輪るピングドラム 第15話「世界を救う者」

東京タワーがそんな理由で誕生したとわ・・・w



いままでも相当にヘンなドラマを繰り広げてきた今作だけれど、それぞれのキャラの実像が明らかになってくるたびに、その混迷の度合いをますます深くしていく様子を、今回もどっぷりと堪能することができた。桃果の存在によっていよいよ”おとぎ話”らしくなってきているけれど、この物語が行き着く先はどんな地平なのだろうか。


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今回メインに描かれるのはやはり時籠ゆり。彼女が、幼少期に父や桃果と過ごした時間を回想しながら、昌馬や夏芽真砂子との対峙を通じて改めて、自分の使命を確認し直すエピソードだ。


とくに問題ありまくりなのが、かつての時籠家の様子だ。信用のおけない大人を描くのが大好きな幾原監督だが、ゆりのお父さんはその最たるものだろう。彼が追い求めていたのが純粋な美の追求であり、彼だけに認識されるイデアをいかにして具象化してみせるかという点にその生命のすべてを注ぎ込んでいるのは、芸術家の鑑であるとさえ言える。しかし、彼の美に対する情熱は、現実世界とあまりにもかけ離れすぎていて、もはや狂気と変わりない。


彫刻家である彼は、より不変の存在に近い石材よりも、常に変化や不調和のなかにある生身のイキモノを醜いと考えたのだろう。桃果の言葉ではないが、この世界は確かに、神様が創ったというのもうなずけるほど、驚くべき美しさに満たされている。木々や花々の美しさ、山や雲や星々の美しさ、そして若い女性の美しさが、まさにそれだ。けれどもこの世界には同時に、醜いもの、けがらわしいものでも満たされている。植物は枯れるし、虫やケモノのおぞましさ恐ろしさは時に正視に耐えないほどのものがある。そして女性の美しさもまた、年齢と共に変化してしまう。むろんそんなものはモノの見方のひとつに過ぎず、年齢を重ねているからこその美しさや魅力もまたあるはずで、ただゆりの父がそれに気づけない狭小な視野の持ち主だったというだけの話ではあるのだが。おそらくこの視野の狭さは、彼が古典古代やルネサンス期の芸術に強く影響を受けており、この世に存在しえない絶対的な美を追求し続けてきたことが、理由のひとつなのかもしれない。あるいはこの世を善と悪に二分し、その善の側面のみを愛し追求するような、一神教徒がしばしば陥りやすい誤謬に、彼もはまり込んでいたのかもしれない。


彼が娘に施そうとした”改造”は、いったいなんだったのだろう。そこでどんなおぞましいことが行われていたのかは、直接的には描かれなかったからただ想像するしかないのであるが、おそらくは、まだ幼く、神に与えられた純粋な美しさをその身体にとどめている娘を、大理石の彫刻のように、人間の寿命を遥かに超える長い時間を経ても変わることが無いように固定化しようとしたのだろう。もちろん彼は医者ではないから、その方法は生命を無視したとても乱暴なものであったはずだ。もしそのときの施術のおかげで、ゆりが今でも美しい姿を保っていられるのだとすれば皮肉なものだが、しかしどうしたって、あのノミは恐怖だ。


ゆりの母親がどうなってしまったのも気になる。残された写真にはまるで銃弾の跡のような傷がついていたが、どうやらあれも彫刻道具によるものだろう。ゆりと同じように改造を施されて死んだのか、もしくは日に日に変わっていく容姿に絶望されてひどい怪我を負わされたのか。


都心のど真ん中に立つ、悪趣味な、と言ったら往年の偉大な芸術家を怒らせてしまいそうだが、ともかく異様で不釣合いなタワー。こいつの存在感があまりにも大きくて、それが桃果の運命改変によって、我々にもなじみ深い(そしてだからこそギャップの大きさに驚かされる)東京タワーに変貌した場面は、非常にショッキングだった。世界を救うチカラ? それにしてはあんまりにも乱暴で危うい能力じゃないか。


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ゆりの過去に比べれば、まだずっとほのぼのとしていたのが、苹果と昌馬の描写。とくに苹果は、前回あれだけピンチな予感を煽っておきながら、あっさり王子様がかけつけてくれた上に、時籠ゆりが最後の一線を越えなかったために、すべてが取り越し苦労に終わった。心配して損したよ・・・w 昌馬と苹果は前回けっこうひどい喧嘩別れをしたけれど、また仲の良い友人関係を築くことができそうだ。


また、ゆりと直接対決を果たし、見事勝利を収めたかにみえた夏芽。さすがにそう簡単に目的を遂げることはできなかったが、今後の再戦が楽しみになる、良い戦いを繰り広げていた。またこの二人の場合は、あくまでいまのところだけど、眞悧の直接の指示で動いている者と、個人的な経験や使命感によって動いている者の対立、という構図で捉えることも可能なのかもしれない。冠葉や陽毬が言葉巧みに眞悧の影響下に置かれつつある現状、夏芽やゆりの思惑がどのような役割を果たすことになるのか、注目される。


