輪るピングドラム 第14話「嘘つき姫」

この変貌ぶり! 



同性愛のシーンなんていまどき氾濫しすぎて、萌えかエロのサービスシーンくらいにしか思えないよ。・・・なーんて思ってたのに、今回ばかりはちょっとどころでなく動揺してしまったことに、自分でびっくりしている。百合というかレズシーンって、こんなに危険で恐ろしいシロモノだったのか。脚本ひとつ、演出ひとつで変わるものだなぁ。


でも、時籠ゆりがただのレズビアンではないことは明らかで、とくに身体的特徴として、彼女が自分自身で醜いと感じ、また荻野目桃果以外の人間にはきっと嫌われるに違いないという、何らかの特異性を持っているらしい。思わず「生えてるのか?」と思ってしまうところだけど、まだまだ分からない。傷かもしれないし、デベソかもしれない。


嘘かホントか分からない彼女の発言の中で、とくにドキっとさせられたのが、「仮面夫婦」という言葉。ゆりの”醜い”身体的特徴は、たぶん裸になればバレるものなのだろうから、仮に多蕗がまだその特徴を知らないのなら、結婚して幾日も経つのにいまだにベッドインを迎えていない、本当に仮面夫婦であるのかもしれない。けれどサンシャニー劇団でゆりとペアを組んでいた男役の彼女も、(ゆりの身体的特徴を明らかに知っているのに)ゆりを愛している様子だったので、多蕗くらいに寛容な人物であればちょっとやそっとの醜い特徴くらい受け入れてくれそうなものだけれど。まぁ、あの男役の人はとっくに調教済みだとは思うけどw


しかし、ようやく亡き姉ではなく自分自身の運命と向き合い、昌馬への恋心を受け入れて見るからに愛らしい少女に生まれ変わった苹果が、逃れようのない運命の因果によって、早くも毒蛇の牙にかけられてしまうことになるとは、残酷にもほどがある展開だ。だからこそ衝撃的でもあるのだけれど、昌馬からの仕打ちといい、苹果はつくづく報われない女の子だ。


その昌馬は、相手が16年前の事件の被害者遺族であると分かった途端に、手のひらを返すように残酷に突き放してしまったのは、驚いた。いったいどんなつらい経験をこれまでしてきたのか、想像を超えている部分がある。おそらく聡明な昌馬は、苹果に悪気が無いことをよくよく承知のうえで、彼女を突き放したのだろう。それは、一時的に良い人の顔をして近づいてきた人間が、いつの間にか自分たちを真っ先に傷つけようとする存在に変貌してしまう様を何度も見てきたからなのか。それとも、自分ではどうしようもない罪の意識にさいなまれ、まるで今すぐ死んで見せろと言われているんじゃないかとまで追いつめられてしまうのが怖かったからなのか。あるいは、昌馬と一緒にいることで苹果がいつまでも亡き姉の存在に縛られ続けるのではないかと危惧したからかもしれない。いずれにせよ、そう簡単には言い表せない様々な想いやしがらみに苦しんだ末の、苦渋の決断として、苹果と関わらないと決めたのは間違いない。しかしそのような、昌馬に言わせればこれもひとつの優しさなのであろう決断が、本当に彼らにとって正しいものであるのかどうかは、何とも言えない。


ここにきて変化を迎えたのは、陽毬も同じだった。これまでだったら、自分の価値を貶めるような言動をとってすねるようなことはしなかったはずだ。というか、そういう人物だとこっちが勝手に思い込んでいたのだけど。でも、もと親友であるはずのダブルHの二人に向けてあんなに一生懸命に編んでいた力作のマフラーを、未練たっぷりではあるけれど、あんなに乱暴にゴミ箱に突っ込んでおくなんて、とても陽毬らしくない。しかしこれがより彼女の本心に近いのだろう。以前夢の中で図書館の眞悧と会ったときに、小学生時代の自分の夢や願望はすべてとっくに清算済みなのだという態度を取っていたけれど、ようやくここで、そのもっと奥深くに眠っていた感情が、引き出されてきたようだ。


逆に以前とあまり変わらないのが冠葉だ。といっても眞悧の処方する謎の薬のおかげで、相当切羽詰っている感じはあるけれど、夏芽との直接対決に際しても、あまり動揺を見せずに、自分の立場や目的を貫き通した。さすがにこれだけ鉄壁の構えを見せる冠葉に対しては、夏芽としても付け入る隙がない。今回は引き下がって、もともとの目的である日記捜索のほうに取り掛かることになった。夏芽の目的がまだそれほどはっきりしていなくて、夏芽にとって「幸せをつかむ」ということと、冠葉を自分のモノにするということが、素直にイコールで結ばれない。彼女の真の目的はマリオを助けることで、そのパートナーとして、愛する冠葉を味方につけたかったというのが、今回までの彼女の動きの意図だったのかもしれない。




