STAR DRIVER 輝きのタクト 第3話「おとな銀行」

「おとな銀行」。この皮肉たっぷりなネーミングセンスがたまらない。




・金とセックスはおとなの遊び


今回は、敵対勢力が綺羅星十字団第5隊・フィラメントから、同第4隊・おとな銀行へと交代。その頭取ワタナベ・カナコと、彼女に仕えるシモーヌとタカシが、タクトたち一行と関わりを持つことになった。


それにしてもトンデモない設定の人妻女子高生ワタナベ・カナコ。彼女を含むおとな銀行の面々は、財産や地位や愛欲といった「おとな」の象徴的な要素をこれでもかと色濃く体現していて、しかもそれが未熟で青い肉体と精神の中に表現されているのが、なんとも滑稽であり、かつ切実なキャラクター性を有している。それは手に余るオモチャを振りまわす子供の姿として描かれてもいるが、実際に同じような無邪気さで金と権力に執着する現実の人間たちを痛烈に揶揄している光景だ。いったい何のために金を稼ぎ使うのか、何のために権力を手にしようとするのか、その目的も見失ったまま後戻りのきかない人生ゲームに没頭するおとな達の縮図である。


また「おとな銀行」なる組織名や、おとなぶった彼らの言動が、しかし逆説的に彼らも含めた今作の登場人物たち全ての”子供っぽさ”を証明していたとも言える。金にしろ、性にしろ、あるいは支配への渇望にしろ、それらはすべて「大人の世界」に属するものとして、子供たちが恐れ憧れる対象である。それに様々なカタチで振りまわされる姿を、背徳感と妖艶さのなかで描きあげた今回のエピソードは、くどいようだがいよいよもって「ウテナ」の世界に通じるテーマを強く打ち出してきた印象で、気付けばすっかり画面に惹き込まれていた。




それにしても、「銀行」という単語が、これまたインパクトがあるなぁ。設定的には、十字団の資金管理とその運用を任されている部署だから銀行と名乗っているのだとしても、やはり暗喩的な印象を強く感じさせるのにすさまじい効果を発揮している。


「おとな銀行」とは言っても、別に大人が運営しているのでもなければ、大人のための銀行というわけでもない。あくまで頭取は女子高生(ただし人妻)。構成員も若者ばかりで、やはり10代の少年少女たちによって構成されている綺羅星十字団の内部組織でしかない。では何が「おとな」で「銀行」なのかと言えば、子供たちがぐっと背伸びして大人の真似ごとをしている様子(あるいはそれが許可されている状態)を、あたかも銀行から融資を受けるようにして将来の権利を前借りしているのだと、言っているのかもしれない。


しかしその将来の権利なるものは、本当に大人になったときに自分のものになっているかも分からないものであるし、それを借り入れるということは、いつか利子を払って返済しなければならないということだ。ワタナベ・カナコはまだ余裕綽々な様子を見せていたが、いつか高い利子を付けて”おとな遊びの権利”を手放さなければならなくなったとき、彼女がどのような姿を見せることになるのか、要注目だ。




・”奥の手”の尽きない銀河美少年


我らが主人公ツナシ・タクトだが、彼の青春謳歌ストーリー、とくにヒロインであるはずのアゲマキ・ワコとの恋の進展はまだまだ描かれずに見送られている一方で、思わず「え、そんな設定あったの?」と突っ込んでしまいたくなる奥の手を続けて投入してきており、綺羅星十字団以上に謎の多い主人公の姿を、我々視聴者はただ指をくわえて眺めていることしかできない。どこまで言っても、タクトはステージの上で手の届かない舞台役者であるし、そんな彼を中心としたこのアニメ作品は視聴者を画面の外側に排除し続けている。


プール掃除の最中にいきなり剣術バトルが始まったのには驚かされたが(ウテナファンなら思わずニヤニヤしてしまうシチュエーションだ!)、サイバディによる決闘シーンでも、せっかく前回見せてくれたタウ・ビームは使わずに、相手の流儀に合わせてスターソードなる剣を取り出して戦って見せた。


ここでもまた、いろいろと新たな設定が登場。どうやらスターソードはいままで10本しか確認されておらず(つまり最多で10体のサイバディが剣で戦うことができる?)、タウバーンの取りだした剣はその11本目と12本目という話。これについては、はいそうですかと受け入れておくしか無いが、今後の物語にどう絡んでくるかは見ものだ。また、今回戦ったダイ・タカシが、どうやら”しるし”(徴?印?)を持っているのにあえて電気棺に乗って戦ったという話。第3戦目にしてはやくも、「いつものパターン」を崩してきた。


十字団員ではなく電気棺を使わないタクトがサイバディを操っていること、またスガタもサイバディを操れるらしいということだが、タカシも含めた少なくともこの3人は、電気棺を用いる必要は無いのだろう。逆にいえば、綺羅星十字団の持っているあの大がかりな装置は、しるしを持たず本来ならサイバディを動かすことのできない人間を、疑似的にサイバディと同調させるための装置なのだということが、むろんこれまでも予測としては考えられたことではあるが、初めてはっきりと言及されたことに、なるのだと思う。


まだまだ謎の多いサイバディだが、こうやって少しづつ設定が見えてくるやり方はさすがに巧い。視聴者がいろいろと想像を膨らませる余地を盛り込みながら、しかし反則みたいなミスリードをしているわけでもない。極めて自然な角度で、視聴者が今作の世界観について来られるよう導いてくれており、シリーズ構成・脚本面でのクオリティの高さに惚れ惚れさせられる。




次回はいよいよ、その存在意義が謎だらけだったメインヒロインが、物語の動力源として機能してくれるようだ。タクトといいワコといい、謎が多すぎてさっぱり感情移入をさせない主役キャラクターだが、だからこそ虚構性を強調する演出方針とも相まって、視聴者に客観視点を提供し、作品テーマへ主体的に到達するよう仕向けていると言える。もちろんそのテーマが何かというのはシリーズ序盤ではさっぱり明らかではないが、「この作品はいったい何がやりたいんだろう?」という興味をふつふつと湧き出させる巧妙な作劇が、今後ますます加速してゆくことを楽しみにしたい。




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それでは、今回は以上です。


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