新世界より 第3話「ミノシロモドキ」
なんかスゴイのが出てきた。モンスターデザインが秀逸すぎますね。
どうやら今回は、この物語における主人公たちの立場を鮮明にするための前フリにあたるエピソードのようだ。主に世界観設定の説明と主人公たちのおおまかな性格・人間関係を地道に描いてきた序章とも言える今のストーリー展開も、大きな山場を迎えつつあるようだ。
今回描かれたのは、全人学級最大のイベントと称される夏季キャンプ。中学入学1年目にして早くも修学旅行を行っているようなものなのだろうか。子どもたちだけで数日間のキャンプ生活を送るのが、教育的にはもちろん、慣習で定められた通過儀礼としても絶対に欠かせないものであるならば、少年少女たちを大人の監視の外に置いても問題がない時期として、これより早くても遅くてもタイミングが良くない。1年遅ければ、異性同士で泊りがけの旅行を許可するにはあまりにデリケートな年齢に突入しているし、1年早ければそれはそれで、呪力が弱く不安定なために村から出すのは危険すぎる。もっとも現時点でさえ、子供たちだけで村を離れるというのは強い不安を覚えるシチュエーションではあるのだが、そこは、この課題をクリアできなければ「間引き」の対象にするのだろう。
かなり優秀な呪力の使い手がそろっている早季たちの班は、まじめな性格で能力面でも一目置かれている駿をリーダー格として、いつも通り余裕をもって難なく課題をクリアしつつあるようだ。しかし特殊なシチュエーションで冒険心が芽生えたのか、覚や早季、それに駿までも、少しばかり暴走しつつある印象が強くなっていく。とくにナイトカヌーで早季と心を通わせた駿は、普段の実績に自信を持っていた上に、早季の前でいいところを見せようという気が出てきたのかもしれない。
また彼らの年齢の子供たちに必ず訪れる変化として、周囲の環境に対する認識の変化が起こりつつあるのだろう。それまで大人の言いつけに従い、固定的な倫理観やあるいは恐怖心などによって狭い世界の中に縛られてきたが、大人に近い知識や経験を得たり自分の考えを持つようになって、少しづつ新しいものの見方ができるようになってくるのは、ちょうどこの頃からだ。彼らは相変わらず子供向けの怪談や噂話に強い関心を払っているが、その噂話の実態を探ってみたいと考え、行動に移すことができるようになった。いまの早季たちは、子供の頃にはとくに禁忌として遠ざけられていた種々のものに触れ、どこまで深く関わって良いのか、どこから踏み込んではならない領域なのかを、トライ&エラーを繰り返しながら急速に学びつつある段階だ。失敗が命の危険に直結するような幼さから脱しつつある一方で、まだ経験も知識もない多くの危険と隣り合わせにあることを学ばなければならない。霞ヶ浦の奥地に上陸しようと決断する場面などは、そんな彼らの現状がよく表れていたと言えよう。
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「見た人間は死ぬ」と噂されるミノシロモドキ。もどきではない本物?のミノシロも含めて、奇妙で不気味でちょっと可愛らしい秀逸なデザインのキャラクターだが、これをまさか本当に捕まえようとするとは思いもよらなかった。呪力をかなりコントロールできるようになったことで、ある程度の危険にも十分対処できると判断したのだろうし、我々から見ればおぞましい姿の生き物でも、この新世界の住人たちにはまだ見慣れた姿と移っているのかもしれない。
このミノシロモドキがしゃべりだしたものだから一層驚かされたのだけど、こいつのヒゲをむしって脅しつける早季を見たら、もうどうしたらいいのか分からなくなった(笑)。 怖がるべきなのか、笑うべきなのか? 警告を無視した結果、あの鹿がどんな反撃を始めるのか、ちょっと期待してしまった。自分はホラーなんて大嫌いだし大の苦手ではあるけれど、嫌いだからこそ今作の不気味な雰囲気には本気で恐怖したりしていて、それが大きな魅力でもあったので、スリラー展開を期待させる不気味な生物との対決は、今回ばかりはちょっと肩透かしだった。
もちろんここは早季のしたたかさに注目すべき場面であり、わりと大人のいいなりになって生活してきた彼らが今まで以上に素の自分をさらけ出していく姿は、見ていて面白い。いるのかいないのか分からないことの多かった守でさえ、今回は十分な存在感を放っていたし、そういう点でもこの夏季キャンプは重要なイベントと言えるだろう。