冠葉と眞悧の会話からは、やはり、親も含めた大人という存在への絶望的なまでの不信感が語られる。子どもを私物化し、教育とは名ばかりの体罰を加える親が、実際にどれほど存在しているのかは自分は知らない。また他人にどう映るかは別にして、実の子どもを愛していない親が果たしてどれくらいいるのかも。たが眞悧の言動(ひいては今作全体を通じて描かれてきたところのもの)によって語られる親子像というものはただただ、子どもが本能的に親を愛し、すがり、尊敬している一方で、親の方はどこまでも自分勝手に、自分ただ一人の幸福のために生きているようだ。そしておそらく幾原監督の場合、そこで安易に、じつは親たちはみんな子どもへの愛に満ち溢れていたのでした、というような種明かしをすることはないと思う。あくまで親や大人に対する不信感を突き付けたうえで、では子どもたちはどうするのかを問うのが、この作品のテーマのひとつなのだろう。


そして、運命を乗り換える手段は、子どもの手に委ねられている。かつて桃果がどんな手段で運命を変える力を発動させたのかは分からないが、おそらくはまだ生まれてから10年も経っていないような少女に委ねられていたその力を、いまは10代半ば~20代半ばくらいの青年たちが、もう残り少ない青春時代にすがりつこうとでもするかのように、争い、奪い合っている。


この戦いに果たして意味なんてあるのだろうか? そんな疑問をふと感じずにはいられない不安の中で、彼らが掴み取る未来を見出すことが出来るかどうか、そろそろ判断を下すべき時が近づいているのかもしれない。





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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

あるるかん
2011年10月22日 23:50
ゆりの父親は妻に逃げられてそのショックと事実から目を逸らしたいからあのような狂気的な思想を持ったと考えました。ゆりに執拗に自分だけを愛するよう迫るのも、自分だけを愛していると錯覚していた妻の代替品あるいは、唯一の望みとしてゆりにすがり付いていたと思いました。


まあ最後にはバターロールの雄姿で吹っ飛びましたが(笑)。ナゼか脱いで、ナゼか水着(逃走用でしたね)と『?』ばかりでした。
ぽんず
2011年10月23日 09:02
なんとなく今や幻想となってしまった理想の家族像に異を唱えてるんじゃないかと思えてきました。

たとえば高倉家なんかは本当の家族じゃないからか「ご飯は全員揃ってから」がルールだったり気を遣いあったりと必要以上に家族であろうとしているように見えます。
今回の時籠親子なんかは血の繋がりを絶対視したりとより前時代的だなーと。

両方ありえなくはないのですが、家族の関わりがそこまで密接でなくなっている現代でそういったことを求めるある種の不自然さを「呪い」と称してるのかもしれません。

そんなことを思ったのは、地下鉄に座る冠葉の前でりんごに良く似た男の子(?)と父親らしき人物が手を繋ぐ→放すという意味深なシーンが挟まれたからで、あれはりんごもかつて理想の家族を求めてやっきになっていたけど、今はありのままの家族の形を受け入れることができた、という暗示だと考えたからです。
りんごの母親も彼女が望む形ではないにせよ、昌馬をりんごが気に入ってることを見抜いたり彼女のことを愛していないわけじゃないだろうし、昔ながらの暖かい家族じゃなくても絆はあると、現実的な範囲で示そうてしてるんじゃないでしょうか。

長文失礼しました。
おパゲーヌス
2011年10月23日 18:58
>あるるかんさん
自分も最初は、ゆりのお母さんは逃げてしまったので、父から逆恨みされてるんだと思って見ていました。でもなんか劇中での父の言動を聞いていて、そうじゃないんじゃないか、もっと残酷で非道で身勝手なドラマがこの夫婦にあったんじゃないかと、想像してみた感じです。

バターロールいうなww 夏芽さんかっこよすぎです。きっと四次元ポケットをお持ちでいらっしゃるに違いないですね。
おパゲーヌス
2011年10月23日 19:05
>ぽんずさん
前時代的というのはなるほどです。でもどうなんでしょう、かりにゆりが男の子だったら、家族のつながりに血の要素を重視するのは(前時代的という言葉にしっくりきて)分かりやすいんです。でも、父と娘という関係に関しては、血のつながりというよりは、「初恋の相手はパパ」みたいな少女像(これも前時代的かもしれませんがw)が色濃いように思いますね。苹果もそうなんですが。もちろんそこに、幻想に成り果てている家族像を改めて問い直そうとする姿勢があるという点では変わりません。

これに対して、現実的な家族像を提示しているかという点は、現時点ではそう見えるのは確かですが、これを作品の訴える”解答”とするには、まだあまりにも残り話数が多すぎますかねw 今はまだいろんな問題提起が行われている一方で、この作品の目指す地点はしっかり覆い隠されているような予感があります。最後まで隠されたままでいる可能性も高いですし、もう少し見守っておきたいですね。

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