ラストエグザイル―銀翼のファム― 第1話「Open file」

帰ってきた『ラストエグザイル』。前作の記憶がすっごくアヤシイんだけど、これならなんとかなりそう?



ということであれですよ、今期一番楽しみだった『銀翼のファム』がはじまりましたよ奥さん! いやー、じつは自分はアンチ・ゴンゾを自称してたりするんだけど、『ラストエグザイル』と『巌窟王』だけは別物と思ってて、とくにリアルタイムで食い入るように見ていた『ラスエグ』に関しては、とくに良い思い出として記憶に残っている作品なのですよ。でもDVD借りて復習でもしておけばよかったのに、あれ以来一度も見返してないから記憶が相当あいまいで、もし前作のお話と密接にリンクした作品だったら思いっきり恥を晒すことになっていただろーなーとビクビクしていたので、先週の特別番組で「どうやらかなり別物のお話をやるらしい」というのが分かって一安心してたところ。まぁこの作品の注目点と言えばやっぱり、浮遊感と疾走感が素晴らしい空中戦描写と、レトロで骨太な艦隊戦シーンということになるわけで、まずはこの第1話において、そうしたビジュアル面での楽しさを全面的に追求してくれたのが、何よりも嬉しかったですね。


しかしどうやら、前作とはお話どころか、宇宙規模で舞台が入れ替わってるのかな? 前作はひょうたん型の星だかコロニーだかの内部で、まるで異なる二つの世界空間がか細い接点を持って繋がっている、非常にユニークな世界観を持っていたわけだけれど。今作では、ディーオが「すべてが生まれ、すべてが帰る場所。青い星・・・」と意味深な表情で語り、しっかり地表が丸く描かれた今作の世界が映し出されていた。光りながらテレポート?してきたあのアイテムは前作に出てきたものだっけ? やべーもう全然思い出せないw まぁせっかくなのでこのまま、あたかも新規視聴者のような感覚で楽しんでおくことにしようかな。全部見終わってから、改めて前作を見直すのもまた面白いでしょう。


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さて本編。今作は、巨大な船を”盗んで”生計を立てているという「空族」の少女・ファムが主人公だ。前作の主人公・クラウスは郵便飛行で生計を立てている設定だったが、ヴァンシップという小型の飛行艇を駆り、直接戦うのではないけれども常に命の危険に曝される危険な職業に就いているという点で、しっかりと前作の主人公像を継承している。視聴者にとっては馴染みのないファンタジーならではの世界観で、とくに庶民とされる人々の生活を丁寧に描写するというスタンス。そして政治屋に比べればはるかに呑気で楽しげな彼ら庶民の視点から、大国同士の争いや陰謀に巻き込まれたり介入したりする人間ドラマや冒険活劇が、今作でもメインテーマに据えられているようだ。


空族という存在は、これはまた素晴らしい発想だ。ラストエグザイルという作品は、未来的な科学技術を描くSFとも、魔法のような理解不能なパワーを描く純ファンタジーとも違って、科学技術を用いて軍事・産業が発達しているけれど、ちょうど近代に入ったばかりのような、まだ技術の未発達な時代を描いている作品だ(未発達というよりも、失われつつある技術をなんとか保持しようとしているナウシカ的世界観で前作は描かれていたが、終わりつつある星を舞台にした前作と、今作の立ち位置はまた異なるかもしれない)。そうした中で、決して裕福でもないし学校のような場所で訓練を受けたわけでもない主人公たちが、自分たちでも扱うことのできる技術や素材を、創意工夫を凝らして改良している様子が描かれる。とくにそれは自分たちの乗る愛機の改造という面で表れてくるのだけれど、それを主人公が単なる趣味でやっているのではなく、他所からかっぱらってきた船を売ったりバラしたりするヤクザな行為を、部族規模で、正当な収入源として活用しているのが空族だ。科学技術に大きな制約と大きな自由があるからこそ成り立つ商売だし、またそうした”工作の楽しさ”みたいなものを作品の根底に横たわらせているからこそ、ちょっとやそっとじゃ思いつかないような興味深い生活スタイルを発案できるのだろう。


”くうぞく”と言えば例えば『紅の豚』では、山賊や海賊の飛行機版という程度の意味で「空賊」と称される人々が登場したが、それと今作の「空族」との差異は見た目にも明らかだ。空族であるファムたちは、窃盗の標的となる戦艦を”クジラ”と呼び、まるで狩猟に赴くようにして船泥棒に出かける。法律はもちろん倫理的意味においても、自分たちの行為が犯罪になるのだとはつゆほども思ってはいない。彼らは裏社会の住人としての窃盗団などではなく、どちらかと言えば、定期的に農耕文明に侵入してくる騎馬遊牧民に近いと言えるだろう。空族にとっては、戦闘と、略奪と、交易は、ほぼ同じ意味で用いられているのではないか。


しかし、なぜだか知らないが、空族はずいぶんとトゥラン王国に同情的である。先週の特別番組で語られていたところによれば、空族が狙うのはもっぱらアデス連邦の軍属船ばかりだという話だが、空族をどの国にも属さない自由民だとすると、このような偏向的な姿勢はおかしい。ファムたちが属する空族がもともとはトゥランの民の出自だったのか、それとも技術力的にアデス連邦軍を狙った方がおいしいからなのか、あるいはまた別の意識が働いているのだろうか。ジゼルの口ぶりを聞く限りでは、アデス連邦というのは相当嫌われているようだが、強引に拡張路線を取る軍国主義国家であるという不気味さのほかに、もっと具体的な理由があるのかもしれない。


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アデス連邦が嫌われる原因の筆頭に挙げられそうな事件は、今回のエピソードで早速描かれた。講和条約締結へ向けての会合の約束をまんまと利用して、完全にだまし討ちの恰好でトゥランに宣戦布告。こんなひどい詐欺をこれまでも平気で行ってきたなら、アデス連邦が他国の人々から忌み嫌われているのも納得だ。わずか15歳のミリア王女にさえ、和平会談が偽りの姿勢ではないのかと疑われていたアデスという国は、さすがに今回のだまし討ちほどではないにせよ、きっと卑怯卑劣な外交手段で強引に勢力を拡大してきたのだろう。


そして逆に言えば、そんな危険な相手が見え見えの嘘をついて和平交渉に乗り出してきたのに、どうやら戦争を回避するための根回しをろくに行わずに、のこのこと会見の場に出向いてしまったリリアーナ王女。あの聡明な彼女がこんな、無様としか言いようのない仕打ちを甘んじて受けることになってしまったというその事実が、トゥラン王国がどれほど追いつめられているかと言う現時点の政治的状況を雄弁に物語っている。きっと今回予定されていた会談は、和平へ向けての希望の道としてではなく、これを逃したら開戦しかないのだという事実上の最後通牒のようなかたちで突き付けられたものだったのだろう。トゥラン側としては、自国に有利な条件を用意できるだけの時間も手立ても残されていなかった。そうなるように、アデス連邦は周到に計画を練っていた。リリアーナ王女は相当つらい政治的決断を迫られていたはずだ。


そして、そんな状況を作りだしたアデス連邦は、たしかに狡猾だが、じつに理に適った戦略をとっていたと言えるだろう。現在、トゥランの王は病床に臥せっており、事実上リリアーナ王女とその妹が国を動かしているという。あのような若い婦人が政治の中心に据えられているならば、当然、権謀術数うずまく宮廷を完全に制御するのは難しいはずで、国内の政治事情だけみても、リリアーナが危ない橋を渡っているであろうことは想像がつく。この内憂外患の状況を、それでもなんとかまとめ上げて国家としての体裁を保っている優秀な王女、それがリリアーナだ。彼女を潰すことができれば、アデス連邦は何もしなくても、トゥラン王国は自壊しはじめるだろう。そうなれば、バラバラになった王国を弄ぶのも良いし、あるいは中心者がいなくなって大慌てになっているところへ軍事力を持って乗り込めば、あっという間に王国全土を従わせることができる。奇襲というのはふつう、どうしても取り除かなければならない相手戦力にダメージを与えるために行うものだが、最低限の護衛しか引き連れてこないであろう和平会談という席をあえて奇襲の場に選んだのは、トゥラン王国のもっとも重要な”戦力”がリリアーナ王女その人であると、アデス連邦が判断したということである。(おそらくその判断には、リリアーナとは顔見知りらしいルスキニア総統の意向が大いに反映されているのだろう)


リリアーナを生け捕りにすることができなかったことは、アデス軍の失態ではある。だが、通信技術が未発達なこの世界において、敵はもとより味方からも安否確認が取れないでいるという今の旗艦ラサスの状況は、事実上、アデス側の奇襲が成功したのと同じと言っていい。いまから修理して王都に向かうのは良いとして、アデス軍の探索を振り切り、艦隊を追い抜くことができるのか。逆に言えば、艦隊行動でただでさえ迅速な航行ができないはずのアデス軍が、どれだけ素早く戦略目標を達成することができるのか。この両者の駆け引きを、大いに楽しみにしよう。


