おとめ妖怪 ざくろ 第7話「うち、猫々と」
・改めて描かれるパートナーの絆
今回は景の突然の帰省にざくろを連れていくお話。もしかして、婚約者と称して両親に紹介するのかなとも思ったが、さすがにそれは推論を急ぎ過ぎたようだw それでも、あくまでパートナーとしてではあるが、お互いの絆を深め合う良いエピソードとなった。
景の父が、西洋かぶれな上にひどい妖人差別主義者であるということだが、今回はざくろのアイデンティティの問題ではなくて、別の意味でやはり妖人嫌いの景が、幼少時のちょっとしたトラウマと思わぬカタチで対面することになった。ざくろと景のラブコメを差し引いても、このお話はじつにじつに素晴らしかった!
サブタイや、総角家に到着した直後の描写から、あの猫がなにか鍵を握っているのだろうと予感させる演出だったわけだが、まさか景には猫が見えていなかったとは。どこか不思議な印象を抱かせる妹君や母君を特殊なポジションにおいて、妖怪モノならではのちょっと奇妙で不思議な状況を描きだし、その上で景の感情をダイレクトに変転せしめる、優れて技巧的な作劇だったのではないだろうか。見えるものと見えないもの、真実と思いこみとが交錯する、思わずドキっとさせられる演出が、命と命の深い因縁を感じさせる感動的な物語を珠玉のドラマに仕立て上げていて、鳥肌モノだった。
思わずホロリとさせられる展開は、もう毎週のように行われている。けれどその涙の色が回ごとにがらりと変わっているのが印象的で、時には純真な愛によって、時には深い悲しみを乗り越える健気さによって、そして今回は通じ合う心の織りなす小さな奇跡によって、涙を喚起させられてしまう。それは作品づくりにおける非常に巧妙な手腕が発揮されているだけでなく、その根底に生命への暖かい愛情が満ち溢れているからこそ、出来る芸当だと思う。
今作は、人間や妖人や半妖、それに動物やモノや文化にいたるまで、この世に存在しているあらゆる儚い命に対する深い憐れみと愛情があり、その愛情が画面からほとばしり出て我々視聴者の心の中に流れ込んでくるかのようで、そこに最大の魅力がある。今回はそのことを、改めて教えられたエピソードだった。
・コメディにおいても、描写の丁寧さは健在
しかし最近はわりとシリアスなエピソードが続いていたので、その反動もあろうか、今回はアバンから散々笑わされ、踊らされ、ニヤニヤさせられまくった30分間だった。タエが景に飛び付いて、それを見て皆が唖然としたところで、本気すぎて逆に笑うしかないバーン!という大袈裟なSEとともに、サブタイトルが提示される。この一連の流れが、もう最高だったw
それにしても、こういうコメディ回であっても、いやコメディ回だからこそ、細かいところまで徹底して丁寧に描き切っている印象が、まず大いに好感が持てるし、作品世界のもつ説得力を大いに増大せしめていると思う。
日常描写に関しては、今回は饅頭や洋食や桃といった食べ物が登場したが、こうした食べ物は作品世界を叙述するには非常に有効的な要素だ。ジブリアニメを思い起こせば明らかなように、食事のシーンでリアリティ溢れる描写ができれば、そもそもファンタジーでしかないアニメにおいては、その画面中の世界なりキャラクターなりが視聴者にとってぐっと近しい存在と映ることになる(※この場合リアリティというのは、写実的という意味では無い)。とくに今作は明治時代が舞台なので、食べ物のひとつひとつが視聴者に与える効果は大きい。食後に桃を持っていく、しかも八百屋で買ったのではなく木からもいで冷やしておいたものを用意させるというシチュエーションひとつとっても、総角景という人物の生活スタイルを体感的に理解させるのには十分すぎる。ざくろがフォークナイフを「箸」と言っていたのも面白かった。
あるいは人物描写では、景の一挙手一投足にいちいち色んな反応を示すざくろが見どころたっぷりで、赤くなった顔を手で煽いで冷まそうとするなど、そのシチュエーションにおけるキャラの心理を表現するのにこれ以上のやり方は無いとさえ思えるほどだ。怒ったり照れたりするときに、他の作品でも散々用いられている分かりやすい表現を基調としながらも、そこにさりげなくプラスアルファを添えることで、セリフにはならない部分での映像や演技から伝わって来るキャラの心情が、見事に表現出来ている。今作が視聴者の強い共感や追体験を促す、大きな要因のひとつだろう。
加えて例えば、三扇の名前を覚えていなかった景を、ざくろがぷりぷりしながらもさり気にフォローしたりとか、こういう細やかな作劇ができるというのが、本当にこの作品には脱帽させられる。ざくろの用意した子供っぽい取引用チケットも、最初はネタ的な扱いかと思っていたら、謝る景と赦すざくろ、という構図を場面場面でそれぞれに描きつつ変化させていくための、効果的な小道具として活用していた。うまい、うますぎるwww
もう、自分のような素人では気付きさえしない色んな工夫が、このたった30分弱の映像作品のなかにごまんと詰め込まれているのだろうと、つくづく痛感させられる。その中のほんの少しでも拾って行けるよう、これからもっと努力したい。
さて、今回(ゲスト的扱いではあったが)ざくろの恋のライバルが登場して、恋物語としても盛り上がりを期待したくなるところで、次回は通例のパートナーシップを崩した異例のカップリングを見せてくれるらしい。どんな展開になるのか、いまから楽しみで仕方が無い。
----
それでは、今回は以上です。

にほんブログ村
↑ランキングに参加中です。拍手の代わりですので、読んで良かったとちょっとでも思ったら、クリックしてもらえると嬉しいです^^
Tweet
この記事へのコメント