異国迷路のクロワーゼ 第8話「子供部屋」

真っ黒いカミーユ姉さまも素敵。




か、会話が高度すぎてついていけんwww


すごいなぁ。いままでこの作品って脚本に関してはかなり分かりやすく丁寧に作られている印象があったのだけど、ここにきてこんな空中戦を見せてくれるとは思わなかった。テレビ未放送分を視聴していないことがどれだけ響いているかは分からないけれど、次回以降もクロードとカミーユの幼少時代のエピソードを見せていくのであれば、そこで描かれたものを踏まえてもう一度見直さないと、今回のカミーユのセリフの多くは十全には理解できないのではないか。


今回のカミーユのように、まだ語られていない事実や感情をあえて伏せたまま、あえて視聴者を置いてけぼりにしてセリフを紡いでいくのって、やはり相当高いセンスが要求されるはずだ。とくにSFやファンタジー等とは違って、人間の心の描写だけで勝負しなければならない今作の場合、「分からないんだけどなんとなく想像がつく」というギリギリのラインを模索しながら、さらにそれを恋を語るにふさわしい詩的な表現を用いなければならないということで、とても神経を使う仕事をされたのではないかと想像してしまう。カミーユがクロードや湯音に投げたセリフだけでなく、オスカーがした猫の話も、こちらはまだだいぶ分かりやすかったが、やはり聞いてから一度思考を経なければ理解に至らない言い回しとして、とても良い味を出していた。


また今回は、湯音とアリスとカミーユがひとつの創作童話を通じて結ばれてゆく珠玉のドラマとして、非常に高い完成度となっていた。感性豊かなアリスが自由を求めて描き出した、東洋の少女との不思議な出会いとドラゴンツアーは、ただその劇中劇だけで十分すぎるほど感銘を受ける出来栄えであったし、またそれが現在のアリスと湯音の出会い、まだまだ遠いけれど急速に近づきつつある海の向こうの世界、その海を越えて奇跡を届けにやってきた湯音の存在と、さらに自分の意志を必死で抑え込もうとするようなカミーユの心境などと重なり、繋がりあって、奔流のような感動を湧き出たせるものだった。もちろん挿入歌の情熱的な盛り上がり方や、アリスの描いた紙芝居をアニメーション化して見せた映像演出とも相まって、秀作揃いの今作エピソードの中でも抜群の素晴らしさがあった。もうこれで最終回だって言われても文句は言えません。


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今回の湯音とアリスはおとぎ話をテーマに盛り上がっていたけれど、竹取物語に対するアリスの評価は面白かった。平安時代の日本も高度に体系化された貴族文化が形成されていたわけだが、当時の男女交際に関する文化はヨーロッパや近世日本のそれとは大きく異なる。当時は当時で、やっぱり女性は身勝手な男性に振り回されて涙を流す場合が多かったようだし、だからこそかぐや姫のような、位の高い男どもをばっさばっさと切り捨てて、さらに相思相愛であった帝さえも振り切って故郷に帰ってしまうという女性像は、物語としてはさぞ痛快だったことだろう。


アリスが、日本の物語にはそんな新時代的(?)なヒロインが登場するということで感銘を受けていたのは、世界の最先端の文化を誇る国だと自負しているフランス上流階級においてさえ、女性という存在や結婚というシステムを権勢争いの道具にしかできない、封建主義的な男尊女卑の概念をなかなか捨て去ることができていないからだ。また、そうした因習を旧時代の遺物と言ってのけるぐらいに、アリスは先進的な価値観を持っているということでもある。いや、先進的というよりは、庶民の感覚と言った方が正しいのだろう。どうあがいたって成り上がり者であるブランシュ家の娘たちは、上流階級の優雅な生活や社交界といったものよりも、本物の自由を、本物の愛を求めている。


フランスという国の、また19世紀という時代の面白いところは、かつては文化的として憧れの対象であったはずの王侯貴族たちの因習が色濃く残る一方で、革命によって市民層(中流・下層階級含めて)の価値観もまた大きな流れを形成しており、いわば近代から現代への価値観の過渡期にあたっているという点だ。そしてブランシュ家の娘たちは、旧時代的な上流階級に属することができるよう期待され教育されている一方で、中流・下層階級の自由な気風にも感化されており、悪く言えばどっちつかずの、よく言えば広い視野で物事を観察できる立場にあると言える。貴族や富豪たちの暮らしも、また平民たちの暮らしも、どっちも敵視せず、公平に眺め、感情と義務感との狭間にあって自分たちの生きるべき世界を見定めようとしている。幼少期にアリスが作った物語は、急激に変化を遂げつつある時代の中で、巣立ちの日を迎えたらどちらの方角に向かって飛んで行こうかと胸を膨らませる雛鳥たちの姿を、よく描き上げていたと言えるだろう。


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今回のエピソードを見て、恥ずかしながら自分には、大人になったアリスが飛行機の女性パイロットとして果敢な記録飛行や大会に挑み、新聞やラジオを通して世界中にその勝ち誇ったような満面の笑みを振りまいている姿が、ふと目に浮かんだ。ドラゴンに乗って世界中を旅するアリスの夢がいつまでも変わらずに彼女をとらえ続けるならば、きっと彼女は、飛行機に乗ろうとするのではないか。実際の航空の歴史と照らしてみても、アリスの世代なら十分にあり得ることである(1910年に初めて開催された女性パイロットの大会での優勝者は、1877年生)。


空を越えて海を渡り、はるばる日本へと夢を馳せながら滑空する女性パイロット。世界の人々の手と手を結び合わせるという夢の実現に向けて、希望と使命感に燃え立つアリス・ブランシュ。もちろんただの妄想だが、今回のエンディングを見てから、そんなアリスのイメージが鮮明に脳裏に焼き付き、今も頭から離れない。もしそんな未来になったらどんなに素晴らしいだろう! 


歴史(とくに飛行機の辿ることになった歴史)は、残念ながらこのあと人類史上最悪の惨事に見舞われることになっている。しかし、アリスや湯音が未来に託したであろう希望や期待のメッセージは、21世紀を生きる我々の前にはっきりと示されている。自分がパイロットとしてのアリスの姿を夢想したのは、彼女の未来(=現代)に対する強い希望や、夢や、意志が発せられたからだ。劇中ではまだほんの夢見がちな少女に過ぎない彼女たち、そして2011年の今から振り返ればきっと想像を絶する苦難を乗り越えてきたであろう彼女たちに、我々は自信を持って披露できるだけの未来の姿を提示することができるだろうか。急速に発展する科学にまるで魔法のような期待をかけていた当時の人々に対して、発展した科学技術によって少なくない犠牲を払ってきた現代の我々には、それでも科学が用い方次第で人々に大いに寄与することができることを証明し、彼らが紡いできた歴史が決して無駄にはならなかったことを保証する使命が、きっとあるのではないか。


アリスや湯音たちの屈託のない笑顔を見ていて、彼らが未来に託した希望の大きさに、武者震いを感じずにはいられないエピソードでした。




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それでは、今回は以上です。


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