神のみぞ知るセカイ 第５話「IDOL BOMB!!」

これは良い暴走アイドル。




・中川かのん編、始動


今回から再び新章が開幕。こう言ってはなんだが、キャラデザだけならあざといくらいに可愛いキャラクターで、公式サイトやＥＤ時に見せる天真爛漫な表情から、エルシィの存在を脅かすタイプになるのではないかとハラハラしていたのだけど、まったく方向性の異なるキャラでひと安心。正統派ヒロインはエルシィだけで十分ですとも、ええ。


さすがに突然スタンガンを突き付けてくる暴走っぷりには笑わせられたが、その前に屋上で独り語りをしていたり、桂馬の存在に気付いて語りかけてくるシーンなどでは、彼女がどれだけ今の境遇に酔っている天狗なのかということが良く伝わって来る描写。とくに桂馬とのファーストコンタクト時は、まるでドラマのヒロインでも演じているかのようなセリフ回しや仕草を見せて、自分から喜んで、造られたモノとしてのアイドルに成りきろうとしている。彼女のバックボーンを何も知らなくても、あるいは表情等に努力の跡すら見出せなくても、「あぁ、この子はアイドルになろうと全力で頑張ってるんだなぁ」という印象を強く抱かせる、巧みな演出が見事だった。


もちろんココでは、自身を偶像に仕立て上げようとする彼女の努力には負のイメージが付きまとう。それによってこのエピソードが、アイドルとしての立身出世を目指すド根性物語などではなく、ニセモノの自分を飾りたてることの危うさを基軸とした人情ドラマになるのであろうと予感させる。実際にその予感はＢパートに入ればいよいよ強くなったわけで、桂馬がかのんを救ってあげることができるのか、次回の展開が非常に楽しみになってくる。まさか体が消えることになるとは思わなかったけど、彼女にいったいどんな秘密があるのか。次回予告の、ドットかデータかたんぱく質かって話が、関係してくる？（←「じゃあ君のスキなあのコはなんだ？タンパク質か？カルシウムか？」には、大爆笑させられたｗ　うまい言い方をするなぁ。）




・桂馬とエルシィの存在意義


先日、「ヨスガノソラ」第５話の感想を書いた時に、何人ものヒロインを順繰りに攻略していく（しかも物語がいちいちリセットされる）というオムニバス的形式の作品において、それぞれの短編エピソードを全体としてひとつの作品と認識させることの重要性を述べた。


すなわち、普通なら全体を通してひとつの物語が描かれるところを、あえて物語の進行を細切れにし、それぞれのエピソードをほぼ独立させるカタチを取るのがオムニバス形式であるが、このやり方では各エピソードをそれぞれのやり方で楽しむことは出来ても、全体としてひとつの作品と認識させることは難しい。独立した物語をただ順番に並べるだけでは、それらをひとつの作品タイトルによって繋ぎ束ねることの意義が、視聴者にはいまいち伝わりにくいと思う。そこで例えば「アマガミＳＳ」であれば、他ルートのヒロインを必ず登場させることで、どの話数を切り取って見ても全てが「アマガミＳＳ」という作品であると認識できるようになっており、作品がバラバラに切り離されてしまうような違和感をぐっと抑えることに成功していると思うのだ。


そういう観点から見ればこの「神のみぞ知るセカイ」という作品も、複数のヒロインを次々と攻略してはリセットを経験する、オムニバス的形式の作品だと言うことができようし、またルートの攻略後には、そのヒロインは（現時点では）物語の進行にほぼまったく関わって来ない。恋愛ドラマと言うには実にドライな設定を採用しており、逆にいえばそれが今作の持つ非恋愛ドラマ的な要素、ヒロインとの心の交流では無くあくまでゲームのクエストをこなす過程を楽しませるスタンスとして確立されているのだが、しかしこのようなスタンスでは、本来であれば各エピソード同士の距離感を強く意識させられてしまい、作品をちぐはぐなパッチワークとして認識させてしまいかねない。


そこで非常に重要な役割を担っているのが、桂木桂馬という主人公の一貫した独自性であり、また彼を盛りたてるエルシィの存在だ。


桂馬もエルシィも、第１話の段階からかなり個性的なキャラクターとして確立されている。いちおう二人は記憶を消去されないということで、設定だけからしても全てのエピソードをつなぐ存在ではあるのだが、いまのところその設定が何かの意味を持ったことは無く、むしろ彼らの性格なり言動なり特殊性なりが、どんなシチュエーションでも等しくパワフルに発揮され続けているという点を持って、あらゆるエピソード、あらゆるシーンやカットをすべて「神のみ」という作品として成立させている。


興味の無いリアル女子に恥を忍んでアタックしなければならないという基本構造。ギャルゲーから導き出した高尚なのか阿呆なのかよく分からない格言と、それを訴えかける時のぶっ飛んだ演出。「見えたぞ、エンディングが！」という決め台詞や、秀逸な次回予告。桂木桂馬はこうした記号的なファクターの集合体として描かれつつも、しかし下野紘の特徴的な声色や演技によって魂を吹き込まれ、生き生きと我々の前にその生き様を披露する。一方でエルシィは、典型的な天然ボケの萌えキャラとしての方向性を、しかし予想を飛び越えた破壊力でもって、その仕草の隅々に体現している。彼女の邪気の無い底抜けの可愛らしさ、千変万化の表情や態度、元気いっぱいに画面中を飛び回るその姿が、これぞ「神のみ」の醍醐味だと言わんばかりに、我々の前に突き付けられる。


攻略対象のヒロインは、今回ですでに四人目に入った。わずか１週間前に放映されたばかりの飛鳥空のエピソードでさえすでに過去のものとして消化してしまったにも関わらず、依然として今作が「神のみ」であり他の何物でもないのだと違和感なく認識できるという点は、まさに主人公・桂木桂馬と、そして真のヒロイン（？）たるエルシィの存在があったればこそだろう。この二人を全力でフィーチャーしている点に、この作品が決してブレることなく突き進んで行ける、最大の要因があるのではないだろうか。




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それでは、今回は以上です。



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