ラストエグザイル―銀翼のファム― 第18話「Transposition」

堕ちるところまで堕ちたな、ディアン。もともと幸薄そうとは思っていたけれど。



統合軍とルスキニア派の2度にわたる死闘が終わり、サーラが自分自身の意志で実現した停戦協定。しかし”平和”の言葉が繰り返されるたび、その価値が暴落していくようだ。ひどく危ういバランスの上に、この星の人々はどんな世界を築こうとするのか。


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ということで今回は、様々な人々の思惑が複雑に絡み合う政治劇が展開される。


サドリが無断で停戦に応じた前回のシーンは、あれはサドリがルスキニアのやり方を否定してアウグスタ側についたのだと勝手に解釈していたのだけど、どうやら全然見当違いだったらしく、サドリはルスキニア派の全権代表のような立場で講和に応じていたのだった。いちおう事後報告というカタチで総統に詫びを入れていたサドリだったが、グラキエス占領直後の二人の会話から察するに、名目上は総統ルスキニアが上司でも、実際の人間関係としてはルスキニアはサドリより下の立場に立っているらしいから、越権行為ともとられかねないサドリの決断も黙認されることになったわけだ。たぶんこの二人の関係は、引退した元上司にルスキニアが無理を言って手を貸してもらっている、という感じなのだろうか。もともとルスキニアなんかよりずっと古くからアデス連邦で重きをなしていた人材である、という以上に、ルスキニアはサドリのことを慕い、信頼している。前アウグスタの後ろ盾を失ったルスキニアが、いまこうして総統という地位に上り詰めているのも、サドリの貢献によるところが大きいのは間違いないだろう。


まったく異なる地点を見据えているヴァサントとルスキニアが、アウグスタの目の前でお互いの主張をぶつけ、平行線のまま再び戦火を交えようとまでヒートアップしてしまった際、空気読まないファムの発言を巧みに利用して、サドリが味方であるはずのルスキニアをあえて牽制するような動きに出たのは、サドリだからこそできた行為だったのは確かであるが、果たしてこれをルスキニアが想定できていたのかどうかは気になる。もうずいぶん前から、我らが主人公・ファムの言動や思想に影響された、いわゆるファム派とでも呼べそうな人たちの存在が少しづつ影響力を増してきていたけれど、ここにきて軍事力も政治的・人格的影響力も大きいサドリがファム派に同調しはじめたのは、この戦役の方向性を見据える上で非常に大きな転機と言えるだろう。正直、名前だけの国家指導者であるミリアやサーラが仲間になったくらいでは、ファム派の存在感は希薄なままだった。長く苦しい対立を数年前に乗り越えてきたばかりのアナトレー・デュシスの人々がファム派に力を貸してくれるであろうことは間違いないとは思うが、本隊がこの星に降り立つのはいつになるか分からないし、ここでアデス内部からファムやアウグスタに心を寄せる勢力が登場したのは、とても心強い。


サドリはファムの両親、とくに母親? と深い因縁があるようだが、舞踏会でもやっぱり空気を読んでくれないファムがいちいちサドリの足を踏みつけて、話の腰をバッキバキにへし折っていくのが、なんとももどかしいというか、思わず声をあげて笑ってしまったw ここでは自分よりはるかに年上かつ目上で、素晴らしく紳士的な振る舞いのサドリに対して、ろくに敬語使わないどころかまるっきりタメ語で話しかけているファムに、視聴者の総ツッコミが入るところだ。このあたりの無教養さは、第1話から一貫してブレないファムの特徴ではあるんだけれど。いかに彼女が空族の狭いコミュニティの中でぬくぬくと育ってきたか、よ~く分かるシーンだ。


