地球少女アルジュナ DVD-BOX購入記念レビュー 第5話「小さきものの声」

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「海が見たい」

このなにげない一言が、ごく普通の女子高生、有吉樹奈を大いなる使命へとむかわせる。

事故で瀕死の重傷を負った彼女は垣間見る。現代文明の行き着く姿、穢れた地球の未来を。

そんな彼女の前に現れる謎の美少年クリス。

「もしも地球の未来を開くならば、いま一度、命をさずけよう」

謎の存在・ラージャと戦う運命を担わされる樹奈。運命の先に光はあるのか?


原作・シリーズ構成・監督:河森正治/シリーズ構成:大野木寛/キャラクターデザイン:岸田隆宏/デザインサポート:佐山善則/デジタルコーディネート:竹内康晃/3Dモーション監修:板野一郎/美術監督:太田大・野村正信/色彩設計:笠森美代子/美術設定:平澤晃弘/音楽:菅野よう子/音響監督:三間雅文/副監督:佐藤英一/アニメーション制作:サテライト




今回は第5話「小さきものの声」のレビューです!

前回・第4話「転生輪廻」のレビューはこちら


先週は「刀語」の放送もあったので、すこし間が空いてしまいました。前回は山の中で孤独に有機農業を営む変なじいさんと出会って、いろんな大切なことを学ばされたエピソード。今回は少しだけ成長した樹奈が、神戸の街に戻ってくるところから話が始まります。


第5話のメインスタッフは以下の通り。

脚本/佐藤英一・大野木寛 絵コンテ/佐藤英一 演出/佐藤英一・土屋浩幸 作画監督/瀬尾康博・永田建一


それでは、参ります。


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・今回のお話


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第1話と第2話が、トンデモ展開とアクションのすごさでぐいぐいと引っ張っていくエピソード。第3話と第4話は、作品の「思想的」とさえ言えるメッセージ性を語りかけて視聴者に思索を促す展開でした。第5話はようやくクリスの伝えたいことを学び理解し始めた樹奈が、今度はいままで常識・日常だと思っていた風景に激しい違和感を覚える、重要なエピソードとなります。


・・・なんだけど、はっきり言って他の回にくらべると、いくぶん地味な回ではあるwww 


アクションはなかなか頑張っていますし、ストーリーももちろん悪くない(いい感じに盛り上がる)のですが、前後にある第4話と第6話のインパクトがすさまじいだけに、どうしても”つなぎ回”的な印象は、免れないですかね。まぁいい加減、キャプ付きでくどくどとあらすじ紹介するのも飽きてきたところですので(笑)、ストーリーについてはサクっといっちゃいます。




・第5話あらすじ


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今回は前述のとおり、樹奈と時夫が神戸に帰ってきたところのお話。


じつに1週間近くも無断で家出していた樹奈たちは、すぐに帰るのは気まずいからと言って、神戸の街をふらふら。そこで友人のさゆり(第3話で登場済みのメガネちゃん。CV久川綾)と再会し、三人でメリケンバーガーに入ることになります。
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やたらと仲が良さそうな時夫とさゆり(※メガネ外してるw)に不満そうな顔を投げかける樹奈ですが、ハンバーガーを口に入れたとたん、早速異変が起こる。山籠りで体内を浄化した後の樹奈にとっては、環境破壊や生命軽視、そして薬品漬けのファーストフードに対して、体が拒否反応を起こすのでした。そして人間の暮らす都会の営みが、どれだけ自然本来の姿からかけ離れているかということを、いまさらながら、しかし痛烈に感じ取ることになったのでした。


ハンバーガーひとつでものすごく落ち込んでいる樹奈。しかしそんな樹奈の目の前で突然、時夫がばったりと倒れ伏します。遺伝子操作された食材を使った加工食品による感染症。あわてて有吉家に時夫を運びこんで救急車を呼んだところで、こんどは樹奈も、同じ症状で倒れこんでしまいます。


これをちゃんと監視していたSEEDのみなさん。ちゃっかり救急車になり済まして現場に駆け付けると、何やら特殊な機械を取り出して時夫と樹奈の救護にあたります。こいつらなんでもアリだなぁーwww
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しかしSEEDの医療技術を持ってしても、二人の救護は八方ふさがりの大苦戦。また精神体として時夫の腹の中に入り込んだ樹奈(おまえはウルトラセブンかっ)も、腸内で暴れまわるラージャに大苦戦。
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それを見かねたクリスが、樹奈に語りかけます。「なぜ戦う? おまえは山で何を学んだ?」と。それをきっかけにして必死に頭を巡らせる樹奈はようやく、生き物たちの転生輪廻の理(ことわり)を思い出し、たくさんの虫がいて、それぞれの役割に従いながら、食べたり食べられたりを繰り返して自然を形成していたことに思い及びました。


