放浪息子 第5話「夏のおわりに ~Long, long shadow~」

そうめんにミカン!? なんだそれ?w




・倒錯劇の行方と、よしのの怒り


税所先生の”何も分かってない”模範解答的な提案によって、せっかく二人きりで過ごせる心づもりだった夏休みの1ヶ月間を、余計なオマケや恋敵も交えての脚本作成に充てなければならなくなった千葉さおりんの憂鬱たるや、いかばかりのものだったであろうか。怒ると台所のシンクをごしごし洗いはじめる彼女は、一人の女の子としてそれはそれは可愛らしいものでは、あったのだけれど。でもそんなタイミングに出てくることは無いよ、二宮くん?w


高槻よしのが激怒したのは、更科さんの態度以前に、二宮が軽薄な調子で二鳥くんの女装趣味を暴いたこともあるけれど、そんな軽薄なヤツに大事な人の秘密を打ち明けていたさおりんに対しての、激情なのだろうなぁ。そしてだからこそ、あれだけ激しく怒っておきながら、千葉さおりに二鳥くんは預けておけないと思って、脚本作業からは離れなかったのかもしれない。よしのとさおりんは、たまに話せば喧嘩になるし、今回のようにほとんど直接的なセリフのやり取りをしない。二鳥くんを中心としたこのグループには、もうこれ見よがしにはっきりと、好き嫌いの感情が会話や視線のやり取りの中に表れてきているが、ヒロイン二人の関係はまさにその典型だ。というか、さおりん一人があからさまな態度を取っているのだけど。今回は、さおりんの”二鳥くん以外みんな嫌い”という態度が、文化祭へ向けての劇作りという場を借りて改めて強調された回だったと言える。


けれど、ではさおりんの視点から考えてみると、本来この劇は二鳥くんの秘めた願望を吐露する場であり、抑圧され続けてきた彼の輝きを取り戻す場であったはずだ。そして、高槻よしのは普段から二鳥くんの理解者としてのポジションを獲得している(それは今回のエピソードでもことさらに強調されていた)のに、自分にはそれが出来なかったから、この倒錯劇を通じてさおりんは、自分なりのやり方で二鳥くんと秘密を分かち合い、支えになってあげることが出来ると期待していた。それを、二人で作ろうとしていた劇にどんな意味が込められているかも判らない連中が土足で踏み込んできて、何の面白味も無いただの男女逆転劇に仕上がってしまったというのは、さおりんにとってどれほどの苦痛であり絶望であったのか。もちろん実際に皆と作業をしていた彼女は、皆で話し合いが行われるたびに、自分の理想とはかけ離れた陳腐な学芸会劇に変容されてしまうその過程を目の前で見ているわけで、しかしそれを食い止めようにもその算段が無かった(どう考えたって、さおりんの理想は他者に話して良いものではない)ということで、もう連日連夜、ストレスを蓄積していたのは間違いない。


二鳥くんの真の理解者である高槻よしのは、皆の目の前で声を荒げて堂々と二鳥くんを守って見せた。一方で二鳥くんの理解者に成りたがっている段階の千葉さおりは、皆の間でただ押し黙って我慢しているしか出来なかった。この、二人の置かれた状況や態度の決定的な違いが、現在進行しているドラマのひとつの主題であり、そして現時点では明らかに軍配はよしのに上がっている(二鳥くん自身のモノローグがそれを証明している)。この点を踏まえて、Bパートでは千葉さおりの暴走気味の孤軍奮闘が描かれているのだと思う。


脚本を書き換えるとか、花を黒く塗るとか言い出したさおりんだが、今回どうやらマコちゃんが、まがりなりにも彼女の戦友となってくれそうな決意を表明してくれた。どのキャラが主人公になってもおかしくないだけの優れたキャラクター作りをやってくれているなぁとは思っていたけれど、いよいよ群像劇よろしく、二鳥くんを脇役に追いやるだけの活躍を、さおりんやマコちゃんが見せてくれそうな展開だ。




・演じることは、かっこいい?


