STAR DRIVER 輝きのタクト 第１５話「封印の巫女」

幸福の絶頂から絶望の淵への転落の仕方が、たまらなく巧いよなぁ。ゾクゾクさせる！




・ミズノを縛る枷と、彼女の巣立ち


今回は、あえて戦闘パートを挿入せずに、全編をヨウ・ミズノにスポットを当てたドラマによって構成してきた。おそらく８話単位でひとつの章が完成されているのだろうから、日死の巫女編のクライマックスとなるであろう次回へ向けて、ドラマが一気に加速してきた。


とくに今回は、ミズノが初めて巫女の役目や制約を意識させられることで、四方の巫女という存在の特殊性や、とくに気持ち悪さについて、”島から出られない”という制約を例にとって描いて見せた。島から出ようとして何度も港を訪れるミズノ、彼女を引きとめる目覚まし時計のアラーム音が、こんなに怖ろしい響きを持ってくるとは。


自由奔放な生き様をたくさんの人から羨ましがられているミズノ。そんな彼女が、じつは誰よりも重い枷に縛り付けられていたのだと突き付けられるダイナミックな転調が、じつにショッキングで、惹き込まれる。四方の巫女としての枷を知らなかった時でも、ミズノは母親の存在によって、すでに十分以上に縛られ、苦しめられ続けてきた。自由に飛びまわっていたかに見えた鳥は、実際には足に鎖を結ばれていた。そしてそんな制約から逃れようと決意した途端に、じつは彼女のいる場所は狭い籠の中だったということを、初めて自覚したのであった。




こうなると、冒頭、かつて助けた雛鳥がついに大人になって巣立って行ったのが、いかに象徴的な意味を持っていたシーンだったかというのを痛感させられる。巣から落ちて自由を失いかけた雛鳥は、タクトが手を差し伸べたことによって救われ、いまではどこまでも飛んで行ける自由を手にすることができた。ではこのとき、やはり窓から飛び出してタクトに抱きかかえられたミズノは、やはりタクトの力を借りて、本当の自由を手に入れることができるのだろうか？


だが、巣立ちの日を迎えるということはすなわち、大人になるということだ。大人になるということは、巣の中の狭くとも安寧とした空間の中で、対価の要らぬ幸福を受け取る権利を有していた青春時代を、放棄するということでもある。雛が巣立ちを迎えるためには、自分の力で羽ばたき、自分の手で餌や寝床を見つけられなければならない。


またこの作品の場合、青春時代を象徴する行為の中心部分を、サイバディを用いた決闘ゲームが占めている。王も、巫女も、戦士も、みな青春時代を謳歌する少年少女たちだ。そう考えると、ミズノの巣立ちとはすなわち、巫女のチカラや使命を捨て去り、青春を謳歌することを卒業することであるのかもしれない。その予兆はすでに何度も描かれていて、タクトの想い人が自分でなかったことを目の当たりにし、母が突然に来訪して、さらに巫女としての制約も思い知らされた。すでにミズノは、何の努力も代償も無しに幸福を享受することが許されなくなっている。巫女としての正体が暴かれたこととは関係なく、すでに彼女は、巣立ちの時期を迎えつつあったのではないだろうか。


大人になるということは、必ずしも本人にとって歓迎すべき事態とはならない。タクトによって救われた雛が巣立っていったという言及が、ミズノの今後をどのように暗示しているのか、次回の展開に注目しておきたい。




・次の相手は誰？


今回描かれたエピソードは、ミズノ自身に関する問題だけではなく、やはりストーリー全体に大きく関わることであったのは間違いない。日死の巫女の正体を知ったワコ、とうとうミズノに接触を試みたイヴローニュ。この二人や、彼女たちと関係の深い主役キャラクターたちがどのように動く展開になるのか、これは大いに見ものである。


とくに最も注目すべきなのはヘッドの動きだ。前回、彼が綺羅星の一員ではないかとスガタに疑われることになったが、それもすべて織り込み済みで、スガタの詰問を待つ前にヘッドはどんどんと話を進めて行ってしまう。絵のモデルにならなければいけない、などと断定してみせたのも気になるが、第一隊トップの座を自らスガタに勧めてみせり、。おまけにリビドーを持っているがゆえに誰も自分には勝てないなどと、すごい自信を見せつけた。


いくら主人公が勝ち続ける作品だからといって、ヘッドのことだ、いざ彼がサイバディ戦に挑めば本当にタクトを倒してしまうのではないかと思わせられる。わりと口先だけで息まいていただ今までのスタードライバーたちとは、まったく異なる展開の決闘を見ることになりそうだ。


そしてこんな台詞を吐いたのだから、次回、日死の巫女編のクライマックスを飾る決闘相手は、きっとヘッドなのだろう。そして物語が進むためには、ヘッドとタクトの勝敗はともかく、ミズノの封印が破られなければならない。しかしそうなると、ではタクトはとうとう敗北を経験することになるのか？　そんな光景はちょっと想定しづらいし、なによりワコを賭けてスガタと戦う約束までしていた手前、スガタ以外の人間に敗れて欲しくはない。そしてきっと作り手は、そんな視聴者の期待や予測を全部計算し尽くした上で、こっちの想定には無い嫌らしい作劇をしてくるのではないかなぁと思うｗ　どうやら、タクトの持つシルシについても何か重大な言及がありそうだし、どうなるかはまったく分からない。


ともあれ、まずは中盤最大のクライマックスとなるであろう次回エピソードを、全力で楽しみにしたい。今回やらなかった分、戦闘パートの気合いの入れ方にも要注目だ。



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＜追記＞

↓「隠者のエピタフ」さんの、マリノ幻影説。な、なるほど・・・！　気付かなかったなぁ。

隠者のエピタフ　STAR DRIVER 輝きのタクト 15話「封印の巫女」



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それでは、今回は以上です。



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