STAR DRIVER 輝きのタクト 第2話「綺羅星十字団の挑戦」

いいねいいね。いよいよ「ウテナ」臭くなってきた!




・今回のお話と、設定


今回は、思わぬ敵性勢力の登場に動揺する綺羅星十字団が、銀河美少年と彼のサイバディを撃破することを決定し、十字団とタクトの対立構造が確立されたエピソード。一方でタクトの方も、問答無用に戦いに巻き込まれているわりには、ワコを守ることに自分の「やりたいこととやるべきこと」を見出しており、まずは分かりやすく二項対立の様相がしっかりと描き出される。


そうした中で、なんとも面白いキャラクターの相関関係。まず大局的な視点では、綺羅星十字団とそこに所属するたくさんのキャラクターが登場し、彼らの学生生活と十字団活動の表と裏の顔が交錯する一方、十字団の対抗組織であり巫女の護衛を目的としているらしい演劇部「夜間飛行」の面々も登場。サイバディという謎の兵器を中心として、ふたつのグループが駆け引きを行っていることが明らかにされた。当分はこの組織的対立がドラマの軸になってくるのだろう。


一方で局所的な視点からは、迂遠なセリフ回しの中からもそれぞれのキャラクターの抱える切ない心情描写が垣間見れ、彼らが繰り広げる青春の煌めきが情緒あふれるドラマを紡ぎだしている。とくに第2話においては、タクトたち主人公サイドよりも、敵である綺羅星十字団に所属するキャラクターの描写がぐっと増えており、今作がただ秘密結社の野望を打ち砕くヒロイックドラマではなく、敵味方双方の愛憎入り混じる奥深い人間ドラマを指向しているのがよく伝わって来る。とくに各隊リーダーの心情描写には、要注目だ。




また今回は、前回全力で置いてきぼりにした視聴者をフォローするべく、少しづつ今作の設定部分が語られ始めた。とくにサイバディが活躍する特殊な空間の設定と、十字団がサイバディを使って何をしようとしているのかが、あくまで一端ではあったが明らかになってきた。一方で巫女の存在とサイバディの関係性やら、スガタをはじめとする演劇部の存在意義、そして十字団の組織構成など、新たに疑問符が湧き出てくる展開でもあった。


前回も言及のあった”フェイズ”について。綺羅星十字団のスタードライバーがまだ第2フェイズまでしか到達しておらず、サイバディを動かすには電気棺(?)に乗り込まなければならないこと、そしてタクトはなぜか第3フェイズで直接ロボットに乗り込んで操縦できることは、前回語られたことだった。今回はそれに加えて、第1フェイズというのが何だかよく分からない特殊能力を操ることの出来る存在らしいというのが明らかになったわけだ。シナダ・ベニオがキスによって他者をコントロールできることや、前回倒されたボクシング男もそれらしい能力を使っていたことを考えれば、そのうちタクトも第1フェイズの能力を発動してくれるかもしれない。


ちょっと気になるのは、サイバディに直接乗り込める第3フェイズが、第1・第2フェイズと比べて何がどう変わるのか、フェイズをひとつ進めることでどのようなメリットがあるのかが、まだあまり分かっていないこと。直接乗り込めることでロボットの運動性能や技の強さがアップするとか、そういうことなのか。それとも第2フェイズから劇的に変化する何かがあるのか。仮面を付けずにゼロの時間に入れるのは、フェイズの問題ではなく銀河美少年だからだと思われるし、直接乗れるか否かの違いだけだというのでは何だか地味な設定なので、第3フェイズならではの凄い設定が隠されていそうなものだけど・・・?


このあたりに関してはしかし、劇中の登場人物たちも良く分かっていないことなのだろうから、この世界の法則が我々の前に明かされる時が来ることをじっくりと待ちたい。




・演劇的虚構性のもとに描き出される画面世界と物語


世紀の大傑作アニメ「少女革命ウテナ」を知っている人は、今作と「ウテナ」をどこかで重ねあわせたり比較したりしていることだと思う。かく言う私も、この2作品はどうしたって見比べてしまいたくなるし、また今作はそれに相応しい作品だと思う。


