STAR DRIVER 輝きのタクト 第16話「タクトのシルシ」

このラストシーンは反則!!




・日死の巫女編完結、号泣のラストシーン


だめだーこれ。本気泣きしてしまった。マリノが虚像であることについては前回すでに各所で気付いた方がいたようだが、実際にはその予想のさらに上を行く、あんまりにも感動的なエピソードとなったのではないだろうか。


生まれ育った故郷を捨て、また初恋も手放して、暖かい揺り籠を後に残し新しい人生の第一歩を踏み出したミズノ。夢のような日々に後ろ髪を引かれながらも、それを断ち切るかのように決意の言葉を呟く彼女が切なくて。そんな船出にあたって、すでに第1フェイズを失っているはずの彼女に、しかし奇跡は訪れた。


一瞬悪夢を想起させる着信音と共に、マリノが電話越しに話しかけてきたときから、もう涙腺が緩みっぱなしだった。母にちゃんとお別れを言わなければ、マリノと再会できない。虚像を作りだしたミズノがそう言ったということは、その通りにしか事が進まないということだ。どこにいるかも分からないマリノの電話越しの声が、彼女の存在の儚さと虚ろさをよりいっそう実感させ、もはや二度と逢うことの叶わない、遠い存在になってしまったのではないかと思わせられる。マリノの面影には、そして彼女を呼ぶミズノの涙声には、これまでこの姉妹がタクトたちと過ごしてきた輝かしい青春謳歌の時間を想起させ、すでに終わってしまった幸福の時間への恋慕を強く強く抱かせるものだった。


だからこそ、まったく予想外の、完全な不意打ちで、マリノの”なま”の声が響き、本物のマリノがミズノの後ろにゆっくりとその姿を現したときは、本当に我が目を疑った。思いがけない、まさに奇跡と言っていい瞬間。それを目の当たりにできたことの喜びと感動が、堰を切ったように胸の中から溢れ出て来る。ずるい。こんなの反則だ。


このラストはまた、EDのカッコいいイントロがかぶせてあるのが、たまらなかったなぁ。『海月姫』とかもそうだったんだけど、本編ラストにEDがかぶせてあるのって、大好きなんですよ。(※本編の真っ最中にスタッフロール流すのはまた別問題) 日死の巫女編が今回で完結ということで、作劇も戦闘シーンも見るからに凄く気合いが入っていたけれど、それにも増してやはり人の心を動かすのは、演出だと思う。脚本上の演出、映像上の演出、そして音響による演出、このどれもがピタリと噛み合わさって、最高のドラマを具現化していた、実に実に見事な幕引き。そしてまた、こうやって、頭や胸の中にグワーンと余韻を響かせるような絶妙なラストシーンは、『少女革命ウテナ』で何度も体験させられたことで、10代の頃のそうした原体験に近い感覚を再びこうして味わうことができたというのは、もう本当に貴重なことで、こればかりはアニメ、それも一部の作品でしか味わえないものだ。だから、アニメはやめられないんだなぁ。





・明らかになってゆく銀河美少年のチカラの秘密と、作品テーマ


今回は、ミズノが巫女としての封印を破られる点に最大のポイントがあったわけだが、それに関連して、また様々なことが語られた回でもあった。少しづつ少しづつ、作品の構造が見えてくる。


とくに今回一番目立ったのは、とうとう登場した、タクトのじっちゃんでしょうw やはり銀河美少年としての資質のあったおじいさんが、タクトにシルシを「譲る」シーンが、じつに印象的だった。この時点で初めて譲られるということは、この時まで、じいさんってば現役の銀河美少年(?)だったのだろうか。本来ならばタクトの父という人に譲っても良さそうなものだが、タクトを捨てたという事実が単純にシルシを受け継ぎたくなかったからだとは到底思えないから、単に資格を有すことが出来なかったか、あるいは別の複雑な事情があるのかもしれない。劇中の会話からすれば、タクトの父は南十字島にやって来ていて、タクトはそれを追いかけて島へ渡る決意を固めたと見えるから、お父さんがサイバディ等と無関係なはずはない。ひょっとして、綺羅星十字団の創設に深く関わっていたりするのではないか。


あるいは、銀河美少年になるにはその資格として、「輝きのカケラ」を手に入れなければならないらしい。これはたぶん純粋に精神的なもので、どちらかと言えば慎重派だった幼いタクトが、友人の死をきっかけに大胆な行動に出たという変化にそのまま象徴されている。今作の掲げる青春像は何かというのを第1話からずっと問題にしてきたが、綺羅星の言う「リビドー」や、おじいさん達の言う「輝き」という語にどんな意味が込められているのかを追いかけて行けば、おのずとその実態が見えてくるだろう。


