魔法少女まどか★マギカ 第2話「それはとっても嬉しいなって」

申し訳ないけど、『ウテナ』についてちょっと多く書いてしまった。



・RPG的ストーリー展開の快感


今回の30分間は、魔法少女というポジションとその使命についての解説を、きわめて懇切丁寧に行ってきた。非常に手堅い作劇をしているなぁと思う一方で、大人向けアニメでわざわざこういう展開を採用しているということに、何か意図を探りたくなる。


今回のストーリー展開がとても分かりやすく丁寧な印象を受けたのは、それが我々にとってとても馴染み深い、ロールプレイングゲーム的な展開を採用していたからではないかと思う。しばしばRPGで採用される冒頭部分の展開と、極めて似通ったプロットで構成されていたのが、この第1話・第2話だった。


すなわち、まず最初は作品のインパクトを最優先に、ショッキングな出来事を熱のこもったイベントによって描き上げ、プレイヤー(視聴者)を作品世界にのめり込ませる。これが第1話だ。続いて、いよいよ本編が開始となり、ゲームシステムを初心者にも分かるよう丁寧に解説するキャラが登場し、また簡単なクエストやダンジョン攻略を行うことで、プレイヤーにいちはやく作品のプレイ方法や面白さに馴れてもらおうと企図する。もちろん、ただゲームシステムを説明するだけではなく、ちゃんと次のイベントに向けた伏線を配しながら、なるべく一人のプレイヤーも飽きさせたり置いてきぼりにすることなく、ドラマの盛り上がる中盤パートに導いて行こうという工夫が凝らされることになる。今回の第2話で行われた展開が、ちょうどそんなトコロだったのではないだろうか。


とくに、巴マミに連れられて魔女退治に向かう一連のシーンなどは、まさにRPGにおけるダンジョン攻略そのもので、なんて分かりやすい展開を見せてくれるのだろうと、笑みさえこぼれてくるw こんなコテコテの展開を、しかしAパートでは日常風景とマミの部屋での設定解説シーンを交互に見せたり、あるいは暁美ほむら との一定の距離を常に保持して緊張感を保ったり、もちろん異空間の圧倒的なビジュアルや戦闘描写の素晴らしさなど、随所に見せる作劇・アニメーションの巧みさによって、十二分に補ってしまっているのがすごい。とにかく面白くて、興奮しっぱなしだった。


だいたい、鹿目ママをあんなにカッコよく見せてる時点で、エンターテイメントとしての今作の勝利は約束されたようなものだと思うw 決してギャグの多い作品ではないが、しかし適度に和やかなムードを演出するための、その発想のセンスが素晴らしすぎる。なんでもないシーンのひとつひとつにも決して気を抜けない作品として、驚くべき密度を保っているなぁと思う。




・丁寧な解説の裏に垣間見えるモノ


少なくとも今回語られた様々な設定は、物語をより理解しやすくすると言うよりはむしろ、主人公グループと暁美ほむらの対立関係を前提とした上で、では ほむら とマミ達では何が違うのかと問いかける足がかりとして、提示されているようだ。今のところ、魔女退治それ自体はさほど物語として機能しておらず、あくまでドラマの主軸は、まどか と ほむら の関係性にある。同じ魔法少女でありながら時には対立にまで発展するそのすれ違いの原因を探ることで、まどか と ほむら、ひいては4人の人間関係を、ドラマの中心に持ってくることができるわけだ。


主人公グループと ほむら の対立関係は、単なる二項対立ではない。まどか と ほむら、さやか と ほむら、マミと ほむら、この3項のそれぞれで、微妙に問題としていることの中身が違う。美樹さやかは、単純に ほむら をいけすかない奴だと敵視している。マミと ほむら は、グリーフシード(魔女の卵。直訳すると「悲嘆の種」ってトコか)という戦利品をめぐって対立している。そして主人公・鹿目まどか と ほむら は、なんだかもっと根本的な”何か”をめぐって、すれ違いや対立があるようだ。この”何か”を提示することが、今作の当面の(そしてひょっとすれば作品全体の)主題になるかもしれない。


とくに、屋上のシーンで さやか が提示した”幸せ馬鹿の願いごと”についての問題提起は、まどか と さやか が取り組むべき課題であると同時に、まどか と ほむら の生き様の交錯する点を探り当てるための、重要な手掛かりとなるのに違いない。


幸福の真っただ中にいてボーっと生きている まどか と さやか の二人が、命を賭けてでも叶えたいと思える願い事を見出すのは、たしかにひとつのドラマであろう。そもそもこの問いかけは、自分達の安穏とした暮らしぶりを嘆いては見せるものの、本当に命を賭けてまで叶えたい切迫した願いを持っている者に魔法少女の契約を迫ることは脅迫に他ならない、という一点の真理によって、その悩みのいかに傲慢であるかということが指摘できるわけだ。この二人が、魔法少女として命を賭けて戦う決意を固めることそれ自体に、その半端な生き方を根底から見つめ直す重要な意味を込めた展開はじつに興味深い。


