輪るピングドラム 第17話「許されざるもの」

ゆりと夏芽の決闘シーン、西部劇風のBGMについ笑ってしまうw



CM前後のアイキャッチで描かれていた路線図、今回のところでぐいっと曲がっているのだけど、今回の内容に呼応させているのだろうか。というかそうとしか思えないくらい、今回の話は急展開だった。


進行中の物語はいくつもの視点が入り混じって語られる。誰か一人の物語としてまとめられることの多かったここ最近の話数を下敷きにして、ここにきて一気に話を膨らませた感じだ。とくに今回、その牽引役となったのは高倉陽毬。彼女が病院を抜け出したことで、冠葉・昌馬はもちろん、ゆりや多蕗までが陽毬と接触しようと蠢きだす。


もちろんその動きを仕掛けたのは眞悧だ。陽毬は外出許可をもらったと言っている(おそらく真実だろう)のに、ウサギの助手たちは陽毬がいないことを訝しがって兄弟を詰問する。このちょっとした、しかし決定的に重要な違和感を演出したことが、物語を大きく動かしていく。黒幕の眞悧は”真実とは何か”なんて衒学的なことを呟きながら、高みの見物と洒落込んでいる。夏芽がゆりのもとに現れたのも、おそらくは彼の差し金なのだろう。


----


今回何よりも特徴的だったのはやはり、多蕗桂樹が本格的に物語の主役の一人として参戦したことだろう。良い人ぶってのらりくらりとした言動をここまで貫いてきた彼だったが、女の子に付きまとわれてマヌケな姿を晒す道化としての役目も、もう終わりだ。高倉の子どもに罪は無いと言っていたその舌の根も乾かぬうちに、彼は本性を現した。


ひょっとしたらでも、以前の大人ぶった言動と今回の姿とは、何一つ矛盾しないのかもしれない。多蕗は昌馬・冠葉の教師として、高倉の子どもたちを目の前にしてずっと平静を保っていられたわけだが、高倉陽毬と直接接触するのは初めてのはずだ。昌馬・冠葉と陽毬は血がつながっていないという話も出ているし(劇中で直接言及があったわけではないと思ったので自分はその説を前提として考えるのを控えているのだけれど)、高倉父母の謎の多さを考えれば、多蕗が昌馬・冠葉兄弟と陽毬を峻別している、もっといえば昌馬と冠葉に罪はないが陽毬にはある、と考えているのかもしれない。年齢を考えれば陽毬だって16年前の事件に直接手を下せるハズは無いのであるが、にも関わらず、多蕗がいきなり考えを変えて「高倉に罰を」などと言い出したその理由には、まだ語られない高倉家の秘密が潜んでいるのかもしれない。そうでなければあとは、眞悧あたりにそそのかされた、くらいしか多蕗の変貌を説明できる要因が見当たらないのだけれど、これに関しては次週を待つしかない。


それと関連があるかどうかは分からないけれど、今回は回想シーンにおいて、桃果と多蕗とゆりが三人で過ごしている様子が初めて描かれたのが、とても印象的だった。いままでは、あくまで多蕗と桃果、ゆりと桃果という1対1の関係でしか語られてこなかったし、だからこそ桃果という少女の存在感が際立っていたわけだが、ゆりが苹果から婚約の理由を尋ねられたときに「幼馴染だから」と答えたのも、いちおうは事実であったらしい。しかしそれなら逆に、これまでどうして、多蕗の回想にもゆりの回想にも、桃果は出てくるけれど、もう一人一緒にいたはずの幼馴染(現:婚約者)が現れなかったのか。物語の展開上それを見せるわけにはいかなかったということを差し引いても、多蕗もゆりもあまりに桃果への想いで精いっぱい過ぎて、他の旧友がそこに入り込む余地はなかったように見える。おそらく彼らにとって、本当に桃果以外の人間なんてどうでもよくて、かつて三人で遊んだという事実にまともな価値を見出してはいないのだろう。現在一緒に行動しているのも、桃果を愛し、桃果のチカラを知っていて、桃果の死に直面した、という共通項だけが二人を結びつけており、結局それは打算や妥協の産物でしかないのかもしれない。


