氷菓 第15話「十文字事件」

里志のライバル宣言!? 脱・データベエースで男気を見せることはできるのかっ



文化祭エピソードもすでに4話目だが、ここにきてやっとミステリーらしくなってきた。今回のメインテーマは、いくつかのクラブで発生している窃盗事件。「十文字」を名乗る怪盗とやらの正体を探るべく、古典部をはじめ校内の自称探偵たちが活発に動き出す。


導入としてまずは奉太郎の名誉回復から。第11話までの、入須先輩に持ちかけられた映画の謎解きエピソードにおいて、奉太郎は女帝に唆されて調子に乗ったのかなんなのか、ちょっと信じられない凡ミスを連発して、彼を名探偵と目する皆の期待を裏切る格好となってしまった。しかし今回は、最後に事件のあらましを聞かされた奉太郎が、千反田や里志よりはるかに早く、そして鮮やかに真相究明の糸口を見つけ出してしまった。よく考えれば誰でも思い至ることだと謙遜していたが、あのスピードで真実にずばりと切り込んでいく手並みは、さすが折木奉太郎だと称賛せざるを得ない。


彼は嫌々ながら頭を働かせているときが一番冴えているのか、それとも千反田の視線に晒されていないとダメなのか。いずれにせよ、奉太郎は自分自身を才能も使い道もないダメ人間だと信じ込んでいてこそ、冷静に推理に臨めるのだろう。自分から進んで才能を披露してやろうと意気込んでしまうと、途端に足元が見えなくなってしまう。まぁそんなのは誰でもそうなのだけど、里志が考えている「奉太郎の真価」とやらがどうすればちゃんと発揮できるのか、この点について千反田えるの存在に期待したくなるのは納得だ。頼まれたから仕方がないとか、これ以上面倒なことにはしたくないとか、そんなネガティブな言葉を並べながら推理する探偵なんてはなはだ心象が悪いけれど、そうやって精神的逃げ道をつねに確保しておかなければいけない、なかなかデリケートな探偵さんであることは間違いない。


奉太郎が解き明かした事件の手がかりは、同時進行で校内の多くの人々がそれぞれに思い至り、何とかしてこれを自分が解決してみせようと動き出していた。壁新聞部が実際に怪盗の標的とされたことが、事件の注目度をさらに高めていったのだろう。先々週から何度も里志に勝負を挑んでいた囲碁部の谷も、里志と同じような着眼点で行動を開始。次のターゲットとなる奇術部でばったりと鉢合わせるハメになってしまった。じつはミステリーファンでした、と得意げに語る彼を見たときの、里志の微妙な表情がなんとも印象深い。


里志は奉太郎のことを高く評価していて、だからこそ奉太郎と張り合ってみたい自分の気持ちがだんだん抑えられなくなっている。なので里志としては、谷のような”小物”と勝負している暇などありはしない。ただしそれは里志が一方的にそう思っているだけで、これまでの描写を見る限り、里志と谷はなかなか好敵手である。谷がミステリー好きを公言した瞬間の姿に、ひょっとしたら里志は自分自身を重ねてしまったのではないだろうか。そして奇術部での張り込みが不発(というか完全に返り討ちにあってる)となった時、里志は自分と谷が探偵として同レベルに過ぎないことを痛感させられたはずだ。以前から里志は、彼にしては珍しく、谷に対して嫌悪感のような感情を抱いているようで、それにはまだ描かれていない直接的な原因があるのかもしれないけれど、奉太郎には決して届かない自分の力量を思い知らされる存在として、谷のことが正視に堪えない人物であると思っているのかもしれない。


それにしても、当初はデータベースに徹して奉太郎を盛り立てる立場にこだわっていた里志が、ここにきてはっきりと奉太郎に対するライバル心をむき出しにして、それを通じて自分自身の運命を変革しようと試みているのを見るのは、じつに高揚感あふれる展開となってきた。彼にどこまでのことができるのか、実に楽しみだ。


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摩耶花のほうも今回は少しばかり進展があった。摩耶花にきつく当たっていた先輩は、本当の悪意でそんな態度を取っていたのでは必ずしもないことが、明らかにされつつあるようだ。摩耶花が惚れ込んでいる件の漫画も、秘められていたその正体が少しづつ明らかになってきたところ。この一件も文化祭エピソードの中で描き切ってしまうのだろうか。なんだか今回のストーリーは接点の少ないドラマが同時並行的に描かれているが、このタイミングで語られることにきっと何か意味や意図があるのだろう。


摩耶花は奉太郎と話してるとき妙に楽しそうなので、漫研がつらいなら古典部ブースにいればいいのに、なんて思いながら見てたのだけど、どうやら摩耶花はあえて漫研ブースに踏みとどまり、このコミュニティで自分の居場所をこじ開けようと奮闘しているらしい。なんて健気な! 文化祭に入ってから、摩耶花の株が急上昇中だ。




摩耶花ほどではないにしても、千反田も今回ばかりははっきりと、慣れない仕事への疲労感・倦怠感を口にしていた。公的な態度で話をするのが苦手、というのはよーく分かるけど、こればかりは場数を踏んで慣れてもらうしかない。天然な彼女も、振り返ってみて自分がいかに使えないかをまざまざと思い知らされているという、ちょっと可哀そうな図になっている。それでいて、対外交渉をすべて単独で引き受けてしまっているものだから、ほかの三人からはフォローの入れようがなさそうなのが難しいところだ。


入須のアドバイスがまったく何の意味も持たなかったのは、もちろん千反田自身の理解度と応用力が壊滅的に弱かったからだが、たぶんこれは性格の問題だろう。入須のように原理原則から考えを組み立てていこうとするのではなく、誰々に対してはこうなさいと、対処療法的にひとつひとつ指導し、できれば台本まで書いてあげないといけない。もちろん、じかにお手本を見せてあげることができれば一番よく、この点は古典部の人数不足が災いしたところか。この後、千反田がどのように反省するのか、注目だ。




相変わらずこの世の春を謳歌しているのが奉太郎。最近は妙に間延びした能天気な声で発する「おー」というセリフがやたら飛び出している印象だが、わざとなのか無自覚なのか知らないけれど、これでおどけた風を装っているつもりなのが可愛い。明るい感情をどうやって表明したらいいのか分からなくて、とりあえずこの格好に収まっているということなのだろう。表情も前はもっと鋭い印象があったが、いまはだらっと筋肉が弛緩しているようで、お祭り気分にあてられているというのも半分本当だろうが、これを機に新たな自分探しでもしているのかもしれない。この余裕綽々な態度が、でもいまいちピントがボケていて、なんとも珍妙な雰囲気を醸し出している。この表情がこれからの奉太郎のスタンダードになるのか、それとも文化祭期間限定の仮面なのか。彼の人間探究は、まだ始まったばかりだ。




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それでは、今回は以上です。


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