氷菓 第11話「愚者のエンドロール」

すべてあの女(ひと)の掌の上で踊らされていただけだったのか・・・



今回を含めれば合計で4話分にも渡るこのエピソードも、これでいよいよ完結か。奉太郎の致命的なミスが古典部3人の視点から突き付けられ、改めて奉太郎がこの一件の真相を解き明かす。


摩耶花が指摘したのは、奉太郎の考えた結末は脚本家・本郷真由のもともと用意していたトリックとは異なるのではないかという点。里志が指摘したのは、奉太郎のやり方を本郷が用いるのはそもそも不可能だという点。千反田が指摘したのは、映画にかける本郷の「想い」がまるで見当たらないという点。そのどれもが、奉太郎の組み立てた推理を一突きで崩してしまうものだった。


とくにシャーロック・ホームズへの強い憧れを抱く里志の訴えかけは切実だった。ホームズを少しかじった程度の経験しかもたない人物が、いとも簡単にホームズ(コナン・ドイル)の手法を超えてしまうなんて、あってはならない。人の才能というものに並々ならぬ興味を抱いている里志らしい着眼点で、このような言い方をされてしまっては、奉太郎も自分の推理の軽薄さを認めざるを得ない。間違いを犯したこと以上に、この友人の目の前でホームズシリーズやミステリーそのものに対する無知と不誠実を晒してしまったことを、彼はいっそう悔いたのではなかっただろうか。


また千反田がしきりに気にしていた、脚本家・本郷自身の考えや気持ちについても、本郷が過労や心労とも思えるカタチで病気になってしまったというこの特異じゃ状況を、与えられた課題におけるひとつの設定に過ぎない程度の感覚しか持ち合わせていなかったことを、奉太郎は恥ずかしく感じていたかもしれない。まぁ今回は、千反田は酔っぱらっていたし里志も摩耶花も忙しかったので、孤立していた奉太郎に3人分の注意力や思いやりをすべて背負えというのは無理な話ではあるのだが、けれどだからこそ、理性的な他者に手綱をまかせなければならない自分自身の役割を痛烈に実感したことだったろう。


こうして、あえて一人きりの状況に追い込まれた名探偵・奉太郎の推理は、あえなく大失敗となってしまった。「見方を変え」た奉太郎は、改めて古典部の三人に協力を依頼したのだろう、新たな判断材料を入手し考えをまとめた上で、”真犯人”の入須と対峙。いまとなっては名誉も報酬も無くなってしまったが、それでもこの一件の真相にたどり着くことができた。


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入須先輩は、表情や口ぶりは冷酷だったが、それでもなるべく多くの仲間たちが笑顔で学園祭を迎えられるよう、最善を尽くして立ち回ったと言えるだろう。彼女が本郷の脚本を気に食わなかったのは事実だし、自分を悪役にすることなく狡猾に策略をめぐらしはしたけれど、そうして彼女が手に入れたのは、本郷への心的ダメージを極力軽減したうえで、制作者と観客のほとんどが満足し楽しめるだけの作品を完成させることができたという、戦略的勝利だった。羽場とか奉太郎には悪い印象を持たれてしまったとはいえ、たったこれだけの損害で済んだのだから、戦略家および外交家としての入須の活躍は申し分のないものだった。ただ一点、彼女自身の心のどこかに、かすかな罪悪感を瑕として残しはしたけれど・・・。


「あ・た・し♪」と名乗る、入須にとっては先輩にあたる謎の人物(というか奉太郎のねーちゃんw)から、チャットルームにてその小さな瑕を指摘された時、彼女が途端に苛立ち弁明しはじめたのは、自分の立ち回り方が感心すべきものでなかったことを自分でよく分かっていたからだ。それでもきっと彼女は、決して悔い改めはしない。聖人君子ではなく、女帝として生きる道を選んだのは、彼女自身だ。この有能だが不器用な愛すべき女性には、いつまでも帝王として振る舞っていて欲しい。もし機会があるなら、これからも奉太郎を厄介ごとに巻き込み、利用してもらいたいものだ。そうすることで、頼りない我らが名探偵どのも、独り立ちするのに十分なまでに鍛え上げられることだろう。


奉太郎は、一人では何もできない。そんな単純な事実が明らかになった今回の一件を経て、これからさき古典部を待ち受ける騒動をどんなふうに乗り越えて見せるのか、楽しみにしておきたい。





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それでは、今回は以上です。


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