伝説の勇者の伝説 第20話「絶望に埋めつくされない心」

ツイッターで原作者の方が今回のエピソードを猛プッシュしてた理由が分かった




・本当に一人になんてなれやしない


今回は、改めてライナが自身のゆく道を選択するお話。シオンの苦悩が最悪のカタチを取って現出したかのような、冒頭のルークとの戦い。そこで、戦闘そのものにおいても後れをとっただけでなく、本当の意味で死を覚悟し、許容したライナ。その命を救ってくれたのは当然のことながらフェリスであったが、さらに生きる希望まで見出させるフェリスの言葉によって、再びライナはローランドで生きようと決意する。


思えば今回のエピソードは、生と死の許容に関する物語であったと言える。バケモノとしての自身の運命からなんとかして逃れようとするライナの姿は、言って見ればアルファ・スティグマ(およびそれにまつわる死のイメージ)を拒もうとする態度だった。人間を愛し、人間のように生きようとする彼の姿は、自身の運命に文字通り目をつむってしまうこと。しかし否応なくその瞼を開かされて、自分がいかにバケモノであったかを思い知らされた彼は、魔眼保持者としての境遇とも言うべき社会からの拒絶と抹殺を、とうとう受け入れようとした。死を許容するということはライナにとって、自分がバケモノであることを認めることでもあったのだ。


それに対してフェリスは、彼が希望の存在を許容し、生きることを許容するよう促した。自分が本当にバケモノであった場合、この世界には事実として、希望はひとかけらも存在しない。生きようと思うことは、そんな希望にすがりつこうとする愚かな行為である。バケモノとしての自分自身を見つめた時に、ライナの心から生への欲求が消え失せてしまったのは当然であろう。しかしフェリスは、そんな絶望に満ちた現実を、取るに足らないことだと言った。バケモノとか人間とか、社会とか死の危険とか、果ては彼自身が抱える破壊への罪悪感や恐怖でさえも、フェリスはどうでもいいと切り捨てた。そんなしがらみを飛び越えたところで、ライナとフェリスは結ばれているのだと言って聞かせたのだった。


ライナの口癖である「めんどくせぇ」。この言葉には、自分にまとわりつく全ての事柄に対する無感動を表明しようとする意図が込められている。そしてだからこそライナは、「めんどくせぇ」と発言するたびに、そうやって否定しようとするモノを自分がどれほど愛しているか、逆説的に証明していたわけだ。今回フェリスはそんなライナの執着心を全て背負いこんで見せると、言外に宣言していたかのようである。存在し得ない希望を追い求め続ける、その愚かな人生を、継続しても良いのだと認めてあげた。そうして初めてライナは、自分の生を許容することが出来たのであった。


「本当に一人になんてなれやしない」―― この発言は、めんどくせぇとか、迷惑をかけるからと言って一人になろうとしていたライナが、どんなに自分に言い聞かせても捨てきれなかったものを、余りにも強く希求する発言であった。彼は、たった一人でいい、自分の存在を全て認めた上で、共に生きてくれる仲間が欲しかった。それをいま、ようやくにして手に入れたのであった。


彼は幸運だったのだろうか? 否、彼はフェリスに対して、すでにたくさんの贈り物をしている。苛酷な宿命を背負わされ、問答無用に痛めつけられてきた彼女の人生を、何も言わずに理解し、受け入れ、認めてあげた。生きていて良いのだ、人生を楽しんで良いのだと、言葉に表わさないままに何度も何度も言い聞かせてあげた。いま彼は、その返礼を受け取ったのである。




・連動し始める物語の行方


数話前からいくつかの視点に分割され、並行して物語が展開されてきたこの作品。今回から、いちど分かたれた物語がふたたび一つになるべく、連動した動きを見せ始めたと言える。もちろんそれは、ローランドとガスタークが公然と衝突したことによる。