一方で、なんだか殺伐とした精神状態で、しかし底の知れぬ使命感によって突き動かされているようにも見える ほむら の願い事が一体何なのかという問題。この問いは、まどか と ほむら、二人の主人公の、相違点よりはむしろ共通点として提示されることになるのではないかと思う。というよりも、第1話冒頭で見せたような二人の運命的な接触へと まどか が辿りつくためには、自分自身の願い事を見つけ出すと同時に、ほむらの願いも解き明かして見せることが必要なのではないかと思う。




・暁美ほむらは、薔薇の花嫁か?


・・・と、ここでちょっと連想したのが、『少女革命ウテナ』における、主人公・天上ウテナとそのフィアンセ・姫宮アンシーの関係性だ。『ウテナ』では、一見ごく普通の学園生活の中で、単なるクラスメートとして邂逅していたように見えたウテナとアンシーが、じつは幼少時に非常に運命的な出会いを果たしていたことが描かれた。そこでは、世界からの不条理な責め苦に悶え苦しむアンシーを、自分が救いだして見せると決意したウテナの姿が描かれ、しかし大人になってウテナはそのことを忘れてしまっている、というトコロに二人の微妙な関係性が提示されることになったのだった。そして、どうも まどか と ほむら を見ていると、どこかウテナとアンシーの関係を彷彿とさせるものがある。


第1話冒頭で ほむら は何か得体のしれない存在と戦い、しかも負けることが運命づけられているかのようなシチュエーションだ。そして、抗いがたい敵に散々に痛めつけられている ほむら を見て、まどかは「ひどい・・・」「そんな、あんまりだよ!こんなのってないよ!」と叫ぶ。敵の攻撃を受けて、巨大な木の枝にぐったりと背を預けるほむら。・・・見返してみれば、なんと『ウテナ』っぽいワンシーンであったことか!


そう言えば第1話の最初に舞台の幕が上がる演出を挿入したのもそうだし、驚くほどに今作は”『ウテナ』っぽい”要素が散りばめられている。これはすでに先週から各所で指摘されていたことで、とくに第1話の段階ではビジュアル面(街や建物の非現実的な様子、近未来的というよりはむしろ幻想的とさえ言える学園風景、一点に向けられた無数の銃など)の方向性に、『ウテナ』っぽさが目に付いた印象があった。


だが第2話までの段階だけでも、絶望を撒き散らす魔女というモティーフや、王子様=魔法少女と読み替えられる可能性、契約の証たるソウルジェム(=薔薇の刻印?)、戦う意味やその代償としての願い、主人公とヒロインの因縁ゆえのすれ違い、・・・等々、ただビジュアルだけでなくその物語や設定の段階から、『ウテナ』を彷彿とさせる要素はいくらでも汲み取ることができる。あるいは”暁美”ほむら、などという名前も、やはり強烈にルシファーを連想させ、アンシー的でありながらディオス的とも言える ほむら のキャラクター性を象徴しているかのようだ。


ただし、例えば『ウテナ』と同じ脚本家の作品である『輝きのタクト』が、よりいっそう『ウテナ』に即した作品として組み上げられているのに対し、今作は様々なモティーフやイメージに共通性があったとしても、それが意図してのものかどうかが分からない程度には異なる作品として、確立されようとしている。仮に今作が『ウテナ』のフォロワーだとしても、直接かつ正統の後継作として作られている『タクト』と、間接的で異端もしくは亜種としてのリスペクトを表明する『まどか★マギカ』の差異は明確だろう。そしてこの文脈で、今作の今後の展開を受容し解き明かそうとする姿勢は、決して的外れとは思えない。


むろん、時代もスタッフもまるで関係ない作品を取り上げて作品考察の手掛かりとするのは、決して健全な視聴態度とは言えないのかもしれない。しかし、きっとこの作品は、ビジュアルだけが大人向けな単なる魔法少女モノの物語にとどまるとはどうしても思えず、あえて今こうしてこの物語を世に問う意味や意気込みが、きっとあるはずだと思う。より深く深く、今作の描きだそうとする物語の本質に迫ってゆくために、『ウテナ』のファンでありシャフトのファンでもある自分としては、今後もこの視点をひとつの土台としながら、残り話数を視聴してゆくことにしたいと思う。


この試みがどれだけ上手く行くかはまったくの未知数だし、そもそもこのスタンスを貫き通せるか否かすらアヤシイのであるが、しばらくはこの着想を大切にしておきたい。あまりウテナウテナ言うのもうざったいだろうと思いますが、よろしくお付き合い頂ければ幸いです。




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それでは、今回は以上です。


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