百花繚乱 サムライガールズ 第10話「魔眼の牢獄」

王道なストーリー展開だからこそ、映えるテーマ描写がある!




・将とサムライの資質とは


早いものでもう第10話目ということで、ストーリー展開がいよいよ佳境に差し掛かって来た。今回は、徳川慶彦に囚われてしまった宗朗たちを救出するべく、サムライたちが愛と忠義の信頼を胸に活躍する。


将とサムライの資質とは何か。主従の正しいあり方を考えてもさほど意味があるとは思えない現代において、どうしてこのようなテーマを描きだそうとしたかと言えば、その理由や意図はすべて、ダルタニアンが慶彦を裏切って見せたシーンに詰め込まれていると言えよう。ダルタニアンが、捕虜たちの主を想う心意気に打たれ、慶彦の命令を拒否して見せたのは、一見すると主従のあり方としては完全に間違っているように見える。例えどのような命令でも、主の指示を可及的速やかに実行するのがニアの使命であるはずで、それを渋ったり拒んだりしていては、とても組織など成り立たなくなってしまう。


しかし人間の組織(国でも会社でもなんでも良い)が、あたかも一個の機械のように合理的に運用されることを理想とするのは、これは西洋生まれの近代合理主義的価値感に基づく組織論であると言える。それに対して歴史を振り返って見てみると、しばしば主君の意に逆らって信念を貫く人物が登場し、高く称賛されることになる。とくに中国史ではそうした人物に対する称揚が顕著な印象があるが、そこには、国家の組織を機械ではなく生物のようなものとして捉え、たとえ皇帝であろうと奴隷であろうとすべて一人の人間であり、その人間の集合である組織もまた、不完全で不条理な側面を多分に備えているという意識があるのではないだろうか。


今作で何度も言及されている主従の正しきあり方とは、まさにそうした、主従双方を一人の人間として扱い、その人と人の正しい繋がりを模索するところに、答えを見出そうとするものであった。大袈裟に言えば近代合理主義的な社会像への批判であり、かつ身近な人間関係にことごとく置きかえることが可能な、真摯なメッセージでもある。


慶彦の言っていた力の倫理は、これはこれでひとつの真実であり、正義であろう。彼の掲げた国防の指針は、現代の国家が抱え込んでいる必要悪ほどには、腐っていない。ごく限られた人命を犠牲にして国家全体を天草四郎の脅威から守るのであるから、それが人道に反しているからといって、慶彦の計画を積極的に否定することは難しい。しかし千姫や幸村は、人命を犠牲にする手段そのものだけではなく、もっと根本的な国家のあり方、主従のあり方を見つめ直すよう迫った。愛する人を守りたいという気持ちの発露が、人と人の正しい繋がりを思い起こさせ、ストレートに作品のメッセージを伝えていたのは、とても良かったと思う。


恐らくこの話数は、作品全体を貫くテーマを大々的に打ち出した、シリーズ中もっとも重要な回だったと言えるだろう。囚われの主人公を救出しにいくその過程は、極めて王道な展開を見せたエピソードではあったが、だからこそ、このように真摯に作品テーマを語りかけてくるエピソードとしてまとめられていて、じつに見事だった。




・もっと盛り上がって欲しかった十兵衛の覚醒シーン


一点だけ残念だったのは、十兵衛が実験用具の中から出てきて、第1話よろしく宗朗の腕の中に収まったシーンだ。


ここは、ニアが慶彦を裏切った最高に燃える展開を受けて、さらに第1話とは逆に宗朗のほうから十兵衛に口づけをするという、とても印象深いシーンであった。そんな素晴らしい展開だったからこそ、十兵衛が落ちてくる描写に関しては、もっと派手に演出出来なかったかなぁと思う。


今作は徹底して画面の中を虚構的に描きあげている作品である。それは、作品の雰囲気を独特のものにしているだけでなく、カッコよさや美しさを、強引にでも追求することが出来るということである。例えば同じように虚構的な画面世界を構築するシャフト作品だったら、十兵衛が上から落ちてきて受けとめられる今回の場面は、ものすごく高い地点から落下させるとか、ポーズをきめたキャラクターを特徴的なアングルから映しだすとか、体の一部をアップで映したカットをいくつか繋げてみるとか、そういったいかにも視聴者の気を引きそうな見せ方をしていたのではないかと思う。それに対して実際に描かれたのは、いまいち平凡というか、緊迫感の強調をさほど行わない落下シーンだった。


「百花繚乱 サムライガールズ」は、いまシャフトがやっている虚構的な画面作り(ひいては作品作り)を、シャフトとはまた異なる方向から挑戦し、大いに成功しているという評価を下してきた。それだけに、今回のこのちょっとした”シャフトとの差異”(むろん演出手法の話ではなく、どこをどう見せるのかという着眼点の話)が余計に目に付いた印象だった。今作は今期でもっとも自分の趣味に合ったアニメであるから、できればどんな些細な点までもこちらの想定以上であって欲しかった。それくらい、この作品には注目している。


あと2話か3話で最終回なのだろうが、ストーリー展開は1クールに相応しく非常に手堅くまとめてあるので、あまり下手な転び方はしないだろうと予測している。この調子でぐっと盛り上げて面白いものを作ってもらって、あとは映像演出や作画の面で、楽しませてもらいたい。





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それでは、今回は以上です。


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