ラストエグザイル―銀翼のファム― 第13話「Bad move」

前回予想してたのと違いすぎワロタ・・・orz



えぇー? 「あれはおとり」って、捨て駒の前衛艦隊のことを指してたのー? 


うーん、グラキエス侵攻軍の全艦隊をおとりだと思った前回の推測は、盛大に外してしまいましたね。そりゃだってファムのセリフのタイミングとかさー、ルスキニア総統の優れた作戦立案能力とかさー、サドリの意味深な表情とかさー、視聴者を唸らせるような戦略・戦術を見せてくれるに違いないと思わせる要素がたくさんあったじゃんかさー。お互い単純な正面衝突で、しかも結局は隠し持ってた新兵器でカタを付けちゃうとかさー。うー、まぁこれはこれで見た目には分かりやすく派手だったし迫力満点だったからいいんですけどぉー。


そして今回も基本的に役立たずだったファムたちご一行w アンシャル撃沈のときだけを除いて、たかが空族のヴァンシップ1機ではどうこうならないのが戦場なんだということで、このあたりの無力感はなかなかグッド。ただここはやはりどうしたって、戦闘前にちゃんとアデスの新兵器の存在がグラキエスに伝わっていて、それをどう克服するかに挑戦して失敗してしまうような展開が描かれれば、いっそう面白かったのにと思う。まぁそんなことやってる尺は無さそうですがw


----


ではさっそく今回の戦闘シーンを振り返ってみよう。(今回は解説図は描きません。見てて分かりやすかったうえ、けっこう都合の良い展開だったので、真面目ぶって考察するのは向いてない会戦シーンだったと思うので)。



まず第1段階は、”おとり”の前衛艦隊とグラキエスヴァンシップ隊「翼の乙女」の戦闘から。グラキエスは少なくとも3つの集団に分かれての波状攻撃を行っていたようだが、敵の数が膨大なことを見越して、補給を取りながら断続的に攻撃を加える戦術のようだ。あるいはおそらく、波状攻撃はこのヴァンシップ隊のセオリーなのかもしれない。あれだけの速度と破壊力を実現するためには、燃料も弾数も短時間のうちに使い果たしてしまうはずで、あくまで国境内部で、限定的な戦闘時間の中で活動しなければならないのだろう。また一か所に大量のヴァンシップを投入すると身動きが取りづらくなり、被弾の危険が高まったり貴重な戦力が遊兵と化してしまうので、全軍をいくつかに分割して車懸かりに攻撃するのは当然の選択だ。それに、基地の発進能力の問題もあるかもしれない。


第3波が前衛艦隊を殲滅している頃には、ディアン率いる第1波が二度目の出撃を敢行。もはや敵先鋒を攻撃する必要はないと見た彼女は、すぐに後方のアデス第三艦隊に攻撃をかける。


ここでファムたちがディアンと接触するのだけれど、一瞬、不思議に思うのが、交戦ポイントとファム機の位置関係だ。前回の描写では、前衛艦隊を目撃してから割とすぐ後に第三艦隊を発見、すぐにグラキエス方面へ引き返している。この距離なら、前衛艦隊が壊滅して、さらにグラキエスが第三艦隊へと向かおうとするそのタイミングで、やっとファムが登場するというのは、なんだか遅すぎるように感じられる。じつはこのあたりから、今回の戦闘シーンは各部隊の位置関係や動きが、本来あるべき姿に比べて意図的に歪められているのではないか、もっと言えばずいぶんとご都合主義的な流れなんじゃないのかと、考えたくなってくるところだった。


ただしファムとディアンが接触した場面に限って言えば、設定次第では、何の問題も無いどころかしごく当然の成り行きであったと考えることは可能だ。ようは、通常より一人多い三人乗りのヴェスパと飛行戦艦の艦隊とで、どっちが速く移動できるかという話になってくる。ファム機が第三艦隊を発見してから回れ右をして引き返した時点で、彼女たちは前衛艦隊と第三艦隊の中間空域を、アデス軍と同じ進行方向へ飛行することになった。ふつう戦闘時には通常航海よりも速い速度を保っているはずだから、ファム機が前衛艦隊を追い越してグラキエス軍と接触するのは速度上不可能であったかもしれず、むしろディアン隊が第三艦隊に襲撃しようとした目前でやっとファムが接触できたところを見れば、アデス艦隊とファム機の速度はほとんど差が無かったということだろう。逆にそれは、真向かいから向かってくることで速度差がかなり開いているはずのグラキエス隊を首尾よく発見し、しかもディアン搭乗機を狙い澄ましてコンタクトを取ったファム&ジゼルの腕前を称賛すべきシーンだったと言えるかもしれない。(もちろん、劇中の描写ではファム機はグラキエス隊の側面から割り込むようにして接触している。これは正面から接近するよりは速度差が少なくなるとも言えるけれども、むしろ真正面から補足するより遥かに難しい機動を要求されているわけで、なおさらファム機の優れた飛行技術を証明しているシーンになっている。放り投げられたボールに横から交差する軌道で別のボールをぶつけるなんて、そうそうできるものではない。)


