偽物語 第7話「かれんビー 其ノ漆」

なんか意外に円満解決? 主役は火憐ちゃんでも暦おにいちゃんでもなく、間違いなく戦場ヶ原さんでした。


週末に予定が入ると視聴体制が一気に崩れるから駄目なもので、予定より二日も三日も遅れて、ようやく録画してたものを視聴することができました。




さて今回はいよいよ「かれんビー」の最終エピソード。悪役を絵に描いたような貝木を相手に、我らが主人公がどう挑みかかるのか注目が集まるべきところだったはず。しかし言葉の応酬による緊迫感はあったけれど、ひとつも拳を交えないどころか、むしろまともな反撃も仕返しもできないままに、詐欺師の先生におとなしくお帰り頂く展開となった。予想や期待を外された分、戸惑いもあったものの、安直に正義へと走りはしないという作り手の意志を尊重した結末だったと言えるだろうか。


----


「お前たちが敵視するのは、いつだって”悪人”ではなく、”悪役だ”」


・・・という阿良々木暦の発言によって端的に明かされているとおり、貝木は、本人が実際にどうなのかは別として、少なくともこの物語で当てはめられていた役割は”悪役”にすぎなかった。悪役とは、あくまで舞台の上の架空の存在であり、演者と観客が暗黙のルールのもとに認識する概念としてのキャラクターだ。そのキャラクターにどのような感情を持つかは、劇を見ている観客一人ひとりの感性や経験、信念に委ねられている。この物語で問題にされていたのは、悪役ではなく、観客の側だった。誰がどう見ても悪役にしか見えないキャラクターに、その観客たる阿良々木暦や戦場ヶ原やファイヤーシスターズがどのような反応を示すか。それを描いたのが「かれんビー」というエピソードであったのだから、舞台上の俳優と客席の観客たちがじかに触れ合うことなく、終幕とともに静かに別れていったのは、当然のことであったのだろう。


別の言い方をするなら。貝木にまつわるこの事件の真相は、テレビで放映されているワイドショーの詐欺事件特集なんかを、阿良々木兄妹や戦場ヶ原や羽川らが一緒になって鑑賞しながら、詐欺師はひどいとか騙される方も悪いとか自分だったらどうするかとか、そんなたわいもない議論に明け暮れている情景を、ひどくスリリングかつドラマティックに演出したようなものだった、などと言うことも可能かもしれない。


阿良々木と火憐ちゃんの間で交わされていた激論は、正義とは何かを考える「かれんビー」のクライマックスであったと言えるが、ここで語られていたことは至ってシンプルだ。完全にはなれない、だが完全になろうと努力する姿は正しい。言われてみれば当然のことではあるのだけれど、これが言われないとなかなか分からないのが、正義なんていう漠然とした理想を語ることのむずかしさだった。世の中の仕組みや人間のこころを善悪の二元論で断じることが出来ないことを確かに実感し始めていながら、さりとて善悪を離れた純粋な利害関係で割り切ってしまえるほど大人びてはいない主人公たち(それはそのまま、作り手や受け手の実像を投影したものであろう)の、いくぶんに青臭い葛藤や決意。それを懇切丁寧に解き明かし描き上げた物語であったと言える。


そして同時に、彼ら(=われら)がもっと年齢を重ね、たくさんのことを知ったうえで、それでもなおこのときの青臭さを捨てることなく、墓の中に入るまでずっと青春時代の決意を抱え続けていたい、という願望までをも、秘かに表明したエピソードだったのかもしれない。この「かれんビー」というエピソードの枠組みのなかであえて、阿良々木暦という主人公の吸血鬼ならではの生命の永続性が言及されたのは、決して偶然ではあるまい。死ぬまで青春時代の決意を守り続けようと決意したところで、その決意がつづくのはせいぜい100年足らずだ。だが阿良々木暦という主人公なら、ひょっとしたら、この青臭い信念を、何千年も何万年も保持し体現しようと努力し続けてくれるかもしれない。劇中でも語られているとおり、自分でこうと信じ続けていなければ、正義なんて簡単にその土台が揺らいでしまう。阿良々木の長寿の可能性は、そのまま、作者が自分の願望や信念を創作上の人物に託そうとした、夢のカタチであるのかもしれない。


