君に届け 2ND SEASON 第9話「告白」

出来る男、それがピン! どこぞの優男とは大違いですな。




・ついに告白! しかも爽子が自分から!


第1話を見ていた頃は、まさかこんな日が来るとは思わなかったなぁ。”あの”爽子が、クラスの人気者の男の子に恋をし、あまつさえ自分から想いを告白してみせるとか、これだけでどんなにかドラマティックなエピソードだろう。もちろん視聴者としても、爽子と風早が主役なんだから、いつかこの二人がちゃんと好き合って恋人になる日が訪れることは当然信じていたけれど、さりとて、現実にそれが描かれるなんてとてもイメージができなくて、正直すごく戸惑っている。愛娘が結婚するときの父親の気持ちって、これに近いものがあるんだろーか……?


というか、Aパートの一連のシーンは、あまりに入れ込みすぎて思わず酸欠になるかと思った。このセリフや演出は、反則だ。とめどなく溢れ出る「好きなの」という言葉と、必死の声、それに頼りなげな仕草や、緊張と不安と下心とでいっぱいいっぱいになっている爽子の表情! こんなに素敵な告白シーンなんて、なかなかあるものじゃない。


ともあれ、とうとう爽子は、風早に告白をした。それは、自分が風早と対等になれたとかそんなことではなくて、むしろ彼女は今までとずっと変わらぬ尊敬と憧れを風早に対して抱き続けているのだけれど、募りに募った感情を抑えておくことができずに、とうとう溢れ出てしまったという印象だった。いままで散々、友人やライバルからの様々なサポートを受けてきた爽子だけれど、それが爽子の恋を導くことはあったとしても、その恋を自分のものにできたのは紛れもなく爽子自身のちからだ。たとえば風早や健人が爽子をクラスに馴染ませようと手を貸してみたり、あるいは矢野やちづが爽子を風早と対等の立場に立てるよう助言を繰り返したが、それらのことが多少なりとも爽子自身の人付き合いに対する考え方を改善させるのに繋がったものの、最終的に爽子が下心を持って風早に対することができたのは、やはり恋こそが人を前進させるもっとも大きな原動力だということだろう。恋は人を信じられないくらい無謀に、攻撃的にしてしまう。いまだに風早のことを聖人君子だと思っている爽子が、自分には不釣合いだと分かったうえでそれでも告白したのは、こうした恋の性質ゆえのものだ。


してみれば、爽子の告白を成就させるのにもっとも貢献した人物は、くるみちゃんだということになるだろう。風早のことを見ていればいい、なんて思っていた爽子に、恋というものがどれだけ大変で、難しくて、勇気のいることなのか。いちクラスメートとしての憧れだけでは到底理解できるはずのない、恋の甘さではなく酸っぱさのほうを、自ら身を持って体験し爽子を教え導いたくるみちゃんの役割は、出番の無いエピソードにおいても絶大だ。


今回、風早ではなく爽子のほうから、無事に、ちゃんと告白できたということ。この一点を成功させるためだけに、第1期のころからいままでずっと、爽子の色んな経験と成長を描き続けてきたんだなぁ。




・ジョーとピン、二人のKYキャラがもたらす苦い現実の悦楽 


今回ほど、ジョーというキャラが全国から一斉に殺意を向けられた日は、無かったのではないだろうかw いっちばん肝心なところで、世にも最低なやり方で、ムードをぶち壊し、二人の恋路を邪魔してくれた。そのくせ本人は罪悪感のひとつも感じずに、お気楽に勝手気ままな態度で、幸せそうにスナックを貪り食っていた。こういう手合いほど長生きするんだから、理不尽な世の中だよなw


あるいはジョーと同じくらいの危険人物と認定されているピン。彼は最近は柄にもなくとても良い働きを見せるけれど、1期のころの傍若無人にもほどがある振る舞いと、その行動が周囲にまき散らす害悪のハンパ無さを思い返せば、まだ聞き分けのよさそうなジョーのほうが、よほどマシに見える。このジョーやピンといったキャラは、矢野たちがみんな爽子と風早の仲を取り持とうと真剣になっているときに、その努力を根底から覆す恐怖の大王といった体で、劇中の存在感はとてつもなく大きい。


