ラストエグザイル―銀翼のファム― 第16話「Automaton」

「Automaton」ってソルーシュのこと? だとしたらひどいw それともアウグスタや、あるいは他の誰かのことなのかね。




今回は戦闘回! 総集編を挟んでの後半部(第3部?)は、ルスキニア派の第三・第四艦隊と、アウグスタ・サーラを戴く統合軍とが、ボレアース要塞を巡って攻防を繰り広げる。やっぱりこういう、ちょい地味めの硬派な艦隊戦こそ燃えるよね! 両者の、作戦の推移よりも感情を前面に持ってきた展開が実にグッド。


というか今回は、狭い回廊でのガチンコ正面衝突しかない戦場を設定していたために、両陣営とも「どうやって勝つか」という点についてあまり考えずに済む状況のなか、あえて戦術の幅を持たせずにキャラクターたちの行動を描いていたと言える。もしこれがもっと複雑な作戦を要求される場面だったら、オーランも余計な回想などしている暇もなく、戦いに忙殺されるなかで必然的にアウグスタへの発砲を指示せざるを得なくなっていたかもしれない。戦艦の行動範囲が限られており、しかもソルーシュがほぼ全面的に戦闘を受け持ってくれたおかげで、オーランは比較的ゆっくりと、自分の道を選ぶことができた。


また今回の戦いはまさに、火力や艦の数だけでなく、政治的な思惑までをも戦力として活用しながらの戦いであった。この戦争が、もはや外征ではなく内乱として進展している様子がよく分かる作りになっていると思うし、そのなかで翻弄される軍人たちやアウグスタの戸惑い、怒り、悲しみを、念入りに描き上げようとしている。誰もが平和を希求しているのに、どうして戦争をやめることが出来ないのか。アウグスタに勝利の報告をしようとして拒絶されたヴァサントの沈痛な面持ちが、いっそうサーラの涙を印象付ける。


武器を捨てて挑んだファムたちのクジラ獲りがほとんど奏功せずに、かえってソルーシュをむざむざと死なせてしまうような結果が描かれている点に、今作の、理念と現実のギャップや、国家という組織にまつわる矛盾に対する強い関心が窺える。戦争をエンターテイメントとして描いているからこそ、ただ戦争の悲惨さを強調するのではなく、戦争の害悪をよく知っていながらそれでも戦争に突き進んでしまう人間の愚かしさや哀しさを、丁寧に追いかけていく。それが今作の姿勢であり、矜持なのだろう。


ともあれ今回の戦闘の結果、オーランの第三艦隊が統合軍に合流し、第四艦隊は無効化された。戦略上の要地たるボレアース要塞も統合軍の支配下に収まり、戦況は一気にヴァサント側へと傾きつつある。しかし寄せ集めの統合軍も人心をまとめ続けるのに苦労しているだろうに、ここにきてヴァサントとサーラの関係に亀裂が入った。ルスキニアの意図も不明な中、ディーオとアルの到着がどう物語を動かしていくのか。今回の決戦よりも、むしろ次回以降のほうが遥かに重要な局面になってくることは間違いない。


----


さて今回の戦闘についてだが、あんな大きな戦艦どうしで、まるで中世騎士の槍試合のような戦闘が行われるとは思ってもみなかった。以前のグラキエス侵攻作戦や、第一艦隊とシルヴィウスとの決戦のような場面に比べると、どうしても地味に見えてしまいがちな展開であったと思うけれど、迫力と緊張感に溢れた戦闘シーンにしようと、なんとか頑張っていたのではないかと思う。


事実上4つしか侵入口がない地形で、要塞砲で防御できない経路が1本でも存在するとか、構造的にどうなのかと思ってしまうところなんだけど、何か理由があるのだろうか。まぁいずれにせよこの説明から、オーラン・ソルーシュは統合軍よりも先に要塞に到達し、これを支配下に置いていたと言うことが分かる。要塞砲に守られた経路については両軍とも形だけの戦力を差し向けておき、たった1本の通路をめぐって主力同士がぶつかり合うことになった。




統合軍の選択肢としては、このように正面突破を図る作戦のほかに、グラキエスのヴァンシップ隊でもって要塞砲そのものを攻撃し無力化した上で、手薄な通路に別働隊を突入させる手もあったはずだ。どうしてそれをやらなかったのか、考えられる理由はふたつある。