すなわち青春の謳歌とは、ただ恋や友情や夢を追いかけるだけではなく、それらの情動に共通する生への熱意が問題とされる。「生きたい」と強く願い、やりたいことに全身全霊で打ち込み、なおかつそれが”やるべきこと”と一致するような生き方、それこそが、今作の掲げる青春謳歌であり、人生賛美であると言えよう。この、「やりたいこと」と「やるべきこと」の一致、というのは非常に重要な問題で、アニメではどうしてもヒロイズムの具現化として描かれてしまうが、実際には人間的実存に対して哲学・文学の両面から探究が試みられてきた命題に対する、榎戸なりのアプローチであると思う。これは『少女革命ウテナ』において、ヘッセの『デミアン』をモティーフとしてすでに一度取り組んでいるものだが、今作は改めてそれを、サン=テグジュペリの作品をインスピレーションとして描こうとしているのだろう。


しかしながら、『デミアン』と『星の王子』ではそのスタンスが大きく異なるように、『ウテナ』と『タクト』もまた、近しい命題を掲げながらもそのアプローチの方向性はまったく違う。おおまかに言って、『ウテナ』は社会に縛られて生きる人間の存在に関してまったく悲観的で、自己超克と荒野への逃避願望とが、幸福を失ってでも孤独に真実の生き方を模索しようとする、悲壮感溢れる決意によって語られている(これは幾原監督の趣味だろう)。一方で『タクト』の場合は、やはり真実の生き方が模索されてはいるが、人間の輪の中で、幸福と勝利を掴むためのあくなき情動を全肯定する、極めて楽観的かつ現実志向の生き方を提示しようとしている。作り手の違い、対象とする視聴者層の違い、時代や作品スタンスの違いなど、さまざまな要素はあるだろうが、両作を比較して悲観的理想主義と楽観的現実主義の対比と評することは、できるのではないかと思う。


作中で語られている「輝き」という言葉、そしてレシュバルのリビドー吸収攻撃をはねのけるだけの溢れるリビドーを見せつけたツナシ・タクト。この主人公の生き様が、現代においてどれだけ説得力あるメッセージを発信し、どれだけの若者の心を動かし、人生に影響を及ぼすことが出来るか。物語はまだ2/3が経過したばかりである。残り話数でどれだけのものを見せてくれるのか、大いに楽しみにしておきたい。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

yuki
2011年01月23日 21:29
いつも力の入った文章を楽しみにしています。
タクトは「青春の謳歌」というテーマにおいてまったくぶれず、主人公の性格からしてずっと明るいムードで話が進んでいて素晴らしいと思います。
きっとこの作品はタクトというただ一人裏表のない少年がすべての「仮面」=サイバディを打ち砕く物語なんだと思います。タクトが無敗なのは、青春の輝きを持つ人間は決して仮面をかぶった人間には負けない、というメタファーなのではないでしょうか。
今回のじいちゃんの「眩しいぜ、銀河美少年」というセリフが青春を生きることの素晴らしさと、じいちゃんの過ぎ去った、しかし確かに存在した青春を感じさせてくれてたまらなかったですね。

文章だけでレビューされるサイトは貴重なので、これからもぜひ頑張っていただきたいです。
おパゲーヌス
2011年01月24日 03:17
>yukiさん
はじめまして、コメントどうもありがとうございます。楽しんでいただけて光栄です。

タクトが仮面を打ち砕いて行く物語、という線はとても良い見方だと思います。実際、スガタの仮面をはがして見せたのもタクトですし、彼の人間性が他の人々を外面的・内面的に突き動かしていく様子は、今作のもっとも重要なメッセージのひとつでしょう。でも、タクトが本当にこの見たままの性格で最後まで描かれるのかどうか、それはちょっと分からないですかね。『ウテナ』ファンとしては、まだまだ慎重にならざるを得ないw

じっちゃんは確かに、青春を謳歌していた顔をしていましたw というか、今作は10代の青年達によって描かれる物語ですが、作品テーマ的には、実年齢とは関係ない「青春の謳歌」というものを当然見据えていると思うので、タクトのおじいさんに代表される、青年の心を持った大人の描写にも要注目ですね。一方で、青年なのにすでに擦り切れた、悪い意味での大人ぶったキャラの存在も目立つので、このあたりの精神性の対比や交錯は、今後も大きな見どころでしょう。