いわばこの二人は、冷酷な現実の権化と言ってよいだろう。ラブストーリーの主役としてたくさんの幸運に恵まれている爽子と風早には、さらに友人たちの計らいによって、まさに主人公にふさわしい奇跡的な幸福の実現が約束されていたようなものだった。ところが別の観点からみれば、それは奇跡の人為的な創出であり、ズルであって、そのような奇跡や幸運のバーゲンセールはあまりにもおとぎ話的な作劇と言える。そこでジョーやピンは、作中ではとくにデフォルメされて虚構的・道化的な違和感を突き付けながら、矢野たちが敷き詰めているレールなどなんの価値もないのだと言わんばかりに、それを踏み荒らし、破壊していく。それは、愛のチカラを信じたがる我々人間に対して、現実の事象をつかさどる運命神の遣わした、冷酷な秩序の代行者であると言えよう。今回はまさに、風早が爽子に顔を近づけていよいよ恋が成就すると思われたその瞬間に、狙い澄ましてジョーが登場したことで、大いに盛り上がっていた気分は一気に収束(萎え)してしまい、現実なんてそううまくはいかないよね、という諦めの気持ちで恋物語を締めくくるように働いた。実際に我々の人生においても、このような運命の冷酷な働きは往々にして起こるものであるし、それがじつに都合よく、最悪のタイミングでこちらの抱いている希望を打ち砕いて見せることも、珍しくはない。


すなわち、教室シーンにおけるジョーの役割は、おとぎの国の王子様とお姫様の恋物語に逃避していった今作の時間軸に対して思いっきり冷や水をぶちまけ、登場人物だけでなく我々視聴者の意識をも現実に引き戻すという点にあった。


同じことは、後夜祭へ向けて皆で準備をしているところへ、どうでもいい理由で乱入してくるピンの姿にもよく表れている。文化祭とは学生にとって、リアルの世界に接続したままにおとぎの国へ逃避することのできる、数少ないチャンスである。とくにその準備の時間というものは、クラスメートの皆で協力し合うという性質上、学生生活の中で最も幸福な時間と言っても過言ではない。そんな夢の中にいる生徒たちに、突如として暴風のように乱入してくるピンは、至福の時間の邪魔をする宿命の象徴だ。(※ただし、ピン自身が常に自分の夢の世界を生きているようなキャラなので、このシーンに関しては悲劇性はほぼ皆無である)




ところで、夢の中にいる若者を現実世界に引き戻すという働きは、現実の苦々しさを強く思い起こさせるものであるだけに毛嫌いされてしかるべきだけれども、しかし現実だからこそ味わえる幸福というものもあって、そこに意識を向けさせてくれるという役割も持っている。


この点ではピンの言動がとても分かりやすい。風早のことを聖人君子のように考え、彼に下心をもって接することをひどく嫌がる爽子に対して、下心こそがリアルの感情なのだと教え諭したピンの言葉は、まさに現実世界の権化であるからこそのものと言える。夢想的恋愛に走りがちな爽子や風早に対して、現実に体験できる、決して綺麗で素敵なことばかりではない恋愛というものの面白さを教えてくれるのが、ピンの今回の役割であった。


またジョーも同じである。彼は、時間を忘れて恋に没頭する爽子や風早のところに乱入して、二人を夢の世界から引き戻した。しかし、夢から覚めた二人は不幸であったか? そんなことは決してない。いちど現実世界に立ち返ったからこそ、自分の行為を振り返り、自分の感情を整理したうえで、改めて、次の幸福を目指して頑張れる。ついこの間まですれ違って喧嘩中みたいな状態だった爽子と風早がお互いに、明日の到来を待ちわび、今日のことを踏まえてもう一度話をしようと心に誓った。このときの二人の様子は、教室で抱き合っていたときに比べても、ずっとずっと楽しそうだったのではないか?


目の前にある幸福に没頭して愉しむのが夢の世界の役割なら、過去の幸福の余韻に浸りながら、来たるべき未来に訪れるであろう幸福を思い描き、その期待感のために生きる活力をふつふつと湧き出ださせてくれるのが、現実世界の役割であると言える。『君に届け』という作品は、少女マンガの恋物語らしい夢見心地の幸福な恋愛へとドラマを帰結させただけではなく、それをもう一度現実世界に引き戻すことで、二重にも三重にも味わうことのできる人生の幸福にまで視野を広げている、稀有な作品である。そして作品の打ち立てたルールや劇中のムードをことあるごとに破壊し、味気なくも大切な現実世界を呼び込む装置として、ジョーやピンといったキャラクターを配していると見ることができるのではないだろうか。




さて、いいところでさえぎられてしまった爽子と風早の関係が、次回どう進展するのか。おあずけを食った状態となった二人が、どのようにして障害を克服し、自他ともに認める恋人関係になることができるのか。シリーズとしての山場は過ぎたのかもしれないが、これで二人のすれ違いもたぶん無くなったことだし、あとはたっぷりと二人のもどかしくも暖かい交流を堪能させていただこう。




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それでは、今回は以上です。


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