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ミノシロについてのナレーションでここ数百年の間に突如として降ってわいた生物らしいと解説されていたが、そうして身に着けた定説を早くも覆されるミノシロモドキとの会話。国会図書館の端末であると自称したことで、ようやく、この奇天烈なクリーチャーが理解可能な存在となった(それは少なからず残念な事態ではあったけれど)。いつの時代の人間たちによって作られたのかは分からないが、アバンタイトルで描かれていた500年後前後の時代ではなく、もっと以前の、我々の時代と直接つながる文明の担い手によって生み出された機械であることは明白だ。
滅び行く運命の世界のただ中で、なんとか知識や技術を後世に保存しようと遺されたタイムカプセルというのは、漫画版『ナウシカ』を連想させる設定。またこの手の存在に出くわして世界の真実を知る展開は、ロールプレイングゲーム等でわりとおなじみの手法だ。今作はこれまで、視聴者に「こんなものは知らない」「馴染みがない」「理解できない」といった感情を抱かせることで、独特の恐怖や不気味さ、あるいは好奇心を煽ってきた。この段階でわりとなじみのある展開や設定を披露してしまうことは、今後の展開にこれまでのような魅力がなくなってしまう可能性が出てくると思うのだけど、はたしてどうなるか。
少なくとも次回に関しては、この壮大な世界観の裏側をかなり突っ込んで解説してくれるはずで、その点に対する興味は尽きない。問題はそのあとの主人公たちの決断や行動にかかってきそうだ。せっかく素敵な雰囲気を楽しませてくれた作品なので、このミステリやホラーの要素は大事にしてほしいところだ。3部作という構成でスケールの大きな物語を謳っているが、その面目躍如たるドラマを楽しみにしておきたい。
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それでは、今回は以上です。
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どうやら今回は、この物語における主人公たちの立場を鮮明にするための前フリにあたるエピソードのようだ。主に世界観設定の説明と主人公たちのおおまかな性格・人間関係を地道に描いてきた序章とも言える今のストーリー展開も、大きな山場を迎えつつあるようだ。
今回描かれたのは、全人学級最大のイベントと称される夏季キャンプ。中学入学1年目にして早くも修学旅行を行っているようなものなのだろうか。子どもたちだけで数日間のキャンプ生活を送るのが、教育的にはもちろん、慣習で定められた通過儀礼としても絶対に欠かせないものであるならば、少年少女たちを大人の監視の外に置いても問題がない時期として、これより早くても遅くてもタイミングが良くない。1年遅ければ、異性同士で泊りがけの旅行を許可するにはあまりにデリケートな年齢に突入しているし、1年早ければそれはそれで、呪力が弱く不安定なために村から出すのは危険すぎる。もっとも現時点でさえ、子供たちだけで村を離れるというのは強い不安を覚えるシチュエーションではあるのだが、そこは、この課題をクリアできなければ「間引き」の対象にするのだろう。
かなり優秀な呪力の使い手がそろっている早季たちの班は、まじめな性格で能力面でも一目置かれている駿をリーダー格として、いつも通り余裕をもって難なく課題をクリアしつつあるようだ。しかし特殊なシチュエーションで冒険心が芽生えたのか、覚や早季、それに駿までも、少しばかり暴走しつつある印象が強くなっていく。とくにナイトカヌーで早季と心を通わせた駿は、普段の実績に自信を持っていた上に、早季の前でいいところを見せようという気が出てきたのかもしれない。
また彼らの年齢の子供たちに必ず訪れる変化として、周囲の環境に対する認識の変化が起こりつつあるのだろう。それまで大人の言いつけに従い、固定的な倫理観やあるいは恐怖心などによって狭い世界の中に縛られてきたが、大人に近い知識や経験を得たり自分の考えを持つようになって、少しづつ新しいものの見方ができるようになってくるのは、ちょうどこの頃からだ。彼らは相変わらず子供向けの怪談や噂話に強い関心を払っているが、その噂話の実態を探ってみたいと考え、行動に移すことができるようになった。いまの早季たちは、子供の頃にはとくに禁忌として遠ざけられていた種々のものに触れ、どこまで深く関わって良いのか、どこから踏み込んではならない領域なのかを、トライ&エラーを繰り返しながら急速に学びつつある段階だ。失敗が命の危険に直結するような幼さから脱しつつある一方で、まだ経験も知識もない多くの危険と隣り合わせにあることを学ばなければならない。霞ヶ浦の奥地に上陸しようと決断する場面などは、そんな彼らの現状がよく表れていたと言えよう。
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「見た人間は死ぬ」と噂されるミノシロモドキ。もどきではない本物?のミノシロも含めて、奇妙で不気味でちょっと可愛らしい秀逸なデザインのキャラクターだが、これをまさか本当に捕まえようとするとは思いもよらなかった。呪力をかなりコントロールできるようになったことで、ある程度の危険にも十分対処できると判断したのだろうし、我々から見ればおぞましい姿の生き物でも、この新世界の住人たちにはまだ見慣れた姿と移っているのかもしれない。
このミノシロモドキがしゃべりだしたものだから一層驚かされたのだけど、こいつのヒゲをむしって脅しつける早季を見たら、もうどうしたらいいのか分からなくなった(笑)。 怖がるべきなのか、笑うべきなのか? 警告を無視した結果、あの鹿がどんな反撃を始めるのか、ちょっと期待してしまった。自分はホラーなんて大嫌いだし大の苦手ではあるけれど、嫌いだからこそ今作の不気味な雰囲気には本気で恐怖したりしていて、それが大きな魅力でもあったので、スリラー展開を期待させる不気味な生物との対決は、今回ばかりはちょっと肩透かしだった。
もちろんここは早季のしたたかさに注目すべき場面であり、わりと大人のいいなりになって生活してきた彼らが今まで以上に素の自分をさらけ出していく姿は、見ていて面白い。いるのかいないのか分からないことの多かった守でさえ、今回は十分な存在感を放っていたし、そういう点でもこの夏季キャンプは重要なイベントと言えるだろう。
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ミノシロについてのナレーションでここ数百年の間に突如として降ってわいた生物らしいと解説されていたが、そうして身に着けた定説を早くも覆されるミノシロモドキとの会話。国会図書館の端末であると自称したことで、ようやく、この奇天烈なクリーチャーが理解可能な存在となった(それは少なからず残念な事態ではあったけれど)。いつの時代の人間たちによって作られたのかは分からないが、アバンタイトルで描かれていた500年後前後の時代ではなく、もっと以前の、我々の時代と直接つながる文明の担い手によって生み出された機械であることは明白だ。
滅び行く運命の世界のただ中で、なんとか知識や技術を後世に保存しようと遺されたタイムカプセルというのは、漫画版『ナウシカ』を連想させる設定。またこの手の存在に出くわして世界の真実を知る展開は、ロールプレイングゲーム等でわりとおなじみの手法だ。今作はこれまで、視聴者に「こんなものは知らない」「馴染みがない」「理解できない」といった感情を抱かせることで、独特の恐怖や不気味さ、あるいは好奇心を煽ってきた。この段階でわりとなじみのある展開や設定を披露してしまうことは、今後の展開にこれまでのような魅力がなくなってしまう可能性が出てくると思うのだけど、はたしてどうなるか。
少なくとも次回に関しては、この壮大な世界観の裏側をかなり突っ込んで解説してくれるはずで、その点に対する興味は尽きない。問題はそのあとの主人公たちの決断や行動にかかってきそうだ。せっかく素敵な雰囲気を楽しませてくれた作品なので、このミステリやホラーの要素は大事にしてほしいところだ。3部作という構成でスケールの大きな物語を謳っているが、その面目躍如たるドラマを楽しみにしておきたい。
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