ひとつはボレアース要塞を無傷で手に入れておきたかったという理由で、前々回の話だと要塞の守備隊は統合軍側になびいているということだったから、第三・第四艦隊さえ撃破してしまえばそのまま要塞を自軍の制圧下に置くことができるはずだった。後々のことを考えれば、この要塞の防衛力をここで破壊してしまうのはあまりにもったいない。


もうひとつの理由は、統合軍の戦力が大きくないので、戦闘区域をあまり広げたくはなかったのではないかという点。もし4つの通路すべてに戦力を分散させた場合、仮にどこかから突破することが出来たとしても、アウグスタやヴァサントのいる本陣を強襲されてしまえば、統合軍は圧倒的に不利になる(そして実際にソルーシュはそれを狙っていた)。相手よりずっと大きな兵力を有しているのなら別だが、今回あえて戦域を限定したのは、そうしなければ強力な敵とまともにぶつかり合うことができないと考えたからであろう。


今回投入された統合軍の数ははっきりとは分からないけれど、前々回にトゥランの戦艦が31隻と報告されていて、ミリアが「思ったより集まった」と評価していた。首都攻防以外たいした抵抗も見せずに降伏した大国・トゥランでさえそのくらいの数なのだから、帰還民国家の艦隊(そのほとんどは対グラキエス戦で消滅)の数はたかが知れている。ヴァサントの第五艦隊が仮に50~60隻くらいあったとして、さらにアデス国内の反ルスキニア勢力の艦隊を統合して、それでも150隻に達するかどうかはアヤシイ。一方の第三・第四艦隊は合計して「およそ100」。さらに第三・第四艦隊の質の高さ(戦艦そのものの性能に加え、兵も指揮官もずっと戦乱の中に身を置いてきた経験豊かな猛者ぞろいのはずだ)を考慮すれば、両軍の戦力差はほぼ互角か、むしろ統合軍のほうが弱いかもしれない。おそらくヴァサントは今回の決戦に手持ちの軍勢のほとんどを引き連れてきていたのだろうから、極めて危険な勝負に打って出ていたことになる。もちろんこの賭けに出なければ、こんどは第一・第二艦隊まで含めたルスキニア派の全軍が襲い掛かってくることになったであろうから、追い詰められていたのは統合軍の側だった。




サドリとカイヴァーンのもとにある艦隊は、やはり二個艦隊合計でおよそ100隻ほどの戦力を有しているのだろう。第一艦隊はグラキエス戦不参加のため損耗は0であり、確実に50隻以上の艦船を持っているとは思うが、第二艦隊はグラキエスのエグザイルにかなりやられていたので、やはり合計100隻というのが妥当な線だろう。もちろん、各艦隊の艦船数がまちまちである可能性は高いけれど。それでも、オーランの第三艦隊まで味方に引き入れた統合軍が、いまやルスキニア派の2倍近い戦力を持っていることは間違いない。これにアナトレーも加われば、さらに統合軍は有利になっていくと思われる。


あとはエグザイルの存在が問題だ。少なくともトゥランのエグザイルは、リリアーナがいる限り、いくらでもルスキニアの思うとおりに動かせる。これを阻止するためにはリリアーナが反抗してくれるのを期待するか、でなければ彼女を暗殺してエグザイルの保有権(?)をミリアに移譲させることもできるだろうけれど、アラウダもルスキニアも身体能力が高いのでちょっと難しそうだ。2つ目のエグザイルをどうやって起動させるのかも気になるところで、どうやらこの先はやはり、エグザイルをいかに使うか、いかに奪うかが焦点となってきそうだ。なんだか核兵器の開発競争みたいな印象になってきたが、むしろあえて、現代の世相を意識して物語を作っているのだろう。


そうなればこそ、どうしたって無力な一人の少女に過ぎない主人公が、どのようにして戦争終結のキーマンになっていくのか、そのあたりに注目が集まってくるところだ。そういえば先週の総集編で思い出したところだったけど、1期は「運び屋」のクラウスが、運び屋ならではの活躍で終盤エピソードを飾っていた。では「クジラ獲り」のファムは、いまでこそ口やプライドばかりが先行していまいち結果が伴っていないけれど、今後はやはりクジラ獲りの空族ならではのやり方で、人間たちの手に負えない段階に入りつつあるこの戦乱に歯止めをかけてくれるだろうと期待したい。ちょうど今回はおあつらえ向きにファムたちが軍人であることを拒否したエピソードであった。これからの空族たちの動きには、要注目かもしれない。




