異国迷路のクロワーゼ 第10話「魔術幻燈」

クロードの葛藤は、恋だけじゃなかった。むしろ親父さんのことのほうが、彼にとっては重大事なんだろうか。男ですね。



幻灯機を扱った回ではあったが、物語の関心はむしろ父親との比較の中で葛藤する職人クロードの姿と、彼のことを愛おしげに眺める湯音の姿を印象的に切り取ってみせたエピソードだった。後から考えれば、サブタイトルのファンタスマゴリーとは、字義通りBパートにて行われた幻灯機を用いるショーを指すだけでなく、むしろ人間の心が映し出す思い出や願望の情景を、幻燈魔術になぞらえて言っているのだろう。


夕食時、クロードの父親のジャンのことが話題に出たときに、湯音が面白い顔をしていた。亡くなった親族の話をするのはむろん最初はためらわれるわけだが、すぐに彼女の興味は、偉大な父の姿を必死で乗り越えようとあがくクロードの姿に移っていったようだ。父親と比較されるのを当然嫌がっているクロードに対して、あの控えめな湯音が、オスカーの発言を受けたとはいえ、いかにも楽しそうに勝負だ何だとけしかけるような発言をしたのは、とても意外だった。


こうしたあたりに、湯音がどんな姿をクロードに望んでいるのかが垣間見れて、恋愛ドラマ的に面白くなってくる。彼女はただ自分の庇護者としての王子様的なクロードに憧れているわけではないし、そもそもクロードのことをそんなに優れた人物だとは思っていない。たぶん湯音は、クロードが抱える色んな”ダメな部分”を、とっくに知り尽くしているのだろう。そのうえで、それでも自分なりに頑張っているクロードの姿を、可愛いとか、応援したいとか、そんな風に思ってるのかもしれない。なんというかクロードって、母性本能くすぐるタイプだと思うしw そして湯音の恐ろしい(?)ところは、ただ現在のクロードを愛しく感じているだけではなく、きっとその将来について、彼がどんなふうに飛翔していくのかという期待感も込みで、眺めているらしい。クロードがどんな風に成長するかとか、自分好みに育って行ってくれたらどんなに素敵だろうかとか、そんな夢想を楽しんでいる面があるのだろう。


見てくれの良さや現在の資質だけにとどまらない、独特の広がりや着眼点を持った湯音の恋愛観が、ここに見て取れる。芯の強さを持ち、ちゃんと相手の本質を見抜く目を持っている湯音の、いかにも彼女らしい審美眼だと思う。湯音の御眼鏡に適うよう、クロードにはせいぜい精進していただきたいw


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さてそのクロード。今回は彼の仕事面での顔がクローズアップされた回だったが、湯音が見惚れてしまうのは彼女がクロードの仕事してる姿を”見たい”という前述の点に加えて、やはり職人が仕事に没頭している姿やそのまとっている空気には一種独特のものがあるからだろう。そして、クロードを見守る湯音の姿は後半、仕事をしているジャンを楽しげに見つめる幼きクロードの姿とも重なってくる。


クロードの父であるジャンについては、いままでほとんど情報が無かったわけだが、今回の回想シーンで彼がかなり寡黙、悪く言えば無愛想な人間だということが明らかになった。息子に対しても笑顔ひとつ見せることなく、むしろいつもどこか不機嫌そうに、邪魔なガキがいるなぁとでもいったような鈍い視線を投げかけていた。いかにも昔気質の職人といった感じだ。本当は不機嫌なのではなく単に不器用なだけなのだろうが、とてもそんな肯定的な目では見ることが出来ない怖さを感じさせる。またそういうジャンの姿を見せられたからこそ、父に憧れ、父の背中を見て育ってきたクロードが、いかにも無愛想に振る舞おうとしている理由がよく分かった。もっともクロードの場合は、よりオスカーの気さくさに感化されているようで、それが不器用ではあるのだが硬さや鋭さがいまいち見えてこない、中途半端なクロードの愛すべき性格を作り上げているわけだ。


それでも、やはり若さに満ち溢れたクロードは、背伸びをしてでも親父と肩を並べようとするその気概が立派だ。ギャルリを離れて仕事に向かうクロードが、ギャルリの入り口をふと振り返ったのは、祖父や父が背負ってきた看板店や、あるいはギャルリ・ド・ロアそのものを、まだまだ頼りないその双肩に背負って立とうとする大きな決意の表れのように感じた。




・・・それにしてもだ、前々からずっと思ってたけれど、クロードは商売する気が無いの?w 芸術家気質なのはわかるけれど、もうちょっとお客との応対や経営についても考えをめぐらせないと、技量や才覚ではとうてい父親に追いつけていない(だからこそ父と比べられることを嫌がる)クロードでは、ギャルリの再興なんてどんどん遠ざかっていくだけだ。またその芸術的センスにしたって、クローデル家にとってはパトロンのような存在と言っていいジドレール氏はジャンの腕前を評価していたのだし、今度だってクロードの力量を試すために注文をくれたようなものなのだから、彼がジャンのどんなところに惹かれたのかを研究する良いチャンスだったと思う。職人は技を盗むことで成長する世界だと聞く。クロードも、ジャンの技のうち盗めるものは全部盗み、なおかつジャンには無かった自分だけの色を追求していく努力が必要であるはずで、今回の仕事はその絶好の勉強チャンスであるはずだ。