>文章だけでレビューされるサイトは貴重なので、これからもぜひ頑張っていただきたいです。

どうもありがとうございます! 読みづらい記事でいつも申し訳ないと思っていますが、色彩センスが無いのでご勘弁頂ければ幸いです^^ その代わり読み応えのある内容を目指して頑張りますので、今後ともぜひご覧になって下さい。
KUKKI
2011年01月24日 06:08
はじめまして、いつも読ませて頂き、感心することばかりです。
ウテナとタクトを悲観的“理想”主義と楽観的現実主義と位置づけるとは、大変興味深い指摘でハッとさせられました。
この作品を視聴すると“気づき”の重要さ、面白さに驚かされます。
それも昨今「フラグ」と言われるようなあからさまな伏線ではなく、メタファーであったり、設定の妙であったり、単に微細な表情の変化であったり。
しかしすべてに気付くことは難しいですし、人によって視点が異なるかと思います。
そんな作品に対し、設定上の考察というよりは脚本・演出の流れを主眼に綴られた考察・感想がとても面白く、これからも期待しています。
個人的には、主人公タクトの才能は血筋によるものでしょうが、実は割と普通な少年であったこと、しかしその才能の発露と生き方を決定づけた大切な友人がいたことが実に青春ドラマらしく、とても印象的でした。
ぽんず
2011年01月24日 11:03
はじめまして! 昨日のスタドラが面白すぎて、感想サイトを漁っていたところ他よりも突っ込んだ部分を考察されているこのサイトにたどり着きました。即ブクマしました。

やはり今回のキモはミズノが前を向いたことで、再びマリノが現れたシーンのカタルシスですね。見てる時は訳も分からずただ泣いてましたが、後で色々考えてみると単なるご都合主義ではなく計算された演出であることが分かってまた涙が…。
ウテナでもそうでしたが作中の謎について一々説明してくれる程親切じゃない、でも深読みしてみるとおぼろげながら答えらしきものが見えてくるような気がする。これが榎戸脚本の真骨頂だと思います。

ウテナとの違いを顕著に感じるのが、青春がテーマなだけあって物語の終わりが爽やかで、清々しい余韻に浸れることが多い点ですね。ウテナでは鬱屈したモヤモヤが多かった気がします。もちろん、それがいいんですが。

最近尻上がりに面白くなっているスタドラ。ウテナ並みの傑作になってくれるといいなと思っています。

おパゲーヌス
2011年01月25日 01:03
>KUKKIさん
はじめまして、どうもありがとうございます。

>設定上の考察というよりは脚本・演出の流れを主眼に綴られた考察・感想がとても面白く

こう言って頂けるのは何よりも嬉しいです。作中の描写から、まだ明かされてない設定や今後の展開を推理するのも面白いですが、それに関しては大変鋭い方々が多いので(それこそ、なんでそんなトコに気付くの?っていうレベル)、不得手な自分はこういうカタチになっています。

『タクト』における青春像の描き方は、今回タクトがただの天然で生き生きと輝いているわけではなく、自分で意識を変革して勝ち取った輝きである、明かされた時点で、まさに現実重視だと思った次第です。『ウテナ』では、青春を謳歌してるキャラはみんなどこか胡散臭かったり子供っぽかったり悪びれていたりと、「青春」そのものを懐疑的に見つめていたような印象があったので、いよいよ『ウテナ』と『タクト』の違いが明確になって来たと思います。

タクトの姿がとても印象的に描かれていることが、今の時代に向けてどういったメッセージ性を内包しているのか、よくよく注目しながら見て行きたいです。
おパゲーヌス
2011年01月25日 01:13
>ぽんずさん
はじめまして、コメント&ブクマどうもありがとうございます。光栄です。

>ウテナでもそうでしたが作中の謎について一々説明してくれる程親切じゃない、でも深読みしてみるとおぼろげながら答えらしきものが見えてくるような気がする。これが榎戸脚本の真骨頂だと思います

まさにその通りでしょうね。そしてそのようなスタンスを、脚本だけでなく映像演出のほうでも行っているので、余計に、不親切で戸惑う部分も含めて奥深い味わいがあって、たぶん何度見ても毎回新しい発見のある作品になっているのではないかと思いますね。

『ウテナ』と『タクト』の決定的な違いはまさに、清々しさ、明るさにあるでしょうね。どこまでも負の感情の連鎖を絡ませてドラマを作って行く『ウテナ』と、最終的には性善説に基づいた清々しい幕引きを見せる『タクト』。自分の趣味としてはやっぱり『ウテナ』が好きなんですがw 

でも本当に、あのレベルの傑作になってくれることを心から望んでいます。もう15年近く経とうとしているので、いいかげん、『ウテナ』を越える作品が出てきて欲しいところです。

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