----


それでも、最終的にヒロインたる戦場ヶ原さんが全部持って行ってしまうあたり、この作品もしっかりシリーズとしての体裁を保持しているのだなぁという印象で、ちょっと微笑ましくも思ったりする。『化物語』では5人のヒロインがまだそれなりに対等に扱われていた印象が強くて、TV版最終エピソード(つばさキャットの1と2)でやっと阿良々木と戦場ヶ原のカップルが”らしく”なってきたように見えたように思う。それが今回は、火憐ちゃんの出番ももちろんとても重要ではあったけれど、それでも最初から最後まで、”恋人”としての戦場ヶ原ひたぎの姿が一貫して主題を構成していた。過去との決別と、その成果としての朝帰り。これを見せたいがための装置として、やはり貝木は本編の登場人物ではなく劇中劇の役者といった位置づけだったと言えるだろう。


さて次回からは月火ちゃんのお話となるが、今度はどんな「偽物」の物語となるだろうか。真っ直ぐな武闘派の火憐ちゃんのときよりも、ずっと厄介なお話が展開されそうな予感がするけれど、果たして。




----


それでは、今回は以上です。


面白いと思ったら、ぜひ下の方にある拍手ボタン(ブログ気持ち玉)をクリックしてください^^



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村


この記事へのコメント

あるるかん
2012年02月22日 11:53
貝木は作中で「敵に強大さを求めるな」と言って、逃げることばかりに徹して、展開としてはかなり肩透かしになっちゃうんですが、これが詐欺師らしいって感じですね。
敵対してくれない敵である貝木は厄介ですよ。貝木をぶん殴ってしまえばいいというのは、火憐のような野蛮な考え方で、実行しても虚しいだけで後味悪いだけですからね。
今後も貝木は登場しますが、彼の様々な面を見れるのは面白いですよ。ちなみに彼は計画的な嘘をつくけど、ほとんどは自分でも考えなしについた適当な嘘なんで、人物像が掴みにくいんですよ。まあ貝木も自分の嘘で墓穴を掘ってしまうこともありますよ。
 ネタバレってわけではありませんが、ひたぎに乱暴をしようとした男が死んだのは事実です。ちなみに貝木は戦場ヶ原一家を騙すと同時に宗教団体のほうも騙していたんですよ。結果は家族が崩壊して、宗教団体も壊滅してしまいました。



ひたぎの「優しくしなさい」は抜群の殺傷力ですね!!
心の整理ができたから、文字通り暦に身も心も許したんでしょうね。ああ暦は夏休みに大人の階段を登ってしまいましたね…


序盤の兄妹喧嘩の演出過剰はいただけませんね。火憐は普通の人間なのに、しかも次回から本当にドラゴンボールみたいな戦いが始まるのに、勝手にハードルを上げちゃっていいのかな。あれじゃ火憐に勝てるのは鑢七花や左右田右衛門左衛門くらいではないですか?
おパゲーヌス
2012年02月22日 21:56
>あるるかんさん
まだ出てくるんですか、あのおっさんw ということは今回のは顔見せ程度だったということなのですかね。少なくとも今回は、貝木が敵対してくれなかったという面ももちろんですが、阿良々木や戦場ヶ原が積極的な攻勢に出なかったのも特徴かなと思っています。まだ勝てる相手じゃないと冷静に分析しているなぁと思いながら見ていました。

兄妹喧嘩の過剰演出、最高だったじゃないですかー。普通の人間なのに、っていうツッコミをこのアニメにしちゃあ駄目でしょうw 『化』第1話からすごいことになってますからね。世界観とか、物理法則とか。

次回からまたバトルがあるというのは、期待しておきます。シャフトは体力持つのか?w でも月火ちゃんは軍師タイプだと聞いていたので、そんなバトル展開があるとはちょっと意外ですが、まぁ月火ちゃんが戦うとも限らないのかな。楽しみです。

この記事へのトラックバック

  • 偽物語 第7話 「かれんビー 其ノ漆」

    Excerpt: 暦に発見された火憐ちゃん。 止めようとする兄に抵抗する妹。 どこにでもあるような兄妹の喧嘩となるんだけど。 この兄妹がやると まるで大災害ですねw ▼ 偽物語 第7話 「かれんビー 其ノ漆.. Weblog: SERA@らくblog racked: 2012-02-22 00:28
  • 偽物語 7話 「かれんビー 其ノ漆」 感想

    Excerpt: 人生に劇的なことを期待してはならない。しかしだからこそフィクションに劇的なものを期待するのだという不文律があるのだ。 Weblog: うつけ者アイムソーリー racked: 2012-02-22 08:12
  • 偽物語 第7話「かれんビー 其ノ漆」

    Excerpt: 『かれんビー』編決着。 本物とは、偽物とは、正義とは、色々強引に纏めて終わり。 Weblog: 大海原の小さな光 racked: 2012-02-22 09:33
  • 偽物語 7話

    Excerpt: それでも、やり抜くのだ。 というわけで、 「偽物語」7話 continueの巻。 えらくあっさりと決着つきましたが、 後味すっきりでよかったと思います。 元々、深刻な大事件って.. Weblog: アニメ徒然草 racked: 2012-02-22 10:34
  • 偽物語 『かれんビー 其ノ漆』

    Excerpt: 偽物語 『かれんビー 其ノ漆』 ≪あらすじ≫ “囲い火蜂”の毒も癒えぬまま家を飛び出した火憐を追う暦は、忍の力も借りてようやく火憐を発見した。力尽くでも通るという火憐と、力尽くでも止めると決.. Weblog: 刹那的虹色世界 racked: 2012-02-22 13:15
  • 偽物語 第07話 『かれんビー 其ノ漆』

    Excerpt: 褒めて。当初はボロクソ言いまくり&暴れまくりで最後は「好き」で締める。このアニメのヒロインはそういう傾向がある様です。流石に全員ギャップ効果狙いだと暦も対応に慣れてきた模様ですね。ハイハイどうせ俺の.. Weblog: こいさんの放送中アニメの感想 racked: 2012-02-22 14:03
  • 偽物語 第7話

    Excerpt: 「かれんビー 其ノ漆」 貝木のキャラが圧倒的でした ニヒリズムの前では本物も偽物 Weblog: Brilliant Corners racked: 2012-02-22 17:08
  • 偽物語 第7話 「かれんビー 其ノ漆」感想

    Excerpt: 偽物語 第7話 「かれんビー 其ノ漆」感想 偽物戦隊正義マン・かれんジャー! 可憐に参上。 Weblog: かて日記-あにめな生活- racked: 2012-02-22 19:39
  • 『偽物語』 第7話「かれんビー 其ノ漆」 ― 正義って線なのかな。

    Excerpt: でも、この物語は劇的だよね。 「偽物語」第一巻/かれんビー(上)【完全生産限定版】 [Blu-ray](2012/04/25)神谷浩史、喜多村英梨 他商品詳細を見る 火憐ちゃんが習って.. Weblog: 不定形爆発 Ver.2.0 racked: 2012-02-22 19:44
  • 偽物語 #7「かれんビー其の漆」

    Excerpt: というわけで、毎週遅れています「偽物語」感想戦。 「かれんビー」最終話でございますね。 正直「つきひフェニックス」4話で足りるのか激しく不安でございますが。 言っても詮無きこと。 兎に.. Weblog: がっちの言葉戯び racked: 2012-02-23 01:44
  • 『偽物語』 第7話 観ました

    Excerpt: 火憐ビー編終了でした。 割と大仰に話が盛り上がっていた割には解決があっさりしていたなと原作を読んでいても思ったのですが、アニメ化されてみてもその印象は変わらない感じですね。とは言うものの、アニメ化さ.. Weblog: 「きつねのるーと」と「じーん・だいばー」のお部屋 racked: 2012-02-23 01:51
  • 偽物語 第7話 『かれんビー 其ノ漆』 感想

    Excerpt: この作品のテーマは、タイトルにもある通り『偽物』で、そして偽物であることは別に悪くないというメッセージがあります。 偽物語 第7話 『かれんビー 其ノ漆』 のレビューです。 Weblog: メルクマール racked: 2012-02-23 11:16
  • 偽物語 第7話 かれんビー 其ノ漆

    Excerpt: 火憐を見つけた暦ですが、道端で倒れ伏す火憐からの言葉は、「よぅ…、キス魔…」と… だから、そのシーンを見せてくれ… 話は平行線で、暦を倒して行こうとする火憐。 建造物が ... Weblog: ゲーム漬け racked: 2012-02-23 20:20
  • 偽物語 第7話 感想「かれんビー 其ノ漆」

    Excerpt: 偽物語ですが、阿良々木暦は火憐のバトルによって道路が破壊されていきます。火憐は逆立ち蹴りやフランケンシュタイナーなど大技も発動させますが、暦は火憐の正義など自分の為ではなく他人のものだと否定します。 .. Weblog: 一言居士!スペードのAの放埓手記 racked: 2012-02-23 22:33
  • 偽物語~第七話「かれんビー其ノ漆」

    Excerpt:  2人の中学生姉妹、阿良々木火憐と月火による冒険と、それを救う兄阿良々木暦の物語、第7話場面1 暦vs火憐  貝木を探して家をでた火憐に追いついた暦。バスを待つ道路でバト... Weblog: ピンポイントplus racked: 2012-02-23 23:42