もちろんそれは、榎戸洋司というクレジットによって連想する人もいるだろうし、あるいは今作に仕掛けられた様々な特異性の中に「ウテナ」との関連性を指摘することも出来るわけだ。とくに今回描かれた綺羅星十字団の総会(?)などはまさに「ウテナ」の生徒会を連想させるものであるし、また挿入歌付きで舞台を異空間に移行させてその中で1対1の決闘を行うという構図、不条理な世界のシステムに捉われている(らしい)ヒロインを王子様的主人公が守ろうと決意する展開、なによりそうしたトンデモバトルが表面だけは普通を装う学園ドラマの中に混在しているという作品舞台の二面性など、たしかに「ウテナ」的と呼んでいい要素は多い。


そうした個々の要素に付け加えて指摘できる共通性が、舞台演劇的な虚構性を映像と物語の両面において強く打ち出しているという点にあると思う。今回タクトが関わりを持った「夜間飛行」の面々、彼らが表向きに称している活動形態が、文芸部でも美術部でもオカルト研究会でもなく演劇部であったというのは、じつに象徴的だ。


「少女革命ウテナ」という作品は、これはエンターテイメントとしても非常に優れた作品だったのだが、それ以上に、思春期の揺れ動く若者の姿を通じて、人が生きることの根本的な意味と意義を魂の奥深くに鋭く訴えかけ思索を促す、極めて思想的哲学的なメッセージの色濃い作品であった。ただ懸命に日々を生きている生命活動とその幸福を賛美する、という意味で「生きること」をテーマとして扱う作品は数多くあるが、それとはまったく別の次元において生を問うた作品は、それもこれほど見事にやってのけた作品は、アニメでは他に知らない。ヘッセ『デミアン』を直接的なモチーフとしながら、まったく独自のやり方で実存主義的テーマ性を表現して見せたのが、「ウテナ」という作品だった。そしてそれを可能ならしめたのが、物語においても、また映像においても、ことさらに舞台演劇的虚構性を強調して違和感の塊のような画面世界を構築した演出手法であった。


「ウテナ」ほどでは無いにしても、露骨に違和感や不明瞭さを提示して視聴者を突き放し、作品において繰り広げようとしているテーマに視聴者自らの手で到達せしめるよう誘導している手法は、今作においても健在だ。世界観設定にまつわる種々の謎は、作品のエンターテイメント性をぐっと高めるための戦略であろうと思うが、そこに込められた寓話性と、恣意的に演出された違和感の中で展開されるキャラクターたちの言動は、間違いなく作品テーマの根幹部分と直結している要素だ。今作の特殊な世界観は、ただ面白いからと言うのでは無しに、あるテーマを訴えかけたいがために構築されたものであるし、それを表現するための脚本・映像が生み出されている。かつて「ウテナ」が実現し、しかし他のどの作品でさえも到達できなかった優れて高度な芸術的レヴェルを、「STAR DRIVER 輝きのタクト」という作品ははっきりと目標地点に見据えて創作されていると思う。だからこそ、今作は表面に現われてくる種々の要素ではなくもっと根本的な次元で、「ウテナ」的な作品であるし、「ウテナ」と比較されるのに相応しい作品であると思う。


一人のファンとして、「ウテナ」に匹敵し、「ウテナ」を凌駕する作品の登場を待望してきた。それがようやく今作において実現されるかもしれないという期待で、胸がいっぱいに膨らんでいる。普段から、アニメ作品にあまり過剰な期待をかけると大失敗する可能性を自覚しているつもりではあるのだが、今作にだけは、その過剰すぎる期待を背負わせてみたいと思った。それに応えてくれるかどうか、よく見守っていきたい。




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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

2010年10月11日 18:37
テグジュペリとタクトの比較は、おもしろいかもしれませんね。
個人的には、小説(物語)としての完成度が高い「夜間飛行」より、彼の思想がナマな形で表現されている「人間の土地」の方がお気に入りです。
おパゲーヌス
2010年10月11日 22:18
>SIGERUさん
コメントどうもありがとうございます。ツイッターの発言にこっちでリプライもらえるとはw

『人間の土地』は、自分にとってとても重要な一書なので、お気に入りと言っていただけるのが自分のことのように嬉しいです。『夜間飛行』も、あれはあれで硬質なのに非常にドラマティックで、すごく好きですけど。肝心の『星の王子様』が、中学時代に読んだきりでかなり内容を忘れているので、また読みなおしておきたいです。

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