今回鮮烈な印象を残したのが、モデルの末広安那の撮影シーンと、そしてつくづく”分かって無い”税所先生の姿だ。


まず安那に関しては、普段がわりと仏頂面で趣味も変わってるから、彼女がただ興味本位での言動を見せる快楽主義者なのか、それとも存外真剣に、そして慎重に物事を考えながら生きているのか、なんだかよく分からないミステリアスな人物だ。今回も、二鳥&よしのペアを唐突に写真に収めたりして(噴水の噴き出る演出が面白かったw)、そのくせお揃いストラップを見せびらかせるつもりだったのか、などと色々と勘繰りたくなる言動で、我々視聴者を戸惑わせてくれた。けれど、ひとつだけ間違いないのは、彼女が”演じる”ことの意味を理解している、ということだ。撮影用の表情やポーズは、それが仕事として求められていることなのだと十分に納得し、自分の本来の顔かどうかなど関係なく、観客を騙すための演技を見せつけている。そしてそれが、めちゃめちゃキマっていて、じつにカッコいいのだ。女という武器を最大限に活用するための虚構のレトリックを、末広安那は完璧に体現しきっていると言えよう。


一方で税所先生だが、彼はまだ教員としての経験が浅く、見るからに”良い教師”であろうとし過ぎているきらいがある。模範解答を提示すべくあの手この手の子供騙しを繰り出してくる様子は、千葉さおりの悲劇性とも相まって、じつに滑稽な姿だ。恐らく彼は本来の性格も善良で温厚な人物なのだろうが、しかしそれに加えて、失敗してはいけないとか、生徒たちから良く思われたいとか、子どもたちを傷つけてはいけないとか、そんな結果ばかりを気にする底の浅い姿勢を、さおりんのような聡い子にはすっかり見抜かれてしまっている。こういう場合の大人の姿というのは、例え良かれと思ってやっていたとしても、子どもを騙そうと言う魂胆が見え透いているという時点で、ホンモノではない演技としての優しさでありご都合主義であるとして、信用の無い、カッコ悪い姿と映ってしまう。


この、演技、という行為におけるカッコよさとカッコ悪さ、二つの相反する価値感の並列は、今作の用意するテーマの根幹に関わる演出ではないかと思う。女装にせよ男装にせよ、それは演技であり、他者や自分自身を欺く行為である。しかし、今回さおりんが真に迫ったロミオを見事に”演じて”見せたことに良く現われているように、演技というのは、自分の本当の気持ちや理想のありかというものを、なんとかカタチにしようとする試みでもある。


嘘も方便とは言うけれど、真実を語ることと正しいことを語ることが決してイコールでは結ばれないのが、人間というイキモノの宿命である。誰かを欺く行為であるはずの演技は、しかしその想いや目的如何によって、また容姿や技量によって、まるで価値が異なってくるものだ。そして厄介なのは、末広安那と税所先生の対比からも明らかなように、必ずしも誰かのためを思って演じることが良い結果をもたらすわけでもないし、ただお金のために容姿や技量を磨くモデルのほうがよほど他者の心を突き動かすことができる場合もある、という不条理さだ。


今作には、何かを演じるキャラクターがたくさん出てくる。いや、人は常に何かを演じていなければいられないイキモノなのだということを、全力で描いている作品と言って良いのかもしれない。そして主人公やヒロインたちは、まさにそうした”演じること”に付随する不条理性と真っ向からぶつかり、葛藤してゆくことになるのであろう。今でもその葛藤は始まっているが、これから身体的成長に伴ってますます、他者を欺くことの技量的・倫理的・感情的問題が、浮上してくるのだろうと思う。それは今放映されているエピソードよりはずっと後に描かれるのかもしれないが、しかしさしあたっては、倒錯劇における千葉さおりと有賀誠の姿が、二鳥たちが直面するであろう問題を先取りして象徴するはずであるから、まずはその二人の葛藤や努力にしっかりと注目しておきたい。


演技をすることが、カッコよく見える人と、カッコ悪く見える人がいる。この違いって、いったい何なのだろう。今回のマコちゃんを見ていて、そんな疑問を感じずにはいられなくなった。マコちゃん自身がいままさに直面しているであろうコンプレックスに、どのような回答を提示することになるのか。マコちゃんの演じるジュリエットが、心から楽しみである。




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それでは、今回は以上です。


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