----


ヴァンシップが騎兵だとすれば、戦列艦は歩兵だ。速度と攻撃力にすぐれたグラキエスの重装騎兵を迎え撃つために、アデスの歩兵部隊が採用した戦法は、馬に乗りいれられての白兵戦を繰り広げる前に、密集した長槍部隊で敵の足を止めてしまうことだった。以前、狭小な地形で空族連合を一網打尽にした新兵器の高角砲だが、艦隊を密集させることで開かれた地形でも十分に効果を発揮することを証明して見せた。もちろんこうなっては、さしものグラキエスと言えども正面突破は難しく、いちど射程外へ退いて体勢を立て直そうとする。しかし振り向いた先に回り込んでいた第四艦隊の密集陣によって、あっという間にグラキエス軍は壊滅してしまう。


ディアン率いる攻撃隊がもともと何機いて、残存18機というのが損耗率で言えばどのくらいになるのか、細かいデータは分からない。しかし半数以下に撃ち減らされてしまったのは間違いないだろう。じつは前回の感想で、「数で勝るアデス軍なら、グラキエス軍が属州艦隊と交戦している隙に、分厚い包囲網を完成させてしまうことも可能だろう(実際そんなことになったら、グラキエス側の指揮官はド阿呆だけどw)」と書かせていただいたのだけれど、今回の戦闘によって、どうやら自分はグラキエス軍指揮官のことを本当にド阿呆と呼ばなければならなくなったようだ。いくら第四艦隊が神速だからといったって、あんなデカイ船がワラワラと進軍してくるのに気づきさえせずに、まんまと後ろを取られてしまうなんて無警戒にも程があるっっっ!!


普通に考えたら、ココこそご都合主義の典型と断ぜざるを得ないシーン。物語上の必然として、ディアン率いる「翼の乙女」にはここで壊滅してもらわなければならないし、高角砲の威力や第四艦隊の神速っぷりをアピールしておかなければならないのは、よーく分かる。けれどそれを素直に描いてしまうと、”戦い”を見せるという観点からすればあまりにも違和感のある描写になってしまうのだから、この展開を辿らせるのにもっと説得力のある描写を積み上げていかなければならなかった。でも実際このように描かれてしまった以上、これでいいのだと作り手が考えていると判断しなければならないから、この描写から分かる点を抽出してみることも重要だ。そして少し考えてみると、グラキエス軍の構造的欠陥がまざまざと浮かび上がってくるのではないかと思う。


今回のグラキエス軍の失態は、戦略的見地に立った作戦立案や索敵行動を一切行わず、ただ戦術的優位のゴリ押しだけで敵を撃退できると判断していたことだ。これまではそれで何の問題も無かったのだろう、たとえ敵の作戦が優秀でヴァンシップ隊が包囲攻撃を受けたとしても、難なくその包囲を突破して戦闘を継続できるだけの能力が、たしかにグラキエス機には備わっていた。しかし、今回の決戦がこの世界の最大の戦闘になるであろうことはグラキエス首脳の老人たちもよく理解していたであろうし、以前の話数では十分な索敵能力と警戒心をもって国境付近を監視し続けていたことを考えれば、やはり第四艦隊の動きを放置していたのはグラキエス軍の怠慢であるとしか言いようがない。


ではそのド阿呆とはいったい誰なのか。そこで劇中のグラキエス側の動きを思い返してみれば、恐ろしいことに、誰一人として具体的な作戦立案を行っている人間がいないのである。もしかしたらアニメでは描かれないところに司令部があったのかとも考えられるけれども、しかしとてもそうは見えない印象であった。