----


ゆりと夏芽のバトルは、また面白いシーンだった。劇場版ウテナのワンシーンを彷彿とさせる地下駐車場、舞台演劇のような光と影の使い方、西部劇ふうのチープだがちょっとかっこいいBGM、そしてまさかのガトリングガンw


しかもここで繰り広げられていたのが、ずっと前から幾原監督が口にしていた”消費”の話。そういえばいままで放置していたけれど、夏芽の言う「すり潰さないと」という発言はおもいっきり消費に関連した言葉だったわけで、『ピングドラム』という作品が消費の宿命にどう抗っていくかという命題を抱えながら作られているのが類推される。


ごくおおざっぱに、そして表層部分だけを拾ってみると、「消費」という単語はおもに二つの視点で語られているように思える。ひとつは、創作物が世間に受け入れられ、消費され摩耗していくというプロセスについてである。去年だかおととしだかのこと、たしか沢尻えりかの言動を受けてのことだったと思うのだけど、消費される存在としてのアイドルと、その運命に抗おうとする女性たちの姿に、アニメ制作者としての幾原監督自身の姿を重ね合わせていたようだった。そのテーマは今回、女優・芸能人としての時籠ゆりを、夏芽真砂子が揶揄するカタチで提出された。どんな創作物であれ、消費の力学に立ち向かわないでいられるものは無い。それにどれだけ抗えるかどうかが、その創作物の価値を大きく左右する要素のひとつであるのは間違いないだろう。(生身の体や才能を商品や芸術に用いているという点で、アイドルや女優はまさに創作物的職業だ)


もうひとつの点は、限られた時間としての青春時代、およびその時期の心意気の問題だ。子どもの無邪気さ、無謀さはときに計り知れない長所となる。だが往々にしてそうした若さゆえの特質は時間的に有限であり、年齢を重ねるごとにすり減ってゆく。かつてはとがったりへこんだり個性的なカタチをした鉱石が、濁流にもまれて次第に丸く小さくなっていくように。そうしてゆくゆくは砂粒となって消滅してしまうのが、多くの(若者たちからみた)人生像である。しかし中には、どんな急流によっても摩耗することなく、いつまでも青春時代の輝きを放ち続ける人物もいる。言ってみれば人生とは、青春時代に獲得した自身の個性を消費していく過程であると見ることができるだろう。ただし、”若者らしさ”を摩耗させずに保持し続けるのが良いことなのか、という点については考えが分かれるだろう。時籠ゆりが夏芽真砂子の若さ・青さを嗤っていたが、たしかに、未熟で無邪気だからこそ陥りやすい盲点、大人から見れば嗤ってやりたくもなるような欠点を、若者はたくさん抱えている。概して夏芽とゆりの戦いはゆりのほうに多少の分があり、ある程度年齢を重ねたからこそのアドバンテージを発揮している様子からも、安易な青春賛美に走らせない今作の絶妙な立ち位置が見て取れる。


ただし時籠ゆりのズルさは、もうとっくに大人として生きているくせに、いまさら、運命を乗り換えて昔の幸福を取り戻そうとしているところだ。あるいはそれは多蕗にも共通する特徴なのかもしれない。現実の状況を客観的に判断しようとせず、とっくに失ってしまった(あるいは着実に失われつつある)理想にこだわる姿は、彼女が馬鹿にした夏芽真砂子とあまり変わるものではない。子どもと大人というものは、対比させて見てみれば確かに対照的で相容れない要素をおおく見出すことができるが、実際にはそうした矛盾した性質を未整理のままにまるまる抱え込んで生きているのが現実だ。そうした難しさを、ピングドラムを巡って争う今作の登場人物たちは全員、それぞれの立場や状況に応じて体現している。「いままで通り笑っていればいい」と弟に語って聞かせた冠葉の発言は、逆説的に彼らの抱える未解決の矛盾や困難を浮き彫りにさせるという意味で、ひとつ象徴的なセリフだったと思う。


そういう意味で、夏芽とゆりの決闘で描かれた両者の言い争いは、一見対比であってじつは対比になっていないもどかしさがあった。たぶん脚本的にもちょっと勢い任せにしゃべらせてしまった印象もあったし、単純な二項対立では表現しきれない色んなモヤモヤを棚上げしての発言には、決意表明としての意味こそあったかもしれないが、実際に即してはいなかった。そんなモヤモヤに一応の解決を提示するのは、もっと後のことになるのだろう。


----


ところで今回はいつにも増してペンギンたちのコントが気合入っていた。タコとペンギンの終わりなき死闘。1号と2号のちからだけでは対処できないエンドレスゲームに、3号が颯爽と介入して終止符を打ってしまう展開には笑ったw たこ焼きひとつでよくもあれだけの芸を思いつくなぁ。結局、本編のほぼ全体を通じてこのネタ引っ張っていたし。


ミラー越しにおパンツ様が映っていたのは細かい仕掛けで感心したけど、ミニスカートとタコの組み合わせってけっこうブラックなネタだよね。いいの、あれ?



----


それでは、今回は以上です。


面白いと思ったら、ぜひ下の方にある拍手ボタン(ブログ気持ち玉)をクリックしてください^^



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 8

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス

この記事へのコメント

あまね
2011年11月06日 16:47
 はじめまして。感想いつも楽しみに読ませていただいております。

>ミニスカートとタコの組み合わせってけっこうブラックなネタだよね。

 もしかして『イギリス人』ですか? さすがにそれは思いつきませんでした(^^;;
おパゲーヌス
2011年11月06日 19:33
>あまねさん
コメントどうもありがとうございます。

ミニとタコのネタは、盗撮で捕まってテレビ界から干された元芸人を想定したものでしたw ミニにタコができるってやつですね。むしろ自分には『イギリス人』が分かりません。ごめんなさい^^
2011年11月07日 21:47
横から失礼。ふと眼にとまったので。
おそらく「城の中のイギリス人」(マンディアルグ)ですね。
巨大水槽の中での、全裸の少女と蛸との絡みが描写されています。
おパゲーヌス
2011年11月07日 21:55
>SIGERUさん
なるほど、どうもありがとうございます。なかなかロマンティックな情景ですねw
あまね
2011年11月08日 22:10
再びお邪魔します。とんでもないネタをふってしまい申し訳ありませんでした。SIGERU様のおっしゃるとおり『城の中のイギリス人』の事です。ロマンティックかどうかは、まあ、その(汗笑)。
実のところ、ミシュレットと陽毬が同い年だということに今更ながら気づいて、洒落にならんとか思ってたりします(^^;;
それでは。
おパゲーヌス
2011年11月08日 23:00
>あまねさん
ちょこっと調べてみましたが、確かに洒落になってないみたいですねw 触手ぷれいとかそんな甘っちょろいレベルではないようで。さすがに今回のタコと無関係であると信じたいですw

この記事へのトラックバック

  • 【輪るピングドラム】17話 多蕗さんが本性を現したが想定の範囲内ですw

    Excerpt: 輪るピングドラム #17 許されざる者 338 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] 投稿日:2011/11/04(金) 02:25:40.55 ID:GKg7.. Weblog: にわか屋 racked: 2011-11-06 19:04
  • 結局マイノリティでしかないのか…(アイマスとかラストエグザイルとか)

    Excerpt: 【UN-GO 第4話】謎の焼死事件完結編。今回は欝エンドってわけでもなかったし、なかなか面白かったと思いますよ。結局のところ、アンドロイドは電気羊の夢を見るか?という問題で、 ... Weblog: アニヲタ、ゲーヲタの徒然草(仮) racked: 2011-11-06 20:38
  • 輪るピングドラム 17話

    Excerpt: もう夏芽さんが主役でええよ。 というわけで、 「輪るピングドラム」17話 譲れない願いの巻。 薬でも、日記でも、どっちでもいいからさ。 どっちでなくても、いいからさ。 誰か、陽.. Weblog: アニメ徒然草 racked: 2011-11-06 21:49
  • 輪るピングドラム #17

    Excerpt: 【許されざる者】 輪るピングドラム 1(期間限定版) [Blu-ray]出演:高倉冠葉(木村昴)キングレコード(2011-10-26)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る 僕の生.. Weblog: 桜詩~SAKURAUTA~ racked: 2011-11-07 01:46
  • [アニメ]輪るピングドラム 第17話「許されざる者」

    Excerpt: 実際、ようわからんかったw。当然、面白くないわけではないけれど、理解が追いつかない現状、とにかく、来週の続きが待ち遠しい謎が謎呼ぶ展開の嵐。とりあえず、人が決める真実 ... Weblog: 所詮、すべては戯言なんだよ racked: 2011-11-07 04:21
  • 輪るピングドラム 第17話 許されざる者

    Excerpt: ゆりと多蕗は、やはり桃果絡みでの共犯者という感じですね。 日記の重要性を自分達2人しか知らないと語る一方、ペンギンの事などはよく分からない事を言っているという認識ですし ... Weblog: ゲーム漬け racked: 2011-11-07 04:56
  • 輪るピングドラム 17 「許されざる者」

    Excerpt: 輪るピングドラム 17th STATION 「許されざる者」 です。 後半戦にな Weblog: 藍麦のああなんだかなぁ racked: 2011-11-07 06:50
  • 輪るピングドラム #17 「許されざる者」

    Excerpt: 罪と罰を背負う者たち  どうも、管理人です。案の定、更新が一日遅れになってしまい、誠に申し訳ないです。今日明日あたりでどうにか予定は調整しますので、どうかご勘弁をwそれでは、感想です。 .. Weblog: 戯れ言ちゃんねる racked: 2011-11-07 11:22
  • 輪るピングドラム#17「許されざる者」MSA方式感想

    Excerpt: この記事はMSA方式の感想記事です。基本は、アスカとエルの語りで記事が展開されます。いわば自キャラクターなりきり感想と思えばよろしいと思うのでお願いします。 エル「MSA ... Weblog: リバー オブ チェリー racked: 2011-11-07 16:55
  • 久々に戦を綴る 朝夕のアニメより

    Excerpt: 機動戦士ガンダムAGE 第五話 輪るピングドラム 第17話 Weblog: 義風捫虱堂 racked: 2011-11-08 09:00
  • 輪るピングドラム 17TH STATION 許されざる者 レビュー 

    Excerpt: 地下鉄に乗って陽毬の見舞いへ向かう冠葉と晶馬。 なんかたこ焼きの材料いっぱい買い込んでるけど、2号が 食べちゃってるよ? 大丈夫かw 時籠ゆりが日記を揃えて運命を乗り換えようとしている事を知って.. Weblog: ゴマーズ GOMARZ racked: 2011-11-08 10:20
  • 輪るピングドラム 第17話 感想「許されざる者」

    Excerpt: 輪るピングドラムですが、カレー女と担任は高倉家に対して含むところがあるようです。担任は冠葉たちは直接何もやっていないと冷静ですが、カレー女はももかのことで許せません。 運命をのりかえる日記をめぐって.. Weblog: 一言居士!スペードのAの放埓手記 racked: 2011-11-09 00:38
  • 「 輪るピングドラム 」17話の感想

    Excerpt: 「 輪るピングドラム 」17話、観ました。 いつものように陽毬の病室に見舞いに行く冠葉と晶馬。薬のおかげか最近調子がいいという陽毬から、もうすぐ退院できるかもしれないという報告を受ける。ほっとする2人.. Weblog: 最新アニメ・マンガ 情報局 racked: 2011-11-22 22:41
  • プラダ 財布

    Excerpt: 輪るピングドラム 第17話「許されざるもの」 妄想詩人の手記/ウェブリブログ Weblog: プラダ 財布 racked: 2013-07-10 06:51