放浪息子 第4話「私の名前をあげる ~The sound of your name~」

とにかく、メガネくんが可愛い!




・不思議な魅力の脇役たち


今回も、これといって大袈裟なストーリーの転回があるわけではないんだけれど、ワンカットごとに画面にどっぷりと引きこまれる、至福の30分間。本当に好きでたまらないわ、このアニメ。


第1話第2話こそ、主役の二鳥とよしの、それに千葉さおりの3名にスポットを当てた作りになっていた今作だけれど、前回あたりからはもうすっかり、たくさんの脇役たちが完全に自分の物語を演じてくれていて、それぞれのキャラが本当に”生きている”ように見えるのが、何よりの強みではないかと思う。微妙な年齢の、微妙な感情の揺れを追いかけて行くこの作品にあっては、主人公だけでなく脇役や世界観そのものも、繊細で儚い微妙な不安定さの上に描画されなければならない。


今回とくに目立っていた脇役が、メガネくんこと有賀誠(彼は毎回目立ってるけど)と、二鳥姉のモデル仲間の末広安那か。


まず安那に関しては、二鳥弟になんだか興味津津で、わりと無表情の彼女がどういう意図で修一くんに近づこうとしているのか、「お姉ちゃんが食べちゃおっかな」的なアプローチなのかどうか、今後の動きを見ておかないと分からないけれども、少なくとも弟のことをことさら邪険にする二鳥真穂に何か言いたげな様子で興味深い。二鳥家の姉弟は、どうも普通のきょうだいとは少々異なる、どこか倒錯した愛憎が渦巻いているように傍から見えるから、そのような姉弟の関係、とくに二鳥真穂の弟に対する感情に、ぐっと踏み込んで暴き立てるくらいの役割を、安那は演じることになるのかもしれない。二鳥修一が”男”であることをとにかく強調したがる真穂がいったいどんな感情を抱えているのか、彼氏の瀬谷くんだけでなく、もう一つの方向からも攻め手が見えてきた感じで、ハラハラしつつもとても楽しみになってくる。


そんな安那がプレゼントした謎のストラップを見て気持ち悪がるメガネくんに、今回はものの見事に萌え殺されたのだけれど(笑)、彼は本当に良い道化役だなぁと思う。物語の主役には絶対ならないけれど、主役の三人と極めて近い立場にいて、心の中と外でズケズケと物を言う。これが、視聴者の目線に非常に近い場所から、しかも物語の内部構造を完璧に理解したままに発言されるものだから、劇中における有賀誠の超越性はひときわ強調されていて、彼が他のどんなキャラよりも特別な存在であることが痛感させられる。彼の台詞の一つひとつが、直接に間接に劇中の状況を一瞬で正確に象徴してしまうから、視聴者は彼を道案内として劇中の出来事をすぐに理解することとなり、かつそれらの発言がいちいち面白かったり可愛かったりするものだから、劇そのもののエンターテイメントとしての要素が倍増する。かてて加えて、彼自身も女装願望の持ち主だから、実質的にはただ一人、主人公・二鳥修一の心の内をほぼ完全に理解できるという神設定。最強だと思う。


もちろん、本人だって真剣に悩んで毎日を精一杯に生きようと戦う有賀誠くんをピエロ呼ばわりするのは、失礼ではあろう。しかしこれ見よがしな道化キャラの存在があまり好まれない(ように見える)漫画・アニメのシリアスドラマにおいて、道化としての役割を担わせるためのキャラクターとして有賀誠を生み出した、という側面はあったのではないかと推測している。そうでなくとも、彼の言動に注目することはこのドラマをより分かりやすく読み解く重要な足がかりとなることは間違いないと思うので、今後もじっくり注目しておきたい。




・男子って気持ち悪い


第1話からずっと強調されてきた点に、”オトコという生き物に感じる気持ち悪さ”がある。これは、二鳥やメガネくんが常日頃から感じていることで、現時点では高槻よしのの感じているハズの”オンナという生き物の気持ち悪さ”があまり描かれていない分、男性性のマイナスイメージばかりが先行している風な印象を受ける。


今回それがとくに印象的に映ったのは、女子トイレの中から、女装を脱いで男の子に戻った二鳥が、出てきたシーンだろう。


いま作っている劇が自分の願望の表れであることをはっきり宣言した上で、よしのにロミオ役を、そして自分はジュリエットをやりたいと告白して見せた二鳥。彼の意を決した告白を、どのように解釈したかは分からないものの、それでも並々ならぬ決意を感じて「頑張ろう!」と誓って見せたよしの。この、登場人物的にはもちろん、視聴者としても非常に気分の盛り上がる場面の直後に、トイレの流れる生々しい音がして、つい先ほどまでの美少女が、少年の格好で登場するというギャップ。夢や希望に燃えあがる心に、とつぜん冷や水を浴びせられたようにして、意識は現実の狭苦しさの中に急速に収束してゆく……。第1話のときにも行われた、あえて”萎え”させることでこのドラマの基本的な残酷さを痛感させるやり方だ。こうして描かれるのは、どこまでも醜く気持ち悪い男子という性別と、それを自分の意志で捨てたり選んだりできない人生の不条理だ。


同じことは、直後のお風呂シーンでも行われる。「ぼくの名前は、よしの。ぼくの名前は…」と自分に言い聞かせていた主人公に、姉は容赦なく「シュウ!」と呼びつける。興ざめして出てきた”修一”くんに対して、追い打ちをかけるように「オトコが長風呂すんな」と言い放つ真穂は、あまりにも残酷な運命の権化だ。この作品はこれほどまでに徹底して、主人公に、そして我々視聴者に、男子って気持ち悪い、という意識を植え付けようとしている。




しかし、こうした嫌悪感がただ性別によるものでないことは、二鳥くんにもすぐに理解されることになるのではないか。確かに彼からすれば、男性という生き物は確かに気持ち悪いだろう。けれど、では女性はどうなのかと言えば、やはりその実態は気持ち悪く映るはずで、ただ彼は女性について無知だから、女性を清らかなものと想像して憧れているのだろう。男性を嫌悪するのだって、男性の実態をまだ十分には理解できていないからだとも言える。ようは彼は、第二次性徴を経た大人の体に対して気持ち悪いと感じているというのが、より実態に即した言い方となるはずだ。彼が本当に望んでいるのは、ただ女性になることではなく、子供の頃の無垢で清らかな肉体(精神も?)を維持したがっているのではないか。


そう考えれば、少なくとも二鳥修一や有賀誠の物語とは、男女というよりは子供と大人の対比であり、子供であった彼らが自分の望まないままにどんどん大人に近づいて行く過程の、言わば脱皮の苦しみを乗り越えようとするドラマであると言えるかもしれない。むろん、乗り越えるか逃げ出すのかは今後次第であろうが、「大人になったら手術でもするの?」とさおりに問い詰められて黙っているしかなかった二鳥くんは、”女の子になりたい”という願望以上に、”大人になりたくない”と、無言のうちに語っているように見える。


それでも、どうしたって彼らが生きている以上は、一日ごと、一秒ごとに、大人になっていかざるを得ない。そうなったときに、いったいどこでどう折り合いを付けて生きて行くのか、その決断の時がどのようにやってくるのか、それがひとつの今後の見どころになってくるだろうか。それがこのアニメシリーズで描かれるか否かは分からないが、しかし彼らの願望の本質がどこにあるかを、セリフをそのまま鵜呑みにするのではなしに、よく注意して考えながら、追っていくことにしよう。




どうでもいいけど、先生余計なことしすぎww カンカンに怒ってるさおりん、可愛かった^^ 三者三様の願望や思惑が入り乱れる倒錯劇の行く末も、楽しみだ。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

白米プチョン
2011年02月05日 18:48
個人的には先生ナイスKY(笑)

倒錯劇の行方に目が話せなくなってきました。
共同で作品を作る過程で四苦八苦・二転三転するお話って好きなんです。
ついでに言うと兄弟姉妹の愛増と再生が描かれた話も好きでしてw

はっきりと「自分は女」と考えているわけじゃないし、女装以外には女性的要素をあまり見せない修一の願望が何処にあるのがイマイチつかめなかったのですが、“大人になりたくない”願望説はなるほどーと思いました。

最初は性倒錯や特殊性癖の是非を問うような話かと思いきや、それにしては女装に対する世の差別的視線や、本人の後ろめたさ、周囲の反発といったものがあまり描かれず(作品の空気に)自然に受け入れられてるなーと思ったんですが、
「脱皮の苦しみを乗り越えようとするドラマ」に重点があると考えるとそういったことにも納得がいきます。

そうするとゴール地点はやっぱり大人になる=自分の性を受け入れる事なんでしょうか、普通にいけば。

今の所話に絡んできそうで絡んでない安那や更科さんが、ストーリーをひっくり返したりしないか心配かつ楽しみです。画面は薄いのに意外とキャラ濃い人多いなぁ。
おパゲーヌス
2011年02月05日 19:46
>白米プチョンさん
ドラマとしては、関係がごちゃごちゃに混乱してゆく様子を見るのはとても楽しいですねw さおりんの崩れてゆく顔が、とても笑えました。

この作品が、いわゆる性同一性障害に真っ向から挑む作品でないことは、第1話の時点からすでに示されていた印象があって、なので障害や、あるいはジェンダー論・フェミニズム論といったものは極力頭から排除して視聴しようと思っていました。今後もその姿勢でいいかなと思っています。男とか女って身近な問題なので、ついつい先走って考えたり語ったりしてしまいそうなテーマなので、ブレーキのかけ方が重要かなと思いますね。とても難しい作品です。

ゴール地点をどう設定するかは、興味ありますね。受け入れるか、逃げ続けて本当にオカマになるか。メガネのマコちゃんはオカマになってそうだなぁw でも、そうした生き方さえも真摯に受け止めて描き切ってしまいそうな作品ではあります。