ギャルリの所有者であるアリス嬢がますますギャルリの輪の中に溶け込んでいく姿が強く印象付けられた今回。このままいけば、アリスがブランシュ家の資産を活用しながら、ギャルリの良いところもちゃんと引き出して、伝統と進化の混ざり合った新たな商業区画としてギャルリを生まれ変わらせ、その再興を成し遂げてしまう姿が目に浮かぶ。それは見てるこっちとしては素晴らしい結末だと思えるが、それでは、あくまで伝統にこだわるクロードの敗北である。もし彼が彼なりの信念でギャルリ復興を企図するのであれば、それにふさわしい方針や行動を示してくれることを期待したい。



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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

しずく
2011年09月07日 18:07
お久しぶりです。

うーん。
毎回毎回面白く…?面白いか?
これは面白い物語なのか?
よく分からないなりに毎回見ていますけど、原作も未完…というか連載中なので今期で何かしらの決着というのはないんだろうなァと考えていたのですけれど、どうも自分の想像よりもいいところか中途半端なところでドラマがブチ切れるような予感がヒシヒシと聞こえてくるような?

個人的には湯音関連の物語よりもカミーユとクロードの物語がみたいなと思ってしまいますね。
カミーユの言葉の端々が黒い瘴気と共にクロードに絡みついているように思えてならない。
上級貴族の仕来りとかそういうのを完全に理解している一方でクロードに対して諦めを抱いているようにはまるで見えないんですよね。

湯音よりもよっぽどヒロインちっくに見えてならない。

…いや、真のヒロインはクロードでは?


とかなんとか思いましてよ!



ああ、あと。
何故だからわからないけど、この作品を見て「ARIA」を思い出しました。全然違う鬼不思議だなぁって。

たぶん、物語中においてそれほど大きな動きを出さずに自然に人物を動かす丁寧なドラマが構築されているから…かな?

友人から薦めたられた「緋弾のアリア」はちょっとダメだったんですけども。

オパさん、「緋弾」って」見ましたか?
おパゲーヌス
2011年09月08日 06:22
>しずくさん
えー面白いじゃないですかw 自分は毎回毎回、すごく興奮しながら見ていますよ。もしかしたら、「ここで終わり!」みたいなキリのよいまとめが出来そうにないのが、しずくさんにとっては合わないのでしょうか? でも日常的な幸福とか心のありかを描くタイプの作品として、典型だと思うんですけどね、クロワーゼは。

その「典型」を深夜アニメに定着させたのは、『ARIA』であり佐藤順一監督と言っていいのではないでしょうか。『クロワーゼ』は監督は別の方でずが、サトジュンさんが重要な役割を占めているし、内容的にも、彼の仕事の系譜のなかで語られるべき作品と思います。そういえば『ARIA』も、「何がしたいのか、どこがそんなに面白いのかわからない」なんて言われることがあるそうです。

『緋弾のアリア』は見てませんw 1話を流し見して、これなら見なくてもいいかなと思って切ってしまいました。当時は今以上に忙しかったのでw

真のヒロインがクロードというのは、なるほどです。彼がカミーユと湯音のどちらになびくのか、たぶんその決着はアニメでは描かれないとは思いますが(笑)、いろいろ想像しながら楽しみたいですね。
しずく
2011年09月08日 21:45
いや、面白くなと言いたいわけではないのですよ。
ただ、「ARIA」と同じように、日常の描写にこそ光るものが見えて、それは面白いというよりも微笑ましく好ましいといった感情のが先立ってしまうのです。
…少なくとも私は。

と、いうか。
何がしたいのかわからない『日常』の物語ほど味わい深い物語なんて存在しないと思うんですけどね。

ああ、そういう意味なら「英国戀物語エマ」とかその類に入るかな?
あれは日常と言うには波乱万丈の気が強かったように思うけど。

「これだからアニメは止められない」
という作品が尽きないからアニメをいつまでたっても卒業できないんですよね。
するつもりもないんですがwww

そういえば、最近録ってはいても見てなかった「ダンタリアンの書架」を観まして、これが中々味わい深かった。
原作に手を出す気にはなりませんが、OPとEDだけでも視聴の価値ありです。

クロードには是非ともカミーユを結婚式場から連れ去ってそのまま日本にでも来てもらって苦労してほしい。

「緋弾」、友人の勧めがなければ1話で切ってましたね。
今度「ゼロ魔」の最終シーズンをやるそうです。
おパゲーヌス
2011年09月08日 22:02
>しずくさん
なるほどそういうことですか。アニメの魅力って本当に多彩で、これを表する言葉が肯定なのか否定なのかも迷ってしまうことってよくありますね。奥深いです。

自分は、日常的な物語よりも、思いっきり虚構的な作品のほうが好みだったりしますけれどねw まぁでもどっちも好きです。なるべくあらゆるジャンルの作品の魅力を感じられるようになりたいです。怖いのは駄目ですがw

『ダンタリアン』、途中まで見てますし、OP・ED曲のCDも購入しましたw たしか『クロワーゼ』の感想でも、ちらとダンタリアンに言及したときがあったと思います。どちらも往年のヨーロッパを舞台に、ディテールにこだわった精緻な舞台描写をしてくれていて、見どころたっぷりですね。

『ゼロ魔』は・・・いちおう3期まで見てますけども、自分はあの作品はあまり評価してませんw やはり新作やるらしい『シャナ』はほとんど見てないのに比べればマシだし、時間があれば見ないこともないとは思いますが、感想はたぶん書きません^^

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