輪るピングドラム 第21話「僕たちが選ぶ運命のドア」

とうとうこの決断をするときがやってきてしまったか・・・。




種まきは終わった。あとはそれぞれの苗がひとりでに成長し、程よく熟れた実が結ぶのを待って、刈り取るだけだ。


毎度のように濃密なドラマを見せてくるのでついつい忘れがちになってしまうところだったが、シリーズ後半から各キャラクターの秘密が次々と明らかになってきたのが前回までの展開だった。そして今回からはいよいよ、それらを同一線上のストーリーの上にすべて盛り込んで、一気に物語を収束させていこうという構えか。とくに高倉家の三人がとうとうバラバラになってしまったが、これによって家族意識に縛られない自由な考え・行動を起こすことができるようになったわけで、それを象徴するかのように冠葉も昌馬も陽毬も自分の意見を強く主張しぶつかり合う様子が描かれた。三人家族の美しい姿が好きだった視聴者にとっては寂しい光景だが、逆に言えばここからちゃんと、彼らの本当にやりたかったこと、欲しかったものが見えてくることにもなると思う。


また同時に、シリーズ序盤のころを思い出させるような、とにかく情報が多すぎて置いてけぼりを食うこのミステリー的ボリューム感が復活したのも、いよいよ大詰めに入ってきていることを意識させる点。最近の展開は、「アレはそういうことだったのか!」と驚かせ納得させる種明かし的要素が多くてそっち方面で盛り上がっていた印象があったけれど、そうした面白さ(冠葉と剣山の会っていたラーメン屋の真相とか)はそのままに、同時に新たな謎を振りまいていくのが最高に楽しい。ジェットコースターの昇りと降りの両方を味わっている気分というか。いや正確に言うなら、前回のエピソードがジェットコースターの急降下的楽しさがあり、その余韻に浸りながらもさらなる山場に向かって昇っていってるのが、今の段階と言えるかもしれない。


しかし剣山と千江美夫妻の現実の姿にはびっくりさせられたなぁ。そして同時に、やっぱりここでも『ウテナ』を強く連想してニヤニヤしてしまったり。『ウテナ』を始めてみたとき(まだほんの子供だった)、根室記念館のエピソードの結末を飾った第22・23話が、何がどうなっているのかさっぱり分かってなくて、高校生になってもっかい見直した時にやっと”見えてないものが見えていた”という演出の怖さ・面白さを理解したのがすごく印象に残っているけれど。そして最近では、そうした面白さが『輝きのタクト』にもしっかり盛り込まれていて嬉しがったりしていたものだったけれど、それなのに、ボロボロになったラーメン屋の実態を見せつけられたときにそんな展開を予想さえしていなかった自分の浅はかさに愕然とした。そうきたか!とも思ったけど、なんでその展開で驚いてるのかと自分を叱責したくもなった。


でもしょうがない、だって巧すぎるでしょうやり方が。いままで剣山の死をほとんど想像させてこなかったというのもあるけれど、今回のラーメン屋のシーンでは最初から冠葉の孤独さを意識させておいて、あれ今回は一人なのかな?と違和感を感じたすぐあと、冠葉とペンギンと黒服の三人だけが真っ暗なラーメン屋から出てきたことでやっと”その可能性”に思い至り、しかしそのときにはすでに時遅く、陽毬が無人のラーメン店に足を踏み入れるほぼ決定的なシーンに突入していく。むろん剣山の死が明示されたのはさらに後の多蕗登場シーンなのだけど、これまで冠葉が見ていた暖かなラーメン屋の光景がまったくの嘘っぱち、妄想もしくは幻覚でしかなかったのだというショックの大きさは、ただその事実が示されたという以上に、演出のチカラで何倍にも増していたと思う。


そしてラーメン屋の虚像と実態が明かされたそのシーンは、同時に、暖かく幸せな高倉家、という虚像の現実をも暴き出してしまうことになる。約束と嘘と希望と盲信とを高く高く積み上げた高倉家というブロックタワーは、いままでもあちこちから力を加えられていまにも倒れそうだったところへ、ラーメン屋での暖かい親子の会話、というひとつの大きなブロックが引き抜かれたことで、一気に倒壊してしまった。ひとつの盲信が失われたことで、他のいくつものブロックが支えを奪われてしまったのだった。