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今回行われた、アデス連邦とトゥラン王国の戦い(事実上は、アデス艦隊と空族ヴァンシップ隊の戦い)は、結果的には両者痛み分けというところだろう。必勝の構えで臨んだアデス艦隊がトゥランの艦隊を壊滅させることができたのは当然としても、旗艦ラサスを生け捕りにするという目標が達成できなかっただけでなく、空族の巧みな戦術の前に少なくない損害を出した。もちろん、あの程度のかく乱で今後の軍事行動がとん挫することは無いだろうが、一日でも二日でも、アデス軍の進撃を遅らせることができたなら、空族側のもくろみは大成功である。


空族のとった作戦は、煙幕によってアデス艦隊をすっぽりと包みこみ、偽の通信を飛ばして同士討ちを発生させるというもの。直接的な攻撃手段に乏しい一方で、情報に精通し、神出鬼没のゲリラ戦に長けた空族ならではの戦い方だ。


正規の訓練を積んだ軍隊が、教科書にない奇抜なやり方で戦いを挑んでくる民兵に苦戦を強いられる事例は、実際の歴史でも山ほどある。そしてそういう事例では、伝統とか規範を無駄に重視する軍隊組織の体質が邪魔をして、何度苦杯をなめさせられてもゲリラになかなか対応することができない場合は多い。今後もファムをはじめとする空族たちは、アデス連邦の正規軍相手に善戦する場面が多く描かれるのではないかと予想できそうだ。しかし、ゲリラ側が常に有利に立てるわけではもちろんない。ゲリラがもっとも苦手とする局面はといえば、それは正規軍が教科書通りの戦いをすることが出来た時だ。


今回の状況を見れば、アデス艦隊の布陣がいかにも空族の餌食になりそうなものであったことに気づく。彼らの艦隊は、トゥランの旗艦ラサスを生け捕りにせよと命じられていたからだろう、あまりにも狭い空間にかたまりすぎていた。ラサスがどんな航路をとっても絶対に抜け出せない包囲網を、彼らは敷いていたのである。そしてラサスの護衛をひとつ沈めるごとに、その包囲網を狭めていったと思われる。加えて、なぜかアデス艦隊の指揮官は、空族が飛び回っているのを一向に相手にしようとしなかった。それだけ、戦場に空族がたかってくるのが珍しくも無いことだったのだろうし、まさか彼らがラサス逃走に手を貸すとは思っても見なかったのだろう。もしかしたらそこに、どんな事態が起ころうともこの包囲網は破られないという、指揮官の驕りもあったかもしれない。事実、あれだけアデス艦隊を混乱させておきながら、ラサスは包囲網脱出を試みるのではなく、自沈を演出して相手の目を欺くという、いかにも危険で無謀な賭けに出た。そうせざるを得ないほど、アデス艦隊の布陣が完璧すぎたのだろう。だがその密集隊形が、空族に付け入る隙を与えてしまったのも事実であった。


もしアデス艦隊が、このような密集隊形ではなく、お互いの艦船同士の間隔を適度に広くとって砲撃戦の構えを見せていたら、空族の奇襲攻撃の効果はもっと限定的なものであったか、あるいは何の意味もなさなかったであろう。もちろんそうなれば彼らはラサスからリリアーナ王女・ミリア王女姉妹を連れだし、あっさり逃走してしまっていただろうが。しかし今後もし、改めてアデス軍と空族のヴァンシップ隊が交戦することがあれば、今回のように空族の作戦が大成功を収めるのは必ずしも容易ではない。今回は、あくまで幸運が彼らに味方しただけのことだったと言える。


今後の空戦の見どころとしては、当面は、アデスの追手から逃れるラサスとヴァンシップ隊という構図を中心に描かれるであろうが、さらに後の展開としては当然、アデス艦隊とヴァンシップ隊の再戦や、アデスとトゥランの正規軍同士で行われる大艦隊戦といったところが期待される。そのなかで、前作のヴァンシップよりもさらに小型化されたいかにも頼りなげなヴェスパにまたがって、ファムやジゼルがどんな活躍を見せるのか、大いに楽しみだ。宮崎駿風に雲を海のように描く滑空描写と相まって、どこか大航海時代にも通じるロマンあふれる今作の空中戦。その健在ぶりをしっかりとアピールできた第1話だったと思うので、次週以降もこのままの調子で頑張ってほしい。



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それでは、今回は以上です。


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