これは推測だが、グラキエス軍には、実行部隊の指揮官(=ディアン)以外には”軍事”について考える部署が存在しないのではないだろうか。国家指導者であろう老人たちは具体的な作戦にはいっさい関わらず、ただ規定されている戦闘部署の切り替えを決定していただけであり、役割としては政治家だ。本来であれば、政府が決定した目標に従って、司令部が具体的な作戦を計画・指示し、実行部隊がその任務を遂行するはずであるのだが、グラキエスには軍全体の司令官や参謀のような役割を担当する部署が欠落しており、敵の作戦に対する予測や対処法など一切考えずに戦闘を行っているのかもしれない。


それを証明するような場面が、今回では二か所で描かれていた。まず最初はディアンの「あそこにはもう獲物はいないな」というセリフで、これは彼女たちが戦闘に際してはまず目についた所に躍りかかっていく姿勢を表している。ディアンたちは戦闘そのものを担うパイロットとして機能的な組織体系を持っているようだが、彼女たちの役割は目の前の敵を撃破するということだけであり、敵の動きを予測してより有利な立場で戦おうとする意図はまったく見られない。本来ならこの戦闘集団をどこに配置してどう動かすかという指示があっても良さそうなものだが、ディアンたちはそのような命令を持たずに、気まぐれに戦っているように見える。戦闘中に他の敵への意識が薄れてしまうのはしごく当然のことだ。


もう一か所は、老人たちがヴァンシップ隊壊滅の報せを受けてもほとんど動じなかったシーン。ここでは彼らは、第2段階の防衛手段である地上砲塔による対空砲火、そして最終手段であるエグザイル起動にいたるまで、淡々と防衛手段を切り替えて行っている。ここからうかがい知れることは、少なくともこの老人たちにとって、「翼の巫女」の少女たちは砲台やエグザイルの壁と同じように、単なる手駒のひとつにすぎないということだ。ディアンたち自身は不安や葛藤を抱えながら勇気を振り絞って戦う人間の兵士だし、国民たちもそう考えているようだが、指導者たちにとっては国を守るための兵器のひとつ、機械の一部であるというのだろう。国土防衛を人間vs人間の戦争と考えるのではなく、兵器(エグザイルの加護)によって敵の兵士を駆逐する。そういう認識だからこそ、ヴァンシップ隊を人間の組織としてきちんと機能させるための配慮を欠いた、およそ軍隊とは呼べないような編成のまま、放置しているのではないだろうか。


もしこの推測が正しければ、ディアンたちの戦いがいっそう哀れなものに映る。敗北して叱責を受けるようなら、まだ戦い甲斐もあるだろう。けれどたくさんの人命を失っても少しも心を動かさないような指導者たちによって、これまで何度も死地に送り込まれてきたというのなら、いったい彼女達は何のために戦い、死んでいったのだろう。常勝軍団に初めて訪れた敗北の味が、戦士たちの誇りも希望も何もかもをないがしろにする現実の姿を思い知らせるものだったとしたら、彼女達の失望の大きさは想像を絶するものがあるだろう。




けれども、組織運用の面から言えば、軍隊としてはおよそ考えられない組織だったグラキエス軍の悪弊から、ようやくディアン達が解き放たれることになるかもしれない。ルスキニアとリリアーナがグラキエスのエグザイルに対抗しこれを打ち破ってしまえば、グラキエスという国家はいちど崩壊するしかないが、そうなればディアンたちは最後に残された道として、アナトレーを中心とする反アデス勢力の旗下に馳せ参じることになるだろう。そうなったとき初めて彼女たちは、最強の攻撃部隊である自分たちの戦力をもっとも有効的に使ってくれる司令部のもとで、のびのびと戦うことができる。しばらくの雌伏ののち、グラキエスヴァンシップ隊の本当に輝かしい姿を拝める時を、待ち望んでおきたい。


もっとも、そのアナトレー自体、いまどんな状況でどうなっているのか、まったく分からないのだけど。シルヴィウスとウルバヌスのその後だけでなく、空族やトゥラン遺民も含めた反アデス勢力そのものが、いまやまったく分散して見えなくなってしまっている。アデス連邦の世界制覇はもはや目前。グランレースどころではないこの状況に、果たして打つ手はあるのだろうか。




----


それでは、今回は以上です。


面白いと思ったら、ぜひ下の方にある拍手ボタン(ブログ気持ち玉)をクリックしてください^^



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村


"ラストエグザイル―銀翼のファム― 第13話「Bad move」" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント