亡念のザムド 第22話「凍二郎とリュウゾウ」

サブタイトル通り、垣巣中佐とリュウゾウの対峙を描きながら、改めて「生きるとは何か」を問いかける回。


人は、社会という枷を自らにはめることで、多くのものを失い、傷つき、苦しんでいる。

垣巣中佐とリュウゾウの対決の場面では、そのジレンマが強く感じられた。


人は一人では生きていけない、というのは、嘘である。人は一人でも生きて行ける。否、群れることで、本来的な意味での「生きる」という行為から、大きく遠ざかってしまっている。

軍人としての使命。医師としての使命。そのしがらみのなかで、明確な答えを見いだせずにもがき苦しむ二人の姿は、ひどくこっけいで、痛々しい。自由や、愛や、善といった、もっとも尊ぶべき価値であるはずのものよりも、なお優先するものがあると、錯覚してしまう。それが、社会に縛られた人間の愚かしさである。羊飼いをとうに見失ってしまった家畜どもの狂乱。それが、人の社会の実態だ。


恐らく医師であるリュウゾウには、死と向き合った者を前にしたとき、生物学的な意味での生と、人の使命としての「生きる」という行為の違いに、まったく考えが及んでいない。それが、殺せと言われて、垣巣に銃口を向けながら、とうとう彼を殺せなかった彼の限界だ。

一方で垣巣中佐は、社会や軍人としての使命、誇りにかけての「死」という行為が、自らの生物学的な死を意味するということを、感情として受け入れられていない。かつてリュウゾウに助けられたときの「生きたい、という目をしていた」という証言からも分かるが、今回、自らのこめかみに銃を突き付け、それでもなお自ら死を選ぶことが出来ずに、リュウゾウに生の責任を負わせようとしていた彼の弱さが、そこには見える。




二人が議論していた善と悪などという括りは、しょせん、社会というかりそめの世界の中でしか通用しない概念だ。だが、生死を突き付けられたとき、人はそのようなちっぽけな世界を飛び越える。だからこそ、垣巣はなかなか死を受け入れることができなかったのだし、リュウゾウは死を与えることができなかった。リュウゾウにとって何が正しい行為なのか、ここでは解答が与えられていないのは、そもそも善悪や正義などの概念と、生死を同じ次元で語ることに無理があるからだ。物語としては、垣巣に死の狭間を見せることで、人間としての心を取り戻したように描かれていたが、おとぎ話としてのご都合主義であり、これが正しい解答というわけでは断じてない。リュウゾウが片目を失ったのは、象徴的な演出だ。

社会のためを思うのならば、リュウゾウは垣巣を殺すべきであった。本来、殺人は罪ではない。それを罪と考えるところに、人が群れを作ることの枷がはっきり見て取れる。





結局、「生きる」とは何なのか。その思想的な観点からの回答は今回はあえて触れられないまま、「食べる」という行為にその意味を収束させたのは、これはこれでひとつの正しい答えだと思う。





もう少し違う角度から「生きる」という行為を考えさせていたのが、アキユキたちの場面だ。ここで語られるルイコンの教義の詳細はあまり語られていないが、ここでは「死ぬために生きる」人々の様子が描かれ、それを当然のことと享受する者と、違和感を訴え激しく否定する者との対比でもって描かれていた。今回限りでは、アキユキとハルが一方的に議論を拒否したために、ここの描写がそれほど深まっていたとはとても言えないが、次回以降にクローズアップされる部分だろう。


生を簡単に否定してはならないと、アキユキは言った。しかしそれは動物の生き方であると、私は思う。人間は動物ではない。いや、動物でありながら、そうではないナニモノかに進化しようという途上にあるのが、人間という種だと思う。その意味で、ありふれた道徳感情に裏打ちされた安易な生死談議は聞くに値しない。「生きる」という意味と意義を、根本的に考え直さなければならない。漫画版「風の谷のナウシカ」は、それを考えるきっかけになるという点で、読む価値があった。では「ザムド」はどうか。単なる娯楽以上の価値が作品に込められているのか、そろそろ明らかになってくる段階であろう。注目しておきたい。





ところで、雷魚たちが攻略していた塔だが、あの戦闘シーンはやっぱり、漫画版ナウシカで、ヴ王指揮下のトルメキア軍が墓所を攻撃していたときのシーンを髣髴とさせる。もちろんナウシカじゃザムドなんて出てこなかったけど。



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