またおりしも、樹奈の母が「危篤になったらへその緒を煎じて飲ませる」という民間療法を思いつき、樹奈にへその緒(間違って姉の海音のモノだったんですが)を飲ませたことで、樹奈は両親の愛情や生命の神秘に触れ、覚醒。腸内の雑菌に呼び掛けてこれを急激に増殖させ、ガンディーバで倒すのではなく、自然のありのままの仕組みに従うというやり方で、ついにラージャを撃退するのでした。そうして自分自身の体内にいる病原菌を撃退した樹奈は、今度は時夫と共鳴して、同じチカラで時夫をも救って見せます。

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↑まるで舞を舞うようにして体内を浄化していく樹奈。名前の由来となったインド文化を直接的に意識した描写ですなぁ。


「病は気から」とは言いますが、体内に住まう”小さきものたち”に語りかけて、体内の宇宙を浄化してしまった樹奈のチカラに、ホっとすると同時に時の化身としての成長を感じるエピソードでした。


※ついでにいうと、白河さゆり嬢の猛烈な自己主張がやたらと目について、恋愛ドラマ的な要素も加速してくるエピソードでもあります。




・現代文明の抱えるおぞましさ


さて今回はそうしたわけで、樹奈の成長を描いたエピソードであったと言えるのは確かでしょう。現代医療が通用しない病気に対して、へその緒を飲ませるだけで都合よく治ってしまう展開には大いにツッコミどころがありそうですが(そもそもへその緒飲ませて何か効果あるの?w)、話をちゃんと見ておけば、決してへその緒飲んだから治ったわけではなく、へその緒を通じて”他者と共に生きる”ことの意味を実感した樹奈が、時の化身の力を覚醒させるきかっけになっていたに過ぎないのだと、分かると思います。


この作品は何よりも樹奈の成長物語であり、樹奈という一介の女子高生が我々とまったく同じ視点から出発して、ついには全地球規模で物事を考えるようになるまでを描くわけですから、当然、全体のストーリーの中における今回の役割は、樹奈がクリスの言葉をようやく真摯に受け止めることができるようになってきたという部分になると思われます。


しかし、そんな王道な作劇をとっていながらも、しかし一方で我々に強く深く問題提起してくる姿勢が、やはりどこまでも「アルジュナ」という作品の見どころであり、面白さであります。今回は樹奈が、それまではごく普通のこととして受け止めてきた都会の生活に、強い拒絶反応を示す部分に、そのメッセージ性が込められています。


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現代人の、それも若者なら、多くの人が大好きなファーストフードのハンバーガー。脳髄をダイレクトに刺激してくる、いかにも体に悪そうな味が、もうたまらん!って方は多いのではないでしょうかwww


しかしここで描かれるハンバーガーは、絵としてはなかなかにリアルでおいしそうに見えるわけですけれども、これが見ていて吐き気をもよおすほどに気色の悪い食べ物であるかのように、描かれる。ファーストフード店からこぞって営業妨害と言われてもおかしくない映像が、樹奈の脳裏をよぎって画面から伝えられてくるのですね。もちろん現実にファーストフード店がどのような生産体制を取っているかは別問題でしょうが、往々にしてあり得べき問題を提示するために、メリケンバーガーという架空の会社に象徴させています。


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な、なんじゃこりゃぁぁぁ! ・・・かじっただけでこうなるw

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リアルなハンバーガーの絵。ここだけ見るとおいしそうに見えるかもしれませんが、アニメを見てる視聴者にとっては、ものすごいグロ画像に見えていますwww

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でろでろ~ん。いや、ただひき肉作ってるだけなんですがっ!?www しかし当然アニメの視聴者には、この肉がもともと生きている牛だったのだという頭でこの光景を見てるので、とんでもない残虐シーンにw もちろん工場とか薬品とか、果ては石鹸で手を洗ってる映像まで、「おぞましいモノ」として描かれています。やりすぎ? いや、そんなことはない!w




暴力的な森林伐採、生命を”物”として扱うかのような機械的な家畜生産、人の手ではなく工場で加工(料理ではない!)されていく食材と、腐敗防止やら見栄えをよくするためやらに使われる種々の薬品・・・。そして人は、神の手によって描かれた設計図であるところの遺伝子をさえも書き変える。言って見れば、より大きくより均一なカタチを維持し大量に作物を育てるために、自然を壊し肥料と薬品で漬け込んでしまう、文字通り不自然に育てられた野菜や家畜と、まったく同じことが人間にも行われているわけです。もっともその目的は、より大きな肉体ではなくただ単に消費者の快楽と満足のため。野菜や家畜よりなお悪いですね。


この、いったい何のためだか分からない不毛な「人間農場」こそが、都会の、ひいては文明のあり様なのです。人はもはや自分たちが地球上に栄える自然の一部に過ぎないことを忘れ去り、ただこの世界が自分たち人間のために存在しているのだと思い込んで、ただ自らの欲求を満たすためだけに生きている。それどころか、自分とその周辺のごく一部の人間関係にしか頭を巡らせず、そもそも自分一人をなんとか生かすためにあくせくと苦労するばかりで、大局的なものの見方・考え方に思い及びもしないという点は、第2話でシンディが痛烈に批判した通りです。


こうした現代文明のあり様と、そこで生きる我々人間の”不自然さ”。ここに違和感を突き付けるのが、この作品の第一の価値なのです。


樹奈とともに我々視聴者も、第3話と第4話において一緒に山籠りをし、樹奈と一緒に考えてきた。それを踏まえて今回は、文明が抱え込んでしまったおぞましさを痛感し、「こんなことがまかり通っていて本当に良いのだろうか?」と自問すること。それが、この作品を楽しむ上での最大の醍醐味でしょうね。





・EDと今回のスタッフ


今回のEDは、また坂本真綾「マメシバ」が復活。ED映像も、女の子が走ったりしてます。


作画スタッフは以下の通り。

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相変わらず、ビッグネームの方々がいらっしゃいますが、しかしそれにしても今回の原画人数多いなぁ。ハンバーガー屋のシーンなんかは、作画も演出もそうとう頑張ってた感じです。表情の付け方が細かいこと細かいこと。どちらかというとリアル志向のキャラデザなので、迫真の演技をやられると訴えかけるパワーが俄然、違いますね。




・後奏と次回


DVD第1巻(旧バージョンだと第2巻)がこの第5話で終了ということで、今回は後奏(エピローグ)と題するパートが挿入。前回と同じくピクチャードラマ的なやつで、樹奈、時夫、山のおじいさんの三人の会話を収録。今回のテーマは、第5話での”小さきものたち”の関係性をもう一度おさらいするのと、それから変人がこの世界に何人必要か? という話。

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耕さなくてもいいし、肥料もやらないでいい。山のおじいさんの農業のやり方はこんなに楽ちんなのに、何で誰もやろうとしないのか?


その大きな理由のひとつに、「商売が成り立たないから」というものがある。


現代の文明社会においては、よりおいしく、よりカタチが良く、より大量に作ることを要求される。それは工場製品の考え方のはずだったのだが、いつのまにか、人間を支えるもっとも根本的なに対しても、資本主義的な価値観が求められるようになってしまった。


現代社会では、お金を稼ぐことが人間の目的である。だから不揃いで形も小さく、なにより効率の悪い農法は、現代においては成り立たない。それがどんなに人間の首を絞めるかも知らずに、ただ効率と見栄えの良さを追求して、人は自分の血肉に還元される食べ物を「製造」している。いくら人間と自然の本質を説こうとも、またいくら土や草や虫の愛おしさを語ろうとも、見向きもされないのが現代だ。

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しかし、と「アルジュナ」は語りかける。作中で描かれた原理主義的な有機農法でも、ちゃんと機能すれば、10人や20人の食い扶持は余裕で収穫できる。


60億人もの人口を抱える地球(2001年当時。現在では約70億ですか)。その中で、たった10人20人を養えるからといって、それが何になろう? だが逆に言えば、たった10人に一人の変人(道楽者)がいれば、人類は不自然なやり方の農法に頼る必要は無くなる。



たった、10人に一人・・・。この問いは非常に深い問題提起ですよ。環境問題や、戦争や、貧困。たったひとつの問題だけとってみても到底解決できそうにない重要な問題が、何百何千と山積みになっているいまの人類社会にあって、この「10人に一人」の観念が大きな光をもたらすことに、なるかもしれないと思う。


10人のうちの一人が変われば良いのだ、たったそれだけの人間が! 人類を、地球を救うと言っても、それは全人類を対象にしなければならない事業では決してない。10人のうちのほんの一人を変革することができれば、それが大きな潮流となって、世界を根底から変革し得るのだ。覚えているだろうか、第2話で、「たった15年前の電力消費量に戻すだけで、原発をすべてなくしてしまえるのに」と語られたことを。10人に一人が電気を一切使わない生活を始めたら、それは簡単に実現できてしまうのではないか? そして、10人に一人、という数字はそのまま、全員が1割の努力をしたら、、、という仮定と同義であることを、よく考えていただきたいです。


我々に求められているのは、その「10人に一人」で語られるところの”一人”に、なってみせること。誰かがそうなるのを待つのではなく、自分が進んでその一人になろうと努力すること。その、はじめの一人になってみせること。そんな些細な行動が、全人類を動かし救う大きな潮流になるのだということを、絵空事ではなく現実のこととして、認識すべきでありましょう。




― そんな、とても大切なメッセージが語られたエピローグを受けて、第6話では世界を変革することのいかに困難であるかが、鋭く我々に突き付けられることになります。次回タイトルは「はじめの一人」。お楽しみに。


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それでは、今回は以上です。


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バンダイビジュアル
2010-04-23

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