けれど、最初に引き抜かれたブロックは何もラーメン屋の一件だけではなかったのかもしれない。冠葉のことを「兄貴」ではなく呼び捨てにしていた昌馬。高倉家をバラバラにしてやろうと目論む夏芽真砂子のもとに自分から出向いて行った陽毬。この二人の側からも、高倉家の解散を決定づけるアクションが行われていたと言える。むろんそれらの行為が意図して高倉家をバラバラにするべく行われたのでないことは確かだが、結果的にストーリー上の意義において、彼らが家族ごっこを終わりにする直接のトリガーとなったのだった。


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前回までずっと”大切なもの”として扱われ続けてきた高倉家の絆が今回あっというまに断ち切られてしまったのとは対照的に、いままではあまり注目されてこなかった新しい希望が見出されたのも、今回のエピソードの特徴だったかもしれない。


やはり重要なのは、陽毬が自分の意志で冠葉を助けようと動き始めたことか。昌馬から家族ごっこをやめようと言われた際、とても切なくはあるけれど、しかしあっさりとその申し出を受け入れてしまった陽毬。いままでほとんどの場面で家にいて家族の生活を守り続けてきた彼女が、誰に言われるでもなく自分の意志や考えで冠葉のもとを訪れた姿には少なからず驚いた。剣山夫妻とおなじくまた冠葉が妄想を生み出したんじゃないかとも一瞬疑ってしまったが、どうやらそうではなく、一人で冠葉を助けようと考えているらしい。そのためには、ずっとついていくだなどと白々しい嘘をつきながら。余命いくばくもないはずの陽毬が、自分の運命をはっきりと自覚しながら、それでもなお、かつて昌馬に救われたのと同じことを冠葉にしてあげようと欲するのかと想像すると、思わず涙せずにはいられない。もちろんその意図はまだまだ分からないし、彼女の行動に昌馬や夏芽真砂子がどうかかわってくるのか、次回以降の展開に注目だ。


また多蕗とゆりの元カップルにも新たな動きが見られた。こちらは、打算ずくめで婚約した嘘家族が目的を失っていったんは離れ離れになってしまったけれど、ふたたびひとつの家族に結びつくかもしれないという希望ある姿を垣間見せる。何者かに襲われてしまったが、あそこで血を流していたのがいったい誰だったのか、想像を掻き立てる。順当に考えれば、組織の秘密を探ろうとしていた多蕗が襲われ、そこにゆりが割って入って元フィアンセを救ってみせたシーンだったとするのが妥当かもしれない。でも多蕗がゆりをかばったのなら、それはそれで興味深い展開になりそうだ。


逆に気になるのが夏芽真砂子の動き。次回予告では、なんだかやっぱり禁断の愛に走ってしまいそうな彼女だが、冠葉を救うだけでなく彼女自身が救われる展開は果たしてちゃんとやってくるのだろうか。夏芽父が死に際に不穏なことを呟いていたが、夏目家のエピソードにはまだまだ隠されているドラマが多そうだ。


さらに、眞悧が黒幕であるらしいことが正式に確定したことで、いままでまったく予断を許さなかった各陣営の立ち位置がなんとなく想像できるようになってきた。16年前、眞悧をリーダーとし、高倉家や夏目家を従えたテロリスト一派が、社会システムをひっくり返そうと悪巧みをした。それを荻野目桃果が、日記のチカラを使って妨害したという話。それを踏まえれば現在は、眞悧が冠葉をたぶらかして16年前のリベンジを巧妙に企てているのだが、眞悧自身が語っていたように、桃果の日記が完全にそろってしまえば彼はこのゲームに勝つことが出来ない。そしてペンギン帽子がピングドラムを手に入れろと言うのは、その眞悧の悪巧みを妨害しようという構えなのだろう。すんごくおおざっぱだけど。


