しないのかとやり込めるワケだが、しかしこの逸話が戦いの中に人生の悦びを見出そうとする者たちの考えを改めることが到底不可能なように、彼我木輪廻の言う「目的のために目的も捨てねばならない」との主張は、真の目的をいまだ知らぬ若人の耳には届きようが無い。


彼我木輪廻は、今作においてはまさしく道化的存在だ。彼の語る言葉は全てにおいて達観し切っており、その言葉はもはや「刀語」という作品の枠組みを大きく飛び越えてしまっている。作品世界の外側から冷徹な視線を投げかけるその姿は、作り物の物語世界にはとうてい受け入れられるものではなく、彼の本来の肉体が一度たりとも描かれなかったことにこそ彼の本質がある。そこで語られる言葉がどれほど正しく、またどれほど真摯に訴えかけられようとも、それはこの物語とはまるで無縁の戯言に過ぎないのだと言うことを、しかしこの賢者はよくよく分かっているのだろう。


そう言う意味で、このようなキャラクターを登場させたということは、作者が自分の作品を批判的に解体しようとする試みであったと言える。西尾維新という作家にとっても、彼我木輪廻は、自分自身を照らし出す鏡であったのではないだろうか。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

アルルカン
2010年10月16日 20:48
輪廻の嫌らしい感じが非常に好感を持てました。
ああいう問答は好きなので面白かったです。鷹比等は是非とも友人になりたかったですね。銀閣や鳳凰も友達になりたいキャラです。

己を投影する輪廻と己を測る誠刀。特性が見事にマッチしてますが、四季崎はそこまで考えていたのでしょうか。どちらも何やら量子力学のようです。


慚愧は原作ではポニテでなく上半身さらし一丁だったので期待してたのに裏切られましたっ!!
おパゲーヌス
2010年10月16日 23:11
>アルルカンさん
友達になりたいかどーか、で判断する発想はなかったですw 鳳凰とはぜったい、友達になりたくありませんw

量子力学のことはよく分かりませんが、特性が見事にマッチしていたというのは、なるほどそうかもしれません。四季崎がそこまで考えていたというよりは、そうせざるを得ない輪廻の特性が、四季崎をして誠刀・銓を作らしめた、という展開のほうが、個人的にはしっくり来ます。

>慚愧は原作ではポニテでなく上半身さらし一丁
それはなんと空気読まない格好で・・・。いや、すごく見たかったですそれはw
しずく
2010年10月18日 12:20
衝撃の第十一話まであと26日。
来月のラスト5~10分は鬼です。
だから刀語を見る上で、今話が最後のほんわかです。
……それにしても、彼我木輪廻は原作版よりアニメ版の方がイメージが良い。それは、刀語の中でもファンタジー色が強いキャラだからだと思いますが、それ故に来月との落差が凄そうな?

とかなんとか。
感じましたというお話でした。

……12月は寒そうです。
あとお金無いからDVD&BD収録の第零章が聞けません。バイトしても3カ月先までは使い道が固定されているという無情!
……第零章だけドラマCDっぽく原作同様の風に、あるいは今出ているドラマCDのように講談社BOXから出ればいいのにとも思ったり。

次回
毒刀・鍍(メッキ)
対戦格刀剣花絵巻!
殺気継ぎ接(は)ぎ時代劇!
刀語の第十一話♪
対戦相手は真庭鳳凰(けれども実は…?)
乞御期待!!

…やりすぎましたかね?原作から一部抜粋です。
おパゲーヌス
2010年10月18日 23:30
>しずくさん
第11話はそんなにすごいのですか、期待しておきます。ただ、ええ、ネタバレは自重してくださいなw 

彼我木輪廻がファンタジー色が強い(というか、作品世界とは異質の存在)っていうのはまさに思いました。アニメ版のほうがその色が強まったというのは、作り手がそう描いたからでしょうね。

自分は、申し訳ないですがDVD等はほとんど買いません。たまーにCD買うくらいですね。お金無いので、よほど好きになって、後世に語り継ぎたいと思ったら、初めて購入に動きます。

第11話、楽しみにしておきますね。

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