リル・オルラに対してルークが、ローランドに歯向かうのは許さないという旨の発言を投げつけた。これは大変、注目に値する発言だ。なぜなら彼らはいま、ローランド国外にいるのである。ローランドの領内で狼藉を働けば、公務員であるルークとしては堂々と自国の法を振りかざしてリルを処分できる。しかし国外において、しかもローランド王に敵対し逃亡を試みた人物を抹殺しようとするリルに対して、どうしてルークがローランドの名前を振りかざして介入することが出来るのか。それはこの時点で彼が、ライナを再びローランド国民として認識し、それをガスタークに対して高らかに宣言したということに他ならない。ルークは恐らく、かつてライナのアルファ・スティグマがオルラ兄妹に狙われたことを知っている。だから今後も、ガスタークがライナの眼を狙って動く可能性を十二分にわきまえていたことだろう。今回、ローランドの名を振りかざしてライナに協力したということは、ルークの判断として、ライナをローランドが守るべき人物として認定したということであろう。同時にそれは、ルークがミランの要請を拒否したということでもある。


晴れてローランドに帰国する意志を固めたライナ。これで彼を取り巻く状況は一件落着したかと言うと、じつは全然そんなことはなく、むしろより政治的にデリケートな立場にライナは置かれるようになったと言える。ライナ自身に秘められた秘密がまだ何かありそうな感じだが、それを差し置いても、今後のライナの処遇や彼自身の意志は、大小さまざまな点から、物語に密接に絡んでくるかもしれない。


もちろんライナの秘密も注目すべき点で、ドラマとしてはむしろこっちが本筋だろう。全ての式を解く者?とか、勇者とかいう単語が飛び出してきたが、果たしてどんな設定なのか、今後の展開を待ちたい。シオンとルシルの会話によれば、ライナ(そしてシオンも?)は極めて特殊な存在で、しかも魔眼なんて目じゃないくらいに苛酷な運命を背負っているらしい。次回以降どのような展開が待ち受けているのか、ガスタークの動きと合わせて注目しておこう。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

アルルカン
2010年11月19日 09:54
ライナの「めんどくせぇ」は捨てられない、諦められないものを諦めようと言い聞かせているようです。
自分の人生も含めて諦めることを選択していたフェリスの言葉にライナが涙するシーンには胸をつかれます。
けれどライナにとって幸運なのはライナにフェリスと同じことを言ってくれる者は他にもいるということです。だからこそ、ライナは世界に対して抗い続けられるのでしょう。

リルの言動を見ていると本当に腹が立ちます。レファル個人は善良だとしてもガスタークが憎らしくみえてきます。しかも彼は明らかに「化物退治」を楽しんでいるのには背筋が寒くなります。
他の人たちも当然ながらライナを「化物」という記号としか見なしておらず、個人を見ることをせずに排斥しようとする様は人間の性を見せられるようです。
おパゲーヌス
2010年11月19日 21:58
>アルルカンさん
>けれどライナにとって幸運なのはライナにフェリスと同じことを言ってくれる者は他にもいるということ

この点が、自分にはまだ分かっていません。シオンもあんなだし、果たしてフェリス以外に、フェリスと同じくらいの覚悟を持ってライナを受け入れてくれる人間が、果たして他にもいるのでしょうか。

キファは気持ちだけはフェリスにだって負けていないかもしれませんが、「もし暴走したら殺してくれ」というライナの信頼まで背負うことは、キファには不可能でしょう。フェリスにだって出来るかどうか分かりませんが。

リルは確かに腹立たしいですが、この手の悪役キャラや、あるいは善良で頼もしいキャラが、敵味方関係なくごちゃごちゃと活動しているのが、今作のとても面白いところですね。レファルのもとにオルラ兄弟あり。シオンのもとにフロワードあり。ティーアの中には善良さと暴虐さの両面が混在していました。果たしてどの陣営が(あるいは誰が)正義として描かれるのか、あるいはそれを飛び越えたところに作品テーマを描きだしてくれるのか。まさに人間の性をえぐり出しているようですね。

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