----


それでは、今回は以上です。


面白いと思ったら、ぜひ下の方にある拍手ボタン(ブログ気持ち玉)をクリックしてください^^



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 18

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 「ラストエグザイル 銀翼のファム」第16話

    Excerpt: オーラン、加勢… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201202180000/ 『ラス.. Weblog: 日々“是”精進! ver.A racked: 2012-02-18 15:40
  • ラストエグザイル-銀翼のファム- 第16話 「Automaton」 感想

    Excerpt: ソルーシュのことが好きになれる回でした。 ここでの退場は残念です。 ファムは相変わらず空気でしたね。 結局、銛を撃っただけでしたし。  ラストエグザイル-銀翼のファム- 公式ホ.. Weblog: ひえんきゃく racked: 2012-02-18 15:43
  • ラストエグザイル―銀翼のファム― 第16話 『Automaton』

    Excerpt: 前々回までのおさらい。ストーリーが八艘飛びした上に総集編挟んで記憶が薄らいできました。確かヴァサントが反ルスキニアの旗を掲げてそこにミリアやファムも集結したんでしたっけ。あとグラキエスが壊滅したことで.. Weblog: こいさんの放送中アニメの感想 racked: 2012-02-18 16:27
  • ラストエグザイル―銀翼のファム第17話感想

    Excerpt: #17「Automaton」 ソルーシュ(中村ゆうきゃん)散る。 彼も、オーラン Weblog: うたかたの日々 でぼちん珠洲城遥万歳 racked: 2012-02-18 16:46
  • ラストエグザイル-銀翼のファム- TBS(2/17)#16

    Excerpt: 第16話 Automaton 一杯どうだ?倉庫からワインをくすねてきたソルーシュ。アデスの兵同士が相撃つことになるなんて。ファラフナーズ様でも全ての憎しみは消せなかった。 総統閣下は敵も味方も全てを踏.. Weblog: ぬる~くまったりと racked: 2012-02-18 16:47
  • LASTEXILE 銀翼のファム 第16話 「Automalon」

    Excerpt:  ヴァンサントとミリアが反ルスキニア勢力の旗艦?に乗っているのは 少し違和感がありますね。戦闘になったらそれぞれの船に戻りましたが。  敵を打てないファム。それでは、この空では生き.. Weblog: 北十字星 racked: 2012-02-18 19:37
  • ラストエグザイル-銀翼のファム- 第16話「Automaton」

    Excerpt: 交渉決裂、かつて同じ杯をかわした者たちは剣を交えることに… やっぱりファム側が有利になるような描き方でしたね。 しかしヴァサントは致命的なミスを犯したような。 ルスキニアもそうだったと思うけど、.. Weblog: のらりんすけっち racked: 2012-02-19 15:05
  • ラストエグザイル 銀翼のファム第16話感想。

    Excerpt: 主人公!? (゚Д゚;≡;゚д゚) いっそ最初からバリバリの群像劇のがよかったんじゃないかな(笑) 以下、ネタバレします。ご注意を。 Weblog: 戯言日記2nd racked: 2012-02-19 18:00
  • ラストエグザイル―銀翼のファム― 第16話「Automaton」

    Excerpt: ボレアース要塞をめぐる戦いが始まった。 ヴァサント率いる連合軍を迎え撃つのはソルーシュとオーラン。 ルスキニアの行いを『平和のための最短距離』と割り切り突き進むソルーシュに、連合軍は徐々に押さ.. Weblog: 妹教大付属小学校S.S.(セカンドシーズン) racked: 2012-02-19 21:44
  • 逆恨み上等(ギルティクラウンとかラストエグザイルとか)

    Excerpt: 【ブラック★ロックシューター 第3話】ラブレター晒しAGEの巻。前回、叫び声エンドが何事も無くスルーされたのは、拍子抜けを通り越して逆に驚いてしまいましたwしかし、一時期は ... Weblog: アニヲタ、ゲーヲタの徒然草(仮) racked: 2012-02-21 16:41
  • エアマックス 2013

    Excerpt: ラストエグザイル―銀翼のファム― 第16話「Automaton」 妄想詩人の手記/ウェブリブログ Weblog: エアマックス 2013 racked: 2013-07-09 06:23