絶園のテンペスト 第2話「彼女はとてもきれいだった、と少年は言った」

主人公の目標が見えてきた感じですね。



今回は、前半部は状況の整理&解説、後半部は主役二人の意思や目的が語られるエピソード。


まず現在の状況についてだが、姫君・葉風を追放して鎖部一族の統率者となった鎖部左門が、世界に破滅をもたらしかねない大それた計画を実行中であることが、前回の補足として語られた。「果実」などと呼ばれる、鎖につながれた球体のバケモノ?を召喚し、それらを集合させようとしているとのことで、蝶の乱舞や肉体の金属化といった災厄はあくまで副次的な作用に過ぎないのだという。


左門がいったいどうしてそんな陰謀をたくらんだのか、そして鎖部一族と呼ばれるたくさんの魔法使いたちがどうして彼に従っているのかなど、まだまだ疑問点は多い。葉風の言葉を聞いている限りでは、左門はトンデモない悪者ということになるはずなのだが、左門や彼に同調する一派には彼らなりの正義や目的が存在しているはずで、それを聞いてみないとこの騒動の本当の姿は見えてこない。


ただ、どうも不破愛花を殺した犯人が、この魔法使いたちの一件に絡んでいるらしく、一門の仲違いという構図だけで片付けられない事情を孕んでいるようだ。不破真広が偶然にも葉風と知り合うことができたのも、なにか深い因縁があったり、あるいは誰かの意思が介在している可能性も高い。今回さっそく左門一派の槍使い・鎖部夏村が真広と接触していたが、両陣営の対立のなかで明らかになっていくであろう事件の真相に注目だ。


----


そんな現状において、当初は部外者として巻き込まれたカタチの吉野だったが、今回は部外者から当事者に立場を切り替えることになった。


魔具を入手したのは真広との友情のおかげであり、それは単に真広のきまぐれに過ぎない行為だったのかもしれない。吉野は、本来は真広と同じように、愛する人を失った当事者の一人であるはずだったのだが、そんな立場をひた隠しにすることによって、当事者となる権利(あるいは義務)を放棄したまま、さも最初から無関係な立場であるかのように振る舞ってきた。しかし、実際に魔法の持つ力を目の前でまざまざと見せつけられ、さらに魔法の道具を入手したことで、彼は初めて当事者として動くことを決心したのであった。


何の罪もない妹が、ある日とつぜん見知らぬ相手によって殺された。そんな現実を真広は「不合理」であると断じ、傾いたままの天秤を水平に戻そうとするかのように、犯人を追いつめこれを殺すことで、現実に合理性を取り戻そうと決意した。真広のそんな決意を、吉野はどこか冷めた目で眺める。犯人を殺したところで不合理は不合理のままだと語る吉野の意見は印象的だった。


真広と吉野では、1年前の事件をどうして不合理だと感じるのか、その着眼点が大きく異なっている。真広は、愛花が殺されたという事実を前にして、殺人という罪が裁かれないことを合理的ではないと考えている。一方の吉野は、そもそも愛花が殺されたことそれ自体が不合理だと考えており、だからこそ取り返しのつかないこの不合理をそのままに放っておいたのだし、不合理極まりないチカラであるところの魔法の存在を知って、この不合理のチカラであれば1年前の不合理な事件に、全く別の不合理な解答を与えることも可能なのではないか、と考えたわけだ。


罪のない人間が天寿を全うできなかったことを不合理だと考えるのか、罪を犯した人間が断罪されずにいることを不合理だと考えるのか。この二人の差は、それぞれの性格に加えて、兄であるか恋人であるかという立場の違いにも影響されているものなのかもしれない。兄であった真広は、愛花の死をまるで自分の体の一部が切り取られたように感じたのではないだろうか。そしてこの痛みが自分だけに与えられたことが悔しくて、愛花を殺した相手の命を奪うことで、自分の味わった苦しみと同等かそれ以上のものを相手とその肉親に与えようと考えた。一方、恋人である吉野が失ったものは、まだ自分の一部にはなっていないもの、すなわち未来に約束されていたはずの幸福であった。彼の悲しみは喪失感以上に、約束が果たされなかったことへの失望が強く、だから彼の望みは復讐ではなく、かつて期待していた約束の履行であった。


もちろん二人とも、程度に差があるというだけで、1年前から感じている悲しみや喪失感はかなり近しいものがあるはずだ。もし吉野の前に犯人が現れたら、彼は相手を殺して復讐を遂げたいと願うかもしれないし、魔法の奇跡によって愛花が戻ってくるのならば、真広も心からそれを望むだろう。ただ今のところは、両者の第一の目標がそれぞれ異なっているというだけに過ぎない。葉風と手を組んだ真広と、エヴァンジェリン山本を暫定的な協力者と据えた吉野が、付いたり離れたりしながらもそれぞれのやり方で真実にたどり着く道程が、今後は描かれていくことになりそうだ。


むろん当面は、吉野はまず真広のサポートに回り、復讐にかられた友人の後を追うカタチで、事件に足を突っ込んでいくしかない。彼が真広と距離を置く可能性があるのは、愛花との恋人関係を真広に知られたときだ。そのときまでに、吉野になら愛花をまかせても構わないと思わせるだけの友情を構築することができるか、それとも敵対者として道を分かつことになってしまうのか。いやそもそも、まず今の段階で真広が本当に二人の関係に気付いていないのか、というところから考えておかないといけないのかもしれない。




真広や吉野の、1年前の事件に対する思い入れが強すぎて、世界の破滅なんか二の次になってしまっている印象もあるけれど、彼らのような”食えない”連中による個人の利害や感情が交錯するドラマは、ゾクゾクさせる色気のような魅力がある。この、友情と愛情と嫉妬や憎しみが入り乱れる二人の少年の物語が、世界を破滅に巻き込む動乱とどのような関連性を持ち、どのようにひとつの物語として統合されていくのか。まだまだ先のことはまったく読めないが、期待以上のドラマを見せてくれるだろうと信じたい。



----


それでは、今回は以上です。


面白いと思ったら、ぜひ下の方にある拍手ボタン(ブログ気持ち玉)をクリックしてください^^



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

面白い
ナイス ナイス

この記事へのコメント

あるるかん
2012年10月19日 14:50
吉野も真広も愛花の死によって、世界がああなる前から彼らの中で何かが壊れてしまった感じですよね。だからあの世界でも泰然と悠然と構えていられるのでしょう。


山本と吉野の抗争は原作とは改変されてました。
山本の「大人の女は~」やキュウリをくわえていたのは妙に色っぽくていいと思います(笑)。
おパゲーヌス
2012年10月19日 23:21
>あるるかんさん
むしろこの事態にノリノリな二人が素敵です。大人ぶった態度を見せるキャラですが、その内面には良くも悪くも少年らしい熱狂が渦巻いているようですね。

山本のエロオヤジ的な言動は、またこの脚本家の悪癖が出てるなぁと苦笑いしてましたw 

この記事へのトラックバック