ティアーズ・トゥ・ティアラ 第20話「ルキフェル」

これは神回!!


・・・かどうかは別として、すごく好きな話だった。宗教色を帯びた神話の雰囲気が好きというのもあるのだけど、それ以上に、神話の中で語られる、神が人に対して何を求めているのか、すなわち人の生きる使命についての考察が、とても興味がある。だいたいよくあるRPGなんかでは、壮大な創世神話を描こうとしても、ただスケールが壮大なだけで、そのじつ中身が空っぽという場合が非常に多い。ところが今作は、神の摂理をどう解釈するかという議論において、人や生命に課せられた使命についてきちんと想いを馳せているのが分かる。思った以上に深いテーマ性が見えてきて、私の中では今作の評価がうなぎ登りだ。




神がいるかいないかはさておき、この地球に誕生した生命がどこへ向かっているのかという問題は、現代人はあまり興味がないのだろうけれど、とても大切な問題。それはそのまま、人間がこれから何をなすべきかというテーマに直結しているからだ。


劇中で、白の精霊たちは、より強く健やかなるものがより完全であり、目指すべきものであるとしている。そして、弱きもの、より不完全なものは淘汰され滅び去るべきだと考えているようだ。そして地上の弱き種族を淘汰するために氷河期を引き起こしているわけだが、もちろんこんな暴論は、たいして考えをめぐらさずとも、非合理的で矛盾に満ちたものであることは明白だろう。

しかし、ではミルディンがどこを向いているのかという点に関しては、注意して考えていく必要がある。彼の場合は、必死で生きようとする人間どもに同情したからというだけの理由で動いているということはまずありえない。もちろん同情がないわけではないが、高位の存在である彼らにとってみれば、人間も虫けらもたいして差があるとは思えず、人間だけを助けて他の生命には目もくれないというのは、同情以外の動機があったからだ。ではそれは何かといえば、人間の存在こそが、世界をより理想へと導く鍵であると考えたのだろう。




「完全」


この単語をどう解釈するかというのが、創造主の考えを探るキーワードになると思う。神は完全であって、神という存在から離れれば離れるほど不完全な存在になっていく。神により近い状態が、より完全であり、より理想的な状態である。いくぶんキリスト教的な理想観だが、一応この観点に立って論ずるなら、世界をより完全なものにしようという白の精霊たちの行動は説明できると思う。そして、何をもってより完全な、神の理想に近い状態と見るかという視点が、ミルディンと他の11人との差であったのだろう。ミルディンは恐らく、人間という種族が獲得した何らかの特質(たとえば、智慧だ。)が、世界をより神の理想に近づけるのに役立つと考えたのだと思う。人の子に、火の秘密と言葉を教えようとしたのも、そのひとつの表れだ。


さて、そこで人間という種族に生まれたる我々としては、ミルディンの行為に横やりを入れたくなってしまう。おいおい余計なことするなよ、人間よりもっとマシな種族を創ってそいつらに地上を治めさせたほうが、よほどいいのではないか?と。もちろん21世紀の現実世界を見るわけにはいかなくとも、実際劇中の人間たちはたいていしょうもない連中で、長い歴史を経ても一向に争いをやめようとしない。現時点では、そんなしょうもない連中をうじゃうじゃと増殖させるきっかけを作ったのが、ミルディンの余計なおせっかいだという結論になってしまうだろう。

そこで、いよいよ今作のメッセージ性が問われる段階になる。ミルディンという人物が、我々人間のどこに希望を見出したのか。あるいは、その遺志を受け継ぐアロウン(ルキフェルだよね?一応そういう前提で書きます)が、アルサルに代表される人間どもをどう導き、どんな理想の世界を築こうとするのか。そこにこそ、さまざまな危機や問題が山積みとなった現代に生きる我々視聴者に対して、「人間は今、何をなすべきか」という、この作品のメッセージが込められることになるはずだ。というかならなかったらおかしいw


我々視聴者は、この作品の娯楽性ばかりを追い求めて、そこに込められたメッセージ性をゆめゆめ読み落としてはならない。このメッセージをきちんと受け取り、吟味したうえで、それを自分たちが用いるべきかどうかを判断することが重要だ。作品が面白かったかどうかというのも重要だが、それだけでは作品をきちんと評価したことにはならないと思う。

もちろん、ここは制作者の力量が問われる部分であることは言うまでもない。どんなにいいメッセージを込めていても、我々に上手く伝えられなければ意味がないし、逆に上手くメッセージ性を込めてあったとしても、その内容が取るに足りないものであれば、やはり意味はない。それならヘタにメッセージ性の存在をほのめかすことなく、あくまでエンターテイメントに終始してくれればよかった。もちろん今となってはそんな軌道修正は許されないところまで来ていると思うので、とにかくスタッフには、何を、どう訴えるのか、真剣に取り組んでこの作品を完結させて欲しい。


以前にも書いたと思うのだが、「王道」という言葉を、どういう解釈で、どう伝えられるかというのが、作品のメッセージ性に関わるキーポイントになるだろうなぁ。



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック