輪るピングドラム 第3話「そして華麗に私を食べて…」

さすがに、人格が変わる話ぢゃなかったw でも牛が出てきた!!


「華麗」と「カレー」のオヤジギャグ、なんでも食い散らかす謎の生物、そしてまるまる太った牛のコスプレ・・・。『ウテナ』の中でも非常に印象強いギャグネタをがっつり盛り込んできてるのは、ファンへのサービス精神か、それとも監督やスタッフがただ好きなだけなのか。いやぁ、面白すぎる。


というか、わずか第3話にして早くも、作劇のパターン化のために固定的になってきた視聴者の心構えを突き崩し、柔軟な発想から笑いや驚きを発信しようというこの姿勢が素晴らしい。第1話のときは後半に入れていた、「生存戦略ぅー!」からはじまるクリスタルワールドへの突入を、第2話第3話と連続で本編序盤に唐突に行ってきたので、もうこれだけで可笑しくて笑い転げてしまうw しかも今回はペンギン女王がお茶目にギャグシーンを演じてくれたことで、二重に驚かされた。クリスタルワールドのシーンは、第1話のときはてっきり、『ウテナ』で言うところの「絶対運命黙示録」にあたるのだと思っていたのだけど、こうなると、なるほどクリスタルワールドは、『ウテナ』における生徒会シーン(エレベーターの中で「卵の殻を破らねば」云々と語るやつ)に相当するわけだ。その生徒会シーンは話数を重ねるごとに次々と意表を突いたネタを楽しませるようになり、シリーズが中盤に差し掛かる前からすでに、まるで演出家によるかくし芸大会の様相を呈していった。それと同じような流れがペンギン女王と昌馬・冠馬兄弟との間に行われるのであれば、次回以降もすごく楽しみになってくる。


固定化された視聴者の意識を逆用する演出としては、高倉家の外なのにわざわざ登場して殺虫剤を噴きつけられるゴキブリや、前回までまともな標語だったのに突然「STOP 加齢臭」なんていう滅茶苦茶なことを言い出した電車広告などが分かりやすい。無駄なところにすごいエネルギーを注ぎ込んでいるなぁと思うw 今後も、どんな表現をパターン化して、それをどう崩していくか、といったところに、作り手のセンスの高さや遊び心が大いに発揮されていくだろう。


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さて今回は、引き続き荻野目苹果に対するスニーキングミッションが描かれた。今回は苹果の可愛らしさや怖さなどと同時に、彼女が”大切な人”(主に家族、というより母親か?)に対して寂しげな感情を持っていることがはじめて描かれ、単なるヤンデレ系ストーカーヒロインにはとどまらない、ドラマの奥行きを垣間見せた。


とくに、幼少期~十代初頭にかけての、「無邪気で幸福な時代」に対する、怨念にも似た強い恋慕の情というのは、『ウテナ』ではほとんどメインテーマのひとつと言って良いくらいにしつこく描かれ続けた主題であり、『ピングドラム』においても最初から中心に据えられているものだ。かつて自分のものだった、完全無欠な幸福な家庭像や青春像を持っていながら、それが失われたり、欠損したりしている現在の状況に苦しみ、なんとかそれを元に戻そうと努力する。しかし否応なく変化する環境(大人になっていく自分自身も含めて)がその努力をことごとく阻み、拒否し、挫折させる。もはや取り戻すことのできない宝物と、いつまでも捨てることのできない憧れと渇望。昌馬と冠馬は常にそれと向き合っており、コミカルな劇の中にも幾度もそうした心の傷を垣間見せているが、荻野目苹果もまさにそうした負債を過去に抱えている人物だった。


おそらくこうした、過去と現在のギャップや、美化されすぎている思い出への執着、なにより大人になることへの恐怖感といったテーマは、幾原監督にとって永遠に付きまとう問題意識であり、かつ創作へのもっとも重要な原動力のひとつなのではないかと想像している。こればっかりは、何かを達成した(描いた)からといって簡単に捨て去ることのできる類の感情ではないし、いつまでも取り組み続ける問題なのだろう。少なくとも『ピングドラム』においては、当面の苹果の物語や、大局的には昌馬・冠馬・陽鞠の「生存戦略」の物語を、過去の幸福との対峙という切り口から読み取っていくことは可能であると思うから、今後の注目点としておきたい。




それにしても。『ウテナ』にせよ『ピンドラ』にせよ、大人の、とくに実親の信用の置けなさは本当に徹底していて面白い。例えば苹果の母親は娘の本当に欲しがっている愛情を顧みずに、ただ義務感というか規則に従ってカレーを食べている。一方で高倉家にはそもそも両親の存在がなく、子どもたちがどんなに両親を愛し大切にしていても、もはやその愛を体現することは物理的に不可能となっている。仮に相思相愛であろうがなかろうが、子どもが必要としたときにそれに応えられないというのは、その親が”使えない”存在、もっと言えば”信用することができない”存在として描かれている。


ほかの作品において親の存在をほとんど問題にしないことが多いのは、ただ単に若者である主人公たちを引き立たせるのが楽だからだろうし、また現代の視聴者にとっても親と切り離された世界というものが十分にリアリティを持っているのだろうと思う(現実に親がいるかいないかではなく、要るか要らないかという問題?)。しかし『ピンドラ』などで、親の居ない状態をあえて選択しているのは、作り手が、親を信用できない存在だと思っている、もしくはそう描きたいという意思の表れと見て良いだろう。ここには、親を超えるべき壁として描くようなスタンスの作品群とは、まったく異なる立場が見て取れるだろう。



