STAR DRIVER 輝きのタクト 第8話「いつだって流星のように」

あらゆるところに仕掛けてあるトラップがこれだけのチカラを発揮するドラマって、近年のアニメでは他にあるだろうか




・スガタの翻意の真相とは


無事に復活を遂げたと思ったらスカーレットキスの第1フェイズを仕掛けられて、すっかりキャラが変わってしまったシンドウ・スガタ。以前であれば考えられないような冷たい態度でワコに接する彼の、隠された本心に迫ったのが今回のエピソードだった。


というかすっかり騙されていたよ・・・。てっきりあの性格はベニオの能力のせいだと思っていたのだが、今から考えてみれば、まるで別人のようなキャラになってしまう必要は無く(スカーレットキスの能力にそんな設定は無いし、タクトを倒すための罠であれば性格を変えるのはむしろ不都合)、この人格崩壊はスガタ自身の意志でそう演じていただけのものであった。


ではそれが何のためだったかと言えば、むろん、自身の第1フェイズによって大切な人を傷つけることを恐れていたのだろう。あるいはまた、ワコはタクトと結ばれるべき、なんてセンチメンタルな感傷も、あったのかもしれない。いずれにせよ、彼の本質が何も変わっていないことを、少なくともタクトはちゃんと見抜いていた。崖の上で対峙していたとき、敵の洗脳を受けたスガタに何を問い詰めても無駄なのではないかと思っていたのだが、意外と会話が通じているし(笑)、むしろ次々と彼の本心が明かされて行く展開にぽかんとしながら魅入られているうちに、雪崩れ込むようにしてサイバディによる拳と拳のぶつけあいへと突入。余りにもあっさりと敵の第1フェイズを打ち破ってペーシェントを支配下に置いてしまった時に初めて、それまでのスガタも操られていたわけではなかったのだと気付かされた。目からうろこが落ちるような、といったらおかしいかもしれないが、やられた!と思った。


今回はもう本当に、これまで以上に脚本上・演出上の仕掛けがふんだんに盛り込まれ活用されていて、ほとほと感心させられる30分間だった。スガタとタクトに関した部分に限定しても、これまで主役の2名のキャラクター像を掘り下げるのに、決してそこまで多くの尺を割いてきたわけでは無かったにも関わらず、言葉のひとつひとつ、表情や仕草のひとつひとつに、彼らの想いが溢れんばかりに詰め込まれている。そのキャラクター像を、これまた秀逸すぎる映像演出によって表現していくのだから、見ている側としてはたまったものではないw 


もはや今作で描かれているキャラクターの内面というものは、分かりやすく類推できるものではない。現実の人間の心を完全に言い当てることが出来ないのと同じくらい、今作のキャラクターの抱える心のありようは広く深い。今はワコを大切に想うスガタやタクトの感情が分かりやすく表現されていても、それはメインではあるが、全てではない。ましてや彼らのワコへの想いが単なる恋愛感情に留まっていないことは、誰の目にも明らかだろう。


少なくとも今回は、ポーカーフェイスだったスガタが、子供のころからワコをどれほど大切に想ってきたかということが、ナイフについての言及によって明らかとなった。また、他者とまともに向き合ったことが無いと指摘されたスガタが、第1話でのタクトの無謀な行為を改めて指摘したこと、さらにそれと関連すると思われる「諦め」という言葉の真意。このあたりが、スガタの人間性を感じ取る上での指標になるのであろう。今回は、二人の少年が本気の罵り合い・殴り合いを演じることで、お互いに相手の本気度を肌で感じ取り、好敵手として、また友人として再認識し合ったところで幕を引いた。改めてここで、タクトとスガタの二人の少年を主役とした今作のストーリーが、そのスタートラインに立ったと言えるだろう。今後の二人の関係性に、よく注目しておきたい。




・サカナちゃん退場!?


今回はスガタとタクトの物語であった一方で、サカナちゃんとヘッドの物語でもあった。冒頭、いきなりサカナちゃんが服や鎖を自分の手で脱ぎ捨てたのにもビックリだったし、ヘッドが「出てってくれ」と寂しそうに告げたのもショックだった。捕まっていたんじゃないんかい!w


本当にこの作品は、視聴者を驚かせたり戸惑わせたりするのが巧いなぁ。「彼女たちは最初から自由だった」とヘッドが言っていたが、この手のミスリードを「ずるい!」ではなく「うまい!やられた!」と思わせられる作品って、なかなか無い。たいてい、そんな設定知らねぇよと視聴者に思わせるのは、子供騙しでつまらない作劇である場合が非常に多い。


サカナちゃんの退場にびっくりさせられるのは、どう見ても彼女が囚われの姫君にしか見えなかったからだけではなく、それ以上に、今作における道化的もしくは語り部的な役割を彼女が担っていたからだ。これまでほぼ必ず、ゼロ時間の出現とサイバディ戦のシーンに移行するときには、サカナちゃんの「モノクローム」が挿入歌として使われていた。また本編の物語を暗喩していたと思われるイカ刺しサムの物語や、ヘッドとの時に物悲しく時にユーモラスなセリフの掛け合い。こうした、サカナちゃんというキャラが今作で担ってきた役割のインパクトの大きさが、彼女をいちキャラクターというよりは物語そのものの付属物として認識させ、その無くてはならない歯車が失われたという今回の展開が、大きな衝撃をもたらすのである。