眞悧の計画の具体的な意図や内容、それが成功するとどうなって、なぜそれを妨害しなければならないのか、妨害したところで何者にもなれないものたちは救われるのか、などなど、かえって疑問点が噴出してくるところだけれど、それはおいおい考えていくことにしたい。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

バツマル
2011年12月08日 19:13
こんばんは、おパゲーヌスさま。

ラーメン屋の描写は、既に朽ちていることに気付かぬ振りをして必死に護っているという、企鵞の会の実像をも暗示しているような。
冠葉の父や高倉剣山に押しつけられた地下鉄爆破事件関係者の疑いも、実は濡れ衣という展開?
陽毬が冠葉の許へ向かったのは、(残り少ない自身の命を賭けて冠葉を)世界から孤立させないため?晶馬との離別が意外に素っ気なかったのは、苹果に任せられるという安心感からでしょうか。その苹果は、多蕗たちの運命にも関わりそうな気がしますが。
真砂子とマリオは、眞悧の描く運命にどんな風に抗うのでしょう。
おパゲーヌス
2011年12月09日 23:37
>バツマルさん
コメレス遅れてすみません~。

>ラーメン屋の描写は、既に朽ちていることに気付かぬ振りをして必死に護っているという、企鵞の会の実像をも暗示しているような

なるほどです。あるいは高倉家の姿を暗喩してるのかとも思えそうですし、じっさいいろんな意味が込められていそうですね。

剣山たちは濡れ衣ですかね? 実行犯だけどいいように扱われていた、みたいな印象を受けましたが。でも剣山(ひょっとしたら千江美も?)の死がいつで、どういう理由によるものか、予断を許しません。冠葉が父の死を知っているかどうかでも、まるで展開が変わって来そうです。

昌馬と陽毬の離別があっさりしていたのは、二人ともが「逃げる者」(眞悧先生談)だからではないでしょうか。陽毬は使命のためなら自分の命も惜しまず、どんな手段だって平気で行使してしまう、冠葉的性格を(たぶんはじめて)見せたような印象がありました。血のつながった実の兄妹ではなかったと言っても、三人はそれぞれがお互いに影響しあい、尊敬と愛をもって接してきた、理想的な兄妹だったのだと、感じさせる陽毬の姿でした。

マリオさんの立ち位置・役割だけが、なんだかよく見えてこないかなぁw じつはマリオさんはウサギの弟子が化けてたとか、そんなドッキリはないですかねw
バツマル
2011年12月11日 22:22
おパゲーヌスさま、冬コミの追い込み作業頑張って下さい~。

>昌馬と陽毬の離別があっさりしていたのは、二人ともが「逃げる者」(眞悧先生談)だからではないでしょうか。

ハッとしました。陽毬たち二人ともが、(消費されるのが怖くて)「後を追わない者」だったからでしょうかね?ただ陽毬も晶馬も、自ら扉を選択したことで各々の運命が輪るのでしょう。

作劇的には、マリオがピングドラムの核心でしたという展開が面白そうですね。
おパゲーヌス
2011年12月13日 00:51
>バツマルさん
どうもありがとうございます。まだ今週のピンドラ見れてなくて泣きそうですw まさにそのピンドラのことを同人誌に載せようと思ってるわけですけれども。どうなるかw

いままでは逃げる者でいられた陽毬たち(たぶん三人とも?)ですが、もう明らかに行動原理は変化してくると思いますから、ここからが高倉三兄妹の本領の見せ場になりそうですね。

マリオが核心ってパターンは、なさそうでありそうだから怖いですw ていうかお爺ちゃんに乗っ取られたけどあれはどうなったんだろう? このあいだBD第2巻を見ていたらスカンクが出てきて、そういえばこんなのいたけど結局なんだったんだろうとか、頭がハテナマークでいっぱいになりました。後から見返して構成の見事さに驚かされる場面もたくさんありますが、それと同じくらい、なんでこんな描写をしたのか考えれば考えるほど分からなくなる場面もたくさんあるんですよね。マリオさんがどっちに転ぶかは分かりませんがw 

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