眞悧がドラマに本格的に絡みだしたからといって、必ずしも彼の計画ですべてが動いているかと言うと、そうではなさそうなのが現段階の状況か。とくに時籠ゆりは、いまのところ、眞悧とのつながりは見えず独自の意図で行動しているように見える。そしてそのゆりが、実は多蕗やももかの同級生で、ももかにただならぬ想いを抱いていた(今も抱き続けている)という事実が明らかになったことで、ゆりがやっとこの物語のメインキャストたるにふさわしい由縁を持っていたことが判明しただけでなく、いままで以上に、ももかという少女の存在の重要性がクローズアップされてきた。すでにこの世界からはドロップアウトしているはずの少女が、今後どのようにストーリーに影響を及ぼしてくるのか、ますます注目度が高まるところだ。


今回はとにかく、激しいギャップを見せたゆりの描写以上に、苹果の生き生きとした姿とそこからの転落を、映像的にどうやって表現するかが鍵となっていたと思う。昌馬にフラれた苹果の泣き顔は痛々しかったのだけど、その後になって、じつは苹果はまた懲りずに女性誌のテクを安易に使ってアプローチをかけていた(つまり普通のラブコメをやってるだけだった)ということが明らかになっていったんは安堵することになる。その後の傷心旅行における、ゆりとの、まるで新たな家族関係を構築しようとでもしているかのような、苹果の幸せそうな様子。そしてそれとは裏腹に、この後の展開に対していよいよ強くなってくる不安感。運命の輪によって予定された転落へと、着実に歩を進めて行く苹果の姿が、たまらなく印象的なエピソードだった。


ちょっと前までは変質的なストーカー行為をおこなっていた苹果が、いまや逆に、変質者・ゆりによって大変な目にあわされそうになっているという皮肉。苹果にはちゃんとした幸せを見つけて欲しいのに、そんな次元からどんどん遠ざかってゆくような展開だが、果たしてどうなるのか。うまくすれば、日記の後半を求めてやってきた夏芽が割って入ることになるかもしれないが、そうなれば今度は例の日記が完全に揃ったかたちで再び苹果の目の前に現れることになる。やはり過去の清算、姉との決着をつけなければならなくなるのだろうか。苹果がどのような生き様を選び取るのか、注目しておきたい。



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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

あるるかん
2011年10月16日 00:38
ますます桃果について気になりますね。ここまで多くの人間に対して影響を与え、リンゴやユリを歪ませているんですから気になりますよ。これで『めぞん一刻』の惣一郎さんみたいに最後まで謎だったら嫌だな。


私は黒幕は多蕗ではないかと考えました。ユリは前座に過ぎないと。多蕗が一番壊れた人間でそれ故に今までの事象は全て彼に繋がるのではと。
まさか石田さんにカエルの真似させと終わらせちゃだめでしょ(笑)。


あと冠葉を狙うクロワッサンみたいなストーカーのキャラクターは、私の知る堀江さんのキャラクターではかなり異色です。
はるる
2011年10月16日 08:47
ユリさんは、あれだけタブキにちょっかいだしてきてる小娘に、なんで今まであんなに寛容なのかと不自然さを感じてましたが、腑に落ちました。
しかしネーミングがベタすぎて逆に盲点でした。

タブキさんが黒いキャラだったら面白くなるなぁ
おパゲーヌス
2011年10月16日 19:07
>あるるかんさん
仮面に隠された黒さがまったく見えてこないという意味では、多蕗が最後に残された黒幕だというのは大いにありそうですよね。しかし現時点では、多蕗の真実は完全に想像の範疇を超えていますから、おとなしく今後の展開を待ちたいと思いますw 

夏芽は面白いですね。たしか幾原監督が、おそらくピンドラ制作に関わる発言として、「自分は最近の声優の動向を知らない」というようなことを言っていましたが、逆にそれが、堀江さんのあのような起用に繋がっているのかもしれません。
おパゲーヌス
2011年10月16日 19:12
>はるるさん
ゆりは、本当に百合(というかレズ)キャラなのでしょうかね。彼女の身体的特徴がなんなのか分からないので、下半身に生えてちゃいけないものが生えてたらどうしようかと、びくびくしています。そっちの耐性は無いぞー。

いままで隠されていた本性があらわになってくる展開というのは、非常に燃えますね。多蕗についても楽しみです。
あまね
2011年12月04日 13:25
 再びお邪魔します。

 今になって過去記事にコメントするのも何なんですが、話を見返してこのときのゆりの科白
「愛している」
「仮面夫婦」
「運命で繋がっている」
 が、実は『全部真実』だったということに今更ながら驚愕を覚えていたりします。どんな構成力があればこんな真似ができるんだ……。
おパゲーヌス
2011年12月04日 21:55
>あまねさん
構成力とんでもないですよねぇw 2度3度どころか、100度見ても新たな発見がありそうな作品です。幾原監督は「消費」の力学に対抗しようという姿勢をとくに意識している方だと思いますが(劇中でもそんな話が出てきましたがw)、何度見ても決して擦り切れない、すり潰されない作品を作ろうとした、そのひとつの回答が『ピングドラム』なのだと思います。

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