刀語 第7話「悪刀・鐚」

見終わってから、「見終わった!!」と口にしたくなる、そんな感慨深いエピソードだった。




・今回のお話


予告の通りに、今回の相手は鑢七実。可愛くて、色っぽくて、カッコよくて、そしてめちゃめちゃ怖いお人ということで、まずはアバンから「なんで今期はこんなにホラーばっかなんだよ、イジメか!」と叫びたくなるような、おどろおどろしい演出で幕を開けた。


そしてもちろん、実際に戦って見ればその恐ろしさは否応なく痛感させられる。こんなの勝てるわけがないと、劇中の人物たちは無論、視聴者にまで強く信じ込ませる作劇の妙が、見事だった。あと5話も残ってる段階で七花が負けてしまうのはさすがにあり得ないとしても、勝てずに逃げるか、仲直りするカタチで刀を手に入れるんじゃないか(逆にそれ以外どうやって奪えというのか)と、多くの人が考えたのではないだろうか?


しかも、その時点ですでに強さの比較対象外であった七実が、じつはわざと弱くなろうとしていたとか。上限に上限を重ねてさらにその天井を突き抜けてしまう規格外の強さの描写は、もはや芸術的とさえ言える。仏教経典とか、こういう表現をよくやるんだよね。受け手の想像力を限界いっぱいまで働かせて、そのイメージを鮮やかに破壊することで、受け手の思考能力を大きく上回る絶対性を描き出してみせる。古代インドで確立された文学的手法を、意図したか否かは分からないが、西尾維新が現代に蘇らせたようだと思った。


そんな七実が、しかし強すぎるが故の悲哀を抱えているらしいことはこれまでも描かれていたが、その悲哀をこそ描き出すためのこの1時間のドラマは、理解や納得を大きく越えたものではあったが、頭では無く魂の奥底から揺さぶられる感動があった。切ないとか、哀しいとか、美しいとか、そんな言葉を並べるのが陳腐に思えるほどだ。これまででもっとも秀逸なエピソードだったと思うし、まるで名作映画を堪能したようなどっぷりとした満足感とカタルシスを味わわせてくれた。




・良いと悪い


ことさらに特徴的で不可解(あるいは理不尽)なセリフ回しの多い今作の登場人物。七実の場合は、「良い」といった直後に「否、悪い」と言い換えるのが、彼女特有の言葉遣いとして採用されていた。


そしてこの二律背反の言葉遊びが、そのまま七実の生き様を表現していた。良い⇔悪い の対比はそのまま、弱い⇔強い の対比であり、生きたい⇔死にたい という彼女の願望の対比でもあった。


必要もないのにわざわざ見稽古などという特殊能力を用い、悪刀・鐚を取り込んで、しかしいつでも殺せる七花をあえて殺さなかった。わざと弱くあろうとするのは体を保たせて生き永らえるためだということだが、しかしその実、父親に殺されるのを受け入れようとし、また七花には積極的に「殺して欲しい」と願っていた。いったい彼女は生き続けたかったのか、死にたかったのか。弱くありたかったのか、強い自分と戦って欲しかったのか。彼女自身が自分で自分を理解し律することができないまま、さらに”刀が刀を使う”という矛盾までをも抱え込んで、雁字搦めになっていった。姉弟対決という哀しい最後を迎えなければならなかった宿命が、最後までその糸口を見出すことが出来ないまま、それでもせめて人間らしい最期を迎えたいという希望だけは叶って、終わりを告げた。


今回のドラマに、キャラクターの絡み合う複雑な内心の事情や、あらかじめ配されていた伏線を、きれいさっぱりに解きほぐしたという感動は無い。そうではなく、その混沌とした人間の生のあがきを、その混沌のままに此岸から彼岸へ連れ去っていった割り切れない切なさが強く描かれていた。そのドラマは美しくも無ければ心地よくも無いものだが、しかし確かに人間の生の葛藤が深く深く込められていたし、だからこそ見る者の心を大きく揺り動かすものだったと思う。


思い返せばこれまでのエピソードでも、そうした側面は少なからず描かれ続けてきたことであった。今回はその最たるものであり、もっとも納得のいかない、しかしもっとも説得力のある作劇だった。今後果たしてこれほどずっしりと心に響くエピソードが存在し得るのか。終わってみれば、シリーズ中のクライマックスであったと評されても、まったくおかしくないエピソードだと思った。第7話を見れただけで、「刀語」という作品に出会えてよかったと、これは確信を持って言える。




・ビジュアル面での、演出の面白さ


さてお話の方がひどく重たいものだったのを考慮してか、今回は映像的にはことさら面白い演出方針で、良くも悪くも、今回のエピソードを非常にキャッチーなものにしていた。


とくに、ことさらゲーム的な画面構成。まんまレトロゲーのオマージュもやっていて、ビジュアル的な面白さが満載だった。極めて平面的な画面のなかでルーチンワークのように動くキャラクターや格ゲー的なアクションはもちろん、横スクロール型アドベンチャー、縦スクロール型シューティング、あるいはノベルゲームなど、おもわずニヤニヤさせられる表現が次々と繰り出される。あるいはそれ以外にも、土佐に乗り込むときの海上移動のシーンとか、江戸文化とアニメの融合じゃないかと思うような、すごくエキサイティングな表現法だった。


とにかく無駄話の多いこの作品において、こうしたお遊び的な映像演出はもっと前からやって欲しかったところ。今回のゲームネタは一発モノだろうが(シャフトもゲームネタは何度かやってとっくに飽きている模様^^)、例えば鳥取砂丘を延々と歩き続けたシーンなど、せっかくなのだからもっと映像面で楽しませる工夫が欲しかったなぁと、いまさらながら思うw 「化物語」は30分の中でさえ映像の工夫を怠らなかったのだから、作風が異なるとはいえ、今作は今作なりのやりかたで、もっとアイディアを詰め込んで欲しかった。今回はそれが出来ていたわけで。


むろん、やりすぎも問題ではある。七実との最終決戦のシーンなんかは、もっと正統派のアクション作画で魅せて欲しかったところ。今作は、例えば手を抜きながらでもいいからアイディアで楽しませる場面と、王道演出で真っ向勝負を挑む場面と、メリハリが付けられる作品だと思う。第3話終了後の嘘予告なんかは、あまりにアクションが素晴らしすぎて期待感が膨らみまくったわけで、あれを第4話にやらなかった分、今回見せて欲しかったなとw 贅沢な注文だが、せっかく剣戟モノの作品だ、いいところをたくさん見せて欲しい。今後のエピソードにはそのあたりにも期待したい。




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それでは、今回は以上です。
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