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ところでだんだん気になってきたのは、ペンギンたちが、それぞれの主人の性格に近くなるよう設定されているらしいという点。よくペット(とくに犬)は飼い主に似ると言うし、実際に犬を飼っている身としてはその説には大いに同意するところではあるが、今作におけるペンギンたちもまた、1号は冠馬の、2号は昌馬の、3号は陽鞠のペットとして、飼い主の人格や扱い方をそれなりに反映した性格のもとに描かれているように見える。そしてさらに重要なのは、彼らペンギンたちが、まだ明らかになっていない主人公たちの性格を先取りして提示しているのではないか、もっと言えば、ペンギンとセットで描かれることで主人公たちの人間像は表現として完結するのではないか、ということだ。


例えば1号は、社会規範にとらわれず自分の信念に従って断固として行動できる冠馬の姿を、かなりちゃんとトレースして行動している。冠馬の与えたミッションに対して、たぶん明らかに、2号よりも真剣に取り組んでいるし、2号のあまり気づかないような箇所にまでしっかり気を配って励んでいる。さらに今回などは、タンスの奥に落ちている苹果のパンツを拾おうとするなど、一般男子よりもずいぶんと奔放な冠馬の性格をよく映しているようだ。また3号は、いまやすっかり陽鞠お気に入りのヌイグルミとなって、彼女の生活に花を添えている。今回は一緒に美容室へ行ったようで、面白いのは、お団子頭になった陽鞠はいいとしても、絶対に美容師の目には見えないはずなのにちゃっかり髪型を変えていたことで、陽鞠の好みや興味をちゃんと理解して、彼女の遊びに付き合ってあげている。ペンギンたちが、陽鞠から人間用のご飯を三食もらえるのも、この3号が陽鞠に気に入られていることが大きいだろう。


しかし問題は2号だ。彼の主人は優等生で良い子気質の昌馬だが、そんな昌馬に飼われているにしては、2号の言動は常軌を逸している。もちろん2号の様子はやっぱり昌馬っぽさがふんだんにあるのだが、そこらにあるものを何でも食い散らかしたり、1号につられて(?)変態行為に走ったりしている姿は、まだ常識人として描かれている昌馬の言動が将来的に大きくズレていき、秘められた本性が明らかになっていく展開を予感させる。落ち着きの無さや、他人の意見に押し切られてしまう様子はそのままに、しかし内に秘めた情動に従って暴走を始めたら昌馬がどうなるか、という部分を今まさに予言している2号の姿を、よく記憶に焼き付けておきたい。また、1号3号にしても、冠馬や陽鞠の人格とあまりにも異なる行動をとった時には、その意味を考えてみるのも面白いだろう。



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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

しずく
2011年07月29日 23:18
やぁ~~~~~~~~っと、見れました。
が、最近ずっとイライラ感が払拭できていないせいで、やっぱりどうも素直に楽しめなくて悲しい。

あと、ウテナのDVD-BOX欲しいのだけど……高いよ。
いや、価格帯から考えるとごく普通の値段なのだけど。
バイトのおかげで買えない事ないけど、買ったら確実に後悔すること請け合い。
ヤマトだったり999だったり無限軌道SSXだったり、怪盗セイントテールだったり、BOXでほしいアニメは山とあるけど、実際懐具合の問題で全く手が出ないという現状。

というか、アレですね。
こうして羅列された作品名のほぼ全部が過去の名作である点に私の趣味がうかがえるかも。
今のアニメでわざわざ金出してまで買いたい作品てのがあまりない(個人的趣味で)
あっても、監督なり原作者なりが過去大成された方だったりして、厳密に今の作風の作品とは言えないものばかり。
そんな中でバッカーノ!だけは大当たりでした。
あんなワケわかんない作品はあまり見なかったかもと思ったり。

で、ピングドラムの話ですが、リンゴさん、怖い。
それ以上にペンギン女王が面白い。なんだありゃ。

ちゃんと次週が楽しみな作品があるのは幸せなことです。


桜蘭高校ホスト部ってアニメご存知ですか?
最近ドラマになりましたが、意外と面白いですよ!
ビジュアルが残念な子ばかりですが(特にハニー先輩)

そんな具合で。
雑文乱筆まことに失敬!
おパゲーヌス
2011年07月31日 01:22
>しずくさん
返信遅れました。忙しくて^^

ホスト部見たいんですけどねー。ウテナスタッフ(&タクトスタッフ)ですし、興味津々なのですが、借りてくる時間がなかなか取れないですね。

過去の作品は、なんというか、先人たちによって「このアニメはこう楽しむものだ」みたいな見方が確立されてる部分もあるのかなと思います。あるいは逆に、今のアニメにない新鮮さを感じ取っているのか。まぁ僕も、最近のアニメはなかなか買いたいとは思わないです(なんというか、怖い?w)

バッカーノは最高ですね。デュラララよりもずっと好きでした。あの狂気の描写は他になかなか類を見ないですね。

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