それに加えて、彼女にまつわる謎がすべて放置されたまま、島から出て行ってしまったこと。イカ刺しサムの物語は結局本編の何をどう象徴していたのか(そもそもこれが暗喩だったのかも含めて)は視聴者の想像に委ねられたままであるし、気多の巫女であるという彼女が島から出られるという事実(これは、封印が解かれたからだという説明はできる)、そもそもどういった経緯であの籠の中に囚われていたのかということも、語られず終いだった。むろん、これらは語る必要が無いから語られなかったのだろうし、我々が様々に憶測をすることで、今作の世界観そのものがぐっと奥深く感じられるようになるのだが、それでも、サカナちゃんには最後まで翻弄され続けたなぁと思わず頭を抱えたくなってしまう。


それにしても、サカナちゃんの寓話がヘッドにもたらした変化には、よく注目すべきだろう。あたかも流星のように、人生という冒険を全力で走り抜けたサム。その力強さと輝かしさと愚かしさ、そして彼の人生が抱えていた宿命的な悲哀は、ヘッドをひどく苛立たせることとなった。サムが生きた人生の道程は、恐らくタクトたち本編のキャラクターにもよく通じ合うものがあると思われ、やはり流星のような輝きを放って駆けて行くタクトの未来を暗示しているかのようでもある。そして、それを聞いたヘッドが「本当にそこで終わりなのか」と声を荒げたということは、ヘッド自身が、サム(および彼に象徴される青年の生き様)に憧れを抱き、共感していたことの表れであったかもしれない。とくに、ヘッドがサムに誰の姿を重ねていたかということ。視聴者はサム=タクトという見方をしている場合が多いだろうが、ひょっとしたらヘッドは自分自身をサムに重ね合わせていたのかもしれない。だからこそ、予言にも似た彼女の寓話が哀しい将来を描きだしてしまったことに、大いに失望したのだろう。


もちろん、気多の巫女であるサカナちゃんが、本当に予言を告げていたという設定は考えられる。しかし、まだ何も分からないが、今のところは彼女に何らかのチカラの発現を求めるよりも、より根幹部分で今作の物語と関わっていたと考える方が、詩的な美しさがあって個人的には好きだ。例えば次回予告の「それではみなさんサヨウナラ」なんてセリフは、いかにも道化師が退場するときの挨拶のようではなかったか。彼女には、これまでも、そしてこれからも、物語の外に立って視聴者を導き惑わせる道化の役割を演じていてもらいたい。




・新キャラ登場、次回から新章か


サカナちゃん、ワコ、ニチ・ケイト、それに新登場のミズノの4人が、バスの中でとても印象的な出会いを果たしていた。


内装からして違和感ばりばりのバスの中、この4人の邂逅はいったいどのような意味を持っていたのだろうか。気多の巫女の退場というタイミングで投入される女性キャラということで、当然ミズノは、ヒガシかニシのどちらかの巫女ではないのかと推論を立てたくなるところだ。さらに言えば、なぜかその場に居合わせたニチ・ケイトも、じつは巫女ではないのかという疑惑が浮上してくる。


サカナちゃんがバスを降りるときに、ちょうどこの4人が、十字を結ぶ位置に置かれることになった。すなわち、バスの前方にキタの巫女、最後部にミナミの巫女。東にあたる位置にいたのがニチ・ケイトで、西がミズノだ。もし単純にこの4人が巫女という設定ならば、次回から本格登場のミズノに加えて、ケイトの存在にもこれまで以上に注目しなければならないだろう。スガタをめぐるワコ、ケイト、それにベニオらの恋のさや当てに加えて、サイバディや巫女に関する秘密や綺羅星十字団の今後についても、非常に重要な役割を演じることになると思われる。




ところで今回ほとんど役に立っていなかったスカーレットキスことベニオだが、彼女もまた美少年マニアであるらしいことが発覚したのには、大笑いさせられたw 彼女の恋は一途なものだと期待してたのに、じつはそんな薄汚れた目でスガタくんを見ていたのね・・・。写真を貼りつけるピン(?)のハートマークや、ボードの「My Collection」の文字が、ダサすぎて面白いw


とはいえあの写真の量や、今回はじめてスガタの写真が貼られたことを考えると、恐らくは第1フェイズのチュウで支配下に置いた男性を、あそこに貼っているのだろう。オカモト・ミドリと同じ真性のマニアには、まだなっていないようだ。彼女の恋心が果たしてどれほど真摯なものなのか、今後の描写を楽しみにしておきたい。




----


それでは、今回は以上です。


にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加中です。拍手の代わりですので、読んで良かったとちょっとでも思ったら、クリックしてもらえると嬉しいです^^




この記事へのコメント

この記事へのトラックバック