輪るピングドラム 第19話「私の運命の人」

ラーメン屋にあの人たちがいるーー! 


そして今回も後藤さん一人回とか、何か本当に、この作品ってば気合いの入り方が各方面でスゴい。


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今回はまた劇の舞台が高倉家の内部に戻ってきて、より陽毬の内面にスポットを当てたエピソードとなった。わりとポーカーフェイスというか、悪く言えば八方美人なところのある陽毬の、あまり語られてこなかった心の闇が注目される。そして夏芽真砂子との衝撃的な邂逅。ここ最近の今作の、30分間の密度とか情報量がもう圧倒的といっていいくらいで、毎回毎回、頭をハンマーで殴られたような感覚に陥ってしまう。


無事に退院を果たした陽毬だったけれど、とくに高倉家の家族関係に関する悩みが大きくなってきた。荻野目苹果が一緒に食卓についているのは良いとして、すっかり恋の矛先を多蕗から昌馬に切り替えた彼女が何かと昌馬にアプローチをかけるのが、陽毬の心をふとざわめかせる。たぶんこの段階では、昌馬が苹果と恋人同士になることはそれほど問題としていないけれど、主に家事担当の昌馬にちょっかいを出そうとする苹果は当然、高倉家の家事を手伝う機会が多くなる。これまで自分のポジションだと思っていた居場所がひとつふたつと奪われていくような、嫉妬にも似た寂しさ。そんなモヤモヤは、眞悧に自分の病状のことを尋ねたときに、思いがけない切り替えしをされたことでいっそう大きくなっていく。どんな言葉を言って欲しいのかな? キミの居場所ってどこ? 自分はどうしたいの?


考えてみれば、陽毬が高倉家での居場所を確立したのは、たぶんそんなに昔のことではない。第1話がスタートする以前、彼女は長いこと入院していた。病気になる前のことはあまりはっきりとは語られていないが、まだ子どもの時分に三人が両親のもとから離れて暮らすようになってから、陽毬の病気が発覚して長期入院するまでの、”三人家族でいられた時間”は、わずか数年くらいしかないはずだ。もちろん小中学生だったそのころには、いま陽毬たちが思い描いているような「今まで通り」の姿なんてまだ完成していない。陽毬が入院している間に、冠葉と昌馬の家事分担がまず出来上がり、そこに陽毬が舞い戻ってきて正式に三人家族での今の生活が始まったのが、やっと第1話の時点、劇中時間で言えばほんの数か月前のことだ。もちろん陽毬だってずっと入院し続けていたわけではないだろうから、第1話の前からすでに、三人家族での過ごし方はだいたい確立されてはいたのだろうけれど、陽毬が言っているようにもう大昔からずっと変わらない家族像だったかのようなイメージは、ただの幻像と言わざるを得ない。陽毬にとっても三人で過ごす時間がどんなにかけがえのないものだったかということは良く分かるが、運命の女神様に言わせれば、ちょっと都合が良すぎる期待なんじゃないかしら、と評されるに違いない。自分で考えろとでも言うように陽毬を突っぱねた眞悧の態度は当然だ。


けれどまさか、夏芽真砂子が乗り込んできて、ひどく強引なやり方でその幻像をぶち壊されることになろうとは、さすがに想定外だった。冠葉と陽毬は本当の兄妹ではない。それなら昌馬とだって血は繋がっていない。まるきり赤の他人だが、嘘で固めた家族ごっこを続けることで、かりそめの幸せを享受してきた。そんなふうに語る夏芽の言葉は最初は信じられなかった陽毬だが、だんだんと昔のことを思い出してきたようだ。いっそ青玉を受けてしまえば事の真相ははっきりするだろうに、などと思ってしまうところだったけれど、夏芽が思い出させようとしていた冠葉と陽毬の関係ではなく、昌馬との出会いのことを真っ先に思い出したところに、過去の出来事の重要な意味がこめられているのだろう。


こどもブロイラー。見捨てられた子どもたちを粉々に砕いて透明な存在にしてしまうこの工場で、かつて桃果が多蕗を連れ出したように、陽毬もまた昌馬によって救い出されたようだ。ただし全身ボロボロになりながら力技で多蕗を救い出した桃果と、運命の果実を一緒に食べることで魔法を発動?させた昌馬とで、その姿は大きく異なってはいるけれど。愛による死を受け入れた者へのご褒美、手のひらに乗る宇宙であると語られていたそのリンゴが、二人にどんな作用をもたらしたのであろうか。


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ところで、より大きな視点からもいろいろと動きを見せた今回。日記が存在している限りこのゲームに勝てないと言う眞悧の発言や、しっかり冠葉と接触している高倉家の両親など、謎が謎を呼ぶサスペンス的な面白さは相変わらずだ。


両親に対する冠葉と昌馬の態度の違いは面白い。子どもに不幸を押し付けたとして両親を手厳しく批判する昌馬の言葉に、冠葉はいちおう同意していたけれど、明らかに嘘だった模様。ラーメン屋で父母に褒められていた冠葉の表情は本当に愛らしい少年そのもので、彼は親も含めた意味での家族の幸せというものに強く執着しているようだ。だいたい前回、あんなに追い詰められていたにも関わらず多蕗に本当のことを言わなかったという衝撃の事実には驚かされた。陽毬より親のほうが大事なのかと言われてもおかしくない場面で、冠葉というキャラの印象を大きく修正せざるを得なくなってきた。もちろん冠葉が陽毬のことを第一に想っているのは間違いないだろうけれど(何と言っても自分の命を削っているのはデカい)。


高倉剣山夫妻が一体何をしでかそうとしているのかはまだよく分からないけれど、どうも今作で描かれているこの一連の事件、各陣営の目的が必ずしもひとつに絞られるわけではないということが、最近の話数でようやく明らかになってきた。以前だったら、ピングドラムなるものを手に入れる必要があり、そのために桃果の日記を手に入れなければならない、そしてそれはペンギンに命じられたミッションなのだという点で、冠葉・昌馬や夏芽真砂子は目的も行動も一致していた。そこに時籠ゆりが参戦してくると、確かに日記の収集を目指しているのは変わりはないのだが、ゆりの場合はピングドラムとは関係ない(もしくはその存在を知らない)人で、代わりに日記の持つチカラを理解しているということで、ペンギンを媒体にした陣営とは少し立ち位置の異なるキャラクターだった。そして今回、眞悧がむしろ日記を抹殺したいと願っているらしいということや、冠葉たちの両親はもしかしたらペンギンとも日記とも直接関係の無い、もっと別の目的を持って行動しているかもしれないというのが分かってきた。最終的にはそのすべての鍵がピングドラムの存在に集約されることになるのかも分からないが、そこに至るまでの道のりは陣営によって大きく変わってきているということだ。


どうやら、ピングドラムというのは概念的な存在ではなく、なにか具体的なカタチをもって登場するらしい。ひょっとしてすでに登場しているけれど自分が頭悪いから気づいてないだけなんじゃないのか、とすごく不安になるんだけど(笑)、その分、まったく予想のつかない今後の展開を心から楽しみにしておききたいと思う。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

夏芽真砂子
2011年11月19日 22:50
高倉パパママがあんな登場の仕方をするとはたまげた。
しかも堂々とKIGAのジャケットを身に纏っていたし。(笑)

そして、夏芽真砂子がまさか高倉家に乗り込んでくるとはこれも全く夢想だにしなかった。
この作品は様々なサプライズを用意してきたが今回もやられたという感じ。
しかも陽毬が兄弟ではない!?
おかしい?
かつて12話で「女神さまは三匹の中で、一番小さな幼い羊を選びました。選ばれた子羊は気立ての優しいステキな女の子。料理と編み物が好きで、いつも二人の頼りない兄の心配ばかりしている小さな女の子でした。残された兄弟羊は言いました。」
との説明は一体何だったのだろうか? 
今さら陽毬は他人ですとは。 う~む。

今回、真砂子は「特別な思い出し弾」も披露してみせた。
だが真砂子ってKIGAのメンバーの関係者なのではないのだろうか。
11話で冠葉が真砂子邸に乗り込み、阿佐美にヒットした赤丸弾を持ちだして「まさか、あそこから持ちだしたのか?」と問う場面があったし。
怪しいぞー。

それと今回、気になるのはトラックが転倒して夏芽ホールディングの弾がゴロゴロ。
あれは一体何…?…。
イメージ化された象徴的な意味合いなのか、物理的な実体として何か力を発揮するのか?
答えは次回に持ち越しかなあ…。

桃果と並んで晶馬が救済者とは驚き。 でも晶馬では桃果より格が劣るかな。(今のところ)
それから陽毬の冠ちゃんはスケコマシ発言には笑った♪

以上が今回の感想です。
ピンドラはとにかく面白い。
ピンドラとファム以外はもう眼中に無しですね。
おパゲーヌス
2011年11月20日 19:37
>夏芽真砂子さん
そのHNで書き込みされるとすごくびっくりしますw

今回はいろんな意味で衝撃の連続でしたね。このまま親御さんは伝説の人と化すのかと思っていたのに・・・。

女神様の発言と今回明らかになった事実を照らし合わせると、この作品の掲げる「家族」というものの概念が問われているように思います。本当の家族っていうのは血のつながりが必要なのだろうか?と。電車広告の「嘘から出た真」は象徴的ですね。まさに電車の中で冠葉昌馬が家族について話し合っていましたし。

トラックから出てきたタマ。あれは、トラックの荷物(家具でも竹竿でもなんでもいいですが)が倒れてくるべき場面ですが、倒れてきたモノの中身が肝心ではないので、あえてああいう非現実的な描き方にしたのでしょう。そしてあのタマが転がってくることで、陽毬と夏芽の対決のあの異様な空気や、これまでもしばしば登場したおとぎ話的なチカラの作用を直感的に伝えようと言う演出なのかなと思いました。うん、見てる時はただ茫然としていたので、完全に後付けの理屈ですがw でも夏芽の持っている道具なんか魔法以外の何物でもないですからね。他のドラマでは思い出の品とかを出してまだるっこしいドラマを見せるところを、まるまる端折ってしまっています。記号を非常にうまく使う作品だなぁと実感します。

昌馬と桃果の格(?)については、むしろ自分としては昌馬の方が上なのかと思っています。物語のキーアイテムにより近い存在なのかなと。ヒーローっぽいのは桃果のほうですがw まぁ続きを見てみないと分かりませんね。

スケコマシ、帽子かぶっていないシラフの状態の陽毬が言うのが、楽しいですねw

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