正直に言うと、いまお茶の間を賑わせているおネェ系芸能人って、女性の持つ醜い部分ばかりを集約したようなキャラばかり目立って、個人的にはいい加減うんざりしているんですけどね。二鳥くんまでがああなったら嫌だなぁと思ってしまいますが、彼はどんな大人になるのか、不安と興味は半々くらいです。

キャラが濃いのは、テンプレに頼らないで一人ひとりの生き様を丁寧に描画しているからでしょうか。『青い花』なども、想定以上に濃かったので、これはこの作者の持ち味なのかと想像しています。
白米プチョン
2011年02月05日 20:57
もしも主人公の先輩格としてそんなオネェ系の大人キャラが登場したら、ちょっと危険信号ですねw
あるいは反面教師(悪い意味ではなく僕とこの人は違う的な)として登場するなら面白いですけど。

修一達の願望の正体も気になりますが、彼らがどのようにしてその正体に気付くのかも同じくらい気になります。
おパゲーヌス
2011年02月05日 23:29
>白米プチョンさん
いちおう元オトコの女性は、すでに登場してますが、なんだかカッコいい女の典型のような、良いキャラですよねぇ。二鳥くんはあんな風になりそう、という予感を抱かせるキャラに見えます。でもメガネくんはやっぱりおネェ系でw

>彼らがどのようにしてその正体に気付くのかも同じくらい気になります

どうでしょうね、もっと年齢を重ねてくれないことにはどうしようもない気もします。1年、2年経って、それこそ男子はヒゲや声変わりを、女子は体型変化を経験した後に、それでも二鳥くんたちが女装を続けているか。その頃には、また願望が変化して、それこそ本当に女性であることにアイデンティティを見出そうとしているかもしれません。そのあたりは、漫画で読むしかなさそうですが。
白米プチョン
2011年02月06日 15:52
ユキさんでしたっけ。
主人公に近しい大人キャラとして、気になってはいます。いつ絡んでくるんだろう。

メガネくんは確かにおネェ系になりそうw
さおりんと修一のやりとりを観ていて、視聴者である自分もどかしくて突っ込みたくなる前に、彼が先んじて台詞にして突っ込んでくれて好きになれました。

>もっと年齢を重ねてくれないことにはどうしようもない気もします。

そうすれば、自覚するしないに関わらず将来への分岐点の一つとして、
今やってる倒錯劇や今後の物語がキャラ達にどう転がすのか考えながら観ようかと。
倒錯劇も2話以上引っ張るからには何かの伏線でしょうし、そもそも何故倒錯劇なんて言い出したんだ?って疑問も残ります。
作中で説明がされるかどうかもまだ判りませんが。
おパゲーヌス
2011年02月06日 19:59
>白米プチョンさん
元男性のお姉さんは、これからではなく、もうすでに(小学生編で)たくさん絡んでしまったのかもしれませんよ。今の登場の仕方を見てると、そんな感じがあります。

>何故倒錯劇なんて言い出したんだ?
うーん、少なくとも自分が高校生の頃には「そういうのもあるんだ」という認識で、倒錯劇の存在は知っていました(名前までは知らなかったけど)から、千葉さおりがポロっと発案したものが簡単に受け入れられたのも、ちょっと珍しいけれどそこまで非常識な発想ではないという認識だったのではと思います。

問題はしかし、倒錯劇をやるとなったときに二鳥くんとよしのが接近することを、さおりんが想定出来ていなかったことでしょうか。なんで想定してなかったの? とも思いますが、単純に二鳥くんの女装を大々的に見たい(あわよくば衣装合わせとか手伝いたい?)というので、浮かれていた部分はあったのでしょうかね。
白米プチョン
2011年02月06日 20:32
演劇に縁が無かったので、こういった劇がある事は放映を観て初めて知りました。
「倒錯劇」でググったら放浪息子の記事ばかりが上位に並びましたが、ためしに「男女入れ替え劇」で検索したら見事にヒット。これでよいのかな。カツラや付けヒゲで扮装するらしいですね。

自分も倒錯劇で気になった理由は、「なぜ倒錯劇なんてヘンなものを?」ではなく、男女が入れ替わる劇なんていう時点で明らかに二鳥を意識してるっぽいから、演技が上手い(=演劇経験があるか、もしくは造詣が深い?)らしい千葉さおりがあえて倒錯劇を選んだのには二鳥に対する何かの狙いがあるのかなー?って疑問なのですが、
別に深い意味はなくて素直ににとりん演じるヒロインが観たかっただけって事もありますね。


普段ネタバレとか恐れない性質なので原作に手が出したい所なのですが、これに関してはひとまずアニメの範囲で楽しもうと思っています。
おパゲーヌス
2011年02月07日 19:32
>白米プチョンさん
二鳥くんが、自分のシナリオが他人に指摘されて初めて「自分の願望そのものだ」と気付いたように、さおりんもまた、明確に存在していたはずの意図を発案した時点では自覚できていなかったのかもしれませんね。感情のコントロールの難しさは、この作品の主題のひとつでしょう。

自分も、アニメが終わるまではたとえ機会があっても原作には手を出さない方針でいます。他のほとんどのアニメについても言えることですがw アニメはあくまでアニメとして、楽しみたいです。

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