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サドリがファム派に仲間入りしそうな展開になってきた一方、さいきんファムたちとどうも絡みが少ないミリアは、いよいよ空族的自由さやシルヴィウス的自立心に包まれたのんきな生活から強制的に引き離されて、王族に課せられた負の宿命に直面することになってきた。リリアーナのエグザイルをどうこうするには、彼女を暗殺でもしてエグザイルの支配権をミリアに移譲させるしか手が無いかもしれないとは思っていたけれど、その役目をミリアに背負わせなければいけないトゥラン貴族の追い詰められっぷりはひどい。本当は自分たちで手を下すつもりが、警護の厳重なのにひるんでしまった格好ではあるが、だからってアラウダの配下に捉えられた時に即座にミリアを恨む方向に知恵を働かせるとは、開いた口がふさがらない。


もちろん彼らだって、ここでしくじったらもう後がない、というところまで来ているのは確かだ。アデス連邦領内からは、トゥランの地に移住しようとする先住民の大群が準備万端整えているから、ここで先住民の利権の代弁者たるルスキニア派と和睦してしまったら、トゥランの地で解決困難な民族問題が勃発することは目に見えている。じつはこうした貴族たちは、仲間を殺された復讐のためにアデスを恨むディアンたちよりも、ずっと切実に、アデスとの和平を拒絶したがっていたのだろう。それを考えると、あえて魔女になったリリアーナの決断も、ずっと説得力を持って理解することができるのではないだろうか。


ミリアはミリアで、そうしたトゥラン人たちの意志や利益を全力で実現するよう動かなければならなかった。それが王たる者の務めであり、リリーではなくミリアを王位に据えようと画策した貴族たちの希望であった。だが肝心なところでミリアは、自分が王になることを躊躇し、またリリアーナを殺して否定し去ることをしなかった。王族としてのミリアの決意の不確かさを、まざまざと思い知らされたエピソードだったと言える。彼女は王族である前に、リリアーナの家族であったということだ。そして王族というものを、たんなる血縁の産物だとしか考えていなかった。王とはいかなる存在であるか、決定的に思索不足だったのである。


ただしその思索不足・決意不足は、ファムたちがミリアに、少女らしさを失わないでいて欲しいと願った結果であった。そしてそれは、この作品の根幹部を支えるメッセージに直結するものであろう。王として、あるいはエグザイルの生態キーとして、つまり力を与えられた人間としてリリアーナが決断したことは、しかしそのまま、いままで人間が何千年何万年と繰り返してきた愚行を再現することである。もしミリアが、リリアーナを否定する立場としての王を名乗ったら、ふたたび暴力と憎悪と不幸の連鎖が延々と続いていくことになる。それをいかにして断ち切るか。ファムを主人公に据えたこの作品が、ミリアやサーラといった王族の少女たちのなかにあえて”甘さ”をまるまる残しておいたことは、ただ戦争のむごさや人の歴史の愚かさを描くだけに終始しないという、作り手の強い意志の現れであると言えよう。


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それにしても。勝者と敗者がはっきりと描かれる戦闘シーンとは違って、感情に利権、正義感や使命感が四方八方から飛び交いぶつかり合うこの手のドラマは、真面目に描こうとすればするほど終わりのない泥仕合にハマりこんでゆき、収拾がつかなくなっていく。こればっかりは、現実の歴史上の出来事がまさにその通りに展開しているのだから、仕方がないと言えばその通りなのであるけれど。だから、もしドラマやアニメできちんと事件を解決させる最終回を迎えようと考えるなら、どこかで創作物なりの嘘を混ぜ込まなければならず、その手腕の如何こそが作品の評価を大きく左右することになるわけだ。いままさに泥沼にはまり込んでいる真っ最中の様子を描いている今回などはどうしても、話がよく分からんとか面白くない派手さが無いとか思ってしまうところだけれど、辛抱しなければいけないところだ。


まぁそもそも、この手の政治劇にTVアニメで手を出しているということ自体が、とてつもなく勇気のいる決断だとは思うw 1時間モノの実写ドラマではエンターテイメントとしてうまく転がしている作品は多いようだが、『銀翼のファム』の場合どうしても無理に背伸びをしている印象を受けてしまうのは、ファンとしては残念なところではある。作品として目指している地点を考えるとコレを描かないという選択肢はあり得ないわけで、ここまで来てしまった以上は、視聴者側も腹をくくって受け止めるしかないだろう。応援していきたい。



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それでは、今回は以上です。


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