荒川アンダー ザ ブリッジ 第6話「6 BRIDGE」

この作品の構成方針が、なんとなく分かってきた




・今作の構成と、アバンでの語り


前回から無くなったと思われた、アバンにおけるリクの”語り”が、わずか1週で復活した。これで、本来なら毎回語るはずのところを、前回はイレギュラー的にやらなかっただけらしい、という可能性が大きくなった。


この作品、単に不条理でナンセンスなコメディを見せるだけではなく、その中で我々の頭にこびり付いている価値感に疑問を投げかけ考えさせる要素を有しているというのが、大きな特徴であった。前々回、リクとニノが河口へデートをしたあたりで、そうした考えさせるエピソードはいったん終了したのかと思っていたのだけど、実際にはそうではなく、数週間にわたって繰り広げられる一連のエピソードの中のどこかで必ず、あるテーマ性を紛れ込ませているようだ。


つまり、ギャグ→テーマ提示→ロマンス(?)という流れが、第1話から第4話Aパートまでで繰り広げられたが、そのパターンを第4話Bパートから改めて見せている流れなのだろう。1話まるまるギャグに終始した前回のエピソードを下敷きにして、今回はギャグを控えめにテーマ提示を行ってきた。これを受けて次回以降、リクが何を考えるかという点に、注目してみるのも良いだろう。




・今回のテーマは労働


人と人の出会いの奇跡に想いを馳せるシンミリとしたアバンの語りから一転、技量はともかく感情的には醜さ剥き出しの音楽対決には、思わず噴き出してしまったw 前回の記事で、リクの小手先の音楽が彼自身の価値観として受け止められるのかどうかを、注目点として挙げていたのだが、なんかあっさり受け入れられてしまいました。予想は大外れw 音楽でも口喧嘩でも星に完勝してみせて得意気になっているリクの顔が、無性に腹立たしいのは私だけではないだろう。音楽を演奏するときはもっと清らかな心でいて欲しいものであるw


まぁしかし、今回の肝は音楽の価値ではなく、そのエピソードをきっかけとしてリクが仕事を探すという点にあったわけだ。一般的な意味の仕事に関しては誰にも負けないであろう彼が、この特殊すぎる環境で改めて労働の意味と価値を考えるというテーマ設定に、今作の着眼点の面白さがある。さすが!




リクはまず間違いなく、労働とは実利を生むためにあると考えている。だからこそPCなんか持ちだしてデータ収集にいそしみ、顧客(=河川敷の住人)の傾向と対策を考えて頭を抱えていたわけだ。


だがむろん、通常の社会システムから完全に逸脱しているこの河川敷において、実利を生み出すために労働をしている者など、皆無である。そうではなく、みんな自分なりの特技や個性を活用して、コミュニティ全体に奉仕するために仕事をしている。一般的に仕事はお金儲けのため(=自分自身の生活や快楽のため)にするものだという価値感と、完全に違う意識で労働に従事しているのだ。


彼らは、自分自身のためではなく、コミュニティに属する人々の役に立つために仕事をしている。彼らが仕事をやめても、たぶんそれほど大きな影響はない。またいくら仕事に精を出しても、お金がもらえるわけでも勿論ない。見返りと言えば、ささやかな笑顔と、コミュニティの活性化くらいなものだ。だがそれを十分な見返りと考えているのだろうし、あるいは何か見返りが欲しいから仕事をするなどという発想に、そもそも立っていないのだろう。


しかしこの仕事に対する意識は、現代人がとっくに忘れかけている、労働の基本的な価値だ。大昔、まだ人間がそれほど大きなコミュニティを形成していない頃は、みな、お金のためでは無く自分の属する社会のために、仕事をした。言ってみれば、家事を手伝うのに給与を要求したりしないのと同じで、社会のために奉仕することが、そのまま自分自身の利益に直結することを分かっているのである。労働の義務は市民のもっとも基本的な、当然の責任であった。それが、コミュニティが巨大化し、貨幣経済が末端まで浸透することで、いつしか忘れ去られてしまったのである。


恐らく、労働の意味を利益と直結させて考え、仕事とは他者を押しのけてでも競争に勝ち金を稼ぐことだと信じ込んでいるリクにとって、教えるのが上手いと褒められた時の嬉しさ、賑やかな子どもたちと接することの楽しさを感じた直後に、「働いたな」とニノに言われたのは、相当のショックだったと思う。仕事を辛くて大変なものだとリクが発言したのは、機械的で冷徹な弱肉強食のビジネスゲームにどっぷり浸かり込んでいた彼の、ゆがんだ一般常識を垣間見せたシーンだった。そしてそんな彼の姿を通して、我々視聴者もまた、自分の常識的価値観のゆがみを、痛感させられるのである。




思えばリクは、「借りを作ってはならない」という信念をあまりに苛烈に体現しようとして笑いを誘うのであるが、その設定はただギャグとして面白いからというだけでなく、一見ぶっ飛んだ不思議な設定に見えてじつは、我々の持つ固定的でゆがんだ価値感を、これ以上ないくらいに際立たせ浮き彫りにする設定なのではないだろうか。


第1話ではヘンテコな主人公だと思っていたが、いまさらになって、この設定のあまりの秀逸さに驚かされている。現代社会をユーモアたっぷりに皮肉って見せるリク。彼の悩み混乱する姿に、ますます惹きつけられる第6話だった。




・EDのこと


なんかすごい今更だけど、EDがけっこう好きだ。


清々しい曲も良いが、映像がかなり好み。とくにサビに入るところでの星の描写がなかなかにキマっていてかっこいいのと、マリア、星、シロを次々と見せていくその切り替え方が、特徴的なカメラワークと相まってすごく快感。


こういうあたり、龍輪直征の手腕は見事なものがある。この人のことはもっと評価を上げないといけないかなぁと、最近思い始めています。




----


それでは、今回は以上です。



にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
にほんブログ村
↑ランキングに参加中です。拍手の代わりですので、読んで良かったとちょっとでも思ったら、クリックしてもらえると嬉しいです^^


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック